007 単語たんご

007とは、

1. 007（ダブルオーセブン）シリーズ - イアン・フレミングのスパイ小説しょうせつを原作げんさくとする人気にんきスパイアクション映画えいがシリーズ。007とは、主人公しゅじんこう「ジェームズ・ボンド」のコードネームである。
2. 007（ゼロゼロセブン） - 石ノ森いしのもり章太郎しょうたろうのSF漫画まんが「サイボーグ009」に登場とうじょうするメインキャラの一人ひとりで、ゼロゼロナンバーサイボーグの7体たい目め。人間にんげんとしての名前なまえは「グレート・ブリテン」。

以下いか、上記じょうきの1.について説明せつめいする。

右みぎの絵えは、『ロシアより愛あいをこめて』のポスターでワルサーを構かまえる初代しょだいボンド、ショーン・コネリーの姿すがた。まだふさふさ。

職業しょくぎょうについてであるが、スパイのイメージが先行せんこうするが、正確せいかくには軍人ぐんじん。階級かいきゅうは海軍かいぐん中佐ちゅうさ（予備よび役やく中佐ちゅうさとなっている場合ばあいもある）。

スパイ活動かつどう中ちゅうは主あるじに「ユニバーサル貿易ぼうえき」という架か空そら会社かいしゃの名刺めいしを使つかう。

概要がいよう

主人公しゅじんこう「ジェームズ・ボンド」はイギリス秘密ひみつ情報じょうほう部ぶMI6のメンバー。
殺人さつじん許可きょか証あかし（殺ころしのライセンス）と「007」のコードネームを持もつ彼かれが、優すぐれた能のう力ちからとハイテクアイテムを駆使くしして、奇想きそう天てん外そとな活躍かつやくをするスパイアクションである。
ボンド・ガールと呼よばれる美女びじょとの絡がらみも見所みどころのひとつである。

過去かこにテレサ（通称つうしょう「トレーシー」）という女性じょせいと結婚けっこんした経験けいけんがある（「女王じょおう陛下へいかの007」）。しかしハネムーンに行いく途中とちゅう、抹殺ころしたはずであった犯罪はんざい組織そしき「スペクター」の首領しゅりょうエルンスト・ブロフェルドによってテレサは殺ころされてしまう。ボンドは傷心しょうしんの為ためにしばらく休職きゅうしょくしており、ショックは相当そうとう大おおきかったようだ（※映画えいがでは2代目だいめボンドのジョージ・レーゼンビーを降くだ板いたさせ、ショーン・コネリーをカムバックさせた事ことを取とり繕つくろうために「ボンドの休職きゅうしょく」を使つかった）。「私わたしを愛いとしたスパイ」でも妻つまに関かんする話題わだいは話はなしをそらし、第だい12作さく「ユア・アイズ・オンリー」の冒頭ぼうとうはボンドがテレサの墓参ぼさんに来くるところから始はじまっている（ちなみに、そこに宿敵しゅくてきブロフェルドがボンドを襲撃しゅうげきするも、煙突えんとつに突つき落おとして返かえり討うちにする。妻つまを殺ころした宿敵しゅくてきの最期さいごはあっけないものであった）。

4代だい目めボンドのティモシー・ダルトン時代じだいでも結婚けっこんを進すすめられると嫌いやな顔かおをし、友人ゆうじんのフィリックス・ライターが「彼かれ（ボンド）は過去かこに結婚けっこんした事ことがあるんだよ」と話はなしている（「消けされたライセンス」）。

「007」は「ダブルオーセブン」が正ただしい読よみ方かたとして現在げんざいは定着ていちゃくしているが、実際じっさいには80年代ねんだい末すえから90年代ねんだいまでは「ゼロゼロセブン」と呼よばれていた（1989年ねんの第だい16第だい「消けされたライセンス」の日本語にほんご吹ふき替かえには「ゼロゼロセブン」となっているバージョンもある）。正式せいしき名称めいしょうとして使つかわれていたのは7作さく『ダイヤモンドは永遠えいえんに』までであったが、実質じっしつ的てきにはピアース・ブロスナンのボンド作品さくひん以後いご、「ダブルオーセブン」に統一とういつされた。

映画えいが

60年代ねんだいより映画えいが化かされ、現在げんざいまでに実じつに23作さくが公おおやけ開ひらくされている人気にんきシリーズとなっている。
多おおくの場合ばあい、007といえば、原作げんさく小説しょうせつではなくこの映画えいがシリーズを指ゆびす。

ボンドを演えんじた俳優はいゆうはこれまでに6人にん。ボンドに抜擢された俳優はいゆうは登板とうばん本数ほんすうではなく、契約けいやく年数ねんすう、つまり「どれだけの間あいだ“ジェームズ・ボンド”だったか」というのが評価ひょうかの基準きじゅんとなっている（タイアップ商品しょうひん、スポンサー企業きぎょうのコマーシャルや宣伝せんでん・広告こうこくにジェームズ・ボンドとして出演しゅつえんする事ことなども関係かんけいする）。その基準きじゅんでいえば、3代だい目めボンドのロジャー・ムーアが歴代れきだい最長さいちょう、次ついで初代しょだいボンドのショーン・コネリーと5代目だいめボンドのピアース・ブロスナン。最短さいたんは2代目だいめボンドのジョージ・レーゼンビー。もっとも、ボンド役やく降くだ板いた後こうも紹介しょうかいおよびプロフィール欄らんには「元もとジェームズ・ボンド（あるいは“ジェームズ・ボンド役やく、（登板とうばん年数ねんすう・作品さくひん名めい）”」と必かならず書かかれる他ほか、007シリーズの記念きねん行事ぎょうじには歴代れきだいボンドが集結しゅうけつする。

シリーズ50周年しゅうねんを迎むかえた際さいには記念きねんとして歴代れきだいボンド6人にんが集結しゅうけつし、共通きょうつうするスタイルのもと（カジノにおいてタキシードを着用ちゃくようし、タバコを片手かたてにウォッカ・マティーニを飲のむ）でポーズをとるポートレートが撮つまみ影かげされた。

