安倍あべ政権せいけん、野菜やさい農家のうかへの収入しゅうにゅう補填ほてん廃止はいしを検討けんとう…野菜やさいの安定あんてい供給きょうきゅう制度せいどと価格かかく安定あんていを破壊はかい

　歴史れきし的てき暖冬だんとうで野菜やさいの成長せいちょうが早はやく、鍋なべ需要じゅようも伸のびないなかで、野菜やさい価格かかくの下落げらくが続つづいている。キャベツ、レタス、白菜はくさい、大根だいこん、ブロッコリーなどは平年へいねんと比くらべ３割わり前後ぜんこうのダウンとなっており、全国ぜんこくの野菜やさい生産せいさん者しゃは廃棄はいきなどで出荷しゅっか調整ちょうせいなどに取とり組くんでいるが、経営けいえいへの打撃だげきは大おおきい。

　このようななか、生産せいさん者しゃをさらに不安ふあんにさせているのが、野菜やさい価格かかく安定あんてい制度せいどの廃止はいしを狙ねらう財務省ざいむしょうの動うごきである。野菜やさい生産せいさん出荷しゅっか安定あんてい法ほうで、価格かかくの著いちじるしい下落げらく時じは生産せいさん者しゃ補給ほきゅう金きんが給付きゅうふされることになっている。対象たいしょう指定してい野菜やさいは１４品目ひんもくで、キャベツ、きゅうり、里芋さといも、大根だいこん、たまねぎ、人参にんじん、トマト、白菜はくさい、ナス、馬鈴薯じゃがいも、ねぎ、ピーマン、ほうれん草そう、レタスとなっている。ただし、暖冬だんとうで同おなじように影響えいきょうを受うけているブロッコリーは、指定してい野菜やさいでない。

　指定してい野菜やさいは、平均へいきん販売はんばい価額かがくが基準きじゅん価格かかくの９割わりを下回したまわった場合ばあい、差額さがくの９割わりを補填ほてんするというもの。財源ざいげんは積立つみたて金きんで賄まかなわれているが、積立つみたて金きんの６割わりが国庫こっこ補助ほじょで、２割わりが都道府県とどうふけん補助ほじょとなっている。消費しょうひ量りょうが相対そうたい的てきに多おおい、または多おおくなることが見込みこまれる野菜やさいを政令せいれいで指定していすることによって対象たいしょう野菜やさいになる。

　今回こんかいの歴史れきし的てき暖冬だんとうによる価格かかく下落げらくについても、野菜やさい価格かかく安定あんてい制度せいどにより３割わりの価格かかく下落げらくのうち、下落げらく分ぶんの９割わりが補填ほてんされることになる。補填ほてんまでに時間じかんがかかるが、生産せいさん者しゃの経営けいえいの安定あんていにとっては不可欠ふかけつな制度せいどといえる。

野菜やさい価格かかく安定あんてい制度せいどには出荷しゅっか調整ちょうせい機能きのうも

　財務省ざいむしょうは昨年さくねん１０月がつ１７日にちに農林のうりん水産すいさん行政ぎょうせいを分析ぶんせきした「農林のうりん水産すいさん」という文書ぶんしょを公表こうひょうした。財務省ざいむしょうは農林のうりん水産すいさん予算よさんに対たいして絶対ぜったい的てき権限けんげんを持もっており、財務省ざいむしょうの一存いちぞんで農林のうりん水産すいさん予算よさんの削減さくげん、予算よさん項目こうもくのカットができる。もちろん農水省のうすいしょうも抵抗ていこうをするが、多勢たぜいに無勢ぶぜいである。

　今回こんかいの「農林のうりん水産すいさん」文書ぶんしょで財務省ざいむしょうが槍玉やりだまにあげたのが、野菜やさい価格かかく安定あんてい制度せいどであった。財務省ざいむしょうは、「従来じゅうらいより（略りゃく）野菜やさい価格かかく安定あんてい制度せいどといった形かたちで品目ひんもくごとに収入しゅうにゅう補填ほてんの制度せいどが存在そんざい」しているとして、「既存きそん制度せいどを収入しゅうにゅう保険ほけんへと円滑えんかつに移行いこうさせることにより、一元いちげん的てきなセーフティネットを構築こうちくしていくべきではないか」としたのである。要ようするに、野菜やさい価格かかく安定あんてい制度せいどは廃止はいしして、保険ほけんに切きり替かえるべきと主張しゅちょうしているのだ。

　財務省ざいむしょうの狙ねらいは、財政ざいせい負担ふたんの軽減けいげんである。野菜やさい価格かかく安定あんてい制度せいどは、国くに、県けん、生産せいさん者しゃが基金ききんに拠出きょしゅつして運営うんえいされている。その国くにの負担ふたん分ぶんは６割わりに上のぼっている。また、異常いじょう気象きしょうで野菜やさい価格かかくの低迷ていめいが続つづき、生産せいさん者しゃ補給ほきゅう金きん交付こうふ額がくは１７年度ねんどには１２４億おく円えんに上のぼり、財源ざいげんとなる基金ききんは数すう年ねん後ごには枯渇こかつするとも指摘してきされ、さらなる国くにの財政ざいせい負担ふたんが想定そうていされるのである。

　これに対たいして収入しゅうにゅう保険ほけんは、保険ほけん料りょうに対たいする国庫こっこ負担ふたんは５割わりである。また、現在げんざいの収入しゅうにゅう保険ほけんへの野菜やさい農家のうかの加入かにゅう率りつは、わずか４％である。野菜やさい価格かかく安定あんてい制度せいどを廃止はいしして収入しゅうにゅう保険ほけんに一本いっぽん化かしても、加入かにゅう率りつが低ひくいなかでは確実かくじつに国くにの財政ざいせい負担ふたんは軽減けいげんされることになる。

　野菜やさい価格かかく安定あんてい制度せいどは生産せいさん者しゃの収入しゅうにゅう補填ほてん機能きのうだけでなく、野菜やさい生産せいさんの安定あんてい供給きょうきゅうを確保かくほして価格かかく安定あんていを図はかる機能きのうも有ゆうしている。指定してい野菜やさいをつくる産地さんちに供給きょうきゅう計画けいかくをつくらせ、それを守まもっている産地さんちには補填ほてん率りつを高たかめる仕組しくみや、出荷しゅっか調整ちょうせい機能きのうも持もっている。これらを廃止はいしするなら、野菜やさい価格かかくの乱らん高下こうげを招まねくことになりかねない。

　消費しょうひ増税ぞうぜいで野菜やさい産地さんちを苦くるしめ、さらに財政ざいせい負担ふたんを減へらすことを狙ねらう目的もくてきでの野菜やさい価格かかく安定あんてい制度せいどの廃止はいしは、日本にっぽんの野菜やさい生産せいさんの存亡そんぼうに関かかわる問題もんだいとなり得える。

（文ぶん＝小倉おぐら正行まさゆき／フリーライター）