西本幸雄（にしもと ゆきお）とは、「悲運の名将」と呼ばれた元プロ野球選手・監督のことである。故人。
概要
1920年4月25日生まれ。和歌山県和歌山市。父が銀行の支店長という裕福な家庭にて5人兄弟の末っ子として生まれる。
旧制和歌山中学校に進学。3年まではラグビー部に所属し、4年の秋から野球を始めた。
卒業後、立教大学に進学。当時の野球部には監督がいなかったため、西本が主将を務めながら監督を務めた。
1943年、学徒出陣で応召。陸軍に配属され中国南部に出征、終戦時には少尉まで昇進していた。終戦後、中国国内で半年間の捕虜生活を経験している。
その後中国から引き揚げた後、東洋金属、八幡製鐵、全京都を経た後、1947年に別府の星野組に監督兼内野手として移籍、チームには後にプロ野球でも活躍する荒巻淳がいた。同チームを率いて1949年の都市対抗野球大会を優勝している。
1950年、新規球団の毎日オリオンズに入団。なおこのとき、荒巻を始め星野組の主力選手も引き抜かれるような形で入団している[1]。
入団後はファーストの定位置を獲得し1、2番打者として毎年70～100試合前後に出場、1952年からは主将を任された。1950年には13盗塁、1953年には打率.301をマークしている。1954年からはコーチを兼任。
1955年、現役を引退。引退後も毎日に残留し、二軍監督やヘッドコーチを務めた後、1960年に同球団の監督に就任。
ベテラン・若手を区別せず厳しい練習を課したことから反発を招いたが、中心選手であった山内一弘の「不成績なら監督が責任を取ればいい。一度黙ってニシさんの言うとおりにしてみようや」という一言で騒動は収束。開幕後は超強力打線のミサイル打線が爆発し、初年度からリーグ制覇を達成。ただ、日本シリーズでは三原脩率いる大洋ホエールズに敗退。元々西本の監督就任に「地味すぎる」と難色を示していた永田雄一オーナーは、日本シリーズでのスクイズ失敗をめぐり西本と完全に対立。シリーズ後に西本は監督を辞任した。
大毎を退団後、解説者・評論家としての活動を経て、1962年に低迷していた阪急ブレーブスのコーチに就任。翌1963年に監督に。
負け癖の染み付いているチームの再建に苦戦し、初年度は最下位に沈んだ。それでも基礎の基礎からやり直させ、スパルタ練習を強いてチームを強化していき、2年目の1964年は2位と躍進。しかし1965年は4位、1966年は5位と2年続けてBクラスと伸び悩んだ。
1966年の秋季練習の最中、ロッカールームに選手を集め白紙の紙を渡し、「私を信頼してついてこれるものは◯、そうでないものは✕を書け」と、突如信任投票を実施。結果としては信任が7割を越えていたのだが、白紙を含めた不信任が11名いた事から「これでは指揮が取れない」と荷物をまとめ退任の準備を進めた。ただ、西本のことを信頼していた小林米三オーナーからの強い慰留を受け、辞任を思いとどまった。
続投が決まってからはそれまで以上に厳しい練習を強いてチームの徹底的強化を敢行。この猛練習が実ったか、1967年、阪急球団初のリーグ優勝を達成、結果で応えてみせた。以降、1968年・1969年とパ・リーグ三連覇を達成。翌1970年は4位に沈んだが、1971年・1972年と二連覇を達成。なおこの時期に後の阪急の主力となる山田久志・福本豊・加藤秀司らが入団している。
1973年、南海ホークスとのプレーオフに敗れ2位となると、「次期監督には上田利治のような柔軟な人物が良い」と語り、惜しまれながらも退任している。
翌1974年、万年Bクラスであった近鉄バファローズの監督に就任。
近鉄でも猛練習でチームを鍛えていき、1975年にはプレーオフで敗れての2位、1978年も2位とチーム力はついたが、自らが強くした阪急の壁に阻まれ続けた。1978年オフに辞意を固め、退任するつもりでいたが、鈴木啓示を始め選手たちからの「辞めないでくれ」という強い慰留や、富和宗一オーナーらの熱意にほだされ辞意を撤回した。
1979年、悲願のリーグ初制覇を達成。迎えた日本シリーズでは広島東洋カープ相手に最終戦までもつれ込む熱戦だったが、所謂「江夏の21球」の前に惜しくも日本一を逃す。翌1980年もリーグ優勝し二連覇で日本シリーズに出場するも、またしても広島に阻まれてしまった。
1981年は一転して最下位に沈み、同年限りで勇退。
退団後は解説者や評論家として活動。
1988年野球殿堂入り。
晩年は時折野球に関するコラムや評論の執筆こそあったが、ほぼ隠居生活を送っていた。
2011年11月25日、心不全のため死去。享年91歳。
人物・エピソード
スパルタ式の猛練習を課し、時間をかけてチームを再建することに長けた名監督。鉄拳制裁も辞さず、時には基礎中の基礎であるキャッチボールのやり方から学び直させることもあったという。
教え子には米田哲也・足立光宏・山田久志・福本豊・鈴木啓示・梨田昌孝・佐々木恭介…他多数、というように阪急・近鉄の黄金時代の主力選手らが名を連ね、育成力の高さを物語っている。また、上田利治や仰木彬といった名将たちにも大きな影響を与えている。
通算で8度のリーグ制覇を達成しながら、ついに日本一には手が届かなかったことから「悲運の名将」と呼ばれることも多い。ただ、西本自身は「幸運の凡将」と自称し、「オレみたいなもんが、8回も優勝できたのは選手のおかげや」と語るなど、嘆くことはなかった。
選手時代は器用な一塁手として知られ、左利きながら一度だけセカンドを守ったことがある。NPBで左利きのセカンドとしてプレーしたことがあるのは西本以外には山田伝・鬼頭数雄の二人だけである。
通算成績
打撃成績
監督成績
関連動画
関連商品
関連リンク
関連項目
脚注
- *給与の未払いや支払いの遅延があったため不満を持っていた選手が多かったことも一因と言われている。
-
ページ番号: 5671739
-
-
リビジョン番号: 3119409
-
- 編集内容についての説明/コメント:
新規作成
12
