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日本のメディアが作った「ムラ社会」 朝日新聞記者が憂う“ジャーナリズムの後進性” | 文春オンライン
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日本にっぽんのメディアがつくった「ムラ社会しゃかい」 朝日新聞あさひしんぶん記者きしゃうれう“ジャーナリズムの後進こうしんせい

『さよなら朝日あさひ』より#3

note

 憲法けんぽう9じょう皇室こうしつ原発げんぱつ沖縄おきなわ……日本にっぽん社会しゃかいおおきな論点ろんてんについて、朝日新聞あさひしんぶんは「リベラル」の立場たちばから主張しゅちょうしてきた。しかし、リベラル勢力せいりょく主張しゅちょうには、なん矛盾むじゅん欺瞞ぎまんもないのだろうか。リベラル主張しゅちょうについて、現役げんえき朝日あさひ記者きしゃ内部ないぶから検証けんしょうした書籍しょせきが『さよなら朝日あさひ』(柏書房かしわしょぼう)だ。

 同書どうしょは、朝日新聞あさひしんぶんへの広告こうこく掲載けいさい依頼いらいに、「社内外しゃないがいにおいて掲載けいさいリスクがたかい」という理由りゆうで、通常つうじょう料金りょうきんの3.3ばい出稿しゅっこうりょう提示ていじされたことも波紋はもんひろげている。朝日新聞あさひしんぶんへの提言ていげんつづった同書どうしょの「だい1しょう 正義せいぎ暴走ぼうそう」より、一部いちぶ転載てんさいして紹介しょうかいする。
(【スポーツ選手せんしゅくに英雄えいゆうとしてかつ演出えんしゅつは「異様いよう」 朝日新聞あさひしんぶん記者きしゃつづる“メディアへの提言ていげん”】よりつづく)

ぜん3かいの3かいめ/#1#2む)

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ジャーナリストが死亡しぼうすれば美談びだん。その一方いっぽう報道ほうどうへの圧力あつりょく

 メディアのはなしもどせば、紛争ふんそう危険きけん取材しゅざいするジャーナリストが遭難そうなんしたさい瞬間しゅんかん風速ふうそくてき報道ほうどうあらしも、このくにのジャーナリズムの課題かだい検証けんしょうするこう材料ざいりょうだ。

 フリージャーナリスト後藤ごとう健二けんじがシリアで「イスラムこく(IS)」に拘束こうそくされ殺害さつがいされた事件じけん(2015ねん1がつ30にち)では、遺体いたい映像えいぞうながれた途端とたん報道ほうどう弾劾だんがい調ちょうのものから、ジャーナリストたましい称揚しょうようする美談びだん調ちょうのものへと一転いってんした。自己じこ責任せきにんろんとの落差らくさは、さながら「きて虜囚りょしゅうはずかしめをけず」と「戦死せんしすればみな英霊えいれい」ののひらがえしのようで、ていてくらおもいがした。イラクで武装ぶそう組織そしき襲撃しゅうげきされ死亡しぼうした橋田はしだ信介しんすけ小川おがわいさお太郎たろう(2004ねん5がつ27にち)、ミャンマーで政府せいふぐん兵士へいしらしきおとこ射殺しゃさつされた長井ながい健司けんじ(2007ねん9がつ27にち)らの事案じあんについても、追悼ついとう報道ほうどうくと、当初とうしょあった「けられた」だったのでは、という疑問ぎもんはメディアから姿すがたした。 取材しゅざい手法しゅほう状況じょうきょう判断はんだん事前じぜん安全あんぜん対策たいさく危機きき管理かんり問題もんだいがなかったのかという、組織そしきじんとフリーランスの垣根かきねえておこなうべき検証けんしょうとノウハウ共有きょうゆうこころみは、一部いちぶのフリー記者きしゃ有志ゆうしうごきをのぞき、そのもなされてはいない。 

©️iStock.com

 一方いっぽうで、安倍あべ政権せいけんでは、報道ほうどうへの圧力あつりょく分断ぶんだんうごきがつよまった。2015ねんにはシリアきを表明ひょうめいしていた新潟にいがた在住ざいじゅうのフリーカメラマンが「生命せいめい身体しんたい財産ざいさん保護ほごのため」との理由りゆうでパスポートを返納へんのうさせられ、外務省がいむしょう記者きしゃクラブ加盟かめい各社かくしゃ日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかい日本にっぽん雑誌ざっし協会きょうかいなどにシリア渡航とこう見合みあわせるよう要請ようせいした。これに呼応こおうするように、ぼう記者きしゃ敢行かんこうした現地げんち取材しゅざいをライバル批判ひはんするという、メディアが報道ほうどう独立どくりつみずか放棄ほうきしたとしかいようがない異様いよう事態じたいきた。ほかならぬ安田やすだじゅんたいらも、帰国きこく申請しんせいしたパスポートのさい発給はっきゅう外務省がいむしょう拒否きょひされている。安田やすだは、 同省どうしょう措置そち行政ぎょうせい裁量さいりょう逸脱いつだつしているうえに憲法けんぽう保障ほしょうする居住きょじゅう移転いてん自由じゆうおかすものだとして東京とうきょう地裁ちさい提訴ていそしたが、報道ほうどう自由じゆうおびやかすこの深刻しんこく事態じたいに、立場たちばえて共闘きょうとうすべき報道ほうどうじんたちのうごきはきわめてにぶい。2020ねんまつ時点じてんで4かいひらかれている公判こうはんで、新聞しんぶんやテレビの記者きしゃかけたことはほとんどない。

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