失われた30年の間も「もうひとつの日経平均株価」がバッチリ上昇してたワケ『インベスターZ』(c)三田みたおさむぼう/コルク

三田みたおさむぼう投資とうしマンガ『インベスターZ』題材だいざいに、経済けいざいコラムニストでもと日経新聞にっけいしんぶん編集へんしゅう委員いいん高井たかいひろしあきら経済けいざい仕組しくみをイチから紐解ひもと連載れんさいコラム「インベスターZでまな経済けいざい教室きょうしつ」。だい96かいは「もうひとつの日経にっけい平均へいきん株価かぶか」について解説かいせつする。

レンジ相場そうば退屈たいくつだけど

 藤田ふじた御曹司おんぞうしまきつかさとのFX(外為がいため証拠しょうこきん取引とりひき勝負しょうぶ最終さいしゅう局面きょくめんで、レンジ相場そうばごうやした主人公しゅじんこう財前ざいぜん孝史たかしはレバレッジ200ばい手持ても資金しきん全額ぜんがくとうじるけにる。だい博打ばくち奏功そうこうし、投資とうし存続そんぞくけたたたかいは勝利しょうりいちちかづく。

 レンジ相場そうば退屈たいくつかんじるものだ。株価かぶかにしても、為替かわせにしても、方向ほうこうかんないのはモヤモヤする。長年ながねん、マーケット担当たんとう記者きしゃだったので、ネタにこま憂鬱ゆううつ日々ひび、という印象いんしょうがぬぐえない。

 だが、いちいてると、値動ねうごきが一定いってい範囲はんいないおさまっているのは、市場いちばとファンダメンタルズ(経済けいざい基礎きそてき条件じょうけん)が安定あんていしていて、プライシングもそこそこ適切てきせつあかしでもある。

 えん相場そうばかえれば、それはありがたいはなしだとづく。10ねんちかく1ドル110えん前後ぜんこうのレンジ相場そうばつづいたのち、150~160えんまで一気いっきえんやすすすんだおかげで、実体じったい経済けいざいやマネーのながれにいろいろな波乱はらんゆがみがきている。

 長期ちょうき投資とうし視点してんると、レンジ相場そうばはあまりありがたいものではない。資産しさん価格かかく右肩みぎかたがりになってくれないと、資金しきん長期ちょうきかせる甲斐かいがない。

「もうひとつの日経にっけい平均へいきん株価かぶか」をっていますか?

漫画インベスターZ 11巻P161『インベスターZ』(c)三田みたおさむぼう/コルク

 ただ注意ちゅうい必要ひつようなのは、株価かぶか指数しすうなどのチャートで長期ちょうきのレンジ相場そうばつづいているからといって、投資とうし果実かじつられないわけではないことだ。日経にっけい平均へいきん株価かぶかが1989ねん12がつまつけた3まん8915えん高値たかねいたのが今年ことしの2がつ22にち

 30ねん以上いじょうものあいだ壮大そうだいなレンジからせなかったともえるが、このあいだ投資とうしのリターンが「ってい」だったわけではない。じつは「もうひとつの日経にっけい平均へいきん株価かぶか」はかなり上昇じょうしょうしていたのだ。

 配当はいとう考慮こうりょした「日経にっけい平均へいきんトータルリターン・インデックス」は1989ねんまつから今年ことし2がつまでに6わり程度ていど上昇じょうしょうしている。この指数しすうは、日経にっけい平均へいきん構成こうせいする225銘柄めいがら保有ほゆうしていたらっていたはずの配当はいとうきんを、さらに日経にっけい平均へいきんさい投資とうししていた場合ばあい投資とうし成果せいか試算しさんしたものだ。

 こちらのほう本家ほんけ日経にっけい平均へいきんより投資とうしのリターンの実態じったいちかい。指数しすう配当はいとうにかかるやく2わり税金ぜいきん考慮こうりょしていないので、そのぶんいたとしても、レンジ相場そうばあいだにも株式かぶしき投資とうしからちゃんとリターンがられていた。

 ここからかるのは、長期ちょうき配当はいとうのインパクトと、さい投資とうし重要じゅうようせいだろう。さい投資とうし元本がんぽんふくらませつづければ、いわゆる複利ふくり効果こうかられる。定期ていき分配ぶんぱいがたファンドが長期ちょうき資産しさん形成けいせいかないのは、さい投資とうし複利ふくり効果こうかそこなうからだ。

 賃料ちんりょう収入しゅうにゅうおも収益しゅうえきげんのREIT(不動産ふどうさん投資とうし信託しんたく)のような商品しょうひん場合ばあい、その重要じゅうようせい一層いっそうおおきくなる。東証とうしょうREIT指数しすう分配ぶんぱい金利きんりまわりは4%前後ぜんこう居所きょしょだ。指数しすうよこばいをキープ、つまりレンジ相場そうばにとどまっていれば、投資とうしのリターンとしてはプラスがかさなっていく。

 わたしのYouTubeチャンネル「高井たかいひろしあきらのおカネの教室きょうしつ」では、日経にっけい平均へいきんとトータルリターン・インデックス、そしてもうひとつべつの「日経にっけい平均へいきん」を比較ひかくして、日本にっぽんかぶさい高値たかね更新こうしん意味いみ解説かいせつしている。関心かんしんがあるほうはぜひそちらもごらんいただきたい。

漫画インベスターZ 11巻P162『インベスターZ』(c)三田みたおさむぼう/コルク
漫画インベスターZ 11巻P163『インベスターZ』(c)三田みたおさむぼう/コルク