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酒井忠康「余白と照応」 美術家・李禹煥との長き交流のエッセンス|好書好日
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酒井さかい忠康ただやす余白よはく照応しょうおう」 美術家びじゅつか禹煥とのなが交流こうりゅうのエッセンス

 おもいがまった私的してき手記しゅきむかのよう。著者ちょしゃ酒井さかい忠康ただやすさんと禹煥(リウファン)さんは、学芸がくげいいん世界せかい評価ひょうかされる美術家びじゅつか関係かんけいゆえ、そこには、哲学てつがくてき作品さくひん分析ぶんせき美術びじゅつ解説かいせつじる。しかし、しゅ旋律せんりつは、さんの人生じんせいかん創作そうさく姿勢しせいへの著者ちょしゃしみない賛辞さんじだ。

 韓国かんこく出身しゅっしんさんは、1950年代ねんだい来日らいにち以降いこう日本にっぽんきょかまえ、「もの」の中心ちゅうしん作家さっかとして活躍かつやくする。まわりの環境かんきょう意識いしきしながら、ほとんどくわえないいし鉄板てっぱんなどの素材そざい配置はいちして空間くうかん全体ぜんたいせる彫刻ちょうこくや、すくない筆触ひっしょくでキャンバスの余白よはくあじわわせる絵画かいがられる。

 『余白よはく照応しょうおう』は、さんと60年代ねんだい以来いらい交流こうりゅうがある酒井さかいさんが、あたためていたエピソードや展覧てんらんかい図録ずろくなどにせたエッセーをおさめる。照応しょうおうさんがしばしば使つか言葉ことばで、ふたつのものがたがいに関連かんれん対応たいおうするという意味いみ本書ほんしょさんのかたが「さん」「」、敬称けいしょうなしと時々ときどきわるのもまた、著者ちょしゃ思索しさくとテーマの照応しょうおうからえらいた結果けっかなのだろう。

 じた手記しゅきを、そとにひらく。そうして出来できほんは、たとえば本文ほんぶん天地てんちひろられた余白よはくや、カバーに使つかわれたさんの静謐せいひつ(せいひつ)なによって、それ自体じたいひとつの美術びじゅつ作品さくひんのようなたたずまいになっている。(木村きむら尚貴なおき)=朝日新聞あさひしんぶん2024ねん2がつ3にち掲載けいさい

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