小室こむろ圭けいさん、経歴けいれき書しょ詐称さしょうとの報道ほうどう…皇室こうしつを悩なやます「悪性あくせいのナルシシズム」「情じょう性せい欠如けつじょ」

　秋篠宮あきしののみや家かの長女ちょうじょ・眞子しんじさまと年内ねんないに結婚けっこんする方向ほうこうで調整ちょうせいが進すすめられていると報ほうじられた小室こむろ圭けいさんの“経歴けいれき粉飾ふんしょく”疑惑ぎわくについて、「週刊文春しゅうかんぶんしゅん」（9月がつ23日にち号ごう/文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう）が報ほうじている。

　就職しゅうしょく活動かつどうのためにニューヨークの大手おおて法律ほうりつ事務所じむしょなどに提出ていしゅつした「経歴けいれき書しょ」に、2012年ねん9月がつから2013年ねん6月がつまで交換こうかん留学りゅうがくでUCLA（カリフォルニア大学だいがくロサンゼルス校こう）に通かよっていた頃ころ、電通でんつうアメリカでインターンをしていたとの記載きさいがあったが、「文春ぶんしゅん」が電通でんつうグループに小室こむろさんのインターン歴れきについて聞きいたところ、「そのような事実じじつは確認かくにんできませんでした」という回答かいとうがあったという。また、三菱みつびし東京とうきょうUFJ銀行ぎんこう在職ざいしょく中ちゅうに2年ねん連続れんぞくで表彰ひょうしょうされたとの記載きさいもあったが、関係かんけい者しゃは「それらの表彰ひょうしょうを小室こむろさんが受うけたことはありません」と証言しょうげんしている。

　事実じじつとすれば、小室こむろさんは“平気へいきで嘘うそをつく人ひと”なのではないかと疑うたがいたくなる。こういう人ひとの特徴とくちょうとして、アメリカの精神せいしん科か医いM・スコット・ペックは、「異常いじょうに意志いしが強つよい」こと、そして「罪悪ざいあく感かんや自責じせきの念ねんに耐たえることを絶対ぜったい的てきに拒否きょひする」ことを挙あげている。

　これらの2つの特徴とくちょうを併あわせ持もっていると、「自分じぶんの罪悪ざいあく感かんと自分じぶんの意志いしとが衝突しょうとつしたときには、敗退はいたいするのは罪悪ざいあく感かんであり、勝かちを占しめるのが自分じぶんの意志いしである」という状態じょうたいになりやすい。小室こむろさんも、「眞子しんじさまと何なにとしても結婚けっこんしたい。そのためにはどんなことをしてでもニューヨークの大手おおて法律ほうりつ事務所じむしょに就職しゅうしょくしなければならない」という意志いしが非常ひじょうに強きょうそうだ。だから、「経歴けいれき書しょ」に虚偽きょぎの内容ないようを盛もり込こむことへの罪悪ざいあく感かんなど木こっ端ぱみじんに吹ふき飛とんだのかもしれない。

　それでは、自分じぶん自身じしんの罪深つみぶかさに目めを向むけることができない、そもそも目めを向むけようとしないのは一体いったいなぜなのか。ペックによれば、「悪性あくせいのナルシシズム（自己じこ愛あい）」によるという。「悪性あくせいのナルシシズム」とは、アメリカの精神せいしん分析ぶんせき家かエーリッヒ・フロムが『悪あくについて』で指摘してきした、ある種しゅの病的びょうてきナルシシズムである。

　もちろん、誰だれにでもナルシシズムはある。ナルシシズムがなければ、自尊心じそんしんも自己じこ肯定こうてい感かんも持もつことができないのだから、ある程度ていどは必要ひつようだ。だが、強つよすぎるとさまざまな弊害へいがいが出でてくる。また、ナルシシズムには良性りょうせいのものと悪性あくせいのものがあるので、この2つを区別くべつして考かんがえなければならない。

「悪性あくせいのナルシシズム」の最大さいだいの特徴とくちょうとして、フロムは「良性りょうせいのものに見みられる補正ほせい要素ようそが欠かけていること」を挙あげている。そのため、「どんどん現実げんじつから自分じぶんを分離ぶんりしていく」。小室こむろさんは、在籍ざいせき弁護士べんごし数すうが1000人にんを超こえる大手おおて法律ほうりつ事務所じむしょへの就職しゅうしょくを目指めざしていたが、いずれも門前払もんぜんばらいになったらしい（「文春ぶんしゅん」）。それを受うけ入いれられず、自分じぶんが理想りそうとするイメージにある程度ていどまで一致いっちするよう現実げんじつを変形へんけいさせようとして、“経歴けいれき粉飾ふんしょく”に走はしったとも考かんがえられる。

　その原因げんいんとして、「悪性あくせいのナルシシズム」の持もち主ぬしはナルシシズムの傷きずつきによって生しょうじるうつ状態じょうたいを恐おそれ、こうした傷きずを何なにとしても避さけようとすることが大おおきい。大だい企業きぎょうのM＆Aを取とり扱あつかうような大手おおて事務所じむしょに就職しゅうしょくしたかったのに、それがかなわなかったとなるとナルシシズムがひどく傷きずつく。こういう傷きずつきに「悪性あくせいのナルシシズム」の持もち主ぬしは人一倍ひといちばい敏感びんかんなので、現実げんじつを変形へんけいさせてでも夢ゆめをかなえようとしたのだろう。結局けっきょくは自分じぶんを守まもるためなのだが、今回こんかいは眞子しんじさまが日本にっぽんで待まってくださっているという事情じじょうもあって、現実げんじつの変形へんけいに拍車はくしゃがかかったのかもしれない。

