世田谷せたがや区く・経堂きょうどう、住宅じゅうたく地価ちか上昇じょうしょう1位いの人気にんきの理由りゆう…足立あだち区く・葛飾かつしか区くの一部いちぶは下降かこう

　地価ちかの上昇じょうしょうが続つづき、マンションなどの不動産ふどうさん価格かかくも上あがり続つづけているものの、エリア別べつには違ちがいがみられるようになってきました。これからマイホーム購入こうにゅうを場所ばしょ選えらびから始はじめようと考かんがえている人ひとは、エリア別べつの地価ちか動向どうこうをシッカリと見極みきわめて、将来しょうらい性せいのある場所ばしょを選択せんたくしたいところです。

ジワジワと天井てんじょう感かんが強つよまっている

　不動産ふどうさん情報じょうほうサイトの「ノムコム」を運営うんえいする野村不動産のむらふどうさんソリューションズでは、四半期しはんきに一いち度ど「住宅じゅうたく地ち価格かかく調査ちょうさ」を実施じっししています。公的こうてき指標しひょうとしての「公示こうじ地価ちか」「基準きじゅん地価ちか」は、全国ぜんこくの調査ちょうさ地点ちてんを網羅もうらして平均へいきん的てき数値すうちを出だしていますから、大都市だいとし圏けんからみると、上昇じょうしょう率りつなどが実態じったいとかなり違ちがっているのではないかという印象いんしょうがあります。

　それに対たいして、ノムコムの「住宅じゅうたく地ち価格かかく調査ちょうさ」は、野村不動産のむらふどうさんソリューションズの仲介ちゅうかい店舗てんぽである「野村のむらの仲介ちゅうかい＋（PLUS）」の営業えいぎょうエリアにおいて、調査ちょうさ地点ちてんを選択せんたく、通常つうじょう取引とりひきを想定そうていして実勢じっせい価格かかくを査定さてい、その結果けっかを要約ようやくしています。不動産ふどうさん仲介ちゅうかい店舗てんぽのある、取引とりひきの盛さかんなエリアでの実態じったい調査ちょうさですから、より実情じつじょうに則そくしたデータということができるでしょう。これから住すまい選えらびをスタート、まずはエリア選えらびから始はじめようとする人ひとにとっては、たいへん参考さんこうになるデータではないでしょうか。

全般ぜんぱん的てきにジワジワと天井てんじょう感かんが強つよまっている

　その「住宅じゅうたく地ち価格かかく調査ちょうさ」は四半期しはんきに一いち度ど実施じっしされており、2023年ねん10月がつ1日にち時点じてんの調査ちょうさ結果けっかが公表こうひょうされました。首都しゅと圏けんの調査ちょうさ結果けっかの推移すいい表ひょうが図表ずひょう1です。首都しゅと圏けん全体ぜんたいでは、前年ぜんねん同期どうき比ひの上昇じょうしょう率りつが0.8％でした。首都しゅと圏けん全体ぜんたいの前年ぜんねん同期どうき比ひが上昇じょうしょうしたのは、2020年ねん第だい4四半期しはんきから13期き連続れんぞくになります。つまり、3年ねん以上いじょう首都しゅと圏けんの地価ちかが上あがり続つづけていることになります。特とくに、東京とうきょう都下とか・埼玉さいたま県けん・千葉ちば県けんの東京とうきょう都心としんに近ちかい地点ちてんでの価格かかく上昇じょうしょうが目立めだっているようです。

　首都しゅと圏けんのエリア別べつにみると、東京とうきょう都区とく部ぶの上昇じょうしょう率りつは0.7％でした。首都しゅと圏けん全体ぜんたいと同様どうように、13期き連続れんぞくでの上昇じょうしょうになりますが、野村不動産のむらふどうさんソリューションズでは「ただし、調査ちょうさ地点ちてんの動向どうこうをみると、値上ねあがり地点ちてんの減少げんしょうと値下ねさがり地点ちてんの増加ぞうかにより、天井てんじょう感かんが増ましています」としています。

足立あだち区く・葛飾かつしか区くの調査ちょうさ地点ちてんでは下落げらく傾向けいこう

　つまり、平均へいきんすると値上ねあがりしているとはいえ、これまでのように一律いちりつに、一本いっぽん調子ちょうしに地価ちかが値上ねあがりするのではなく、エリアによって値上ねあがり、値下ねさがりのバラツキが見みられるようになっているということです。場所ばしょ選えらびは十分じゅうぶんに注意ちゅういして行おこなう必要ひつようが出でてきます。