演えんじる俳優はいゆうごとに、ボンドのキャラクターはもちろん、作さく風ふうが大おおきく異ことなっており、ファンの間あいだでも好このみが分わかれている。例たとえば、あくまでもスパイものを追及ついきゅうするならば初代しょだいボンドのショーン・コネリーやジョージ・レーゼンビー、軽妙けいみょうで社交しゃこう的てきでコメディー的てきな作品さくひんを見みるならばロジャー・ムーア、ハードボイルド系けいで人間にんげん臭くささが出でている作品さくひんはティモシー・ダルトン、ダンディで軽かろやかなピアース・ブロスナン・・・など、それぞれの個性こせいが出でている事こともまたこの作品さくひんが長ながく愛あいされる理由りゆうである。上記じょうきの通とおり、ショーン・コネリーとロジャー・ムーアが長ながい期間きかんボンド役やくを務つとめたので、彼かれら以外いがいの歴代れきだいボンドは評価ひょうかされる際さい、「コネリーと比ひべて～」「ムーアと比ひべて～」とファンやマスコミの間あいだで前置まえおきされることもしばしばある。

しかし、作さく風ふうの違ちがいはあるものの、シリーズを通とおして恒例こうれいの描写びょうしゃは一貫いっかんして持もたれている。
たとえば、"Bond,James Bond."とボンドが自己じこ紹介しょうかいするシーンや、自みずからを狙ねらう銃じゅう口くちに向むかって華はな麗うららに撃うち返がえすボンドを狙撃そげき者もの側がわから映うつした「ガンバレル」と呼よばれるオープニングシークエンスなどである（いずれも1作さくのみ例外れいがい）。「ボンド。ジェームズ・ボンド。」と「Vodka Martini,Shaken,not stirred(ウォッカ・マティーニ、ステアではなくシェイクで)」のセリフは「世界せかいの映画えいがファンが選えらぶ名めいセリフランキング」で上位じょういを獲得かくとくし続つづけている。

ルパン三さん世せい、METAL GEAR SOLID3 SNAKE EATERなど、このオープニングシーンを含ふくめ、同どうシリーズをオマージュした作品さくひんは世界せかい中なかに多おおく存在そんざいする。

作品さくひんごとに、そのタイトル名なやそれをイメージするものを歌詞かしに含ふくんだテーマ曲きょくがあり、公おおやけ開ひらけ当時とうじの世界せかいのトップアーティストを豪ごう勢いきおいに起用きようしている。タイトルソング（テーマソング）は基本きほん的てきに毎回まいかい違ちがったアーティストや歌手かしゅが担当たんとうするが、シャーリー・バッシーが唯ただ一いち3作品さくひんのタイトルソングを歌うたっている（「ゴールドフィンガー」「ダイアモンドは永遠えいえんに」「ムーンレイカー」の3作品さくひん。「サンダーボール作戦さくせん」のタイトルソングとして「kiss-kiss,bang,bang」という曲きょくも歌うたったが、作品さくひんタイトルが入はいっていない事ことと2作さく連続れんぞくでバッシ―が担当たんとうする事ことになるということで劇げき中歌なかうたとなり、急せきょトム・ジョーンズの「サンダーボール」を収録しゅうろくしてタイトルソングにした）。

第だい1作さく「Dr.No」のオープニングタイトルはおなじみの「ジェームズ・ボンドのテーマ」。また「ロシアより愛あいをこめて」はオープニングがインストゥルメンタル（エンディングはマット・モンローが歌うたを担当たんとう）、「女王じょおう陛下へいかの007」はタイトル自体じたいがインストゥルメンタルとなっている（劇げき中歌なかうたをルイ・アームストロングが歌うたを担当たんとう）。

シリーズ40周年しゅうねん記念きねん作品さくひんとなった第だい20作さく「ダイ・アナザー・デイ」ではタイトルソングを担当たんとうしたマドンナはフェンシングハウスの女おんな主あるじ人ひと役やくとして劇げき中ちゅうにも出演しゅつえん。タイトルソング担当たんとうアーティストが女優じょゆうとして作品さくひん中ちゅうに出演しゅつえんするのは彼女かのじょが初はじめて。（タイトル映像えいぞうにアーティストが出演しゅつえんする例れいは「ユア・アイズ・オンリー」でシーナ・イーストン、「トゥモロー・ネバー・ダイ」でシェリル・クロウがある）

作品さくひん冒頭ぼうとうはガンバレルの後のち、007が登場とうじょうして活躍かつやくし、オープニングへとつながっていく。ガンバレルは「サンダーボール作戦さくせん」からボンド役やくの俳優はいゆう本人ほんにんが演えんじた（初期しょき3作品さくひんにおけるガンバレルのボンド役やくはスタントマンのボブ・シモンズ）。

オープニング映像えいぞうは英国えいこくロイヤルバレー団だんによるものの他ほか、近年きんねんになってからはCGやアニメーションを駆使くししたデザインのオープニングが流ながれる。第だい16作さく「消けされたライセンス」までは一貫いっかんしてモーリス・ビンダーによって映像えいぞうが作つくられ、第だい4作さく「サンダーボール作戦さくせん」ではアカデミー賞しょうで最優秀さいゆうしゅう視覚しかく効果こうか賞しょうを獲得かくとくしている。

本ほん作品さくひんはイギリス映画えいがの代表だいひょう的てき存在そんざいである事ことから、制作せいさくに際さいして英国えいこく政府せいふが最大限さいだいげんのバックアップをする。ロンドン市し内うちでの撮つまみ影かげでは道路どうろ封鎖ふうさや、特例とくれいによって猛たけしスピードでのチェイスシーンや爆破ばくはシーン撮つまみ影かげの許可きょかを出だす他ほか、実際じっさいに使つかわれているパトカーや警備けいび用ようバイクを登場とうじょうさせる（ただし破壊はかいや爆破ばくはによって壊こわされるシーン以外いがい）。モブキャラクターとして現職げんしょくの警官けいかんも出演しゅつえんさせている。協きょう力ちからは警察けいさつだけではなく英国えいこく海軍かいぐんも同おなじで、軍ぐん基地きちおよび戦艦せんかん・基地きちをロケ現場げんばとして提供ていきょうする。やはりこちらもモブキャラクターとして現役げんえきの軍人ぐんじんが出演しゅつえんしており、無む線せん交信こうしんのシーンなどでリアルな様子ようすを再現さいげんしている。アメリカの陸りく・海うみ・空軍くうぐんも協きょう力ちから的てきで、沖縄おきなわにある各かく基地きちでの撮つまみ影かげも行おこなわれている。

