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多崎礼さんの読んできた本たち 「ファンタジーが得意でなかった」投稿生活から専業作家へ|好書好日
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さきらいさんのんできたほんたち 「ファンタジーが得意とくいでなかった」投稿とうこう生活せいかつから専業せんぎょう作家さっか

>「作家さっか読書どくしょどう」のバックナンバーは「WEBほん雑誌ざっし」で

夢中むちゅうになった冒険ぼうけん小説しょうせつ

――いちばんふる読書どくしょ記憶きおくからおしえてください。

さきかえってみると、就学しゅうがくしたかしないくらいのとき祖母そぼいえにあった大人おとなけの人体じんたい図鑑ずかんだったとおもうんですよね。べつ医者いしゃ関係かんけいいえではなかったのに、消化しょうかけいとか神経しんけい動脈どうみゃく静脈じょうみゃく骨格こっかくなどの図版ずはんがたくさんっている図鑑ずかんがなぜかあったんですよ。わりとむずかしいかんじのほんだったんですけど、カラーの図版ずはんめずらしくおもったのかもしれません。
 祖母そぼってくれた松谷まつやみよさんの『いないいないばあ』といった絵本えほんもあったんです。でも祖母そぼいえくと絵本えほんよりもその人体じんたい図鑑ずかんていました。ただ、骨格こっかく図版ずはんったページはこわくて、つぎのページにそれがくるんじゃないかとおもって2ページ一緒いっしょにめくったりしてました。

――血管けっかんこわくないのに、ほねこわかったという。

さきたぶん、テレビで放送ほうそうしている「ゲゲゲの鬼太郎おにたろう」にてくる"がしゃどくろ"とか、お屋敷やしきって骸骨がいこつおどっていたりのをてすごくこわかったので、そのイメージがあったんだとおもいます。すごくビビリだったんです。

――小学生しょうがくせい時代じだいはどんなかんじだったのでしょう。

さきわたしはちょっとぼんやりした子供こどもで、文字もじめても物語ものがたりむということができなかったんですね。くるま巡回じゅんかいする移動いどう図書館としょかんみたいなものがあってリクエストするとほんってきてくれたんですが、そこでも結構けっこう図鑑ずかんりていました。高山たかやま植物しょくぶつほんはなほん雑草ざっそうほんなどをりてはんでいました。
 ただ、あね子供こどもころからよくほんんでいて、「これは面白おもしろいから」とってわたしにもすすめてくれるんです。それでんだのが、『少年しょうねん探偵たんていブラウン』のシリーズでした。なぞがあって解答かいとうへんがあるようなみじかはなしがたくさんっているんです。それはわたしにもめました。

――なぞきをたのしんだのですか。

さきそれがですね。むのに一生懸命いっしょうけんめいなぞきはできなかったんですよ。なぞきよりも、ブラウンの友達ともだちべているアメリカンチェリーが美味おいしそうだなとか、そのチェリーがはいっているまるめた英字えいじ新聞しんぶん格好かっこういいなとか、そんなかんじで(笑)。そこでなぞきにいついていればミステリ作家さっかになれたかもしれません(笑)。

――おねえさんとはとしはなれているのですか。

さきいえ、ひとつじょうです。あねはすごくかしこくて、わたししゃべらなくてもあね全部ぜんぶってくれるので、それでわたし大人おとなしいになったのかもしれません。おなじようなものをべておなじようなものをせられておなじようなところにれていかれていましたから、おねえちゃんにまかせておけば安心あんしんで、しゃべ必要ひつようがなかったのかな、って。

――かえってみて、ほんきだった子供こどもだったとおもいますか。

さき全然ぜんぜんあねがものすごくほんきだったせいか、自分じぶん全然ぜんぜんほんまないだというイメージがあります。でも、たいがいあねすすめてくれるものは面白おもしろかったので、ちょっとむずかしいかなとおもいながらもんでいました。
 転機てんきになったのは、小学校しょうがっこう年生ねんせいときにあった学級がっきゅう文庫ぶんこです。先生せんせいってきたほんをロッカーにいておいてくれて、やす時間じかん自由じゆうんでよかったんですが、そのなかにジュール・ヴェルヌの『じゅう少年しょうねん漂流ひょうりゅう』がありました。それをんだときに、なぐられたくらいの衝撃しょうげきけました。こんなに面白おもしろいものがあったんだ!って。学級がっきゅう文庫ぶんこほんはみんなのものなのに、わたしはそれをやす時間じかんんで授業じゅぎょうちゅうつくえなかれ、またやす時間じかんんで、わったら最初さいしょもどってかえして、専有せんゆうしていました。ほぼ1年間ねんかんわたしっていたんじゃないかな。なんかえしてんで、うさぎが美味おいしそうだなとかダチョウにってみたいなとか、アザラシのあぶらってくさいんだなとか、もう全部ぜんぶおぼえるくらいみました。それが読書どくしょ体験たいけん一番いちばん最初さいしょかくになったんじゃないかなとおもいます。冒険ぼうけんてきなワクワクするはなし自分じぶんがいる現実げんじつとはちが世界せかいはなしへのあこがれがそこでつちかわれたとおもいます。ジュール・ヴェルヌはほんみましたが、『じゅう少年しょうねん漂流ひょうりゅう』をえるものはなくて、これがいちばんきでした。物語ものがたりめるようになるまえから空想くうそうへきがあったので、だからはまったのかなともおもいます。

――あ、ぼんやりした子供こどもだったとおっしゃいましたが、はたからたらぼーっとしているようにえても、ご本人ほんにんあたまなかではわーっと空想くうそうひろがってるタイプでしたか。

さきそんなかんじです。はなっておくとなんあいだでもぼーっとしているだったらしいんですよ。それでよくははに「幼稚園ようちえんおくれるからはや靴下くつしたはきなさい」などとおこられていました。時間じかんという概念がいねんがなくて、何時いつまでに幼稚園ようちえんかないといけないとかかっていなかったから、「いそぎなさい」とわれても意味いみからなかったんですよね。幼稚園ようちえんでも先生せんせいに「はやくお弁当べんとうべなさい」などとよくわれていました。

――では、そと活発かっぱつあそんだりとかは。

さきわりとそとでもあそんでいました。思案じあん人見知ひとみしりな子供こどもでしたが、集合しゅうごう住宅じゅうたくまいだったので周囲しゅういどう世代せだい子供こどもおおくて。でもわたしはすごくひくかったので、おにごっことかは、一度いちどおにになると永遠えいえんおにのままだったりするのであまりきではなかったです。それよりも、世界せかい探検たんけんごっことかをしていました。それこそ『じゅう少年しょうねん漂流ひょうりゅう』の影響えいきょうなんですけれど、だんボールをいかだに見立みたてて、みんなでそれにって航海こうかいしたりして。「しまえた」とかって、砂場すなば砂漠さばく見立みたてて「ここにいえきずくんだ」とかっていました。

――学校がっこう国語こくご授業じゅぎょうきでしたか。

さき授業じゅぎょうはおしなべてきらいでした。ぼーっとしていて、わりとついていけなくて、ちょっと出来できわるだったとおもいます。小学生しょうがくせいころ文章ぶんしょうくのもきではなかったですね。語彙ごいがなくて、自分じぶん感情かんじょうをうまく言葉ことばにできなかった。言葉ことばにできないからすぐにくってわれていました。本当ほんとうにすぐいていました。おこってもくし、かなしくてもくし。

