増税ぞうぜいの一方いっぽうで、官庁かんちょう等とうが計けい874億おく円えんの不正ふせい支出ししゅつ等とう…公務員こうむいんによる「税金ぜいきん横領おうりょう」が横行おうこう

官庁かんちょうは使途しとを精査せいさすべきだ（厚生こうせい労働省ろうどうしょうが入はいる中央ちゅうおう合同庁舎ごうどうちょうしゃ第だい5号館ごうかん）

　国くにも自治体じちたいも、税ぜいの取とり立たては厳きびしいが、肝心かんじんの使つかい道みちとなると、実じつにいい加減かげんである。

　11月に会計検査院かいけいけんさいんが作成さくせいした2016年度ねんどの決算けっさん検査けんさ報告ほうこくの内容ないようが公表こうひょうされた。森友もりとも問題もんだいに関かんする会計検査院かいけいけんさいんの見解けんかいとして、土地とちの8億おく円えん値引ねびきは「根拠こんきょ不十分ふじゅうぶん」だったと大おおきく報ほうじられたが、報告ほうこく書しょを吟味ぎんみすると官庁かんちょうや独立どくりつ法人ほうじんのずさんな税金ぜいきん使用しようの実態じったいが浮うかび上あがってくる。

　今回こんかいの検査けんさは、16年ねん10月がつから17年ねん9月がつまでの1年間ねんかんに官庁かんちょうや地方ちほうの出先でさき機関きかんなど2941カ所かしょ（全体ぜんたいの26.4％）、国くにが補助ほじょ金きんその他たの財政ざいせい援助えんじょを行おこなった5222 の団体だんたい等とうを対象たいしょうに実施じっししたものだ。その結果けっか、法律ほうりつ、政令せいれいなどに違反いはんしたり、不当ふとうと認みとめられた「不当ふとう事項じこう」333件けん・指摘してき金額きんがく（徴収ちょうしゅう不足ふそくや過大かだい支出ししゅつなど）137億おく1821万まん円えんをはじめ、「意見いけんを表示ひょうじし又または処置しょちを要求ようきゅうした事項じこう」28件けん・同どう258億おく1128万まん円えん、「本ほん院いんの指摘してきに基もとづき当局とうきょくにおいて改善かいぜんの処置しょちを講こうじた事項じこう」47件けん・同どう505億おく1399万まん円えんなど、総計そうけいで423件けん・同どう874億おく4130万まん円えんが報告ほうこく書しょに掲記された。

　すべての機関きかんを対象たいしょうにしていないにもかかわらず、874億おく円えんもの税金ぜいきんの使つかい方かたの問題もんだい点てんがあぶりだされたのである。

もっとも「不当ふとう事項じこう」が多おおかったのは厚労省こうろうしょうで43億おく円えん

　検査けんさ結果けっかのなかでも特とくに問題もんだいなのは、違反いはんや不当ふとうと認みとめられた「不当ふとう事項じこう」である。省庁しょうちょう別べつに不当ふとう事項じこうの件数けんすうと指摘してき金額きんがくをみると、以下いかのとおりだ。

（1）厚生こうせい労働省ろうどうしょう…127件けん、43億おく2965万まん円えん
（2）国土こくど交通省こうつうしょう…22件けん、24億おく9560万まん円えん
（3）総務そうむ省しょう…29件けん、20億おく 695万まん円えん
（4）文部もんぶ科学かがく省しょう…46件けん、11億おく638万まん円えん
（5）財務省ざいむしょう…1件けん、4億おく8788万まん円えん

　件数けんすう、金額きんがくともにもっとも多おおかった厚労省こうろうしょうの不当ふとう事項じこう案件あんけんの内訳うちわけは、「収入しゅうにゅう」に関かんする件数けんすうが2件けんで11億おく4711万まん円えん。「支出ししゅつ」に関かんする件数けんすうが125件けんで31億おく8254万まん円えんとなっている。「収入しゅうにゅう」案件あんけんは、労働ろうどう保険ほけん料りょう、健康けんこう保険ほけん及および厚生こうせい年金ねんきん保険ほけんの徴収ちょうしゅう額がくが不足ふそくしていたというもの。

「支出ししゅつ」を見みると、「補助ほじょ金きん」が115件けんと突出とっしゅつ、その他たでは「保険ほけん給付きゅうふ」の6件けんが目立めだつ。補助ほじょ金きんの支給しきゅうをめぐっては、「雇用こよう保険ほけんの雇用こよう調整ちょうせい助成じょせい金きんの交付こうふが適正てきせいでなかった」とするものがある。指摘してき金額きんがくは1億おく1837万まん円えん。7労働ろうどう局きょく管内かんないで11年度ねんどから16年度ねんどにかけて32事業じぎょう主ぬしに総額そうがく1億おく9806万まん7659円えんの雇用こよう調整ちょうせい助成じょせい金きんが交付こうふされたが、休業きゅうぎょうや売上うりあげ高だか減少げんしょうなど事業じぎょう主ぬしの虚偽きょぎ申請しんせいを見抜みぬけず、1億おく1837万まん6735円えんが支給しきゅう要件ようけんを満みたしていなかったというものだ。

