ディズニーリゾート崩壊ほうかい？異常いじょうな行列ぎょうれつ、次々つぎつぎ倒たおれるキャスト、大だい混乱こんらんの飲食いんしょく店てんに客きゃくがクレーム

東京とうきょうディズニーランドのシンデレラ城じょう（「Wikipedia」より／Username9）

　夏休なつやすみとなれば、多おおくの観光かんこう客きゃく（ゲスト）が押おし寄よせる東京とうきょうディズニーリゾート。

　この東京とうきょうディズニーリゾートを運営うんえいするオリエンタルランドから今年ことし3月がつ31日にち～4月がつ6日にちに解雇かいこされた従業じゅうぎょう員いん（キャスト）が、オリエンタルランド・ユニオン（以下いか、ユニオン）を結成けっせい。現在げんざい、オリエンタルランドに対たいし、労働ろうどう環境かんきょうの改善かいぜんを要望ようぼうしている。

　しかし、オリエンタルランドは「ユニオンに加入かにゅうするキャストたちは『請負うけおい業者ぎょうしゃ』との間あいだに雇用こよう関係かんけいがあるにすぎず、オリエンタルランドは『請負うけおい業者ぎょうしゃ』と請負うけおい契約けいやくを結むすんでいる『注文ちゅうもん主ぬし』であり、キャストたちの『使用しよう者しゃ』ではない」と主張しゅちょうし、団体だんたい交渉こうしょうを拒否きょひしている。6月27日にちに開催かいさいされた株主かぶぬし総会そうかいでも、株主かぶぬしから出でたユニオンに関かんする質問しつもんに対たいして「明確めいかくな回答かいとうは出でなかった」（ユニオン）という。

「私わたしたちは、自分じぶんたちの雇用こよう問題もんだいだけではなく、キャスト全体ぜんたいの労働ろうどう環境かんきょうの改善かいぜんを要求ようきゅうしています。これからの夏なつに向むけてゲストがたくさんいらっしゃる時期じきになりますが、会社かいしゃ側がわはなんら労働ろうどう環境かんきょうを改善かいぜんしようとしていません。このために、キャストの厳きびしい労働ろうどう環境かんきょうがさらに過酷かこくなことになっています。キャストの心中しんちゅうのは笑顔えがおではないのに、どうしてゲストの皆みなさんを笑顔えがおにすることができるのでしょうか」（同どう）

　夏なつ本番ほんばんを前まえに、オリエンタルランドは大量たいりょうに広告こうこく出稿しゅっこうを行おこない、マスメディアからは「夏なつのディズニーリゾートのおすすめツアーガイド」が宣伝せんでんされるだろう。しかし、「夢ゆめの国くに」では、そこかしこにブラックな労働ろうどう環境かんきょうが隠かくれているのが実態じったいだ。

ディズニーリゾートのブラックな実態じったい

　今回こんかいは、ユニオンへの取材しゅざいを基もとにした夏なつのディズニーリゾートにおけるあきれた実態じったいを紹介しょうかいしていきたい。

　まずは、夏休なつやすみ名物めいぶつともなっている、異常いじょうな待まち時間じかんの長ながさという問題もんだいを見みていきたい。

　3時じ間あいだ待まちは当あたり前まえのビッグサンダー・マウンテン、スプラッシュ・マウンテン、ミート・ミッキー……こうした人気にんきアトラクションは、なぜ行列ぎょうれつがなくならないのか。背景はいけいには、オリエンタルランドの“ゲスト入いれすぎ”問題もんだいがある。

「夏休なつやすみは入場にゅうじょう制限せいげんをほとんどしませんが、実じつはゲストを入いれすぎなのです。それは入場にゅうじょう料りょう収入しゅうにゅうが欲ほしいからにほかなりません。営利えいり企業きぎょうだから仕方しかたないとしても、それならば、1つのアトラクションにゲストが集中しゅうちゅうすることの弊害へいがいを見直みなおすことが企業きぎょう側がわには必要ひつようでしょう。5分ふんで入いれるような行列ぎょうれつの少すくないアトラクションを魅力みりょくあるものに改良かいりょうするなどして、待まち時間じかんを平準へいじゅん化かする方策ほうさくは取とれるはずです」（同どう）

　夏休なつやすみとなれば、ファミリーで並ならぶために、行列ぎょうれつはさらに長ながくなる。

「以前いぜんは、行列ぎょうれつがあれば待まち時間じかんも楽たのしくするためにアトモス（アトモスフィア・ショー）がありましたが、現在げんざいは『エンターテインメント・ショー製作せいさく費ひ』が大おおきく削けずられて（2009年ねん3月がつ期きは154億おく円えんだったが、14年ねん3月がつ期きでは55億おく円えんと、ほぼ3分ぶんの１にまで削減さくげん）、ほとんど行おこなわれなくなりました。ゲストは、ただただ待またされるのみです。例たとえば、本来ほんらいビッグサンダー・マウンテン周辺しゅうへんは、キャラクターが登場とうじょうしてゲストが写真しゃしんを一緒いっしょに撮とることのできる『グリーティング』が行おこなわれるエリアなのですが、あまりに行列ぎょうれつが長ながくなりすぎて危険きけんだと、グリーティングを中止ちゅうしすることもしばしばです」（同どう