映画えいが概要がいよう（映画えいが化かまでの道みちのりとその行程こうてい）

原作げんさく者ものであるイアン・フレミングは実際じっさいに英国えいこく海軍かいぐん情報じょうほう部ぶで諜報ちょうほう活動かつどうを行おこなった経験けいけんがあり、それを基もとにして書かき始はじめたのが007シリーズとなる。処女しょじょ作さくは「カジノ・ロワイヤル」（映画えいが第だい21作さくの原作げんさく）。それから1964年ねんに没ぼつするまで執筆しっぴつ活動かつどうを続つづけるのであるが、本ほん自体じたいの売うれ行ゆきは当初とうしょ芳かんばしいものではなかった。本格ほんかく的てきに注ちゅう目めされるようになったのはアメリカ大統領だいとうりょうジョン.F.ケネディと妻つまジャクリーンが愛あい読書どくしょに「ロシアより愛あいを込こめて」（映画えいが第だい2作さく原作げんさく）を挙あげた事ことが知しられると、売うれ行ゆきが増ふえていくことになった。

フレミングの死後しごは未亡人みぼうじんの許可きょかを得えて、「フレミング」名義めいぎで何人なんにんかの作家さっかや脚本きゃくほん家かが007シリーズを執筆しっぴつして行いく事こととなった。ティモシー・ダルトン時代じだいの第だい16作さく「消けされたライセンス」および、ピアース・ブロスナンが登板とうばんした4作品さくひんはジョン・ガードナーとレイモンド・ベンソンによって書かかれたものである（あくまでも原作げんさく者もの名義めいぎはイアン・フレミング）。

いわゆる「007」シリーズの連作れんさく映画えいが化か前まえの1954年ねん、アメリカで「カジノ・ロワイヤル」が連続れんぞくテレビドラマとして放送ほうそうされた。この時ときのジェームズ・ボンドはバリー・ネルソンが演えんじている。この事ことでハリー・サルツマンとアルバート・ブロッコリは「カジノ・ロワイヤル」の映像えいぞう化か権けんを手てにする事ことが出来できなかった（なお、すでにショーン・コネリー主あるじ演えんじによる「007シリーズ」が既すでに始はじまっていた1967年ねんにもピーター・セラーズ、デイヴィッド・ニーヴンらが出演しゅつえんする映画えいが「007/カジノ・ロワイヤル」が製作せいさくされているが、その内容ないようは原作げんさくとは全まったく異ことなるドタバタ劇げき）。結局けっきょく「カジノロワイヤル」の映像えいぞう化か権けんをイオン・プロダクション（バーバラ・ブロッコリ）が手てに入いれたのは2006年ねんであった。

時代じだいは戻もどって、1960年ねんごろ、売うれ行ゆきが伸のびていたフレミングの007シリーズに目めを付つけたハリー・サルツマンはいち早はやくフレミングに映像えいぞう化かの許可きょかを得える。アルバート・ブロッコリも個別こべつにフレミングに映像えいぞう化かの許可きょかを求もとむめたが、サルツマンに委ゆだねた事ことを放はなすと、ブロッコリはサルツマンに接触せっしょくして合同ごうどうで制作せいさくして行いく事ことに決きまり、イオン・プロダクションを設立せつりつした。

1962年ねん、ショーン・コネリーを主あるじ役やくジェームズ・ボンドに迎むかえて第だい1作さく「ドクター・ノオ」を制作せいさく。低てい予算よさんで制作せいさくされたが大だいヒットとなり、主あるじ演えんじのコネリーも一躍いちやくスターダムに上のぼり詰つめた。シリーズ化かされる事こととなり、第だい2作さく「ロシアより愛あいを込こめて」も続つづいてヒット。第だい3作さく「ゴールドフィンガー」、第だい4作さく「サンダーボール作戦さくせん」（製作せいさく開始かいし当初とうしょ、第だい1作さくはこの作品さくひんになる予定よていであった）を経へて、1967年ねんに第だい5作さく「007は二に度ど死しぬ」では日本にっぽんが舞台ぶたいとなり、日本にっぽんの公安こうあん庁ちょうトップ「タイガー田中たなか」に丹波たんば哲郎てつろう、ボンドガールに若林わかばやし映子えいこ・浜はま美枝みえを迎むかえて製作せいさくされた（この時とき、ロケ地ちであった姫路城ひめじじょうの一部いちぶを壊こわしてしまうという事故じこが起おきた）。この作品さくひんでボンド・カーとなった「トヨタ2000GT」は、歴代れきだいボンドカーの中なかでも特とくに人気にんきである。ショーン・コネリーはこの作品さくひんでボンドを降くだ板いたする事ことになった。

コネリーの後継こうけいとなる俳優はいゆうを選えらぶのと同時どうじに、サルツマンの提案ていあんによって第だい6作さくが「女王じょおう陛下へいかの007」に決定けってい。2代目だいめボンドとしてジョージ・レーゼンビーを迎むかえる（後のちにボンドを演えんじるロジャー・ムーアもオファーを受うけていた）。ところが前ぜん5作さくよりも興きょう行くだり収入しゅうにゅうが芳かんばしくなかった事ことに加くわえて、オーストラリア出身しゅっしんであったレーゼンビーの英語えいご発音はつおんの悪わるさ（いわゆる“オージー・イングリッシュ”）や、演技えんぎのたどたどしさ（長身ちょうしんゆえに動うごきががさつに見みえてしまう）などが颯爽さっそうとしたボンド像ぞうに似合にあわないのではないかという意見いけんが集中しゅうちゅうした為ため、レーゼンビーはこの一いち作さくだけで降くだ板いたとなってしまった。この事ことについては、レーゼンビーの態度たいどが悪わるかった等々とうとうの噂うわさもあるが、それが直接的ちょくせつてきな降くだ板いた原因げんいんではなかったとブロッコリもサルツマンも述懐じゅっかいしている。レーゼンビーは「もう１，２作さくはボンドを演えんじるつもりでいた」と回顧かいこしており、ブロッコリからは1作さくのみで降くだ板いたさせた事ことを詫わびる電話でんわがかかってきたという。