――読書どくしょ体験たいけんは『じゅう少年しょうねん漂流ひょうりゅう』をきっかけにひろがりましたか。

さきちち読書どくしょだったんですが、すごく偏見へんけんのある読書どくしょだったんです。「もっとほんみなさい」とって、お小遣こづかいとはべつほんうためのおかねもくれたんですが、あまりに子供こどもけのほんうとおこられるので、偕成社かいせいしゃなどからている世界せかい日本にっぽん民話みんわとか、伝説でんせつほんえらんでいました。あとはグリム童話どうわとか。やはり現実げんじつはなしとはちがう、空想くうそうてきはなし大好だいすきでした。外国がいこくはなしはもうそれだけで未知みち世界せかいでしたから、外国がいこく民話みんわ本当ほんとうきでした。
 いえには、いとこがおくってくれた子供こどもけの世界せかい名作めいさく全集ぜんしゅうのようなほんもありました。でもえりごのみして半分はんぶんくらいしかまなかった。『オズの魔法使まほうつかい』とか『しあわせな王子おうじ』あたりはみましたが、ちょっとむずかしそうで現実げんじつっぽいはなしは、題名だいめいおぼえていないですね。ははは『しょうおおやけおんな』や『若草わかくさ物語ものがたり』、『赤毛あかげのアン』あたりをすすめてくるんですが、1かいんだらもういい、というかんじでした。そうしたはなし自分じぶんにとってはワクワクがりないんです。もうちょっと波乱万丈はらんばんじょうがいいんですよね。現実げんじつ世界せかいとはちが冒険ぼうけんがあって、でも、つらくないはなしきという。

――では、その夢中むちゅうになったほんといいますと。

さきいつのころわすれてしまったんですけれど、エドモンド・ハミルトンの『キャプテン・フューチャー』シリーズがNHKでアニメになったことがあったんです。うちは漫画まんがもアニメも禁止きんしだったんですけれど、NHKのものならOKだったんですよ。それで『キャプテン・フューチャー』のアニメをたらあまりにも面白おもしろくて、あねと「原作げんさくがあるらしいからみたいよね」となり、おやにねだってまち本屋ほんやさんまでれていってもらって、ハヤカワ文庫ぶんこから当時とうじていた原作げんさくのシリーズをいました。ルビがっていないのでめない箇所かしょもあったんですが、アニメであたまはいっているのでだいたいかるんですよね。それであねとはまりまくって、全巻ぜんかんそろえたくなったんですが、当時とうじはamazonもないし、ちかくの本屋ほんやにはちょっとしかたながなくて。おおきなまち出掛でかけるときかなら本屋ほんやはいってハヤカワ文庫ぶんこたなて、シリーズのうちのまだっていないまきがないかをさがすのがにんのルーティンになりました。
 一度いちど神保じんぼうまちくことがあって、そのときおおきな書店しょてんったんです。いまおもえば三省堂さんせいどう書店しょてんでした。そこのハヤカワ文庫ぶんこたなまえったら、全巻ぜんかんそろっていたんです。でもお小遣こづかいがないから3さつしかえなくて、「さあどれをうか」とあね吟味ぎんみしてったおぼえがあります。あねむのがはやいので、わたしがちまちま1さつんでいるあいだの2さつえて、「はやめ」ってせかされました。しかもわたしがまだんでいないのに、「このまきのここがすごく面白おもしろくてね」ってネタバレをうんですよ(笑)。それで一生懸命いっしょうけんめいいそいでんだおもがあります。

――なぜそこまできだったのでしょう。

さきそれこそわたしもとめていた、たことのない世界せかいでの冒険ぼうけんがあったんですよね。それと、わるやつたたかうところが、子供こどもしんひびいたんでしょうね。
 読書どくしょかんしては偏食へんしょくみたいなところがあって、子供こども時代じだいはいわゆる文学ぶんがくけいのものは本当ほんとう全然ぜんぜんまなかったですね。たぶん、ちょっと、反骨はんこつ精神せいしんてきなものがありました。小学校しょうがっこうねんから5ねん学年がくねんがるタイミングでしをしたんですけれど、そのさい、それまであつめてきた民話みんわけいほんや、あね一生懸命いっしょうけんめいあつめた『キャプテン・フューチャー』のシリーズを、ちちが「こんなのくだらないから」とって、全部ぜんぶてたんですよ。

――ええっ。『じゅう少年しょうねん漂流ひょうりゅう』をかえまれていたように、てられたほんかえんできたほんだったのでは。

さきそうなんです。れるくらいかえんでいたし、きなページがすぐられるようにしおりはさんだりしていたんですよね。それを全部ぜんぶてられて、この時点じてんわたしのワクワクの世界せかい一度いちどジ・エンドになりました。うちではちち否定ひていするものはもう絶対ぜったい駄目だめで、んじゃいけないものになってしまうんです。

――つらい。トラウマになりそう。

さき本当ほんとうにそれがトラウマになって、ちちが「もっとまともなほんめ」とってすすめてくるほんめなくなりました。そもそも強制きょうせいされてむものって面白おもしろいとおもえなくなるじゃないですか。それよりもきんじられたほんたいするゆめのほうがふくらんでしまって、本当ほんとうにあれはからかったですね。
 したさき近所きんじょ図書館としょかんはなかったんですが、そこでも巡回じゅんかい図書館としょかんがあったので、性懲しょうこりもなく民話みんわほんなどはりてんでいました。小学校しょうがっこう高学年こうがくねんになると、それまで苦手にがてだったちょっとこわいものもむようになりました。

「ツールをくれた小説しょうせつ感銘かんめいけた短篇たんぺん

――あらたにっていえいておけるほんは、おとうさんのお眼鏡めがねにかなうものでないといけないわけですよね。

さきそうなんです。自分じぶん部屋へやがなかったので、こっそりってっておくということがあんまりできなくて。つかるのもこわいしつかればてられてしまうし。ただ、わたしんだはしからわすれてしまうので、ったほんって自分じぶん手元てもといておきたいんです。お小遣こづかいがないのでそんなにはえなかったんですけれど、やっぱりあねひそかにおかねってほんい、学習がくしゅうつくえうしろに書架しょかつくってかくしていました。
 中学生ちゅうがくせいときちかくの本屋ほんやさんにたまたまはいってたなをぶらぶらていたんです。そうしたらすごく可愛かわい表紙ひょうし文庫本ぶんこぼんがあったんですね。それが、コバルト文庫ぶんこからている新井あらい素子もとこさんの『ほしふね』でした。可愛かわいいイラストの表紙ひょうしだけれど小説しょうせつだし、文庫本ぶんこぼんならかくせるし、ということでこっそり自分じぶんのお小遣こづかいでってみました。
 んで、すごく感動かんどうしたんです。そのときにはじめておんなかた言葉ことばかれた一人称いちにんしょう小説しょうせつというものをみ、こういうかたなら、わたしけるとおもったんですよね。それまでずっとあたまなか空想くうそうひろげて物語ものがたりかんがえているのに、うまく文章ぶんしょうにできずにいたんです。文章ぶんしょうのこそうとしてなんページかは熱心ねっしんくんだけれど、そこでわってしまっていました。でも新井あらいさんの一人称いちにんしょう真似まねしながらくようになって、はじめてちゃんとげることができたのが中学ちゅうがく年生ねんせいときでした。
 ですから『じゅう少年しょうねん漂流ひょうりゅう』はわたし指針ししんめたほん、『ほしふね』は、自己じこ表現ひょうげんをするツールをあたえてくれたほん、というかんじです。