　ただ、グリーティングの中止ちゅうしに関かんしては、キャラクターの中なかに入はいるキャストにとってはありがたい面めんもあるという。

「通常つうじょう、キャラクターの仕事しごとを割わり当あてられれば、パレードと1日にち数すう回かいのグリーティングをしなくてはいけません。多おおくの人ひとはキャラクターの着きぐるみは猛暑もうしょ対策たいさく用ように改良かいりょうされているとお思おもいでしょうが、実じつは、まったく改良かいりょうされていません。このため、猛暑もうしょとなれば、中なかの温度おんどもとても高たかくなります。しかも、パレードとなれば炎天下えんてんかで40分ふん踊おどり続つづけることになるため、終おわったとたんに、ゲストから見みえないバックステージで、熱中ねっちゅう症しょうで倒たおれるキャストも出でてくるのです。サイレンを鳴ならさない救急きゅうきゅう車しゃによってキャストが運はこばれていくというのも、真夏まなつではよくあります。このため、真夏まなつにはグリーティングの回数かいすうが減へることは、現状げんじょうではありがたいことではあるのです。

　こうした過酷かこくな環境かんきょうが常態じょうたい化かしているのは、出演しゅつえん者しゃの世界せかいでは体育たいいく会かい系けいな土壌どじょうがあって、NOと言いいづらいからです。真夏まなつの環境かんきょう下かで、40分ふん踊おどり続つづけなくてはいけない環境かんきょうに、精神せいしんを病やんで辞やめていく若手わかても多おおいのです。しかしオリエンタルランド側がわに訴うったえても、『体調たいちょう管理かんりもあなたの仕事しごと』と冷つめたく切きり捨すてられるのです」（同どう）

　日本にっぽんのディズニーリゾートのキャラクターのパフォーマンスレベルの高たかさは世界せかいからも称賛しょうさんされるが、こうした日本にっぽん的てきな体育たいいく会かい系けいシステムと希望きぼうに満みちた労働ろうどう者しゃの犠牲ぎせいの上うえに成なり立たっているというのは皮肉ひにくな話はなしだ。

過剰かじょうなコストカットでブラック化かに拍車はくしゃ

　そして、甘あまく見みてはならないのは、食事しょくじ時じのレストランだ。レストランの大だい混雑こんざつも、真夏まなつの名物めいぶつになりつつある。

「実じつは、レストランのスタッフの人員じんいんも大おおきく削減さくげんされています。それにもかかわらず、ゲストの入場にゅうじょうは拒こばまないように上うえから指導しどうされています。つまり、中なかに入いれる限かぎり、どんどんゲストが入いれてしまうのです。しかし、キャパシティを超こえているために、サービスの提供ていきょうが間まに合あいません。低ていレベルのホスピタリティ（おもてなし）にクレームを入いれられるゲストもいらっしゃいますが、そもそも現場げんばに配置はいちされる人数にんずうが少すくなすぎるため、どうしようもないのです」（同どう）

　また、セルフサービス形式けいしきのレストランでは、料理りょうりを手てにできたものの、空あいたテーブルが見みつからず立たち尽つくすファミリーも目立めだつ。

「かつてであれば、先さきに注文ちゅうもんしてからテーブルを探さがすよう働はたらきかける空席くうせき案内あんない係がかりがいましたが、そういった係かかりは真まっ先さきになくなり、我先われさきにと席せきに座すわるファミリーも出でてきました。今いまでは、満員まんいんの店内てんないでテーブルが見みつからず仕方しかたなく立たち食ぐいしているファミリーもいますが、立たち食ぐいをしていると店員てんいんから注意ちゅういされるのです」（同どう）

　現在げんざい、「ゲストにハピネスを届とどけよう」というキャスト新規しんき募集ぼしゅうの広告こうこくを電車でんしゃ内ないなどで見みることができるが、特とくに飲食いんしょく関係かんけいの職種しょくしゅが不人気ふにんきだという。

　それもそのはず、「単純たんじゅん作業さぎょうの繰くり返かえしで腱鞘炎けんしょうえんや、やけどをする人ひともいる」「リゾート外がいの飲食いんしょく店てんのほうが働はたらきやすい」（同どう）というのが実情じつじょうなのだ。

　こうしたブラックな現場げんばにもかかわらず、経営けいえい陣じんは、東京とうきょうディズニーリゾートは9割わりが準じゅん社員しゃいん（パート、アルバイトなど）であることを強調きょうちょうし、「キャラクターはもとより、販売はんばいや清掃せいそうのスタッフも持もち場ばで大事だいじな役割やくわりを果はたしている」（加賀見かがみ俊夫としお会長かいちょう）と、そのビジネスモデルを自画じが自賛じさんしている。

「現在げんざいの過酷かこくな状況じょうきょうは、社員しゃいんが圧倒的あっとうてきに少すくなく、準じゅん社員しゃいんを管理かんりできていないことからきています。オペレーションの多おおくが準じゅん社員しゃいん任まかせになっているにもかかわらず、準じゅん社員しゃいんからの改善かいぜん要望ようぼうが上うえに届とどかないようになっているのです」（ユニオン）

　現場げんばを知しらない経営けいえい陣じんや社員しゃいんは、コストカットすることばかり考かんがえている。「あるショーでは、コストカットしすぎて米国べいこく本社ほんしゃから『あまりにもみすぼらしくなる』とストップがかかったこともある」（同どう）ほどだ。耳みみを傾かたむけるべきユニオン側がわの改善かいぜん提案ていあんは数多かずおおいと思おもうのだが、「人ひとの話はなしに耳みみを傾かたむける」労力ろうりょく（コスト）を最初さいしょにカットしてしまったのかもしれない。
（文ぶん＝松井まつい克明かつあき／CFP）