この「女王じょおう陛下へいかの007」は以後いごのボンドの歩あゆむ歴史れきしにおいて重要じゅうようなポイントを描えがいた（結婚けっこんと妻つまとの死別しべつ）ものである事ことや、ボンドとテレサが次第しだいに惹ひかれあっていくというラブストーリー的てき展開てんかいなど人間にんげんドラマの重視じゅうし、また後ごのティモシー・ダルトンが演えんじたボンド像ぞうに近ちかい、一人ひとりの人間にんげんとしてのボンドの姿すがたが描えがかれた作品さくひんである。アクションシーンはバリエーション豊ゆたかではあるが舞台ぶたいのほとんどが雪ゆき山やまの中なかとあって単調たんちょうに感かんじられるとの意見いけんもある。しかしアルプスの頂上ちょうじょうにある研究けんきゅう所ところという閉とざされた空そら間あいだにおける諜報ちょうほう活動かつどう、敵てきとの対峙たいじが多おおく終始しゅうし緊張ちょうした雰囲気ふんいきを出だしている本ほん作さくは「スパイものらしさが出でている」としてファンの中なかでは割合わりあい人気にんきが高たかい。映画えいが評論ひょうろん家かも007シリーズの中なかで「最もっとも好すきな作品さくひん」として紹介しょうかいされる事ことも多おおく、近年きんねん再さい評価ひょうかされている。

ジョージ・レーゼンビーを1作さくだけで降くだ板いたさせたことによって次つぎ作さくのボンドを誰だれにするかが問題もんだいとなった。この時ときも、後のちに3代だい目めボンドを演えんじる事ことになるロジャー・ムーアに再ふたたびオファーがいくも、多忙たぼうの為ために再ふたたび契約けいやくがかなわなかった。

紆余曲折うよきょくせつがあった後のちに、人気にんきもあったショーン・コネリーを「1作品さくひんのみ」という条件じょうけんでカムバックさせる。第だい7作さく「ダイアモンドは永遠えいえんに」はブロッコリの提案ていあんによって製作せいさくされた。興きょう行くだり収入しゅうにゅうは再ふたたび上あがったが、サルツマン主あるじ導しるべであった前作ぜんさくの不振ふしんに対たいしてブロッコリ主あるじ導しるべとなったこの作品さくひんは大だいヒットを記録きろくした事ことで、二人ふたりの間あいだのパワーバランスが変かわり、サルツマンの影かげ響ひびき力ちからは弱よわくなった。最終さいしゅう的てきにアルバート・ブロッコリがイオン・プロダクションの主あるじ導しるべ者しゃとなったが、シリーズを支ささえてきたプロデューサーのケビン・マクローリーとブロッコリの間あいだに権利けんりを巡めぐる争あらそいが起おき、この問題もんだいは長引ながびく事こととなる。

コネリーは本ほん作品さくひんを撮つまみ影かげ後ご、再ふたたびボンドに対たいする熱意ねついが再燃さいねんし、独自どくじに007シリーズ映画えいがを製作せいさくしたいとの意向いこうを示しめすがイオン・プロダクションは当然とうぜんながらそれを拒否きょひし、両者りょうしゃは決裂けつれつする。なおもコネリー側がわは交渉こうしょうを続つづけたが、結局けっきょく話ばなしはまとまらず、1982年ねんにコネリーはオリジナルレーベルで「サンダーボール作戦さくせん」をリメイクした「ネバーセイ・ネバーアゲイン」を「スターウォーズ」でメガホンを取とった経験けいけんのあるアーヴィン・カーシュナー監督かんとくで制作せいさくする。コネリーは以後いごも続編ぞくへんを制作せいさくする意志いしはあったが、本家ほんけの007シリーズには叶かのうわず、1作さくで終おわる事こととなった。コネリー側がわとイオンプロダクションは一時いちじ対立たいりつ関係かんけいにあったが、後のちに和解わかい。これによって同どう作品さくひんは007シリーズの「外伝がいでん」的てきな作品さくひんと位置いちづけられた（「ミスター・ビーン」シリーズで有名ゆうめいなローワン・アトキンソンは本ほん作さくでイギリス大使たいし館員かんいんを演えんじており、後のちに007のパロディー映画えいが「ジョニー・イングリッシュ　偽いつわりの報酬ほうしゅう」を制作せいさくしている）。

これまでオファーを出だすも、多忙たぼうの為ためなかなかＯＫが出でなかったロジャー・ムーアとようやく契約けいやくが結むすべた事ことで、3代だい目めボンドが決定けっていした。ウェールズ出身しゅっしんのコネリー、オーストラリア出身しゅっしんのレーゼンビーに変かわって、イングランド出身しゅっしんであるムーアがボンドになった事ことで、初はじめて原作げんさく設定せってい通どおりの「クイーンズ・イングリッシュ」を話はなすボンドが誕生たんじょうした。ムーア・ボンドの初はつ作さく「死しぬのは奴やつらだ」（シリーズ第だい8作さく）では音楽おんがく担当たんとうに元もとザ・ビートルズのポール・マッカートニーと、ビートルズの元もとプロデューサーで作曲さっきょくの才ざいもあったジョージ・マーティンを迎むかえた（演奏えんそうはポール・マッカ－トニー＆ウイングス）。コネリー時代じだいの作品さくひんで「ビートルズはヘッドホンをして聞きく事こと（“ロックンロールは聞きくものではない”という意味いみ）」と皮かわ肉にくを言いわれていた人物じんぶつが音楽おんがく担当たんとうになった事こととなる。

