「マイナ保険ほけん証しょうを使つかうと年収ねんしゅうがバレる」は本当ほんとうか…デジタル庁ちょうのグダグダな回答かいとう

　行政ぎょうせいのデジタル化かを目指めざし、改正かいせいマイナンバー法ほうが参院さんいん本ほん会議かいぎで可決かけつ、成立せいりつしたが、政府せいふの意気込いきごみに反はんして、誤あやま登録とうろくなどのトラブルが多発たはつしている。トラブル続つづきにもかかわらず、政府せいふは、マイナンバーカードと保険ほけん証しょうを一体いったいにする「マイナ保険ほけん証しょう」の普及ふきゅうを2024年ねん秋あきまでに行おこなうとしている。

　そんななか、「マイナ保険ほけん証しょうを使用しようすると収入しゅうにゅうがバレるらしい」という噂うわさが一部いちぶで広ひろがり、国民こくみんの不安ふあんに追おい討うちをかけている。

　この「収入しゅうにゅうがバレる」という話はなしの元もとになっているのは、国民こくみん民主党みんしゅとうの芳賀はが道也みちや参議院さんぎいん議員ぎいんが国会こっかいで、「地元じもとの医療いりょう機関きかんで働はたらく人ひとたちから、顔見知かおみしりが病院びょういんに来きてマイナ保険ほけん証しょうで資格しかく確認かくにんをすれば、年収ねんしゅうまで見みることができてしまう（と聞きいた）」と発言はつげんしたことにある。

　おそらく、医療いりょう機関きかんや薬局やっきょくの窓口まどぐちで支払しはらった医療いりょう費ひが高額こうがくになった場合ばあいに、一定いっていの限度げんど額がくに応おうじて後日ごじつ、支払しはらった医療いりょう費ひが払はらい戻もどされる高額こうがく療養りょうよう費ひ制度せいどが根本こんぽんにあるのではないだろうか。

デジタル庁ちょうに聞きいてみた

　マイナ保険ほけん証しょうの普及ふきゅうに向むけて政府せいふは国民こくみんの不安ふあんを把握はあくし、対処たいしょする責任せきにんがある。当然とうぜんながらデジタル庁ちょうは、さまざまな問題もんだいを把握はあくしているはずで、マイナ保険ほけん証しょうで年収ねんしゅうがバレるという噂うわさについて問とい合あわせてみた。

　しかし、「そんな噂うわさがあるんですか？」という期待きたい外はずれの返答へんとうで、「マイナ保険ほけん証しょうを使用しようして年収ねんしゅうがわかるということはないと思おもいます」と続つづけた。もちろん、そんなことはあってはならないが、こういった問とい合あわせに対たいしては「年収ねんしゅうなどの個人こじん情報じょうほうが漏出ろうしゅつしないという根拠こんきょ」を詳くわしく説明せつめいすべきではないだろうか。

　国会こっかいでの質疑しつぎに上あがっているにもかかわらず、なんともお粗末そまつな返答へんとうだと感かんじながら「噂うわさは高額こうがく療養りょうよう費ひ制度せいどに関連かんれんしているのではないか」と続つづけて質問しつもんすると『今こんお調しらべします』との返答へんとう。待まつこと数すう分ふん、担当たんとう者しゃが答こたえた内容ないようは次つぎの通とおりだ。

「高額こうがく療養りょうよう費ひ制度せいどは、従来じゅうらいは加入かにゅう先さきの医療いりょう保険ほけん者しゃ（健康けんこう保険ほけん証しょうを発行はっこうしている機関きかん）へ申請しんせいするものでしたが、マイナ保険ほけん証しょうを使用しようすれば、オンライン資格しかく確認かくにんが導入どうにゅうされている医療いりょう機関きかんにおいては、原則げんそくとして申請しんせいする必要ひつようはなく限度げんど額がくが適用てきようされます。その区分くぶんによって、おおよその年収ねんしゅうがわかってしまうと言いえますが、マイナ保険ほけん証しょうだからわかるというものではありません」

　マイナ保険ほけん証しょうで収入しゅうにゅうはわからないと言いった最初さいしょの答こたえとは異ことなるではないか。

高額こうがく療養りょうよう費ひ制度せいどの区分くぶんから漏もれる可能かのう性せい

　高額こうがく療養りょうよう費ひ制度せいどには、「年収ねんしゅう約やく1160万まん円えん～」「年収ねんしゅう約やく770万まん円えん～約やく1160万まん円えん」「年収ねんしゅう約やく370万まん円えん～約やく770万まん円えん」「年収ねんしゅう156万まん円えん～約やく370万まん円えん」「住民じゅうみん税ぜい非課税ひかぜい世帯せたい」といった区分くぶんがあり、収入しゅうにゅうに応おうじて1カ月かげつの自己じこ負担ふたんの限度げんどが決きめられているため、その区分くぶんから収入しゅうにゅうを推測すいそくすることができるといえる。

　SNSでは、区分くぶんを知しられたくなければ「オンライン資格しかく確認かくにんの最後さいごで『限度げんど額がく情報じょうほうを提供ていきょうしますか』と問とわれた際さいに『提供ていきょうしない』を選択せんたくすればいい」との指摘してきもあるが、それでも高額こうがく療養りょうよう費ひ精度せいどを使用しようする人ひとは、医療いりょう機関きかんに対たいし、区分くぶんを隠かくすことはできない。

　従来じゅうらいの高額こうがく療養りょうよう制度せいどの申請しんせいで発行はっこうされる限度げんど額がく適用てきよう認定にんてい証しょうには区分くぶんが記載きさいされており、いずれにせよ区分くぶんはわかる仕組しくみである。医療いりょう機関きかんで医療いりょう費ひを計算けいさんする際さいに区分くぶんの入力にゅうりょくが必要ひつようとなり、その区分くぶんは見みられるものである。その点てんは高額こうがく療養りょうよう費ひ制度せいどを利用りようする側がわも理解りかいすべき点てんだろう。

　医療いりょう費ひの公的こうてき支援しえんは収入しゅうにゅうに応おうじて行おこなわれるものが多おおく、区分くぶんによって収入しゅうにゅうが推測すいそくできるのは致いたし方かたないと感かんじるが、ほかに方法ほうほうがないか検討けんとうする余地よちはあるのかもしれない。

（文ぶん＝吉澤よしざわ恵理えり／薬剤師やくざいし、医療いりょうジャーナリスト）