――それまでも、こうとはしていたわけですね。

さき自分じぶんなかにある空想くうそうひょうしたい気持きもちがありました。ったシチュエーションをなんあたまなかでシミュレーションするくらいなら、かみいておきたいとおもったんですよね。ひとませるものではなく、自分じぶんだけの覚書おぼえがきみたいなものです。だからはなし最初さいしょから最後さいごまでをかんがえていたわけではなくて、きたい場面ばめんいたら満足まんぞくしちゃって、それ以上いじょうすすめなくてもいいかな、というかんじでした。
 それが、だんだん、やっぱり物語ものがたりきたいとおもうようになって、でもいわゆる三人称さんにんしょう小説しょうせつだとうまくけなくて、「これじゃない」っていうモヤモヤかんがありました。それをブレイクスルーしてくれたのが『ほしふね』だったわけです。実際じっさいいてみると一人称いちにんしょう結構けっこうむずかしかったんですけれど、それでも三人称さんにんしょうよりはきやすかったです。

――どういうはなしいたのですか。

さきめっちゃずかしいんですけれど...学園がくえんラブコメバトルものみたいな...。いまってあるんですけれど二度にどみたくない(笑)。

――学園がくえんラブコメで、バトル要素ようそもあるってことですか。

さき学園がくえんで、ずっとじゅうってたたかっているはなしです。そういうものが大好だいすきだったんでしょうね。ひとませる前提ぜんていではなく、自分じぶんみたくていているものなので...。しかも当時とうじ改行かいぎょうして段落だんらくえるってことをかっていなくて、ノートにびっちり、改行かいぎょうもせずにいたのでのろいのしょみたいになっていました。ノート2さつぶんあったのでちょっとした中篇ちゅうへんだったような...いやいや、あれは小説しょうせつとはんではいけない(笑)。
 そのもずっと、なにかしらいていました。完成かんせいさせたものはすくないんですが、完成かんせいさせたものでいちばんながいのがノート6さつぶんくらい。そのころにはもう改行かいぎょうという概念がいねんがあったので、びっちりいたわけではないんですけれども。

――それはどういうはなしだったんですか。

さき特殊とくしゅ宝石ほうせきというか、なかにプログラムがはいっていて、それを使つかうと人体じんたい強化きょうかできる宝石ほうせきのようなものがあって、それをぬす怪盗かいとうがいるという。でもその怪盗かいとうじつ組織そしきからした人間にんげんで、組織そしきつぶすために宝石ほうせきぬすんでこわしてしまおうとしている。一方いっぽうで、そうした事情じじょうらないジャーナリスト志望しぼうおんなが、真実しんじつあばこうとして調査ちょうさしているというはなしでした。

――すごく面白おもしろそうなんですが。

さきそれは高校こうこう時代じだいいたものですが、のちにリメイクして投稿とうこうしたことがあります。

――『ほしふね以降いこう読書どくしょ生活せいかつはどんなかんじだったのでしょう。

さきそのころていた新井あらい素子もとこさんのほんはほとんど全部ぜんぶんだんじゃないかな。もう大好だいすきでした。そこからのコバルト文庫ぶんこをちょっとんだんですが、少女しょうじょ小説しょうせつはあまりわなかったんです。そうしたら、書店しょてんのコバルト文庫ぶんことなりにあったソノラマ文庫ぶんこはいったんですよ。
 で、ソノラマ文庫ぶんこにはまりました。高千穂たかちほはるかさんの『クラッシャージョウ』シリーズをみ、菊地きくち秀行ひでゆきさんの『吸血鬼きゅうけつきハンター"D"』シリーズをみ、火浦ひうらいさおさんの『高飛たかとびレイク』シリーズをみっていう、ようするにスペオペ大好だいすきじゃんわたしっていう(笑)。結局けっきょくそこにもどるんですよね。せない。

――『キャプテン・フューチャー』のころからスペースオペラきはわらないという。

さきだから、わりと自分じぶんいているものもきん未来みらいっぽいものがおおかったですね。SFてき知識ちしきもないのに、そういうものをくのがきでした。

――読書どくしょ創作そうさく以外いがいに、きだったもの、んだものってありましたか。

さき小中学校しょうちゅうがっこう時代じだいはブラスバンドで、部活ぶかつがすごくいそがしかったですね。わたしはフレンチホルンをやっていました。
 ただ記憶きおくのこっているのがちょっとかなしいはなしなんですけれど、そこで自分じぶん一人ひとり仕事しごとをしたほうがせいっているなとまなびました。ブラスバンドって結局けっきょく全員ぜんいん努力どりょくしないと上手うまくならないですよね、たりまえですけれど。公立こうりつ中学ちゅうがく活動かつどうなのでみんなわりといい加減かげんなんですよ。でもわたし本当ほんとう真面目まじめで、基礎きそ練習れんしゅうからなにから、全部ぜんぶ真面目まじめ毎日まいにちびっちりやっていました。そしたらあるときえら先生せんせいて、「とりあえずきみたちロングトーンやってみて」とわれたんです。みんなこうだああだと注文ちゅうもんをつけられているなか、わたしがやったときにその先生せんせいがはじめて「きみはうまいね」とったんですよ。やっぱり真面目まじめにやると先生せんせいにはかるんだなって、うれしいというよりはびっくりしました。でもそれでまなんだのが、わたし一人ひとり頑張がんばったってブラスバンドのしつがるわけじゃないんだなってことだったんです。わたし集団しゅうだんでやるものにはいていないとおもいました。それで、わたし一人ひとり努力どりょくすればちゃんとものになるものをやろうっておもったんですよね。

――一人ひとり努力どりょくでできるものって、まさに小説しょうせつ...。

さきそうなんです。そのころから、いたものをひとませるようになりました。ほかにもおなじように小説しょうせついているたちがいて、交換こうかんしてみあったりして。いているものはバラバラで、国際こくさい諜報ちょうほう小説しょうせついているひともいたし、少女しょうじょ小説しょうせついているひともいました。おたがいに「これいいよね」「あれいいよね」といいあって、「あなたのキャラクターとわたしのキャラクターをコラボさせてなにかしようよ」「このキャラクターはこれが得意とくいだからこういう出番でばんつくろう」みたいなことをはなすのがたのしかった。かないまでも、かんがえるのがもうたのしかったですね。

――では、中学校ちゅうがっこう時代じだいにはプロの作家さっかになろうという気持きもちは芽生めばえていたのですか。

さき全然ぜんぜん全然ぜんぜんなかったです。くのがたのしくて、自分じぶんでそれをむのがきでした。ひとんでもらうのもきではあったんだけれども、批評ひひょうされるのはいやでしたし。

