東日本大震災から10年が経ち、改めて人々の防災意識が高まりを見せている。現在では多くの防災グッズが販売されているが、もちろんすべてを常備しておくわけにはいかない。取捨選択が必要で、機能性や使い勝手の良さを考慮した上で優先順位をつけることが重要だ。そこで今回は、ヤマダ電機で見つけた、準備する優先度が低い防災グッズを紹介していく(価格はウェブ税込み)。
クリタック 携帯用あたためキットM/767円
災害時に備えて用意しておくべき「非常食」。実際に被災した方々の体験談を聞くと、なによりも温かい状態で食べられるのが一番だという。この商品は、水だけで食材を温められるというもので、付属の発熱剤と用意した水を混ぜて発生させた蒸気で加熱する。
一見すると便利だが、現在はよりコストパフォーマンスがいいものがある。たとえば、自衛隊の戦闘食料、いわゆるミリタリーメシを応用した「防災あつあつセット」という商品は、加熱できるだけでなく、白米、カレーなどの食材がセットになっている。そのため、本商品を単品で買うよりも使い勝手がいい。また、温めを重視するなら、カセットコンロが最もいいだろう。調理もでき、お湯も沸かせるため、圧倒的に汎用性が高いからだ。
このようにコスパのいい代替品も多いので、この商品を準備する優先度は低いと考えられる。
マクセル 水と塩で発電するLEDランタン「MIZUSION」/2170円
災害時に必須のライトの中でも、広く照らしてくれるランタン。この商品は、なんと水と塩で発電するので、電池がなくても使うことができる。
一見、すごく便利な商品に思えるが、よく考えると、水はまだしも塩は意外と手に入りにくいのではないだろうか。だからといって、この商品用に塩を備蓄しておくのも本末転倒に思える。
さらに、マグネシウム合金の交換で繰り返し使用が可能となっているが、その都度、交換用マグネシウム合金を買い足さなければならない。ひとつのマグネシウムの連続点灯時間は80時間で、30時間ごとに塩水の交換が必要であるという。非常時にマグネシウム合金を買い足すことは難しいし、塩水の交換も面倒である。
それよりも、ある程度備蓄している人が多いと思われる電池を使用する普通のランタンの方がシンプルで使い勝手がいい。防災グッズは必要最低限という原則にのっとると、本商品の優先順位は低いと言わざるを得ない。
アーバンテック SUPER DELIOS 携帯浄水器/4580円
携帯浄水器はテレビショッピングなどでも宣伝されているが、都市部に住んでいる人にとっては使う機会が少ないのが現実だ。備蓄物が多い避難所などでは水は比較的手に入りやすいため、泥水や雨水を浄水して飲むというシチュエーションは考えにくいのだ。
そもそも、この商品は繊維状活性炭と0.1ミクロン中空糸膜フィルターによって泥の匂いや大腸菌などを取り除くというが、泥水をろ過するとやや味に違和感が残る、という消費者の声も見受けられた。さらに、一度にろ過できる容量と排出される量も少なく、コップにためるのも少々時間がかかるようだ。もし家族分の飲料水をろ過しようとなれば、かなりの時間がかかり、使い勝手がいいとは言えないだろう。
いずれにせよ、飲み水が確保できないという事態は起きにくいため、用意する優先度は低くなるだろう。
太知ホールディングス 備蓄多機能ライト/6391円
災害時は情報収集、明かり、電源が必要不可欠だが、今回の商品は一応そのすべてを備えているオールマイティ商品だ。しかし、オールマイティゆえに、どれも中途半端な機能になっている感じが否めない。
まず、ライトだが、手元を照らすにはいいのだが、全体を明るく照らすほどの光量はないようだ。また、手巻きでラジオを聴けるというが、手巻き式ラジオは体力を消耗する。体力温存が求められる避難生活や災害時において、この機能はあまりおすすめできない。
明かり、ラジオに続いてバッテリーとしての機能もあり、スマホの充電が可能なこの商品。しかし、アンペア数を見ると500mAとなっており、現在のスマホを十分に充電できると言われる1Aの半分である。そのため、充電に非常に時間がかかる恐れがある。それよりは高性能のモバイルバッテリーを1台でも備えておく方がいいだろう。多機能だからといって購入するのは早計だ。
デンヨー ポータブルガス発電機/13万9640円
災害発生時に電力を確保するため、発電機を用意したいという人もいるだろう。家庭用の発電機には主にガソリンタイプとガスタイプがあり、今回紹介する商品はガスタイプである。
カセットガスを使用するガス発電機の方がガソリンよりも扱いやすいため、好まれている。ただ、難点としては出力が弱く、時間もカセットガス2本で1時間ほどしか発電が続かない。場合によっては、ガスをたくさん用意しなければならず、割高になってしまうのだ。経済的にしっかり発電したい人には、ガソリンがおすすめである。
ただし、そもそも発電機を常備する優先度はかなり低い。なぜなら、災害時に真っ先に復旧するライフラインは電力だからだ。場所によって差はあるが、阪神淡路大震災では約2日、東日本大震災では約6日と、いずれの震災でも比較的早く復旧している。わざわざ高額な発電機を購入する必要性は薄いだろう。
(文=清談社)