軽妙けいみょうで、時ときにジョークを交まじえたテンポ良よいセリフ回まわしを持もち味あじとしながらも、シリアスシーンもラブシーンも無む難なんにこなせるムーアの安定あんていした演技えんぎは作品さくひんの安定あんてい化かにもつながった。第だい9作さく「黄金おうごん銃じゅうを持もつ男おとこ」では原作げんさく者ものイアン・フレミングの従兄弟いとこにあたるクリストファー・リーが悪役あくやくスカラマンガとして出演しゅつえんした。第だい10作さく「私わたしを愛いとしたスパイ」が大だいヒットした事ことで制作せいさく意欲いよくがより高たかまったことにより、次つぎ作さく予定よていであった「ユア・アイズ・オンリー」（第だい12作さく）の製作せいさくを急せきょ繰くり下さげて、ボンドが宇宙うちゅうで大だい活躍かつやくする第だい11作さく「ムーンレイカー」を公おおやけ開ひらけした。本ほん作さくはフレミング原作げんさくであるが、同どう時期じきアメリカで「2001年ねん宇宙うちゅうの旅たび」「未知みちとの遭遇そうぐう」「スターウォーズ」といった宇宙うちゅうモノの映画えいががヒットしていた事ことに便乗びんじょうした作品さくひんという一いち面めんもある。本ほん作さくは記念きねん碑ひ的てき作品さくひんの色いろが強つよく、現在げんざいでもその作品さくひんの評価ひょうかが色々いろいろとなされる。だが当時とうじ最さい新鋭しんえいの宇宙うちゅう船ふねとして開発かいはつされ、運用うんようされる直前ちょくぜんであったスペースシャトルを登場とうじょうさせている部分ぶぶんは先見せんけんの明あかりがあったと言いえるだろう（蛇足だそくだが、本ほん作さくは「2ちゃんねる」実況じっきょう板いたを大量たいりょうに消費しょうひした“お化ばけ作品さくひん”という一いち面めんもある）。

「ムーンレイカー」にも代表だいひょうされるように、ムーアのボンド作品さくひんはこれまで以上いじょうに広ひろい舞台ぶたいをテーマに活躍かつやくした。またバラエティー化かも図はかられ初期しょき作品さくひんにはペッパー保安ほあん官かん（「死しぬのは奴やつらだ」「黄金おうごん銃じゅうを持もつ男おとこ」）や鋼はがね鉄てつの歯はを持もつ巨人きょじんジョーズ（「私わたしを愛いとしたスパイ」「ムーンレイカー」）といった個性こせい的てきな常連じょうれんキャラも登場とうじょうさせ、より広ひろい客層きゃくそうを獲得かくとくした。第だい13作さく「オクトパシー」はショーン・コネリーの007リメイク作品さくひん「ネバーセイ・ネバーアゲイン」と同時どうじ公おおやけ開ひらくとなり話題わだいとなった（興きょう行くだり収入しゅうにゅうの“対決たいけつ”は、予測よそく通どおり本家ほんけの「オクトパシー」が勝かった）。そして第だい14作さく「美うつくしき獲物えものたち」を最後さいごとしてムーアは降くだ板いた。ムーアは1973年ねんから1985年ねんまで、合計ごうけい7本ほんの作品さくひんに登板とうばんし、歴代れきだいで最長さいちょう期間きかんジェームズ・ボンドを演えんじた。ちなみに、ロジャー・ムーアは初代しょだいボンドのショーン・コネリーの1歳さい年上としうえで、最終さいしゅう作さくの時点じてんで57歳さいであった。ムーアは後のちに降くだ板いた理由りゆうを「このままだと本当ほんとうに殺ころされると思おもったからだ」とジョークにしている。なお、ムーアのボンドはロータス・スポーツ（ロータス・エスプリ）をボンド・カーとして使用しようした。

ロジャー・ムーアの後継こうけいにおいて、当時とうじ若手わかて俳優はいゆうとして人気にんきを集あつめつつあったピアース・ブロスナンに注ちゅう目めが集あつまりオファーが行おこなったが、ブロスナンもまた多忙たぼうのためにボンド役やくを引ひき受うける事ことは出来できなかった。結果けっか、もう一人ひとりの最さい有ゆう力ちから候こう補ほとして秋あき波なみを送おくっていたティモシー・ダルトンとの間あいだに契約けいやくが交かわされ、4代だい目めボンドが決定けっていした。第だい15作さく「リビング・デイライツ」においてダルトンはムーアが作つくったヒーロー然しかとしたボンド像ぞうとは異ことなる、人間にんげん味あじの強つよいボンド像ぞうを描えがき人気にんきを博はくした。つづく第だい16作さく「消けされたライセンス」は親おや友ともであるアメリカＣＩＡエージェントであるフィリックス・ライターと、彼かれの新妻にいづまデラの悲劇ひげきに接せっしたボンドが怒いかりに燃もえ、職務しょくむを無視むしして復讐ふくしゅうをする、という作品さくひんであった。これまでの作品さくひんは任務にんむの遂行すいこうがメインであったのに対たいして、本ほん作さくは任務にんむを無視むしして個人こじん的てき復讐ふくしゅうを行おこなうというシリーズでも異色いしょくの作品さくひんであった。今いままでのボンドらしからぬダーティーなやり方かたや残酷ざんこくな方法ほうほうで復讐ふくしゅうを遂行すいこうする本ほん作品さくひんは同時どうじに、完かん全ちょん無む欠かけではない人間にんげんとしてのジェームズ・ボンドの姿すがたが際立きわだつ作品さくひんとなった。異色いしょく作さくとなった「消けされたライセンス」の最終さいしゅう的てき興きょう行くだり収入しゅうにゅうはそれほど芳かんばしくはなかったが、2代目だいめボンドの作品さくひん「女王じょおう陛下へいかの007」と同おなじく、後年こうねんになって再さい評価ひょうかされている。