　東京とうきょう23区くのなかでも都心としん5区くは、富裕ふゆう層そうなどの強つよいニーズを背景はいけいに、渋谷しぶや区く・港みなと区く・新宿しんじゅく区くの調査ちょうさ地点ちてんで価格かかくが高騰こうとうし、東京とうきょう23区く、ひいては首都しゅと圏けん全般ぜんぱんの上昇じょうしょうを牽引けんいんしています。その周辺しゅうへんの文京ぶんきょう区く・目黒めぐろ区く、住環境じゅうかんきょうが良好りょうこうなエリアが多おおい世田谷せたがや区くなどの地点ちてんについても引ひき続つづき地価ちか上昇じょうしょうが続つづいています。それらのエリアに比くらべて比較的ひかくてき地価ちか水準すいじゅんが低ひくく、値頃ねごろ感かんのある大田おおた区く・板橋いたばし区く・江東こうとう区くの地点ちてんでも上昇じょうしょうが目立めだっています。ただ、その一方いっぽうで、足立あだち区く・葛飾かつしか区くの調査ちょうさ地点ちてんでは下落げらくがみられるようになってきました。価格かかく上昇じょうしょうに対応たいおうできない購入こうにゅう検討けんとう者しゃが増加ぞうかしており、東京とうきょう都区とく部ぶの上昇じょうしょう率りつ低下ていかをもたらしているとしています。

経堂きょうどうの年間ねんかん上昇じょうしょう率りつは17.9％、碑文谷ひもんやは17.4％

　調査ちょうさ地点ちてん別べつの地価ちかの年間ねんかん上昇じょうしょう率りつをみると、図表ずひょう2にあるように、世田谷せたがや区く経堂きょうどう3丁目ちょうめが17.9％のアップで、次ついで目黒めぐろ区く碑文谷ひもんや4丁目ちょうめが17.4％の上昇じょうしょうとなっています。この2地点ちてんのみ17％台だいで、3位い以下いかは14％台だい以下いかとなっていて、かなり差さがついています。

　上昇じょうしょう率りつトップの経堂きょうどう3丁目ちょうめは、小田急おだきゅう小田原おだわら線せんの経堂きょうどう駅えきの北側きたがわにあって、駅前えきまえの喧騒けんそうから少すこし離はなれた閑静かんせいな住宅じゅうたく地ちです。経堂きょうどう駅えきは小田急おだきゅうの快速かいそく急行きゅうこうは停とままりませんが、急行きゅうこう、準急じゅんきゅう、各駅かくえき停車ていしゃを利用りようでき、新宿しんじゅく駅えきまでは急行きゅうこうで約やく12分ふん。下北沢しもきたざわ駅えきで京王けいおう井いの頭線かしらせんに乗のり換かえれば渋谷しぶや駅えきも10分ふんほどですし、代々木上原よよぎうえはら駅えきで東京とうきょうメトロ千代田ちよだ線せんに乗のり換かえることで、表参道おもてさんどう駅えきや霞かすみが関せき駅えき、大手町おおてまち駅えきなどの都心としんのビジネス街がいにも簡単かんたんにアクセスが可能かのうです。駅えき周辺しゅうへんには複数ふくすうの商店しょうてん街がいが形成けいせいされ、若者わかものを中心ちゅうしんに活気かっきのある街並まちなみが形成けいせいされていましたが、狭せまい道みちや一方いっぽう通行つうこう区間くかんが多おおく、クルマが通とおり抜ぬける際さいの難所なんしょとなっていて、タクシー運転うんてん手しゅの世界せかいでは、「経堂きょうどう迷路めいろ」と呼よばれていました。それが、駅前えきまえに2011年ねんに小田急おだきゅうが開発かいはつした「経堂きょうどうコルティ」が竣工しゅんこうして、飛躍ひやく的てきに利便りべん性せいが向上こうじょうし、街並まちなみもスッキリしました。

世田谷せたがや区くのなかでも人口じんこう増加ぞうか著いちじるしい経堂きょうどう

　近ちかくに東京農業大学とうきょうのうぎょうだいがくのキャンパスがあり、農大のうだい通どおりには、学生がくせい向むけの安やすくてボリュームのあるお店みせも多おおく、チェーン店てんではないおしゃれなコーヒースタンド、素材そざいにこだわったクレープ屋やさん、たい焼やき屋やさんなどもあって、グルメを楽たのしむことができます。また、駅えきから少すこし離はなれると緑みどりが多おおく、若わかい人ひとたちだけでなく、子育こそだて中ちゅうのファミリー層そうからも人気にんきを集あつめています。農大のうだい通どおりを南みなみに進すすむと烏がらす山川やまかわ緑みどり道どうが7km続つづき、四季しき折々おりおりの自然しぜんを楽たのしむことができます。近ちかくには世田谷せたがや城址じょうし公園こうえん、松陰神社しょういんじんしゃ、太子堂たいしどう円泉寺えんせんじなど、由緒ゆいしょある神社じんじゃ仏閣ぶっかくも多おおく、文化ぶんかの香かおりもあるエリアということができます。

