預金よきんが下おろせなくなる？国くにの借金しゃっきん1000兆ちょう円えんを国民こくみんに負担ふたんさせた「預金よきん封鎖ふうさ」とは

戦後せんご、危機きき脱却だっきゃくを名目めいもくに政府せいふがとった尋常じんじょうではない施策しさくとは……（※イメージ写真しゃしん）

 2016年ねん10月がつ、日本銀行にっぽんぎんこうの日本にっぽん国債こくさいの保有ほゆう残高ざんだかがはじめて400兆ちょう円えんを突破とっぱした。日本にっぽんの国債こくさいの発行はっこう残高ざんだかは約やく1100兆ちょう円えんなので、日銀にちぎん保有ほゆう分ぶんはその4割わり近ちかくに達たっしていることになる。日銀にちぎんが異い次元じげん緩和かんわを導入どうにゅうした2013年ねん当時とうじの保有ほゆう残高ざんだかは約やく130兆ちょう円えんだったから、3年ねん半はんで約やく3倍ばいだ。先進せんしん国こくでは類るいを見みない異常いじょうな数字すうじである。

 その一方いっぽうで、民間みんかん銀行ぎんこうは逆ぎゃくに「国債こくさい離ばなれ」が顕著けんちょだ。三菱みつびし東京とうきょうUFJ、三井みつい住友すみとも、みずほの3メガバンクを合あわせた6月がつ末まつの国債こくさい残高ざんだかは43.1兆ちょう円えんで、3月がつ末まつから8兆ちょう円えん弱じゃく減へらしている。長期ちょうき金利きんりが上昇じょうしょうするとの懸念けねんが高たかまっていることに加くわえ、マイナス金利きんり政策せいさくの影響えいきょうで10年ねん物ぶつ国債こくさいでもマイナス金利きんりの落札らくさつが頻発ひんぱつしている。これでは国債こくさいを満期まんきまで保有ほゆうすると損失そんしつが出でてしまうことになる。民間みんかん銀行ぎんこうは国債こくさいを日銀にちぎんに転売てんばいすることでそれを回避かいひしようとしているのだ。このような状況じょうきょう下かで、日銀にちぎんだけが大量たいりょうに国債こくさいを買かい続つづけている。

 この異常いじょうな動うごきの裏うらで、日本にっぽんにいよいよ財政ざいせい危機ききが迫せまっており、政府せいふもそれに備そなえた行動こうどうを始はじめていると指摘してきするのは、『預金よきん封鎖ふうさに備そなえよ』（朝日新聞あさひしんぶん出版しゅっぱん）の著者ちょしゃ・小黒おぐろ一正かずまさ法政大学ほうせいだいがく教授きょうじゅだ。

 2015年ねん9月がつに財務省ざいむしょうの財政ざいせい制度せいど等とう審議しんぎ会かいにおいて「戦後せんごの我わが国くに財政ざいせいの変遷へんせんと今後こんごの課題かだい」と題だいした資料しりょうが出だされた。そこでは、太平洋戦争たいへいようせんそう終戦しゅうせん直後ちょくごに断行だんこうされた「預金よきん封鎖ふうさ」「通貨つうか切きり替かえ」「財産ざいさん税ぜい」といった暴力ぼうりょく的てきな財政ざいせい再建さいけん策さくについての検討けんとうが行おこなわれたというのだ。小黒おぐろ教授きょうじゅは「マイナス金利きんりを含ふくめた現在げんざいの異常いじょうな金融きんゆう政策せいさくは、日本にっぽんを『第だい二にの敗戦はいせん』に陥おとしいれるかもしれない」と警鐘けいしょうを鳴ならす。

 日本にっぽんは終戦しゅうせん直後ちょくご、莫大ばくだい（ばくだい）な戦費せんぴによる財政ざいせい危機ききとハイパーインフレに陥おちいった。そのとき、危機きき脱却だっきゃくを名目めいもくに政府せいふがとった施策しさくが尋常じんじょうではなかった。5円えん以上いじょうの旧きゅう銀行ぎんこう券けんをすべて銀行ぎんこうなどの民間みんかん機関きかんに預あづけさせ「預金よきん封鎖ふうさ」するというものだったのだ。引ひき出だせる金額きんがくは月つきに500円えん（夫婦ふうふと子こども1人にんの標準ひょうじゅん世帯せたいの場合ばあい。現在げんざいの額がくでおよそ20万まん円えん）までに制限せいげんし、必要ひつような額がくだけを新しん銀行ぎんこう券けんで引ひき出ださせるようにした。

 また、それと並行へいこうして数々かずかずの新あらたな特別とくべつ課税かぜいを断行だんこうした。なかでも「財産ざいさん税ぜい」は、一定いってい額がくを超こえる預貯金よちょきん、株式かぶしき、不動産ふどうさんなどの財産ざいさんに一いち回かい限かぎり特別とくべつに課税かぜいするというものだが、最高さいこう税率ぜいりつが90％だったというから驚おどろきだ。戦後せんごのただでさえ苦くるしい生活せいかつの中なかで、国民こくみんにとってはまさに地獄じごくのような状況じょうきょうであったと想像そうぞうできる。