「消けされたライセンス」の公おおやけ開ひらけ後ご、ダルトンは数すう作品さくひんへの出演しゅつえん契約けいやくをしていたが、アルバート・ブロッコリとプロデューサーであったケビン・マクローリー、さらには原作げんさく者ものイアン・フレミングの関係かんけい者しゃ間あいだにおける権利けんりを巡めぐる係争けいそうが長引ながびいていた事こと、制作せいさく会社かいしゃであったイオン・プロダクションの経営けいえい不振ふしんなどがあった上うえに、ハリウッド映画えいが人気にんきの波なみに押おされたこと、そして東西とうざい冷戦れいせん終局しゅうきょく・ソ連それん崩壊ほうかいによって“大おおきな敵てき（悪役あくやく）”が設定せっていしにくくなった事ことなどの影かげ響ひびきが重かさなり、制作せいさくが滞とどこおっていく。無む為ために時間じかんだけが過すぎた結果けっか、ダルトンとの契約けいやくも切きれてしまい（ダルトンは後年こうねん「作品さくひんが出来できない事ことでボンドに対たいする熱意ねついが薄うすまってしまった」と回想かいそうしている）、結果けっか的てきに2作品さくひんでボンドを降くだ板いたする事ことになった。ダルトンの演えんじたボンドは知性ちせい的てきでありながらアクティブで人間にんげんらしい一いち面めん（感情かんじょうが豊ゆたか）も併あわせ持もつ存在そんざいとして人気にんきがあっただけに、早はや期きの降くだ板いたは惜おしまれた（日本にっぽんでは今いまでも激げき賞しょうされる）。

ダルトン降くだ板いた後ご、5代目だいめボンドにピアース・ブロスナンが決定けっていするまでの間あいだ、6年ねんの空白くうはくが出来できる事こととなった。1995年ねん、ファンや映画えいが関係かんけい者しゃの強つよい期待きたいやイオンプロダクションの財政ざいせい状況じょうきょうが持もち直なおした事ことを期きに、アルバート・ブロッコリと娘むすめのバーバラによってようやく製作せいさくが再開さいかいされ、ピアース・ブロスナンを新あたらしいボンドとして迎むかえ第だい17作さく「ゴールデンアイ」を制作せいさくした。実じつは、ブロスナンは既すでに何なん度どもボンドのオファーが来きていたが、他たのドラマ出演しゅつえんの関係かんけい上じょうなかなか契約けいやくを結むすぶことが出来できなかった。ロジャー・ムーアが降くだ板いた時ときすでに後継こうけい候こう補ほにも挙あがっており、ティモシー・ダルトンがオファーを断ことわり、ブロスナンが承諾しょうだくしていたら「リビング・デイライツ」「消けされたライセンス」はブロスナンのボンドになっていた（逆ぎゃくを言いえば、トラブルが無むければ「ゴールデンアイ」「トゥモロー・ネバー・ダイ」までダルトンがボンドを演えんじた可か能のう性せいもあったという事ことになる）。まさに“意中いちゅうの相手あいて”であったブロスナンがボンドに抜擢されることで演者えんじゃ・製作せいさく陣じんともに意欲いよく的てきに動うごくことになった。

約やく7年ねんぶりに帰かえってきた007シリーズは予想よそう通どおり大だいヒットを記録きろくした。また、様々さまざまな媒体ばいたいともタイアップ。当時とうじ新しん発売はつばいのゲーム機きNINTENDO64でスパイアクションゲーム「007　ゴールデンアイ」を発売はつばいした。このゲームについては別べつに項こう目めがあるのでここでの詳細しょうさいな言及げんきゅうはしないが、ニコニコ動画どうがでもおなじみの作品さくひんである事ことは間違まちがいない。（2014年ねん、トークショーに出演しゅつえんしたブロスナンがついにこのゲームをプレイする事こととなった。だが、ゲームは慣なれていないという事ことで敵てきに見みつかり“即死そくし”する）。

続つづいて第だい18作さく「トゥモロー・ネバー・ダイ」ではボンドガールにミシェール・ヨーを迎むかえた。ボンドガールがアジア人ひとに選えらばれるのは「007は二に度ど死しぬ」以来いらい。また前作ぜんさく「ゴールデン・アイ」からボンドをサポートするＣＩＡエージェントのジャック・ウェイド役やくとして「リビング・デイライツ」で敵役かたきやくブラッド・ウィティカーを演えんじたジョー・ドン・ベイカーが出演しゅつえんしている（吹替ふきかえ担当たんとうは「リビング・デイライツ」公おおやけ開ひらけ時ときティモシー・ダルトンの担当たんとうをした小川おがわ真司しんじ）。続つづく第だい19作さく「ワールド・イズ・ノット・イナフ」ではソフィー・マルソーが妖艶ようえんな演技えんぎを見みせた。

2002年ねん、シリーズ20作品さくひん目めにしてシリーズ40周年しゅうねん記念きねんの作品さくひんとなった「ダイ・アナザー・デイ」公おおやけ開ひらけ後ご、製作せいさく側がわにおいてピアース・ブロスナンの後継こうけい者しゃ選定せんていが始はじまる（実際じっさいは「ワールド・イズ・ノット・イナフ」公おおやけ開ひらけ後ごから製作せいさく陣じんのなかで話題わだいには上あがっていた）。当初とうしょブロスナン側がわは契約けいやく継続けいぞくを求もとむめ、次つぎ作さく以降いこうの登板とうばんに意欲いよく的てきであったが、時ときを同おなじくしてアメリカで過去かこにＴＶてれびドラマ化かされて以降いこう版権はんけんがイオン・プロダクション側がわになかった、007シリーズの第だい1作さく（イアン・フレミングの処女しょじょ作さく）「カジノ・ロワイヤル」の版権はんけんを獲得かくとくした事ことで、これまでのボンド像ぞうを一新いっしんし、「新あらたなジェームズ・ボンド」を作つくって行いく事ことに方針ほうしんが決きまる。この事ことをブロスナン側がわに伝つたえ、ブロスナンは了承りょうしょうし、降くだ板いたした。