　厚労省こうろうしょう案件あんけんではこのほか、海外かいがい遺骨いこつ収集しゅうしゅう等とう事業じぎょうに絡からんだ前ぜん渡わたり資金しきんの会計かいけい経理けいりの不ふ適正てきせい（1件けん、4億おく6325万まん円えん）、医療いりょう費ひにかかる国くにの負担ふたんが不当ふとうと認みとめられるもの（1件けん、2億おく6391万まん円えん）、生活せいかつ扶助ふじょ費ひ等とう負担ふたん金きん等とうが過大かだいに交付こうふされていたもの（26件けん、7億おく7944万まん円えん）などが指摘してきされた。

法務省ほうむしょう、防衛ぼうえい省しょうでは職員しょくいんの不正ふせい行為こういで損害そんがい

　職員しょくいんの不正ふせい行為こういによる巨額きょがくの損害そんがいも報告ほうこくされている。

「登記とうき調査官ちょうさかん（平成へいせい27年ねん3月がつ31 日にち以前いぜんは登記とうき官かん）天野あまの某ぼうが、登記とうき申請しんせいの受付うけつけ等とうの事務じむに従事じゅうじ中ちゅう、18年ねん1 月がつから28 年ねん 12 月がつまでの間あいだに、郵送ゆうそうにより送付そうふされるなどした登記とうき申請しんせい書しょに貼付ちょうふされていた収入しゅうにゅう印紙いんしについて、消印けしいんをせずに剥はぎ取とり、登記とうき済ずみの他ほかの登記とうき申請しんせい書しょから剥はぎ取とった消印けしいん済ずみの収入しゅうにゅう印紙いんしを貼付ちょうふし、その上うえから更さらに消印けしいんをして、収入しゅうにゅう印紙いんし 472,936,000 円えん分ぶんを領りょう得どくしたものである。 なお、本件ほんけん損害そんがい額がくについては、29 年ねん 9 月がつ末まつ現在げんざいで290,000 円えんが同人どうじんから返納へんのうされている」（報告ほうこく書しょから）

　防衛ぼうえい省しょうでは自衛じえい官かんが不正ふせいを働はたらいていた。

「経理けいり隊たいにおいて、出納すいとう班はん員いんである自衛じえい官かんが、給与きゅうよの支払しはらい等とうの事務じむに従事じゅうじ中ちゅう、平成へいせい 26年ねん 8 月がつから 28 年ねん 6 月がつまでの間あいだに、給与きゅうよ振込ふりこみ額がくを算出さんしゅつするためのデータを不正ふせいに操作そうさするなどして航空こうくう手当てあて等とうを増額ぞうがくさせた上うえで、虚偽きょぎの国庫こっこ金きん振込ふりこみ請求せいきゅう書しょ及および国家こっか公務員こうむいん給与きゅうよ振込ふりこみ明細めいさい表ひょうを作成さくせいして、その増額ぞうがく分ぶんを自己じこ名義めいぎの預金よきん口座こうざに振ふり込こませて前ぜん渡わたり資金しきん計けい1,500,181 円えんを領りょう得どくしたものであり、不当ふとうと認みとめられる。なお、本件ほんけん損害そんがい額がくについては、28 年ねん10 月がつに全額ぜんがくが同人どうじんから返納へんのうされている」（報告ほうこく書しょから）

　個人こじんの犯罪はんざい行為こういは論外ろんがいだが、報告ほうこく書しょには多おおくの官庁かんちょうでいい加減かげんなチェックによる補助ほじょ金きんのばらまきや、過大かだい見積みつもりなどが行おこなわれていたことが列挙れっきょされている。

　年末ねんまつにかけて、さまざまな増税ぞうぜい論議ろんぎが沸わき上あがってきている。出国しゅっこく税ぜい、森林しんりん環境かんきょう税ぜい、たばこ税ぜい、会社かいしゃ員いんの給与きゅうよ所得しょとく控除こうじょ額がく引ひき下さげなど。政府せいふは国民こくみんから税金ぜいきんをむしり取とることばかり考かんがえているようにみえる。

　その前まえにすべきことがあるはずだ。会計検査院かいけいけんさいんの報告ほうこく書しょに見みられる税金ぜいきんの不適切ふてきせつ支出ししゅつや無駄遣むだづかいは氷山ひょうざんの一角いっかくにすぎない。国民こくみんが納おさめた税金ぜいきんがどこにどう使つかわれているのか。その精査せいさが欠かかせない。

　納税のうぜい者しゃはいっそう監視かんしの目めを強つよめるべきだ。
（文ぶん＝山田やまだ稔みのる／ジャーナリスト）