武内たけうち直子なおこ「美少女びしょうじょ戦士せんしセーラームーン　レゾネ　ART WORKS 1991～2023」憧あこがれていた正義せいぎの素朴そぼくさ思おもい出だす

少女しょうじょ漫画まんが誌し「なかよし」で１９９１年ねんから９７年ねんまで続つづいた漫画まんが「美少女びしょうじょ戦士せんしセーラームーン」。画集がしゅうには連載れんさい当時とうじの扉絵とびらえやふろくに使つかわれたイラスト、テレビアニメ用ようのキャラクター設定せっていが描えがかれた原画げんがなど７４５点てんを収録しゅうろくしている。上うえのイラストは９４年ねん１０月がつ号ごうに扉絵とびらえとして掲載けいさいされ、２０２３年ねん１０月がつに修正しゅうせいが加くわえられた。左ひだりは本書ほんしょの表紙ひょうしカバー　©Ｎａｏｋｏ　Ｔａｋｅｕｃｈｉ

　セーラームーンを、当時とうじ小学生しょうがくせいだった私わたしがどんなふうに読よんでいたのか、今いまはほんのりとしか思おもい出だせない。でもこうして、当時とうじのイラストを画集がしゅうで見みていると、「なかよし」で連載れんさいしていた頃ころのセーラームーンの息吹いぶきを思おもい出だす。その中なかで深呼吸しんこきゅうしていた私わたしのことを思おもい出だす。

　私わたしは、セーラー戦士せんしたちをすごく身近みぢかに思おもっていた気きがする。憧あこがれもしていたけど、彼女かのじょたちは設定せっていとしては当時とうじは私わたしよりずっと年上としうえだったはず。でもどこかで、「私わたしと同おなじ」と私わたしは思おもっていた。それは、そこに描えがかれる正義せいぎや愛あいは、とてつもなく素朴そぼくで、まっすぐで、それなのに雄大ゆうだいだったから。特とくに主人公しゅじんこうの月野つきのうさぎが貫つらぬこうとするものは純粋じゅんすいであどけないもので、でもそれが心しんの強つよさによって、慈愛じあいのように感かんじられるのが好すきだった。

　教室きょうしつや塾じゅくでいろんな人間にんげん関係かんけいが難むずかしく、「うまくやる」ことをどんどん考かんがえなければならなかった小学生しょうがくせいの私わたしは、「幼おさなさ」と切きって捨すてられそうな感性かんせいが、この作品さくひんの中なかでは優やさしさになるのを感かんじられ、そのことがとてつもなく嬉うれし（うれ）しかったのだろう。

　どんな戦闘せんとう能力のうりょくより、どんなヒロイン力りょくより、当あたり前まえにずっと携たずさえてきた幼おさなすぎるほどの純真じゅんしんさが、まっすぐに誰だれかを救すくう「優やさしさ」や「正義まさよし」になることに当時とうじの私わたしはかっこよさを感かんじていた。そこにある正義せいぎの素朴そぼくさが、私わたしにとってのセーラームーンのかっこよさだった。

　この画集がしゅうには、そんな当時とうじの私わたしが見みつめていた「かっこよさ」を思おもい出だす絵えがたくさんある。見みるたびに思おもう。何なにかを諦あきらめてではなく、何なにも諦あきらめずに、私わたしは強つよい大人おとなになりたかった。＝朝日新聞あさひしんぶん2024年ねん8月がつ3日にち掲載けいさい

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