ブロスナン降くだ板いたの話題わだいがスタッフや常連じょうれんキャストの中なかで表面ひょうめん化かすると、ボンドを支ささえてきた「Q」（実じつは「ブースフェルド」という名前なまえがある）を長年ながねん演えんじていたデズモンド・リュウェリンも第だい19作さく「ワールド・イズ・ノット・イナフ」をもって降くだ板いた。「逃にげ道みちは最後さいごまで残のこしておく事ことだ」という最後さいごのセリフを呟き、長年ながねんにわたってボンドを支ささえてきた「Q」は一線いっせんを退しりぞいた。降くだ板いたして間あいだもなく、リュウェリンは自叙伝じじょでんを発表はっぴょうするが、その発表はっぴょう会かい後ごに自じ家いえ用よう車くるまを運転うんてん中ちゅう、交通こうつう事故じこ死しする。皮かわ肉にくなことに、劇げき中ちゅうで歴代れきだいボンドに「車くるまは無む傷きずで返かえすように」と注意ちゅういしていた本人ほんにんが自動車じどうしゃ事故じこで世よを去さってしまう事ことになってしまった。

なお「ダイ・アナザー・デイ」には後継こうけいのQとして、イギリスの人気にんきコメディー集団しゅうだん「モンティ・パイソン」のメンバーでもあるジョン・クリーズが1作さくのみ登板とうばんした（前作ぜんさくで初はつ登場とうじょうした際さいボンドから“Ｒ”と呼よばれていた）。

2006年ねん、6代だい目めジェームズ・ボンドにダニエル・クレイグを抜擢。クレイグ抜擢の経緯けいいについては、数すう人にんほど候こう補ほを挙あげてカメラテストなどのオーディションを行おこなった結果けっか「最もっとも理想りそうとするジェームズ・ボンドだった」からであったという（なお、この時ときユアン・マクレガーやヒュー・ジャックマン、ジュード・ロウ、コリン・ファレルらにも秋あき波なみを送おくっていた事ことをバーバラ・ブロッコリが話はなしているほか、3代だい目めボンドであるロジャー・ムーアの息子むすこジョフリー・ムーアも有ゆう力ちから候こう補ほ者しゃに挙あがっていた）。これまでボンドは「ダークブロンド（栗毛くりげ色いろ）の髪かみを後うしろになでつける」というヘア・スタイルであったが、クレイグはブロンドで短たん髪かみというスタイルを選えらんだ。新あたらしいボンドによる第だい21作さく「カジノ・ロワイヤル」は、これまでのボンド像ぞう（特とくにロジャー・ムーアやピアース・ブロスナンが作つくったボンド像ぞう）から一転いってんし、口数くちかずが少すくなくウィット性せいの少すくないハードボイルドな人物じんぶつとなった。

小しょう道みち具ぐやボンド・カーなども一新いっしん。オマージュも含ふくめて、愛あい用よう銃じゅうを「ワルサーＰＰＫ」（もしくはＰＰＫ/ｓ）、愛あい車くるまをアストンマーチンに戻もどした。（ブロスナン時代じだいは「トゥモロー・ネバー・ダイ」以降いこう、主あるじな愛あい用よう銃じゅうが「ワルサーＰ９９」になり、ボンド・カーもＢＭＷが採用さいようされることが多おおかった）。

キャストやキャラクターも一新いっしんされ、ミス・マニーペニーとＱは当初とうしょの出演しゅつえんがなかった。また愛あい妻つまテレサ・ボンドに並ならぶ二人ふたり目めの恋こい人ひとヴェスパー・リンドが登場とうじょうしたが、テレサと同おなじく不慮ふりょの死しを遂とげてしまう。なお、一新いっしん後ごもジュディ・デンチは引ひき続つづき「Ｍ」として出演しゅつえんした。ただしブロスナン時代じだいの「M」とは別べつの人物じんぶつであり、性格せいかくも違ちがっている（「Ｍ」についてはジュディ・デンチを継続けいぞく出演しゅつえんさせるか否ひかで議論ぎろんが起おきたが、結論けつろんが得えられず「スカイ・フォール」までペンディングされた）。ピアース・ブロスナン時代じだいには登場とうじょうしなかったCIAエージェントのフィリックス・ライターも復活ふっかつする。

一新いっしんにともなって映画えいがの定番ていばんであった「ガンバレル」のオープニングも一新いっしんされた（第だい22作さく「慰なぐさめの報酬ほうしゅう」以後いご、映画えいがの終おわりにガンバレル・シークエンスが出だされるようになる）。

「慰なぐさめの報酬ほうしゅう」は前作ぜんさく「カジノ・ロワイヤル」の続編ぞくへんとなっており、死しんだ恋こい人ひとヴェスパー・リンドの復讐ふくしゅうと同時どうじに、前作ぜんさくの敵てきであったル・シッフルの背後はいごにあった組織そしきを追おいかけ、これを壊滅かいめつ寸前すんぜんにまで追おい込こんだ（完かん全ぜんに壊滅かいめつしたかはわからない）。

2012年ねん夏季かきオリンピック・ロンドン大会たいかいの開会かいかい式しきに際さいして、ボンドがイギリス女王じょおうエリザベス2世せいの護衛ごえいとして共ともにスタジアムに向むかい、ヘリコプターからダイブする・・・という映像えいぞうが制作せいさくされた。宮みや殿しんがりおよび女王じょおうの居室きょしつは本物ほんものを使用しようし、エリザベス2世せいにもセリフが用意よういされ、ボンドに「こんばんは、ミスター・ボンド（“Good evening,Mr.Bond”）」と声こえをかけている。実際じっさいに会場かいじょうではそれに連動れんどうしてヘリコプターが上うえ空そらに現あらわれ、“エリザベス2世せい”と“ジェームズ・ボンド”の二人ふたりがユニオンジャックのパラシュートでダイブする、というアトラクションが展開てんかいされた。無む論ろん、会場かいじょう上じょう空そらでダイブした二人ふたりはスタントによるものであるが、国家こっか元首げんしゅの登場とうじょうという大おおきな場面ばめんがこういった演出えんしゅつでなされることは前代未聞ぜんだいみもんであった。なお、「幸福こうふくと栄さかえ光ひかりを（Happy & Glorious）」と題だいされたこの映像えいぞうによって、エリザベス2世せいは歴代れきだい“最さい高齢こうれい”のボンドガールとなった。