――その読書どくしょ生活せいかつはいかがでしたか。

さきまた劇的げきてき出合であいがありました。これもまたあねがきっかけです。中学生ちゅうがくせいときだったとおもうのですが、あね高校こうこう図書としょ委員いいん読書どくしょかいをやっていたんですね。ながはなしを1さつむのはしんどいから短篇たんぺんもうというはなしになって、レイ・ブラッドベリの「万華鏡まんげきょう」(『刺青しせいおとこ所収しょしゅう)をえらんだんです。それがきっかけでわたしみました。宇宙船うちゅうせん爆発ばくはつして乗組のりくみいんたちが宇宙うちゅうされ、音声おんせいだけで繫がりながらばらばらにただよっていくはなしです。
 あんなみじかはなしなかに、わたしもとめているものがすべてあるとおもいました。人間にんげんいかりやにくしみやかなしみ、やさしさやおもいやりとか。にくしみあった人間にんげん同士どうし和解わかいとか、圧倒的あっとうてき救済きゅうさいみたいなものもすべてあって、なんてすごいんだろうとおもって。
 そこから高校生こうこうせい時代じだいはブラッドベリを延々えんえんむようになりました。本屋ほんやくたびにっていました。たしかに「これちょっとからない」というはなしもありましたが、本当ほんとう素晴すばらしい作品さくひんおおかった。そこから古典こてんSFにながれて、アーサー・C・クラークやアイザック・アシモフ、ロバート・A・ハインライン、ジャック・フィニイなどもみましたが、やはりレイ・ブラッドベリが一番いちばんきだったな。

――さきさんのペンネームの「れい」はレイ・ブラッドベリからとったそうですね。ブラッドベリの短篇たんぺん長篇ちょうへん全部ぜんぶきだったのですか。

さき短篇たんぺんのほうがきですね。長篇ちょうへん面白おもしろくなくはないんですけれど、1かいめばいいやというかんじで、短篇たんぺんのほうがひびくものがあってなんかえしました。
 自分じぶん高校生こうこうせいになって図書としょ委員いいんになったときに、あねおなじことをやろうとして、読書どくしょかいで「万華鏡まんげきょう」をげたんですよ。そうしたらベコベコにたたかれました。わたしはあんなに感動かんどうしたのに、みんなは「あさい」とか「信憑しんぴょうせいがない」とか「本当ほんとう宇宙うちゅう空間くうかんされたらこんなふうにはならない」とか「人間にんげんはこんなに簡単かんたんひとゆるせない」みたいなことをって...。小賢こざかしい高校生こうこうせいおおくて、いまだったらボコボコにしてやるのに、っていう(笑)。本当ほんとうぬしかないっていう状況じょうきょうで、最後さいごくらいはいい人間にんげんでありたい、最後さいごにちゃんとゆるしてゆるされてんでいきたい、という人間にんげんらしさみたいなものは、いまかんがえてもわたし素晴すばらしいとおもうんですけれど、「自分じぶんかしこいです」というタイプのひとにはわなかったみたいですね。もうおまえたちはブラッドベリをまなくていい、とおもってました。なんかいまだに「ちょっとほぐせぬ」っておもいます。

――とはいえ図書としょ委員いいん読書どくしょかいをやるっていいですね。

さきそうですね。それで自分じぶん普段ふだんまないものをんだりもしましたし。
 高校こうこう時代じだいはとにかくSFをみまくっていたのと、あとは、あのころまだライトノベルとわずにジュブナイル小説しょうせつばれていたようなものをんだりもしていました。菊地きくち秀行ひでゆきさんの『吸血鬼きゅうけつきハンター"D"』は新刊しんかんると「んだ?」「んだんだ」とまわりでも話題わだいになっていました。栗本くりもとかおるさんの『グイン・サーガ』シリーズも新刊しんかんていて。ただわたしは30かんくらいでまっているのであまりおおきなこえではえないですね。
 自分じぶん本棚ほんだな文庫ぶんこたなは3ぶんの1くらいがハヤカワSF文庫ぶんこまっています。わたしはハヤカワSF文庫ぶんこそだったんだなとおもいます。

極貧ごくひん大学生だいがくせい時代じだい

――大学生だいがくせい時代じだいはいかがでしたか。

さきいえたくて、意図いとてきとおくのやまうえのほうにある理系りけい大学だいがくえらび、レポートがいそがしいからとって2年生ねんせいから一人暮ひとりぐらしをはじめました。でもそれが本当ほんとう極貧ごくひん生活せいかつで。1かげつ家賃やちんみで5まん5000えんらさなきゃいけなかったんですよ。家賃やちんが3まん5000えんで、光熱こうねつなどをはらうと手元てもとに1まんのこるかのこらないかくらい。それで1かげつらすので、ほん余裕よゆうがありませんでした。本屋ほんや図書館としょかんまちまでかないとなかったんですが、バスは片道かたみち200えん往復おうふく400えんかかる。あるいていくとなるとかえみちがもうものすごい坂道さかみちで、登山とざんみたいになるという。そもそも実験じっけんやってレポートいて予習よしゅう復習ふくしゅうやっていそがしかったので、ほんんでいるひまもあまりなかったんですけれど。

――小説しょうせつんだりいたりするのがきなら文系ぶんけいすすみそうなもするのですが、理系りけいだったのですか。

さきそうですね。学生がくせい時代じだい小説しょうせつになりたいとおもっていなかったので。高校生こうこうせいころいまでいうキャビンアテンダントさんになりたかったんですよ。なぜかというと、飛行機ひこうき大好だいすきだったから。馬鹿ばかでしょう?(笑)本当ほんとう機長きちょうになりたかったんですけれど、あたまわるいのとわるいのと身長しんちょう基準きじゅんたっしていなかったのとで無理むりだったので、大学だいがく英文えいぶんにいってキャビンアテンダントさんになるつもりで勉強べんきょうしていました。でもふと、「あれはおんな職場しょくばじゃないか」とづいたんですね。こん自分じぶんはクラスで同年代どうねんだい女子じょしとこれだけはなしわなくて、ともすればちょっといじめられることもあるのに、おんな職場しょくばでやっていけるわけがないなと突然とつぜんづいたんです。それで断念だんねんしました。
 じゃあ自分じぶんなにになりたいんだろうとかんがえたときに、CMをつくるような映像えいぞう作家さっかになりたいなとおもって。それで工学部こうがくぶ画像がぞう工学こうがくおしえてくれる大学だいがくきました。

――いろいろ意外いがいすぎるんですけれど、飛行機ひこうききになったのはなにかきっかけがあったのですか。

さきあね当時とうじっていた彼氏かれしが、新谷しんたにかおるさんの『エリア88』という漫画まんがしてくれたんですよ。どハマりしました(笑)。漫画まんが禁止きんしされていたとはいえ、はじめてんだ漫画まんがというわけでもなかったんですけれど、新鮮しんせんでしたね。飛行機ひこうきってめちゃ格好かっこういいとおもいました。もともと子供こども時代じだいにスーパーカーにはまったし、新幹線しんかんせん大好だいすきできたいって駄々だだこねたりしてたし、バイクもきだったので、乗物のりもの全般ぜんぱん、メカ全般ぜんぱんきだったんです。で、飛行機ひこうきはやいし格好かっこういいしそらぶじゃないですか。航空こうくう基地きちさいってしまうくらいはまっていました。

――そこから映像えいぞうったというのは、映像えいぞうきだったのですか。

さき洋楽ようがくきで、MTVで海外かいがいのアーティストのプロモーションビデオをよくにしていたんです。当時とうじ日本人にっぽんじんアーティストはそれほどプロモーションビデオをつくっていなかったんですが、海外かいがいひとかならずといっていいほどつくっていて、それがショートムービーみたいできだったんです。のちになって、映像えいぞうきというより、はなしつくるのがきだったんだってづくんですけれど。当時とうじ映像えいぞうとか写真しゃしんけい広告こうこくけいすすみたいとおもって進学しんがくさきえらびました。

