かまいたち山内さんないで注目ちゅうもく、GLP－1ダイエットに医師いし会かいも警鐘けいしょう…重大じゅうだいな副作用ふくさようのリスクも

　お笑わらいコンビ「かまいたち」のYouTubeチャンネルのなかで、山内やまうち健司けんじが「GLP－1ダイエット」を行おこない、3カ月かげつで8キロもの減量げんりょうに成功せいこうしたことを公表こうひょうし、大おおきな話題わだいになっている。内容ないようは、あくまでも山内やまうちが体験たいけんしたことをもとに、GLP－1について感想かんそうを述のべるというものだったが、批判ひはんの声こえが多おおく、医師いしなどからも危険きけん性せいを指摘してきする声こえがあがり、動画どうがを削除さくじょするに至いたった。

　GLP－1とは本来ほんらい、糖尿とうにょう病びょうの治療ちりょう薬やくであるが、ここ数すう年ねん、美容びようクリニックを中心ちゅうしんにダイエットを目的もくてきとして、自由じゆう診療しんりょうで提供ていきょうする医療いりょう機関きかんが増ふえている。なかには、オンライン診療しんりょうで処方しょほうし、薬くすりが自宅じたくに配送はいそうしているクリニックもある。

　一般いっぱん的てきに糖尿とうにょう病びょうの治療ちりょうを行おこなう場合ばあい、薬くすりの使用しように伴ともない、低てい血糖けっとうなどの副作用ふくさようが起おきる危険きけん性せいもあり、医師いしによる管理かんりの下したで治療ちりょうすることが必須ひっすである。医療いりょう法人ほうじん社団しゃだん五ご良りょう会かい理事りじ長ちょうで竹内たけうち内科ないか小児科しょうにか医院いいん院長いんちょうの五ご藤ふじ良りょう将はた医師いしは、GLP－1ダイエットを提供ていきょうするクリニックで診察しんさつに当あたる医師いしのほとんどは糖尿とうにょう病びょうの専せん門外もんがいで、適切てきせつな指導しどうや管理かんりが行おこなわれていないケースもあると警鐘けいしょうを鳴ならす。 

　GLP－1は人ひとの体からだの中なかにあるホルモンで、血糖けっとう値ちが高たかい時ときにインスリンの分泌ぶんぴつを促進そくしんする働はたらきがある。GLP－1が多おおく分泌ぶんぴつされると、胃いの運動うんどうを抑おさえることで食欲しょくよくが抑おさえられ、少量しょうりょうの食事しょくじでも満腹まんぷく感かんを感かんじることができ、痩やせやすいといわれる。反対はんたいにGLP－1の分泌ぶんぴつが少すくないと満腹まんぷく感かんを感かんじにくく、たくさん食たべる傾向けいこうになり、太ふとりやすくなるといえる。 

「GLP－1ダイエットには、注射ちゅうしゃと内服薬ないふくやくがあります。注射ちゅうしゃの場合ばあいは、患者かんじゃさんご自身じしんで行おこなう自己じこ注射ちゅうしゃです。毎日まいにち注射ちゅうしゃを行おこなうタイプと、週しゅうに1回かいの注射ちゅうしゃがあります。内服ないふくの場合ばあいは、少すくない量りょうから始はじめ、糖尿とうにょう病びょうの指標しひょうとなる（空腹くうふく時じ）血糖けっとうやHbA1cの値ねを見みながら増ふやしていきます。もちろん、注射ちゅうしゃの場合ばあいも同様どうようで、定期ていき的てきな血液けつえき検査けんさは重要じゅうようです」

　五ご藤ふじ医師いしが言いうように、糖尿とうにょう病びょう治療ちりょうには定期ていき的てきな血液けつえき検査けんさ等とうが必要ひつようであり、薬くすりに関かんしても患者かんじゃへの十分じゅうぶんな指導しどうが必要ひつようである。

