終おわらないアップリンク問題もんだい　ハラスメント告発こくはつのあとに

　ミニシアターのハラスメント問題もんだいといえば、昨年さくねん6月がつに元もと従業じゅうぎょう員いんたちによって訴訟そしょうが提起ていきされた映画えいが配給はいきゅう会社かいしゃアップリンクの件けんに触ふれないわけにはいかない。

　告発こくはつ直後ちょくごは、複数ふくすうのメディアが元もと従業じゅうぎょう員いんたちの会見かいけんの模様もようを報道ほうどうし、SNS等とうでさまざまな意見いけんが発信はっしんされたが、昨年さくねん10月がつ末まつに和解わかい協議きょうぎに至いたったことが報ほうじられて以降いこうは、すでに問題もんだいが解決かいけつしたかのように思おもい込こんでいるひとも少すくなくないだろう。

この記事きじの画像がぞう（4枚まい）

和解わかい＝解決かいけつではない

　だが、問題もんだいは決けっして終おわったわけではない。訴うったえを起おこしたアップリンクの元もと従業じゅうぎょう員いんの方々かたがた（「UPLINK Workers' Voices Against Harassment」名義めいぎで活動かつどう。以下いか、UWVAHと記しるす）にあらためてリモートで話はなしを訊きいた。

「和解わかい協議きょうぎには至いたったものの円満えんまんな解決かいけつではないし、私わたしたちは納得なっとくしていない、ということはこちらからもきちんと発信はっしんしているわけです。にもかかわらず、一部いちぶメディアは『和解わかいした』という事実じじつだけを報ほうじている。これは私わたしたちに対たいする二に次じ加害かがいにほかなりません」（UWVAH・錦織にしきおり可南子かなこさん）

　ここで彼かれらが告発こくはつしたハラスメントの内容ないようを確認かくにんしておきたい。

　アップリンク社内しゃないおよびアップリンクが運営うんえいする映画えいが館かんでは、同社どうしゃ代表だいひょうの浅井あさい隆たかし氏しによる日常にちじょう的てきなハラスメントがおこなわれていた。浅井あさい氏しは、ことあるごとに従業じゅうぎょう員いんを怒鳴どなりつけ、従業じゅうぎょう員いんが「やめてほしい」と訴うったえると、「怒鳴どなられるほうがわるい」「気きに入いらなければやめればいい」などとい放いはなったという。さらに、心身しんしんの不調ふちょうでしばらく休業きゅうぎょうを余儀よぎなくされたスタッフに対たいして「君きみは精神せいしんが不安定ふあんていだから」と正社員せいしゃいんから契約けいやく社員しゃいんへの降格こうかくをい渡いわたしたり、労働ろうどう形態けいたいや休暇きゅうか制度せいどをスタッフとの十分じゅうぶんな意見いけん交換こうかんを経へずに変更へんこうしたりするなど、労働ろうどう基準きじゅん法ほうに抵触ていしょくする行為こういも見みられた。経営けいえいにかかわる一部いちぶ社員しゃいんは、これら浅井あさい氏しの行為こういを黙認もくにん、あるいはみずからもハラスメントに相当そうとうする行為こういをおこなっていたという。

　黙認もくにんしていたのは内部ないぶの者ものだけではない。多おおくの映画えいが関係かんけい者しゃにとっても、こうしたハラスメントの存在そんざいは暗黙あんもくの事実じじつであったと聞きく。ほかならぬ筆者ひっしゃも、配給はいきゅう作品さくひんに関かんするやりとりや書籍しょせきの編集へんしゅう業務ぎょうむを通つうじたアップリンクとの関係かんけいのなかで不信ふしんを抱いだく機会きかいがなかったわけではなく、責任せきにんの一端いったんを感かんじている。