脱毛だつもう・肌荒はだあれ・イライラは○○不足ふそくが原因げんいん？改善かいぜんする食材しょくざいリスト

「ビジネスジャーナル」の読者どくしゃのうち、女性じょせいの割合わりあいはどのくらいなのでしょうか？　本ほん連載れんさい前回ぜんかい記事きじで髪かみの毛けについてお伝つたえした際さい、男性だんせいは亜鉛あえん、女性じょせいは鉄てつの欠乏けつぼうが原因げんいんになっていることが多おおいと説明せつめいしました。そこで、今回こんかいは鉄てつ欠乏けつぼうについてお伝つたえします。

　鉄てつが欠乏けつぼうすると、髪かみの毛けが抜ぬけやすくなります。朝あさ起おきると枕まくらに髪かみの毛けがたくさんついていたり、洗髪せんぱつ時じに髪かみの毛けが抜ぬけやすかったりする場合ばあい、まずは鉄てつの欠乏けつぼうを疑うたがいましょう。

「貧血ひんけつではないので、鉄てつは足たりています」と言いう方ほうがいます。しかし、貧血ひんけつ症状しょうじょうのない鉄てつ欠乏けつぼうもあり、それを「潜在せんざい性せい鉄てつ欠乏症けつぼうしょう」と呼よびます。閉経へいけい前まえの成人せいじん女性じょせいの8割わり以上いじょうが、この潜在せんざい性せい鉄てつ欠乏症けつぼうしょうであるというデータもあります。

　潜在せんざい性せい鉄てつ欠乏症けつぼうしょうでは、頭痛ずつうや肩かたこり、不眠ふみんやイライラなどの症状しょうじょうが起おきます。あなたや、あなたの身近みぢかな人ひとも鉄てつ欠乏けつぼうかもしれません。知しっているようで知しらない「鉄てつ」について、解説かいせつします。

「貧血ひんけつ」は鉄てつの“貯金ちょきん”がゼロの状態じょうたい

　潜在せんざい性せい鉄てつ欠乏症けつぼうしょうとは、どういう状態じょうたいなのでしょうか。鉄てつは貴重きちょうなミネラルなので、人間にんげんは体内たいないにリサイクルシステムを持もっています。余あまった鉄てつは体内たいないの“貯蔵庫ちょぞうこ”に保管ほかんされます。吸収きゅうしゅうされた鉄てつも、いったん小腸しょうちょう細胞さいぼう内ないの貯蔵庫ちょぞうこに保管ほかんされます。そして、必要ひつように応おうじて搬出はんしゅつされます。

　酸素さんそを運はこぶのは、赤血球せっけっきゅう中ちゅうのヘモグロビンたんぱく質しつです。ヘモグロビンには鉄てつを配はいしたヘム構造こうぞうがあり、そこに酸素さんそを結むすびつけて運はこびます。酸素さんその供給きょうきゅうは人体じんたいにとって生命せいめい線せんなので、酸素さんそを運はこぶ赤血球せっけっきゅうの合成ごうせいは最さい重要じゅうよう課題かだいです。

　したがって、鉄てつの貯蔵ちょぞうがある限かぎり赤血球せっけっきゅうの合成ごうせいは続つづきます。鉄てつの需要じゅように供給きょうきゅうが追おいつかないと、貯蔵ちょぞうされた鉄てつを食くいつぶしていきます。赤字あかじで貯金ちょきんが減へっていく状態じょうたいと同おなじです。

　そして、鉄てつの貯金ちょきんがゼロになると鉄てつ欠乏けつぼう性せい貧血ひんけつになります。健診けんしんで「貧血ひんけつ」と言いわれたときには、貯蔵庫ちょぞうこは空からっぽの状態じょうたいです。重じゅう篤あつしな鉄てつ欠乏けつぼうといえます。貧血ひんけつになる前まえの鉄てつの貯金ちょきんが減へっている状態じょうたいのことを、潜在せんざい性せい鉄てつ欠乏症けつぼうしょうといいます。