――大学だいがく時代じだい、まったくほんまなかったのですか。

さきわたしがおかねがなくてほんとか漫画まんがえないことを友人ゆうじんたちはっているので、「なにかむものがほしい」というと、みんな「これいいよ」ってってしてくれるんです。それで、友達ともだちが『銀河ぎんが英雄えいゆう伝説でんせつ』をしてくれました。これはもうあまりにもきすぎてどうしても自分じぶんでもしくなって、まちしにくついでに古本屋ふるほんやさんをさんよんけんまわってはさがしてあつめていました。その、ちゃんと新刊しんかんなおしましたよ!
 田中たなか芳樹よしきさんは作品さくひんみましたが、やはり長篇ちょうへんでは「ぎんえいでん」がすごくきでした。それと、『流星りゅうせい航路こうろ』という短篇たんぺんしゅうなんかえしてんだかからないくらいきでした。ブラッドベリで素地そじができていたからなのか、短篇たんぺんはやっぱりきでしたね。
 には、友人ゆうじんが『ジョジョの奇妙きみょう冒険ぼうけん』を全巻ぜんかんしてくれたんです。紙袋かみぶくろにごっそりはいってました。んで、なんて面白おもしろいんだろうとおもいました。勉強べんきょうにつかなくなるからもうやめてーとおもいながらも、どうしてもつづきがになって1さつ、もう1さつんでいました。

――大学だいがく時代じだい小説しょうせついていましたか。

さきいていました。つくえうえにレポートのやまがあって、となり小説しょうせつくためのやまがあって、レポートを仕上しあげたら、「さ、あそぶか」というかんじて小説しょうせつやまかんじでした。ただ、ながはなしかんがえられなくて、みじかはなしおおかったですね。本編ほんぺんのない外伝がいでんみたいなものをいていました。

――アイデアに枯渇こかつすることってなかったのですか。

さき全然ぜんぜんなかったです。自分じぶんきなシチュエーションがいつでもたのしめるよう、自分じぶん満足まんぞくさせるためにいていたので枯渇こかつということは全然ぜんぜんないし、枯渇こかつするなんてかんがえたこともなかったです。授業じゅぎょうちゅうでも、「これ面白おもしろいな、物語ものがたりのネタになるな」などとずっとかんがえていました。

自分じぶんきなものをきたい」

――卒業そつぎょうはどうされたのですか。

さき広告こうこく代理だいりてんはいったんですが、1ねんはんくらいでめることになります。本当ほんとういそがしくて、いえかえるのに終電しゅうでんれたらマシで、いつも深夜しんやでした。なので小説しょうせつくどころかかんがえているひまもないんですよね。このままでいったらわたしこわれるなとおもい、めようとおもいました。そのときです。はじめて真剣しんけん小説しょうせつになろうとおもったのは。
 23さいくらいのときだったのかな。バブルもはじけて新卒しんそつですらやとってもらえない状況じょうきょうでしたから、職歴しょくれきがあるわけじゃない自分じぶんがしばらく休職きゅうしょくしてどこかにさい就職しゅうしょくしようとしても、絶対ぜったい無理むりだってかっていたんです。それに、自分じぶんがまたああいう組織そしきはいってもおなじことになるんじゃないかという恐怖きょうふがありました。中学生ちゅうがくせい時代じだいのブラスバンドのはなしじゃないですけれど、自分じぶん一人ひとりでできるものがしたいとおもうようになり、じゃあなにができるのかとかんがえたときに、「よし、小説しょうせつ頑張がんばろう」って。大学だいがく時代じだい投稿とうこうしたことはあったんですがそれはうんだめしみたいな気持きもちで、小説しょうせつになりたいと真剣しんけんおもっていたわけじゃなかったんですね。ちゃんと小説しょうせつになろうとおもったのはこのときがはじめてでした。
 そこから投稿とうこう生活せいかつを17年間ねんかん延々えんえんつづけました。としに3かいくらい応募おうぼして、たってはくだけていました。過去かこ大賞たいしょう受賞じゅしょうさくんで自分じぶんいそうなしょうおくってはいましたが、傾向けいこう対策たいさくはあまりかんがえず、自分じぶんきなものしかいていなかったです。小説しょうせつ教室きょうしつみたいなものがあることもっていましたが、みょう意地いじりなところがあってかよいませんでした。いよいよ駄目だめだったらもうみたいなかんじでした。教室きょうしつって「こういうものをいたらいいよ」とわれるのがいやだったんですよね。わがままかもしれませんが、きなものをかなければ意味いみがないじゃないって気持きもちがありました。いまもそんなかんじですけれど。

――きなものというと、やっぱりSFてきなものですか。

さきSFてきなものがおおかったですね。現代げんだいものをベースにしていてもどこかにSF要素ようそきん未来みらいてき要素ようそはいっているものがおおかったとおもいます。
 たぶん、いちばんすうとしておおいのは、「X-ファイル」みたいなはなしというか。ちょうつね現象げんしょう、たとえばどうかんがえても人間にんげんこせないような殺人さつじん事件じけんがあったときに、それを分類ぶんるい保管ほかんするか抹消まっしょうするのかめている組織そしきがあって、その組織そしきはたらひとたちの物語ものがたりかんがえるのがきで、しばらくその設定せっていいていました。高校こうこう時代じだいげた宝石ほうせきはなしもそうなんですけれど、わりと未知みちのテクノロジーみたいなものがあり、陰謀いんぼうがあってそれとたたかう、みたいなはなしおおかったとおもいます。いまおもうとそれをライトノベルのしょう応募おうぼするのはどうなのかという。

――さきさんといえばファンタジーですが、そのころファンタジーはいていなかったという。

さき当時とうじは、見事みごとなくらいファンタジーをんでいなかったですよね...。じつは、ファンタジーがあまり得意とくいではなかったんです。たとえば、なにかの魔法まほう使つかうためのエネルギーって、どこからくるんだろうってかんがえちゃうんですよ。このなかはなしであるかぎりは絶対ぜったいにエネルギー保存ほぞん法則ほうそくりたないといけないので、魔法まほう使つかうのってハイカロリーなはずだから、おなかがすごくったりしないのかな、ダイエットになるんじゃないかな、などとかんがえてしまう。ドラゴンがそらんでいるけれど、あれは航空こうくう力学りきがくてき無理むりだよな、とか。つばさおおきさにたい質量しつりょうがありすぎて絶対ぜったいべないだろうから、おはらうちはん重力じゅうりょく作用さようのあるいしでもはいっているのかなとか。くけれど、あれはどうなっているんだろう、奥歯おくば火打石ひうちいしのようになっていて体内たいない分泌ぶんぴつしたあぶら噴射ふんしゃしてをつけているのだとしたら、あぶら揮発きはつせい相当そうとうたかくないといけないし、引火いんかしたらキミだい爆発ばくはつするぞ、とかかんがえちゃって(笑)。
 もちろんドラゴンがそらんだっていいんですよ。そういうものがきなひとはたくさんいるし、ゲームだったらわたしもシステムとして素直すなおたのしめるんですけれど、小説しょうせつとなると、こまかいところがっかかってしまっていました。

――ファンタジーもいろいろですからね。たとえば上橋かみばし菜穂子なほこさんのファンタジーとかだったら...。

さき上橋かみばし菜穂子なほこさんは大好だいすきです。うえきょうさんのほんむようになったのは大人おとなになってからですが、とても納得なっとくのいくファンタジーだったので夢中むちゅうになりました。『精霊せいれいまもじん』シリーズも新刊しんかんたのしみにしていました。そのころ本屋ほんやつとめだったので、児童じどうしょ担当たんとうに「新刊しんかんるならおしえて」とたのんでおいて、「来月らいげつるよ」とけば「1さつ予約よやくで!」というかんじで。

