消費しょうひ税ぜい、財政ざいせい破綻はたん回避かいひには32％へ増税ぞうぜい必要ひつようとの試算しさん　再さい増税ぞうぜい延期えんきで将来しょうらいの税率ぜいりつ上昇じょうしょうの懸念けねん

消費しょうひ再さい増税ぞうぜい延期えんき、衆議院しゅうぎいん解散かいさん・総そう選挙せんきょについて報ほうじる新聞しんぶん各紙かくし

　安倍晋三あべしんぞう首相しゅしょうは11月18日にち、経済けいざい成長せいちょうの下した振ふれ懸念けねんが強つよまったと判断はんだんし、来年らいねん10月がつに予定よていしていた消費しょうひ再さい増税ぞうぜいの1年ねん半はん延期えんきについて国民こくみんに信しんを問とうため、衆議院しゅうぎいんの解散かいさんを正式せいしき表明ひょうめいした。

　すでに21日にちに解散かいさんしているので、もはや再さい増税ぞうぜい延期えんきを止とめることはできないが、筆者ひっしゃはこの延期えんきは間違まちがった判断はんだんだと考かんがえる。もし17年ねん4月がつに延期えんきした再さい増税ぞうぜいが実施じっしされるなら、まだ傷きずは浅あさい。しかし、将来しょうらいの経済けいざい動向どうこうは誰だれも予測よそくがつかず、景気けいきが低迷ていめいした時ときでも本当ほんとうに増税ぞうぜいが実行じっこうできるのか疑問ぎもんが多おおい。実際じっさいに今回こんかいは増税ぞうぜいを延期えんきしている。

　それに1997年ねん4月がつの消費しょうひ増税ぞうぜい実施じっし（3％→5％）から、今年ことし4月がつの増税ぞうぜい（5％→8％）が国会こっかいで決きまるまで17年ねんもの時間じかんがかかっており、政治せいじの一寸いっすん先さきは闇やみである。実際じっさい、消費しょうひ増税ぞうぜいの延期えんきが16年ねん4月がつではなく17年ねん4月がつとなったのは、16年ねんの夏なつに参議院さんぎいん選挙せんきょが予定よていされているからだろう。

　リーマン・ショック（08年ねん）や東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい（11年ねん）のような異常いじょう事態じたいが起おこらない限かぎり、次つぎの再さい増税ぞうぜいを延期えんきすることは賢明けんめいな選択せんたくではない。主おもな理由りゆうは、以下いかの2つだ。

　第だい1は、財政ざいせい危機ききを回避かいひするのに残のこされた時間じかんはそれほど多おおくないためだ。つまり、財政ざいせいの限界げんかいである。米国べいこくアトランタ連邦れんぽう準備じゅんび銀行ぎんこうの経済けいざい学者がくしゃリチャード・ブラウン氏しらの研究けんきゅう（「Braun and Joines, 2011」）は、政府せいふ債務さいむ（対たいGDP）を発散はっさん（無限むげんに膨張ぼうちょう）させないために、消費しょうひ税率ぜいりつを100％に上あげざるを得えなくなる限界げんかいの年としを計算けいさんしている。結果けっかは消費しょうひ税率ぜいりつが10％のままならば2032年ねんまで、消費しょうひ税率ぜいりつが5％のケースでは28年ねんまでとなっている。

　同どう研究けんきゅうは試算しさんしていないが、消費しょうひ税率ぜいりつが8％のケースでは30年ねん頃ごろが限界げんかいの年としとなるはずだ。そもそも消費しょうひ税率ぜいりつを100％にすることは現実げんじつ的てきには不可能ふかのうだろう。ならば、これらの限界げんかい年ねんは、その後ごどんなに財政ざいせい再建さいけんの努力どりょくを行おこなっても財政ざいせい破綻はたんを防ふせぐことはできない限界げんかいの期限きげんを示しめしていることになる。また、そもそも今回こんかいの増税ぞうぜいは「止血しけつ剤ざい」に過すぎず、財政ざいせいを安定あんてい化か、つまり対たいGDPでの政府せいふ債務さいむを発散はっさんさせずに一定いってい比率ひりつに安定あんてい化かさせるには、消費しょうひ税率ぜいりつは20％を超こえるという現実げんじつも重要じゅうようである。

●ピーク時じの税率ぜいりつは32％

　そして第だい2の理由りゆうは、現在げんざいの議論ぎろんで欠かけている視点してんだが、再さい増税ぞうぜいが遅おくれれば財政ざいせい的てきに同おなじ効果こうかを持もつ税率ぜいりつ引ひき上あげ幅はばは2％より大おおきくなるためである。さらにいえば、財政ざいせいを安定あんてい化かさせるためには、最終さいしゅう的てきにどの程度ていどの税率ぜいりつが必要ひつようなのかも議論ぎろんされていない。