第だい22作さく「慰なぐさめの報酬ほうしゅう」公おおやけ開ひらきの後のち、配給はいきゅう会社かいしゃのMCMが破産はさんしたことで存続そんぞくの危機ききに陥おちいったが、コロンビア映画えいが（ソニー・ピクチャーズ）、20世紀せいきフォックス社しゃなど数すう社しゃが請うけ負おう事ことで無む事ことに第だい23作さく「スカイフォール」の公おおやけ開ひらきにこぎつけ、シリーズ最高さいこうの興きょう行くだり収入しゅうにゅうを達成たっせいした（厳密げんみつに言いえば「慰なぐさめの報酬ほうしゅう」もソニー・ピクチャーズ等ひとしの支援しえんが無むければ制作せいさく・公おおやけ開ひらくが出来できなかった）。

「スカイ・フォール」は前まえ2作品さくひんとはつながっていない単独たんどくの作品さくひん。対峙たいじする敵てきは元もとＭＩ６の諜報ちょうほう員いんで、潜入せんにゅう先さきで拉致らちされた際さい救援きゅうえんを出ださず見限みかぎったＭに復讐ふくしゅうを企くわだてて、ＭＩ６本部ほんぶをハッキング攻撃こうげきや爆ばく弾だんで襲撃しゅうげきするほか、政府せいふ中枢ちゅうすうへのテロをも行おこなう事ことでＭを政治せいじ的てき・立場たちば的てきに排除はいじょし、最終さいしゅう的てきには殺ころせ害がいをも試こころみようとする凶きょう悪あくな存在そんざいであった。このとき、ＭＩ６では00部ぶ署しょ（ダブルオー・セクション）によるスパイ活動かつどうの中止ちゅうしを求もとむめる政府せいふへの対応たいおうに苦慮くりょしていた。そこへ数々かずかずの不祥事ふしょうじがＭＩ６に起おきたことでＭは次第しだいに追おい詰つめられていく。Ｍをあぶりだす為ためロンドン中心ちゅうしんでのテロ活動かつどうにも手てを出だした悪役あくやくから逃のがれるためにボンドは自分じぶんの故郷こきょうへとＭを連つれて行いく（ここでボンドの素性すじょうが明あきらかになってくる）。

同どう作さく内ないで明あきらかになった事ことは、ボンドはスコットランドにある「スカイフォール」荘そうで生うまれた。父ちちアンドリューと母ははモニクとは幼おさなくして死別しべつし、以後いごの養育よういくは屋敷やしきの使用人しようにんであったキンケイドが、そして後のちにＭに拾ひろわれてスパイへの道みちを進すすんだ・・・という事ことであった。（既すでに「女王じょおう陛下へいかの007」で、ボンド家いえは遡さかのぼると14世紀せいきと18世紀せいきに隆たかし盛もりした貴族きぞくに起おこり源みなもとがあり、家いえ訓くんが「世界せかいだけでは物足ものたりない（"World is not enough"）」である事ことが明あきらかになっている）。このボンドの故郷こきょうスカイフォール荘そうでボンドとＭ、キンケイドは敵てきを迎むかえ撃うつが、撃うたれた傷きずが予想よそう以上いじょうに重おもかった「Ｍ」は失しつ血ちがひどく殉職じゅんしょくしてしまった（シリーズで初はじめてのＭの殉職じゅんしょく）。

ジュディ・デンチはこれで実質じっしつ的てきに降くだ板いたとなった。（デンチはインタビューで「夫おっとから、おばあさんにもなってもスパイを使つかって世界せかいを救すくう必要ひつようがあるのかいと言いわれた」と降くだ板いたの意図いとについてジョークを言いっている）。また、制作せいさく当初とうしょはボンドの生せい家いえを管理かんりする老人ろうじんキンケイドの役やくに初代しょだいボンドであるショーン・コネリーか2代目だいめボンドのジョージ・レーゼンビーをカメオ出演しゅつえんさせる案あんもあったが、諸しょ事情じじょうにより実現じつげんできなかった為ため、名優めいゆうアルバート・フィニーがその役やくを担当たんとうした。

映画えいが中なかではボンドの愛あい車くるまであるアストンマーチン（ギアチェンジの部分ぶぶんに緊急きんきゅう用よう脱出だっしゅつ装置そうちがついている。初代しょだいボンドであるショーン・コネリーが使つかっていた型かたのもの）が銃じゅう撃げきでメチャクチャに壊こわれていく様よう、自分じぶんの起おこり源みなもとである故郷こきょう「スカイフォール」荘そうが敵てきによって爆破ばくはされ炎上えんじょうしていく・・・という演出えんしゅつで「これまでのジェームズ・ボンドとの決別けつべつ」と共ともにキャストの入いれ替かえも含ふくめて「新あたらしいボンドシリーズの始はじまり」を表現ひょうげんした。

キャストの入いれ替かえでメカニック担当たんとうの「Q」が再さい登場とうじょう。デズモント・リュウェリンとは一転いってんして「ニキビ面めんの坊ぼうや」（ボンドのセリフ）という青年せいねんになって登場とうじょうした。「白衣はくいを着きていないのが不満ふまん？」「ペン型かた爆ばく弾だんなんて古臭ふるくさい」と、これまでのＱが築きずいたスタイルを皮かわ肉にくでオマージュした。新あたらしいＭは国くに防ぼう委員いいん長ちょうギャレル・マロリーとなり、秘書ひしょのミス・マニーペニー（イブ・マニーペニー）も復活ふっかつした。