――ああ、投稿とうこう生活せいかつつづけながらいろいろなお仕事しごともされていたんですよね。

さきいろんなアルバイトをしましたが、ほんにまつわるものがおおかったですね。古本屋ふるほんやだったり、図書館としょかんだったり。でもいちばんながかったのは書店しょてんで、11ねんくらいいました。その途中とちゅうでデビューしているんです。

――書店しょてんではどのたな担当たんとうだったのですか。

さきゲームの攻略こうりゃくほんとコミック担当たんとうでした。自分じぶんはあまりゲームをするほうではなかったんですが、人気にんきのある攻略こうりゃくほんやす時間じかんにパラパラとめくったりはしていました。
 それと、やはり小説しょうせつになりたいとおもっていたので、いま流行はやっているものをるためにコミックも、れているもの、話題わだいになっているものはとりあえず全部ぜんぶとおそうとしていました。

――面白おもしろかったコミックってなにですか。

さきわたしはスクウェア・エニックスを担当たんとうしていたんですけれど、『はがね錬金術れんきんじゅつ』のだいいちかんときに「これは絶対ぜったい面白おもしろい」とおもいました。あんじょうれたので「やっぱりな」と。あれは、等価とうか交換こうかんというかんがかたにすごく納得なっとくがいきました。それと、少年画報社しょうねんがほうしゃ担当たんとうしていて、『HELLSING』がときに、これも「絶対ぜったい面白おもしろい」とおもいましたね。

――そのころんだ小説しょうせつではなに面白おもしろかったですか。

さきいろいろありますが、引間ひきまとおるさんの『とう条件じょうけん』は印象いんしょうのこっています。父親ちちおやきだったほんをけなされたトラウマなのか、投稿とうこうつづけながらも自分じぶんいているものは幼稚ようちなものだという意識いしきがどっかしらにあったんですよね。でも『とう条件じょうけん』をんで、他人たにんなにわれても、自分じぶんしんじたとうてていいんだとおもえました。
 は、だいたいわたしんで感銘かんめいける小説しょうせつは、あね情報じょうほうもとであることがおおいんですよ。あね大学だいがく卒業そつぎょう図書館としょかんいんになったので、やっぱりほんたいする嗅覚きゅうかくがすごくて。わたしくせかっているので大人おとなになってからもあねおしえてくれていました。
 なのでこれもあねがきっかけなんですが、「宮部みやべみゆきさんは絶対ぜったい面白おもしろいからんで」とって、『しゃ』をわたされたんです。「ただし、翌日よくじつやすみのまないと後悔こうかいするよ。やめられないから」とわれたんですが、本当ほんとう面白おもしろくてやめられなくて徹夜てつやしました。わたし結構けっこう作家さっかいするので、そこから宮部みやべさんのほん当時とうじているもの全部ぜんぶんだとおもいます。いまでも大好だいすきで、お手本てほんだとおもっています。
 宮部みやべさんのほんんでいると、ページをめくっているという意識いしきぶんですよね。それがただしい読書どくしょだろうとおもうので、自分じぶんもかくありたいですね。

――お手本てほんとして、どういうことを意識いしきしていますか。

さき文体ぶんたいのリズムはすごくあるかなとおもうんです。宮部みやべさんの文章ぶんしょうっかかるところがないんですよ。宮部みやべさんとわたしはもう全然ぜんぜん文体ぶんたいちがうんですけれど、わたしもわりとリズムを大切たいせつにします。いていて、リズムをよくするために「ここであと2文字もじほしい」などとかんがえることが多々たたあります。それで「それ」とか「あの」とかを使つかいすぎて、からすことになるんですけれど。

「SFベースでファンタジーをく」

――投稿とうこう時代じだい、どういうしょうおくっていたのですか。

さきライトノベルけいしょうおおかったですね。さきほどはなしたちちかんするトラウマからか、文芸ぶんげいしょうねらおうという気持きもちは全然ぜんぜんなかったです。

――デビューさくの『煌夜さい』はファンタジー作品さくひんですよね。島々しまじまをめぐって物語ものがたりあつめたかたたちが、冬至とうじよるあつまってその物語ものがたりかたぐ煌夜さい。そのとしかたられるのは、ひとべる魔物まものをめぐるはなしで...というはなしで、意外いがい展開てんかいっています。ファンタジーをいたきっかけはなんだったのでしょうか。

さき当時とうじはファンタジー全盛ぜんせいだったんですよね。ファンタジー作品さくひんしょうることがおおかったので、じゃあ自分じぶんいちかいいてみるかとおもって。そのころ臓器ぞうき移植いしょくけたひとがドナーの記憶きおく嗜好しこうせいぐというはなしにすごく興味きょうみがあって、そのネタでなにきたいなとかんがえていたんです。それで、ひとべたら、そのひと記憶きおくはいってくる、という設定せっていはファンタジーのネタとして面白おもしろいのではないか、というところからはいりました。

――そこからだったとは。島々しまじま円形えんけいかんでいるという、あの世界せかい設定せっていについては。

さきあれはボーアモデルがあたまにありました。人間にんげん国境こっきょうがあると戦争せんそうをしてしまうから、じゃあ戦争せんそうがないようにだれかが人工じんこうてき島々しまじまつくったとしたら......などと、地図ちずかんがえていたら面白おもしろくなってきて。原子げんし模型もけいのように、かくがあって、そのまわりを電子でんしがまわっているイメージで島々しまじま配置はいちするということをやってみたかったんですよね。
 最初さいしょはすごくながいクロニクルをかんがえたんですけれど、とてもじゃないけれど投稿とうこうさくおさまらないんですよね。面白おもしろ要素ようそだけをえらしてかたりというかたちつなげていけば全部ぜんぶはいるかな、とかんがえました。わりとたりばったりですよね(笑)。

――そうやってきあげた『煌夜さい』がだいかいC★NOVELS大賞たいしょう大賞たいしょう受賞じゅしょうして、デビューがまったという。

さき受賞じゅしょうしてびっくりしました。本当ほんとう本当ほんとうにびっくりしました。当時とうじはまだ書店しょてんはたらいていたので、はたらきながら自分じぶんほんりました(笑)。
 その専業せんぎょうになったのは、はたらいていた本屋ほんやつぶれてしまったからなんです。デビューしたとき編集へんしゅうさんに「仕事しごとめないでくださいね」とわれていたのでどうしようかとおもい、編集へんしゅうさんにおうかがいをてたんですよね。そうしたら、「いや、専業せんぎょうでもいいんじゃないですか」ってわれました。なので、らしていけなかったらまた本屋ほんやでアルバイトすればいいや、くらいにかんがえて専業せんぎょうになったんですが、ありがたいことにいま専業せんぎょうでやっています。

――デビューさくがファンタジーだと、ファンタジー作家さっかというイメージをたれますよね。それはご自身じしんではどうだったのですか。

さきさあこまったぞとおもいました。2さつかせてもらったのが『〈ほんひめ〉はうたう』という作品さくひんで、あれはふたつの世界せかいはなしですが片方かたがたはSFっぽくて、もう一方いっぽうがファンタジーで。でもそのファンタジー要素ようそにも全部ぜんぶ、SFてき設定せってい裏打うらうちがあります。