鉄てつ不足ふそくで頭痛ずつうや肩かたこり、イライラも

　鉄てつは赤血球せっけっきゅうの材料ざいりょうとなる以外いがいにもたくさんの働はたらきを持もっているため、貯蔵ちょぞうされた鉄てつが減へると、以下いかのようなさまざまな症状しょうじょうが出現しゅつげんします。

【冷ひえ性しょう、体温たいおん低下ていか】

　鉄てつ欠乏けつぼうにより、冷ひえ性しょうになります。原因げんいんのひとつは、筋肉きんにくの減少げんしょう。筋肉きんにくが酸素さんそを受うけ取とるためには鉄てつを含ふくんだたんぱく質しつが必要ひつようです。そのため、鉄てつ欠乏けつぼうのアスリートは、いくらトレーニングをしても良よい筋肉きんにくを増ふやすことができません。

　エネルギーを産さん生せいする酵素こうそにも、鉄てつが必要ひつようです。鉄てつが不足ふそくすると、冷ひえ性しょうや低てい体温たいおんになり、太ふとりやすくもなります。

　甲状腺こうじょうせんホルモンにも、鉄てつがかかわっています。甲状腺こうじょうせん組織そしきでつくられる「T4」（ヨードが4つついたホルモン）は、末梢まっしょう組織そしきで働はたらくためにヨードをひとつ減へらして「T3」に変換へんかんされます。この変換へんかん酵素こうそに鉄てつがかかわっています。

　甲状腺こうじょうせんホルモンのうち「T3」だけが低ひくい方ほうは、鉄てつ欠乏けつぼうの可能かのう性せいがあります。「T3」が不足ふそくすると、冷ひえ性しょうやむくみ、エネルギー不足ふそくになります。

【脱毛だつもう、肌荒はだあれ、あざ】

　美容びように欠かかせないコラーゲンは、3本ほんのコラーゲン繊維せんいが寄より集あつまって架橋かきょうされて強固きょうこで正常せいじょうなコラーゲンになります。この架橋かきょうに必要ひつようなのが鉄てつです。

　鉄てつが不足ふそくすると、コラーゲンが正常せいじょうに形成けいせいされず肌はだや爪つめ、髪かみの毛けが弱よわくなってしまいます。血管けっかんの壁かべにもコラーゲンが必要ひつようなので「ぶつけてもいないのにあざができた」という方ほうは、真まっ先さきに鉄てつ欠乏けつぼうを疑うたがいましょう。

　皮脂ひし腺せんの多おおい鼻はなや頬ほおではなく口くちのまわりににきびができやすい方ほうも、鉄てつ欠乏けつぼうの可能かのう性せいがあります。また、皮膚ひふだけでなく粘膜ねんまくも弱よわくなります。たとえば、下痢げりや便秘べんぴ、口角こうかく炎えんや口唇こうしん炎えん、のどの違和感いわかんなどの症状しょうじょうが出現しゅつげんします。大おおきな錠剤じょうざいやカプセルが飲のみ込こみにくいという人ひとも、鉄てつ欠乏けつぼうの可能かのう性せいが高たかいです。

　ちなみに、コラーゲンを飲のんでも皮膚ひふのコラーゲンは増ふえません。皮膚ひふでコラーゲンをつくれるように、たんぱく質しつと鉄てつ、ビタミンCをしっかりと摂とることが重要じゅうようです。

【頭痛ずつうや肩かたこり、足あしの裏うらの痛いたみ】

　慢性まんせい的てきな痛いたみを「体質たいしつだ」とあきらめていませんか？　頭痛ずつうや肩かたこりの多おおくが、鉄てつの摂取せっしゅによって改善かいぜんしています。鉄てつが欠乏けつぼうすると足あし底そこ筋すじ膜まく炎えんになり、足あしの裏うらが痛いたむ場合ばあいもあります。調しらべても原因げんいんがわからない痛いたみがある場合ばあい、一いち度どは鉄てつ欠乏けつぼうを疑うたがってみましょう。

