行動こうどう経済けいざい学がくから見みる、多おおくの人ひとが「お金かねの賢かしこい使つかい方かた」をマスターしない2つの理由りゆう

※画像がぞう:『お金かねはサルを進化しんかさせたか』（野口のぐち真人まさと／著ちょ、日経にっけいBP社しゃ／刊かん）

　「バブル景気けいき」というと、日本にっぽんでは1980年ねんから1990年ねんにかけての「平成へいせい景気けいき」や2000年ねん前後ぜんこうの「IT景気けいき（ITバブル）」が知しられている。また、2006年ねんにはアメリカでサブプライムローンによる住宅じゅうたくバブルが弾ひけ、リーマンショックにつながり、世界せかい金融きんゆう危機ききへと発展はってんしていったのは記憶きおくに新あたらしい。

　ところで、世界せかいで初はじめてのバブル経済けいざい崩壊ほうかいは1673年ねん、オランダのチューリップバブルだといわれている。オスマン帝国ていこく（現在げんざいのトルコ）から輸入ゆにゅうされたチューリップの球根きゅうこんの価格かかくが、オランダ国内こくないでわずか数すう年ねんのうちに高騰こうとう。球根きゅうこんを買かい、それを転売てんばいすることで莫大ばくだいな利益りえきを得える人ひとたちが数多かずおおく現あらわれたのだ。しかし、1673年ねん2月がつ、突然とつぜん暴落ぼうらくし、オランダ経済けいざいに大だい混乱こんらんを招まねいた。

　バブルはすべからく破綻はたんする。では、なぜそれを知しりながらも、「自分じぶんたちは大丈夫だいじょうぶ」だと思おもい込こみ、同おなじ轍わだちを踏ふみ続つづけてしまうのだろうか。

　バブルだけでない。あからさまに怪あやしい投資とうし話はなしに乗のって大おおきな損失そんしつを被こうむる人ひともいる。お金かねをコントロールできている人ひとはほとんどいない。

　どうして、私わたしたちはお金かねに翻弄ほんろうされ続つづけるのか。その問といに挑いどむのが『お金かねはサルを進化しんかさせたか』（野口のぐち真人まさと／著ちょ、日経にっけいBP社しゃ／刊かん）だ。

　私わたしたちが日常にちじょう生活せいかつを送おくる上じょうで、お金かねは必要ひつよう不可欠ふかけつなものだ。あればあるだけ困こまらないし、自分じぶんの仕事しごとの価値かちがお金かねになって返かえってくる。この世よの中なかの、基本きほん的てきな尺度しゃくどといっても構かまわないだろう。

　しかし、お金かねが我々われわれの歴史れきしに登場とうじょうしたのは比較的ひかくてき最近さいきんの話はなしだ。現存げんそんする最古さいこの鋳造ちゅうぞう貨幣かへいは紀元前きげんぜん7世紀せいきにリディア王国おうこく（現在げんざいのトルコ）で作つくられたエレクトロン貨といわれている。物々交換ぶつぶつこうかんからはじまり、貝類かいるいや穀物こくもつが代替だいたいとして使つかわれるようになり、さらに鉄てつや銅どう、銀ぎん、金かねなどの金属きんぞくが今いまのお金かねのような使つかわれ方かたをしだし、やがて金属きんぞくを鋳造ちゅうぞうした貨幣かへいが現あらわれるようになった。

　実じつは、お金かね（貨幣かへい）というものは、生うまれてからわずか3000年ねんしか経過けいかしていない。人類じんるいの歴史れきしから見みれば比較的ひかくてき最近さいきんのことだ。そして、今いまやお金かねは価値かちの尺度しゃくどとなった。これは、よく考かんがえれば驚異きょうい的てきなことではないだろうか。

　お金かねは不ふ確実かくじつなものへの不安ふあんを解消かいしょうしてくれる手段しゅだんだ。将来しょうらい、病気びょうきになるかもしれない、怪我けがをするかもしれない、職しょくを失うしなうかもしれない。そうしたものが、お金かねへの服従ふくじゅうを促うながしてしまうのだろう。

　野口のぐち氏しは、人々ひとびとが「お金かねの賢かしこい使つかい方かた」に習熟しゅうじゅくしないのは、二ふたつの要因よういんがあるという。