――ほん修繕しゅうぜんする少年しょうねんが、邪悪じゃあく存在そんざいとされる文字もじ回収かいしゅうするために〈ほんひめ〉とたびつづけているという物語ものがたりですよね。

さき「2001ねん宇宙うちゅうたび」のモノリスみたいなイメージですね。あれはモノリスがっていることによって、さるから人間にんげんへの進化しんかうながされたという設定せっていじゃないですか。あれとおなじで、文字もじというものがあって、それが意思いしっていることにより進化しんかうながされたという設定せっていです。だからSFベースなんですよね。わたしはファンタジーてきなものもSFベースでかんがえるというか、わたしなかではファンタジーもSFもおなじものみたいなところがあって......というとおこられるかもしれませんが。
 でも、むかし許容きょよう範囲はんいひろいSFもたくさんありましたよね。ジャック・フィニイの『ゲイルズバーグのはるあいす』なんて完璧かんぺきにファンタジーだとおもう。『レベル3』とか『マリオンのかべ』とかも大好だいすきでした。『ジョナサンと宇宙うちゅうクジラ』をいたロバート・F・ヤングもそうですよね。短篇たんぺんの『たんぽぽむすめ』なんて、すごくふんわりとしたSFですよね。ああいう、ファンタジーにちかいようなSFがきだったので、「ああいうのならける」というかんじでいままでやってきたがします。

――じゃあたとえば、万物ばんぶつかみ宿やど世界せかい舞台ぶたいの『はちひゃくまんかみう』シリーズとかは、どういう発想はっそうだったのでしょう。

さきそれもSFがベースにあります。かれらが神様かみさまっているのは、たぶん宇宙うちゅうじんなんですよ。思想しそうかてとする宇宙うちゅうじん宇宙船うちゅうせんでやってきて、共存きょうぞん共栄きょうえいはかるために人間にんげんたちの思想しそう統一とういつをしたら一回いっかい失敗しっぱいしちゃって、それであたらしくつくなおしたのが「楽土らくど」だという。やまうえかみ世界せかいがあるというのは、やまうえ宇宙船うちゅうせんがあるからなんですよね。その磁場じばなにかの影響えいきょうで、楽土らくどれたりれなかったりするという......。

話題わだい新作しんさくファンタジー」

――その読書どくしょ生活せいかつはいかがですか。意識いしきてきにファンタジー作品さくひんんだりはされたのですか。

さきもとから上橋かみばし菜穂子なほこさんは当然とうぜんんでいましたし、大人おとなになってから「ハリー・ポッター」シリーズも全巻ぜんかんみ、児童じどうしょもどって『ダレン・シャン』シリーズや『デルトラ・クエスト』や『ナルニアこく物語ものがたり』もみました。ファンタジーとはなんぞやをまな気持きもちで。
 ちょっとしいとかんじたのが、やはり子供こどもときんでおきたかったとおもうファンタジーがおおいんですよね。子供こどもめるマイルドなファンタジーだけじゃなく、大人おとなんでもたのしいファンタジーがもっとえればいいなとおもいます。
 相変あいかわらず、きな小説しょうせつかえしてみます。全部ぜんぶかえさなくても、きなシーンだけかえしたくてほんしたりしています。あとはやっぱり、人気にんきほんは、どこが面白おもしろいのかんでみたくなります。映画えいがやドラマを面白おもしろかったときも、原作げんさくはどうだったんだろうとになってんだりもしますね。

――やはり映画えいがなど映像えいぞう作品さくひんもおきですか。

さき映画えいがはよくます。本屋ほんやはたらいているときは、水曜日すいようびだけ5がりにしてもらって、ちかくのシネコンの7くらいのかい映画えいがかえっていました。こんなものを映画えいがにしていいのかという駄作ださくから、しばらく感動かんどうして座席ざせきからてなくなるような作品さくひんまでて、映画えいがもピンキリだなっておもっていました。

――どういう映画えいががおきですか。きな監督かんとくとかは。

さき映画えいがかんなきゃいけない映画えいがってあるとおもうんですよ。迫力はくりょくがあったり、うごきが素晴すばらしかったりして、自分じぶんたことのない世界せかいせてくれる映画えいがというのはだい画面がめんたいんですよね。だからやっぱり、SFなどは映画えいがかんたい。マーベル・ユニバースけい映画えいがかなら映画えいがかんたいですね。
 きな監督かんとくでいうと、クリストファー・ノーランは2さくの「メメント」ではまりました。じつはリドリー・スコット監督かんとくき。ナイト・シャマラン監督かんとくはなしつくかたがうまいですよね。いつもだい逆転ぎゃくてんがいつるのかドキドキします。るぞるぞとおもっているとなくて、「あ、ないんだ」とゆるしたとたんにるっていう。ホラーは苦手にがてなので、もう、本当ほんとうこわいです。あとは役者やくしゃさんでてたかな。

――だれですか。

さきホアキン・フェニックスですね。かれがコモドゥスみかどえんじていた「グラディエーター」がすごくきでした。主人公しゅじんこうがわではなく、主人公しゅじんこうくるしめる悪役あくやくがわなのにものすごく感情かんじょう移入いにゅうして、かれがかわいそうでくというひねくれた見方みかたをしていました。すごくわるやつですけれど、父親ちちおや愛情あいじょうがほしくてほしくて、それでくるってしまったキャラなんだよなとおもうと、いくらでも空想くうそうふくらむというか。「ジョーカー」でブレイクしましたけれど、サイコパスから普通ふつうのおじさんまで、なんでもできる俳優はいゆうですよね。ナポレオンやく主演しゅえんした「ナポレオン」が公開こうかいされたところなので、かんかなきゃとおもっています。
 エイドリアン・ブロディもきでした。あのひともサイコパスからよわいおにいちゃん、イケメンなジゴロまでなんでもできるのがすごいなとおもっています。

――1にちのルーティンはまっていますか。

さきわたし時間じかんよりかんがえる時間じかんわりながいんですね。資料しりょうんだりいろんな設定せっていかんがえている期間きかんながくて、そこから2かげつくらいのあいだ集中しゅうちゅうしてきます。その2かげつあいだ完璧かんぺき夜行やこうせいになります。夕食ゆうしょくべて、かたづけをして、お風呂ふろはいったりして、よるの12くらいからはじめ、あさの6くらいに洗濯せんたくまわして、して、原稿げんこうわってなかったらまたいて、だいたいあさの9か10くらいにる。それがいちばん仕事しごとやしやすいルーティンです。

――夜中よなかあいだ、ずっとつづけているってことですよね。

さき「よくそんなに集中しゅうちゅうできますね」とわれるんですけれど、自分じぶんでは「時間じかんりない、もう4あいだっちゃった」というかんじです。
 集中しゅうちゅうして時期じきでないときも、だいたいよるの12から4か5くらいまで仕事しごとをすることがおおいですね。そこからきて、いえのことをして、ひるの12ぎから夕方ゆうがたはんつくまえくらいまでメールの返事へんじいたり、資料しりょうんだりしています。時間じかんてき余裕よゆうがあるときは、よる12くらいから読書どくしょしてがたまでにえるかんじなので、読書どくしょよるがたですね。

