三井不動産や地方自治体が「宇宙で町おこし」に続々参入する理由
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宇宙ビジネスは地域活性化の決め手になるのか?北海道の酪農地域の大樹町では「宇宙港」整備や宇宙産業誘致が進む。一方、三井不動産は東京・日本橋を宇宙の町にしようと、ベンチャー企業を日本橋に誘致し、この4月から大規模インキュベーション組織を社長の肝いりで開設。特集『来るぞ370兆円市場 ビッグバン!宇宙ビジネス』(全13回)の#5では、日本全国に広がる「マジモード」の宇宙町おこしの最前線を追う。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
日本橋に宇宙関係企業30社集結!
三井不動産が進める「日本橋宇宙化計画」
かつお節のにんべんや刃物の木屋、それに料亭などの老舗企業が集積する東京・日本橋。実は今「宇宙の町」に変貌しつつある。
異業種企業で宇宙関連事業を手掛ける企業も含めると、約30社の宇宙企業がすでに日本橋エリアに集結しているのだ。本特集#1、#2で紹介したispace、アクセルスペース、天地人などに加え、JAXA(宇宙航空研究開発機構)も事務所を置く。現在年間200回以上もの宇宙関連イベントが行われており、通りを闊歩する宇宙関係者の姿も目立つようになった。
仕掛けたのは三井不動産だ。2019年から進める日本橋再生計画の一環で、日本橋に宇宙関連の企業の集積をつくろうとしているのだ。植田俊社長の肝いりのプロジェクトでもあるという。
今年4月には宇宙業界の新旧のプレーヤー、ファンド、学識経験者などを集めたプラットフォーム団体「クロスユー」をスタートさせた。
会員は三井不の本拠でもある日本橋三井タワーと、その近隣のビルにある会員専用施設「X-NIHONBASHI」でカンファレンスルーム、コワーキングスペース、バーラウンジ、動画配信施設などが使える。ここでは会員企業間でのビジネスマッチングなどのサービスも随時行われている。実は宇宙関係でこのように業界関係者が集まる拠点的なものは今までなかった。そのためもあり活動開始から半年足らずで会員は160社を超え、さらに毎週数社ずつ増えているという。
「スタートアップと既存大手企業などが出会い、新しい産業が生まれる動きを支援したい。日本橋に『イノベーションが起きる場所』というブランドができると、将来の日本橋への大型テナントのリーシングの決め手になる場合もある」と七尾克久・三井不動産日本橋街づくり推進部長は言う。
新たな企業の誘致やブランドの刷新による地域活性化――。実は「宇宙」は町おこしのメニューとして今、大人気だ。取り組みを行う町は日本橋に限らず全国にあまたある。
特に過疎化に悩む地方自治体が期待を寄せるのが、ロケットだ。すでに射場の整備により、かなりの経済効果が上がっている。現在進んでいる民間事業者による宇宙事業拡大の波に乗って、「宇宙版シリコンバレー」を目指す野心的な計画をぶち上げている自治体も出てきた。
一方で、大きな課題も判明している。全国津々浦々で本気モードで進められる「宇宙町おこし」。壮大な計画は果たしてうまくいくのだろうか。次ページから詳細に見ていこう。