小室こむろさんは「ゲミュートローゼ」

　もっとも、いくら自分じぶん自身じしんと眞子しんじさまの夢ゆめをかなえるためとはいえ、普通ふつうは“経歴けいれき粉飾ふんしょく”に後うしろめたさや良心りょうしんの呵責かしゃく、さらには罪悪ざいあく感かんを覚おぼえるものである。そういう感情かんじょうがなかったのだとすれば、この連載れんさいで繰くり返かえし指摘してきしてきたように小室こむろさんは「ゲミュートローゼ」である可能かのう性せいが高たかい。

「ゲミュート」とは、思おもいやりや同情どうじょう、良心りょうしんや羞恥心しゅうちしんなどを意味いみするドイツ語ごである。このような高等こうとう感情かんじょうを持もたず、罪悪ざいあく感かんを覚おぼえない、当然とうぜん反省はんせいも後悔こうかいもしない人ひとを、ドイツの精神せいしん科か医いクルト・シュナイダーは「ゲミュートローゼ」と名なづけたわけで、「情じょう性せい欠如けつじょ者しゃ」と訳やくされる。

　約やく400万まん円えんを用立ようだててくれた母親ははおやの元もと婚約こんやく者しゃが経済けいざい的てきに困窮こんきゅうしていることを知しっても、真摯しんしに向むき合あおうとせず、「借金しゃっきん」ではなく「贈与ぞうよ」だと主張しゅちょうし続つづけた冷淡れいたんともいえる姿勢しせいを見みて、私わたしは以前いぜんから「ゲミュートローゼ」ではないかと疑うたがっていた。この疑うたがいは、今年ことし4月がつ8日にちに公表こうひょうした文書ぶんしょで、元もと婚約こんやく者しゃの「返かえしてもらうつもりはなかった」という発言はつげんに計けい23回かいも言及げんきゅうし、「（元もと婚約こんやく者しゃが工面くめんしてくれた約やく400万まん円えんは）借金しゃっきんではない」と強調きょうちょうしたことによって、確信かくしんに近ちかくなった。さらに、今回こんかい「文春ぶんしゅん」が報ほうじた「虚偽きょぎ経歴けいれき書しょ」疑惑ぎわくによって、私わたしの確信かくしんはさらに強つよまった。

　ちなみに、「ゲミュートローゼ」とサイコパスはどう違ちがうのかという質問しつもんを受うけることがよくある。「ゲミュートローゼ」は、シュナイダーが「精神病せいしんびょう質しつ人格じんかく」として挙あげた異常いじょう人格じんかくの10類型るいけいの1つであり、精神病せいしんびょう質しつの俗称ぞくしょうがサイコパスなので、サイコパスに含ふくまれる。したがって、より広ひろい意味いみではサイコパスと呼よんでさしつかえない。

　シュナイダーは「精神病せいしんびょう質しつ人格じんかく」を「その人格じんかくの異常いじょう性せいに自みずから悩なやむか、またはその異常いじょう性せいのために社会しゃかいが悩なやむ異常いじょう人格じんかく」と定義ていぎし、情じょう性せい欠如けつじょ型がた以外いがいに意志いし欠如けつじょ型がた、爆発ばくはつ型がた、無力むりょく型がた、自己じこ顕示けんじ欲ほっ型がたなどを挙あげている。

　自己じこ顕示けんじ欲ほっ型がたは、「実際じっさいあるより以上いじょうによく見みえるようにと望のぞみ」、「あらゆる種類しゅるいの詐欺さぎ並ならびに欺瞞ぎまんが問題もんだいとなる」。だから、これにも小室こむろさんは該当がいとうするのではないかと私わたしはひそかに疑うたがっている。

　少すくなくとも表面ひょうめん上じょうは、小室こむろさんが自分じぶんの人格じんかくに悩なやんでいるようには見みえない。悩なやんでいるのは皇室こうしつと日本にっぽん社会しゃかいであり、だからこそこれだけの大だい騒動そうどうになっている。屈服くっぷくすることのない意志いしの持もち主ぬしなので、自みずからの目的もくてきを達成たっせいするためにそれ以外いがいのものには目めもくれないのかもしれない。だが、小室こむろさんに自覚じかくがないからこそ、シュナイダーが「ゲミュートローゼ」の本質ほんしつ特徴とくちょうとして指摘してきした「改善かいぜんの不能ふのう性せい」が目めにつくのであり、つける薬くすりがないと痛感つうかんする。

（文ぶん＝片田かただ珠美たまみ／精神せいしん科か医い）

参考さんこう文献ぶんけん
エーリッヒ・フロム『悪あくについて』渡会わたらい圭子けいこ訳やく　ちくま学芸がくげい文庫ぶんこ、2018年ねん
M・スコット・ペック『平気へいきでうそをつく人ひとたち―虚偽きょぎと邪悪じゃあくの心理しんり学がく』森もり英明ひであき訳やく　草くさ思おもえ社しゃ、1996年ねん
クルト・シュナイダー『精神病せいしんびょう質しつ人格じんかく』懸かか田た克かつ躬、鰭ひれ崎さき轍わだち訳やく　みすず書房しょぼう、1954年ねん