本郷ほんごう矢吹やぶき「小説しょうせつ・日本にっぽんの長ながい一いち日にち」　元もと首相しゅしょう銃撃じゅうげきから生うまれた作品さくひん

　『小説しょうせつ・日本にっぽんの長ながい一いち日にち』は、関東かんとうの県警けんけいや警察庁けいさつちょうで約やく３０年ねん公安こうあん・警備けいびに携たずさわった本郷ほんごう矢吹やぶきさんのデビュー作さく。本郷ほんごうさんは「昨年さくねんの安倍晋三あべしんぞう元もと首相しゅしょうの銃撃じゅうげき事件じけんをきっかけに執筆しっぴつした」と話はなす。

　小説しょうせつ内ないでは、元もと首相しゅしょうの小杉こすぎが自衛じえい官かんだった男おとこに群馬ぐんま県けんで銃撃じゅうげきされ死亡しぼう。警察庁けいさつちょう外事がいじ課長かちょうと防衛ぼうえい省しょう情報じょうほう課長かちょうという２人ふたりの官僚かんりょうを軸じくに、新聞しんぶん記者きしゃや小杉こすぎの息子むすこらが事件じけんを経へて、自みずからの信念しんねんに基もとづく「ある計画けいかく」へと突つき進すすむ群像ぐんぞう劇げきだ。事件じけんの背後はいごにある国際こくさい的てき謀略ぼうりゃくや、霞かすみが関せき・永田町ながたちょうを巡めぐるインテリジェンスなどが描えがかれる。

　本郷ほんごうさんによると、知人ちじんだった編集へんしゅう者しゃとの会食かいしょくで安倍あべ元もと首相しゅしょうの銃撃じゅうげき事件じけんの分析ぶんせきをすると、小説しょうせつ化かを勧すすめられたという。警察官けいさつかん時代じだいに趣味しゅみで物ものを書かいていたこともあり、半年はんとしあまりで完成かんせいさせ新人しんじん賞しょうを経へないスピード出版しゅっぱんとなった。

　文章ぶんしょうが生硬せいこうだったり心情しんじょう描写びょうしゃが少すくなかったり食くい足たりない部分ぶぶんもあるが、情報じょうほうを水溶すいよう紙しに書かいて交換こうかんしたり会合かいごうで使つかう店みせは事前じぜんに予約よやくしなかったりといった描写びょうしゃは、リアリティがある。「すべてがフィクションというわけではない」。虚実きょじつの境さかいがどこにあるのかくらくらするが、それこそが「自分じぶんでものを考かんがえる日本人にっぽんじんが増ふえて欲ほしい」という本郷ほんごうさんの問題もんだい意識いしきだ。（木村きむら尚貴なおき）＝朝日新聞あさひしんぶん2023年ねん5月がつ20日はつか掲載けいさい