「GLP－1単独たんどくの使用しようであれば、糖尿とうにょう病びょう薬やくのなかでも低てい血糖けっとうを起おこすリスクの低ひくい薬くすりであるものの、説明せつめいや理解りかいが不十分ふじゅうぶんで不適切ふてきせつな使用しよう方法ほうほうだと低てい血糖けっとうなどの重大じゅうだいな副作用ふくさようを招まねきかねません。GLP－1には胆嚢たんのう収縮しゅうしゅく抑制よくせい作用さようがあることから胆石たんせきができやすくなり、胆嚢たんのう炎えんなどが引ひき起おこされる可能かのう性せいがあり、すでに胆嚢たんのう炎えんなどの急性きゅうせい胆道たんどう系けい疾患しっかんのリスク上昇じょうしょうを複数ふくすう文献ぶんけん報告ほうこくされていることも無視むしできません」

　GLP－1ダイエットを謳うたっている医療いりょう機関きかんが、そういったリスクを十分じゅうぶんに把握はあくして処方しょほうされているか、疑うたがわしいところだ。

医師いし会かいも警告けいこく 

　令れい和わ２年ねんには、すでに日本にっぽん医師いし会かいの定例ていれい会見かいけんにおいて、今村いまむら聡さとし日本にっぽん医師いし会かい副ふく会長かいちょうがGLP－1ダイエットの危険きけん性せいについて触ふれ、「健康けんこうな方ほうが医薬品いやくひんを使用しようすることのリスク及および医薬品いやくひん適正てきせい使用しようの観点かんてんからも、このような行為こういを禁止きんしすべきである」と強調きょうちょうし、さらに「国民こくみんの健康けんこうを守まもるべき医師いしが、治療ちりょうの目的もくてきを外はずれた使つかい方かたをすることは”医いの倫理りんり”にも反はんする」と述のべている。 

「GLP－1に痩やせる効果こうかがあることは確たしかです。しかし、痩やせるために処方しょほうする場合ばあいは、食事しょくじ・運動うんどう療法りょうほうを行おこなっても効果こうかが不十分ふじゅうぶんな、高度こうどの肥満ひまん症しょうの方ほうの治療ちりょう目的もくてきというのが適正てきせい使用しようです。

　2型がた糖尿とうにょう病びょうで肥満ひまんの患者かんじゃさんにGLP－1を処方しょほうしてきた経験けいけんとして、最初さいしょの頃ころは確たしかに体重たいじゅう減量げんりょうの効果こうかは認みとめますが、食事しょくじ・運動うんどう療法りょうほうがしっかりと継続けいぞくできていないと徐々じょじょに食欲しょくよく抑制よくせい効果こうかがなくなり、リバウンドしてしまう方ほうも多おおいのが事実じじつです」

　美容びようクリニックなどでGLP－1ダイエットを行おこなう患者かんじゃのなかには、明あきらかに標準ひょうじゅんまたは標準ひょうじゅん以下いかの体重たいじゅうにもかからず使用しようしているケースもあり、リスクが伴ともなうことは否定ひていできない。

利益りえき優先ゆうせんのクリニックに注意ちゅうい 

　時代じだいが変かわれど、ダイエットにまつわる商品しょうひんは注目ちゅうもくされる傾向けいこうにあり、痩やせたいという願望がんぼうが利用りようされていることに気付きづいてほしい。 糖尿とうにょう病びょう治療ちりょう薬やくとしてのGLP－1は、注射ちゅうしゃであれば薬価やっかは1本ほん1万まん円えん程度ていどである。しかし、GLP－1ダイエットを自由じゆう診療しんりょうで行おこなうクリニックでは、その3～4倍ばいの価格かかくで提供ていきょうされている。高額こうがくな診療しんりょう費ひを支払しはらい、健康けんこう被害ひがいを起おこす危険きけんに晒さらされていることを認識にんしきしてほしい。 

「最近さいきんのオンライン診療しんりょうの普及ふきゅうによって気軽きがるにGLP－1を処方しょほうされやすくもなっており、日本にっぽん医師いし会かいからも、さらに注意ちゅうい喚起かんきがされています。また、適正てきせい使用しようから外はずれた処方しょほう医師いしに対たいしては、日本にっぽん糖尿とうにょう病びょう学会がっかいからも国民こくみんの信頼しんらいを毀損きそんするものとして警告けいこくまでしています。医師いしとして患者かんじゃの健康けんこうを守まもることが優先ゆうせんすべきだと思おもいます」

　患者かんじゃ側がわも医療いりょうや薬くすりに関かんするリテラシーを持もつことが必要ひつようだろう。
（文ぶん＝吉澤よしざわ恵理えり／薬剤師やくざいし、医療いりょうジャーナリスト）