　経堂きょうどうのある世田谷せたがや区くは人口じんこう増加ぞうかが続つづいていて、2035年ねんまで増加ぞうかが続つづき、早晩そうばん100万まん人にんを超こえるという推計すいけいもあります。政令せいれい指定してい都市とし並なみの規模きぼです。これまでは比較的ひかくてき人口じんこう密度みつどの低ひくかった区くの西側にしがわ（郊外こうがい寄より）の増加ぞうかが目立めだっていましたが、近年きんねんは東側ひがしがわ（都心としん寄より）の地域ちいきで増加ぞうかが目立めだっています。区くの資料しりょうによると、経堂きょうどうは世田谷せたがや区くのなかでも人口じんこう増加ぞうかが著いちじるしい地域ちいきの2番目ばんめに挙あがっています。街並まちなみの整備せいび、それにともなう人口じんこうの増加ぞうかによって注目ちゅうもく度どが高たかまり、それが地価ちかを押おし上あげているのではないでしょうか。

高額こうがくマンションや戸建こだて住宅じゅうたくの開発かいはつも

　そんな注目ちゅうもく度どの高たかさもあって、経堂きょうどう駅えき周辺しゅうへんでは、高額こうがくマンションや高額こうがく戸建こだて住宅じゅうたくの開発かいはつが盛さかんになっています。大だい規模きぼマンションを建設けんせつするだけの広ひろい敷地しきちの確保かくほは難むずかしいため、マンションは小規模しょうきぼ、中規模ちゅうきぼ物件ぶっけんが中心ちゅうしんで、さらに小ちいさな敷地しきちでは5戸こから10戸こ程度ていどの建売たてうり住宅じゅうたくの開発かいはつが行おこなわれています。

　マンションでは、上層じょうそう階かいのプレミアム住戸じゅうこでは億おくションに近ちかい価格かかく帯たいになり、戸建こだて住宅じゅうたくでは、敷地しきち面積めんせきの広ひろめの物件ぶっけんだとやはり1億おく円えん近ちかい高額こうがく物件ぶっけんになります。それでも、「世田谷せたがやに住すみたい」「経堂きょうどうに住すみたい」という人ひとが少すくなくなく、売うり出だせばすぐにお客きゃくがついて完売かんばいしている物件ぶっけんが多おおいようです。そうした人気にんきが続つづいているため、地価ちかの上昇じょうしょう率りつも高たかくなるわけで、当面とうめん、経堂きょうどうエリアの地価ちか上昇じょうしょうが続つづくことになるのではないでしょうか。

足立あだち区くや葛飾かつしか区くでは地価ちかが下落げらくしているエリアも

　地価ちかが著いちじるしく上あがっているエリアがある一方いっぽう、下さがっているエリアもあるので注意ちゅういが必要ひつようです。先さきの図表ずひょう2にあるように、葛飾かつしか区くお花茶屋はなちゃや1丁目ちょうめと、足立あだち区く千住旭せんじゅあさひ町まちは前年ぜんねん比ひ3.2％の下落げらくとなっています。千住旭せんじゅあさひ町まちは、JR常磐ときわ線せん・東武とうぶ伊勢崎線いせさきせんなどの北きた千住せんじゅ駅えきの東側ひがしがわに広ひろがっていますが、東京電機大学とうきょうでんきだいがくのキャンパス開設かいせつなどでかつての下町したまちエリアのイメージから、若者わかものも注目ちゅうもくするエリアに変貌へんぼう、住宅じゅうたく地ちとしての人気にんきが高たかまり、地価ちかも大おおきく上あがりました。しかし、実力じつりょく以上いじょうに上あがり過すぎため、その反動はんどうがきているのかもしれません。

　一時いちじ的てきな反動はんどうに過すぎないのか、当分とうぶん下落げらくが続つづくのか、今後こんごの動向どうこうについては慎重しんちょうな判断はんだんが必要ひつようでしょう。このように、地価ちかの上昇じょうしょうが続つづいているといっても、上あがり方かたは一律いちりつではありませんし、エリアによっては下さがっているところもあります。場所ばしょ選えらびから始はじめる人ひとは、エリアの地価ちか動向どうこうをきめ細こまかくチェックする必要ひつようがありそうです。

（文ぶん＝山下やました和之かずゆき／住宅じゅうたくジャーナリスト）