――読書どくしょ記録きろくはつけていますか。

さきんだほん名前なまえだけはいています。感想かんそうきませんが、名前なまえのこしておかないとおなほんんでしまうんですよ。「これ面白おもしろそう」っておもってページをめくって、「あれ、これんだな」ってことがおおいので。
 でもここすうねんおどろくほどほんんでいなくて。とく今年ことしは、んだほんおもせるくらい。つまり、かぞえられるほどしかんでいないんです。インプットしないとアイディアがかばなくなるのでなにみたいんですけれど、本当ほんとうひまがなくて、みたいほん山積やまづみになっています。

――それはもう、大作たいさく『レーエンデこく物語ものがたり』を執筆しっぴつされていたからですよね。ぜんかんにわたる革命かくめいはなしで、現在げんざいだいさんかんまで刊行かんこうされています。これはどういう構想こうそうからはじまったのですか。

さき最初さいしょ編集へんしゅうしゃさんからおはなしをいただいたときに、くにおこはなしきたいなとおもったんですよ。
 学生がくせい時代じだい、「ぎんえいでん」をんだときに、自分じぶんもああいう壮大そうだい歴史れきしきたくなったんですが、知識ちしき筆力ひつりょくもまるでなくて全然ぜんぜんけなかったんですね。一度いちど挫折ざせつして、そのずっとけなくて、それをいまやらせてもらているのでゆめかなったとおもっているところです。
 さっきの『煌夜さい』のはなしではないんですけれど、『レーエンデこく物語ものがたり』もじつは400ねんくらいのあいだはなしなんですね。だいいちかんのユリアのはなしからくに独立どくりつたすまでにそれくらいかかるんですが、全部ぜんぶいているとながくなりすぎる。美味おいしいところだけくことにして、いちさつごとに100ねん、120ねんときながれています。

――西にしディコンセ大陸たいりくせいイジョルニ帝国ていこくにある、のろわれた土地とちとされるレーエンデが舞台ぶたいです。琥珀こはくしょく古代こだいじゅもりがあり、あわちゅうぶこの土地とちには、ぎんのろいびょうというやまいがある。非常ひじょううつくしい光景こうけいあたまかびますが、どういう世界せかいかん、どういう歴史れきしかんがえていったのですか。

さき歴史れきしかんしては、徹頭徹尾てっとうてつび革命かくめいこすためにてました。この土地とち説明せつめいをして、その土地とちひとたちをきになってもらうのがだいいちかん。そのきになってもらった土地とちくすのがだいかんだいさんかんでその焼野原やけのはらて、だいよんかんでさらにそだって、だいかん革命かくめいがなされるというイメージで、その最初さいしょ構想こうそうどおりにすすんでいます。

――そう、だいかん『レーエンデこく物語ものがたり つき太陽たいよう』で焼野原やけのはらになるんですよね...。だいさんかんの『レーエンデこく物語ものがたり 喝采かっさい沈黙ちんもくか』でまた状況じょうきょうわるんですけれど。

さき圧政あっせい人々ひとびとえかねてがってひっくりかえすのが革命かくめいなので、はやいところいち焼野原やけのはらにしておかないと駄目だめだろうっていうかんじで...。
 世界せかいかんについては、なぜぎんのろいびょうがあるのかとか、ユリアがんだかみ御子みこがどういう存在そんざいで、なにをレーエンデにもらたしているのかというところがファンタジー要素ようそなのですが、ちょっとSFがかったうら設定せっていがあります。

――やっぱりあるんですね、SF設定せってい

さきたぶん、かなりSFてきかんじです。それをどこまでくかからないですけれど。

――だいいちかんでページをめくって西にしディコンセ大陸たいりく地図ちずとき、もう、1000%の王道おうどうファンタジーだとおもったのに(笑)。でもおはなしをうかがっているうちに、SFとファンタジーのちがいってなんだろうとおもえてきました。

さきSFよりも、もうちょっと幻想げんそうてきうつくしい光景こうけいせるのがファンタジーなのかな、と最近さいきんおもうようになってきました。そう編集へんしゅう教育きょういくされました(笑)。

――せいイジョルニ帝国ていこく民族みんぞく国家こっかで、それぞれの生活せいかつ特徴とくちょうなどもいろいろです。ものすごくこまかく設定せっていされている印象いんしょうでした。

さき民族みんぞくがひとつだとまとまりすぎてしまうので最初さいしょから民族みんぞくにしようとはかんがえていました。民族みんぞくであるがゆえに最初さいしょ革命かくめいはうまくいかないわけです。ということはそれぞれ文化ぶんかちがうはず。それで、どの民族みんぞくにどういう歴史れきしがあって、どういうふうにらしてきてどう文化ぶんかになったかをかんがえていきました。
 大枠おおわくめておくと、だいたいまるんですよ。たとえばレーエンデはすごくさむいところにある土地とちなので、水田すいでんつくれないんですよね。そうするとむぎべるしかなくて、パンしょくになるだろうな、といったところからものまっていきます。土地とちがあれば酪農らくのうもできるけれど、もりなからしているひと大型おおがたじゅうえないから、せいぜい山羊やぎで、それも大量たいりょうにはえないから狩猟しゅりょう民族みんぞくになりますよね。もりはいるものでつくらないといけないから衣服いふくもわりと植物しょくぶつ由来ゆらいのゴワゴワしたものがおおくて、あとは毛皮けがわとかになるんだろうな、とかんがえていくんです。最初さいしょこまかくめておくわけではなくて、必要ひつようになったらかんがえるというかんじです。

――まきうごとに、読者どくしゃえる風景ふうけいもすごくわっていきますよね。もりなか景色けしきだったり、断崖絶壁だんがいぜっぺきだったり、焼野原やけのはらだったり。まちでは鉄道てつどうができたりもする。そうした変化へんかもすごく面白おもしろいです。

さきやっぱり時代じだいすすんでいくと文明ぶんめいわって、けるはなしわってくるんですよね。それが面白おもしろいかなとおもって。

――だいよんかん『レーエンデこく物語ものがたり 夜明よあまえ』はいつめるんでしょうか。

さきなるべくはやく、とはおもうんですけれど。間違まちがいなく来年らいねんにはます。

――いまはその執筆しっぴつ改稿かいこう大変たいへんだとはおもいますが、そんななか、『煌夜さい』の新装しんそうばん単行本たんこうぼん刊行かんこうされましたね。

さき最初さいしょたのがC★NOVELS Fantasiaで、つぎ中公ちゅうこう文庫ぶんこにされるときにほとんどなおさなかったんですよね。その時点じてんでもう結構けっこう月日つきひっていたので、いまからデビューさくれるのはずかしいがして、誤字ごじとか言葉ことば間違まちがいくらいしかチェックしなかったんです。でも今回こんかいは、単行本たんこうぼんんでもらうのにこれは駄目だめだろうというところにあかれていたら本当ほんとうになっちゃって。「あかれないとっていたのににしてごめんなさい」って編集へんしゅうしゃつたえたら、「さきさんにしてはマイルドです」とわれました。まえに『ゆめうえ』という単行本たんこうぼん文庫ぶんこしたとき文庫ぶんこのタイトルは『ゆめうえ よるべるおうむっつのてるあきら』)、本当ほんとういちめんになるくらい改稿かいこうしたという前科ぜんかがあったので...。
 1がつに『〈ほんひめ〉はうたう』も新装しんそうばん講談社こうだんしゃからますが、これはちょっと改稿かいこうするだけで大丈夫だいじょうぶだとおもっています(笑)。

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