【不眠ふみんやイライラ、その他たの精神せいしん症状しょうじょう】

　見逃みのがされやすいのが、精神せいしん症状しょうじょうです。鉄てつ欠乏けつぼうによって不眠ふみんや不安ふあん、イライラや気分きぶんの落おち込こみが起おきる場合ばあいがあります。鉄てつは、遺伝子いでんしや神経しんけい伝達でんたつ物質ぶっしつの合成ごうせい・分解ぶんかいに関与かんよしているからです。

　鉄てつが欠乏けつぼうすると、ドーパミン受容じゅよう体たいが減少げんしょうしたりセロトニンの再さい取とり込こみが低下ていかしたりします。鎮静ちんせいや抗こう不安ふあんに関与かんよする「GABA」（ガンマ・アミノ酪酸）の調節ちょうせつにも関与かんよしています。精神せいしん科かや心療内科しんりょうないかに行いく前まえに、貯蔵ちょぞう鉄てつ欠乏けつぼうのチェックをしましょう。一般いっぱんの内科ないかでは「貧血ひんけつ症状しょうじょうがない」と帰きされてしまう場合ばあいもあるので、きちんと貯蔵ちょぞう鉄てつをチェックしてもらえる病院びょういんを探さがしましょう。

　鉄てつ欠乏けつぼうでは月経げっけいが不安定ふあんていになることもあり、「まだ若わかいのに更年期こうねんき？」と思おもった場合ばあいも鉄てつ欠乏けつぼうの可能かのう性せいがあります。

鉄てつ不足ふそく解消かいしょうに有効ゆうこうな食事しょくじは？

　潜在せんざい性せい鉄てつ欠乏症けつぼうしょうは圧倒的あっとうてきに女性じょせいに多おおく、その理由りゆうは月経げっけい出血しゅっけつです。出血しゅっけつ量りょうが多おおい方ほうは、ときにはサプリメントを利用りようしながら鉄てつの摂取せっしゅを増ふやす必要ひつようがあります。

　鉄てつ欠乏けつぼうの女性じょせいから生うまれたお子こさんや未熟みじゅく児じで生うまれたお子こさんも、鉄てつ欠乏けつぼうになることがあります。成長せいちょう期きや激はげしい運動うんどうも鉄てつの需要じゅようを増ふやすので、男女だんじょ問とわず鉄てつ欠乏けつぼうになることがあります。

　少数しょうすうですが、男性だんせいにも鉄てつ欠乏症けつぼうしょうが見みられ、その場合ばあいには慢性まんせい的てきな消化しょうか管かん出血しゅっけつがないかどうかをチェックする必要ひつようがあります。胃いにピロリ菌きんが感染かんせんしている場合ばあいには鉄てつの吸収きゅうしゅうが低下ていかします。ピロリ菌きんの感染かんせんは胃いがんのリスクにもなるため、ピロリ菌きんの有無うむを積極せっきょく的てきに調しらべて除菌じょきんすることが大切たいせつです。

　鉄てつ欠乏けつぼうを改善かいぜんする食材しょくざいとしては、赤身あかみの肉にくや血合ちあいを含ふくんだ魚さかな、レバーなどのヘム鉄てつを多おおく含ふくむものが理想りそう的てきです。ほうれん草そうやプルーンなどに含ふくまれる鉄てつは非ひヘム鉄てつなので、たくさん食たべても吸収きゅうしゅうされる鉄てつはごくわずかです。

　薬くすりの鉄剤てつざいも非ひヘム鉄てつなので吸収きゅうしゅう率りつが5～10％程度ていどと低ひくく、胃腸いちょう障害しょうがいが起おきやすいのが難点なんてんです。サプリメントであれば、ヘム鉄てつの含有がんゆう量りょうが多おおいものがいいでしょう。外食がいしょくの際さいには、焼やき肉にく店てんや焼やき鳥とり店てんなどで赤身あかみの肉にくやレバーをがっつり食たべるのもおすすめです。
（文ぶん＝西澤にしざわ真生まさお／ひめのともみクリニック　医師いし）