その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は福田和宏さんの『
電子工作&サーバー構築徹底解説! ラズパイ5完全ガイド
』です。
【はじめに】
小型で高性能、省電力と3拍子揃ったPCボード「Raspberry Pi」(ラズベリーパイ、ラズパイ)──。2012年に発売されるやいなや世界中で爆発的にヒットし、これまでに全モデル累計で5000万台以上が出荷されています。デスクトップPCとしてWindows PCなどとそん色なく使えるのはもちろん、省電力性能を生かしてサーバー機として運用したり、豊富な入出力端子を備えた電子工作向けの制御用コンピュータとして活用したり。手のひらに載るほどのその小さな姿からは想像もできないほどの活躍が可能です。
ICT(情報通信技術)分野に関わる仕事をしている人であれば、今やラズパイという名前を聞いたこともないという人は少ないのではないでしょうか。それ以外の人でも、どこかで名前を目にしたことがある人は多いと思います。筆者の周りでは、「子供が使っている」という声もよく耳にします。ラズパイは元々、教育向けのコンピュータとして開発されたので、上記のようなサーバーや電子工作向け用途以外に、子供が初めて触れるコンピュータとしても最適です。
筆者は、企業や教育関連の機関でセミナー講師をよく務めており、「ラズパイについて教えてほしい」という依頼を数多く受けています。そうした依頼を受けてラズパイ関連のセミナーを開催すると、多くの受講者が目を輝かせながら非常に大きな興味と熱意をもって聴講してくれます。セミナーが終わった後も、何人もの方が残って、しばらく帰れないほどたくさんの質問を受けることがよくあり、ラズパイに対する情報ニーズの高さを強烈に実感しています。
そうした情報ニーズを少しでも多く満たし、ラズパイをより多くの人に楽しんでもらえるように、書籍というまとまった形で広く世の中に情報を届けたい──こんな思いで2023年の秋、本書の執筆を始めました。
■ラズパイの使い方を網羅的にマスターできる
本書ではまず、前半部分(第1~6章)で、ラズパイの基本的な操作方法からプログラムの開発方法、サーバーの構築方法、カメラをはじめとする周辺機器の使い方などまで、ラズパイをデスクトップPCやサーバー機として使いこなすために必要となる知識を網羅的に説明します。豊富な図表を見ながら手順通りに進めることで、これらの内容を確実にマスターできるでしょう。
本書が掲げる2大テーマである「サーバー構築」と「電子工作」の二つについては、特に手厚くページを割いて解説しています。この前半部分ではサーバーについて解説しており、代表的なサーバーである「ファイル共有サーバー」と「Webサーバー」の二つに加え、ブログや企業サイトなどでよく利用されているCMS(コンテンツ管理システム)サーバー「WordPress」の構築方法を習得できます。ネットワークを介してラズパイにログインして遠隔操作する方法やコマンドの使い方など、サーバー構築&運用時に役立つ知識も併せて掲載しています。
■ラズパイの醍醐味「電子工作」をとことん楽しもう
もう一つの「電子工作」については、本書の後半部分(第7~10章)を丸ごと使って解説しています。ラズパイは省電力PCとしても魅力的ではありますが、やはりラズパイならではの魅力としては、「電子工作との親和性が極めて高いこと」が挙げられます。
PCとして普通に使いながら、LEDやモーター、センサーなどさまざまな電子パーツを多数接続してプログラムで制御できます。実際に、ラズパイは登場した当初から、電子工作を楽しむユーザーに愛され、数多くの作品で制御用コンピュータとして活用されてきました。
ただ、特に初心者にとって、ここで問題となるのが、電子工作を始めようとする人の前に立ちはだかるいくつかの“壁”です。具体的には「電気に関する基本的な知識」や「電子パーツのつなぎ方」、「電子パーツの基本的な制御方法」などに関する知識が必要となり、前に進めなくなってしまうのです。人によってはもっと手前、「電子パーツの買い方や選び方」などもそうした壁の一つになるでしょう。これらの壁に突き当たり、自分では解決できず、最終的に電子工作を諦めてしまう──。こんな悲劇を避けるために、本書では250ページ以上のページ数を割いて、ラズパイを使った電子工作について基本的なところからやさしく分かりやすく徹底解説しています。
まず、初心者が真っ先につまずきがちな、電子パーツを動かすために必要な「電気に関する基礎知識」と「電子回路の基本原理」をやさしく図解します。次に、LEDやモーターといった電子パーツについて基本的な動かし方を説明し、それらを制御するために必要なデジタル通信方式などについても解説します。
電子工作を楽しむには、なるべく多くの種類の電子パーツを動かせるようになることが大切です。そこで、主要な30種の電子パーツについて、使い方を詳細に紹介します。すべて実際の電子パーツ配置および配線方法を示す「実体配線図(接続図)」と、制御に使うプログラムのソースコードを付けています。実体配線図や電子パーツの写真は見やすいように全部カラーで掲載するなど、細かい部分までとことんこだわりました。
「もっといろいろなパーツを動かしてみたい」という読者のために、スペシャルボーナスとして、追加で15種のパーツの動かし方を解説する記事も本書のサポートサイトに用意しています。
電子工作の最終的な目的は、自分独自の作品を思い描いた通りに作れるようになることです。そこで、作品作りの道しるべとなるよう、どのような手順でアイデアを作品として形にすればよいかについても説明しています。さらに、カメラや通信機能と組み合わせた実用的な電子工作の作例も二つ紹介しています。
本書が読者の皆さんのラズパイライフを少しでも充実させるお役に立てれば幸いです。
2024年5月
福田 和宏
【目次】