俳優はいゆうの細田ほそだ善彦よしひこ(32)が、大林おおばやし宣彦のぶひこ監督かんとくの「海辺うみべの映画えいが館かん－キネマの玉手箱たまてばこ」(近日きんじつ公開こうかい)で主要しゅようキャストを演えんじた。同どう作さくは惜おしまれながらも4月がつ10日とおかに肺はいがんのため死去しきょした大林おおばやし監督かんとくの遺作いさくで、20年ねんぶりに故郷こきょう、広島ひろしま・尾道おのみちでロケ。閉館へいかんする映画えいが館かんに集つどう人々ひとびとの姿すがたと、幕末ばくまつから原爆げんばく投下とうかまで綿々めんめんと続つづく戦争せんそうの歴史れきしを紐解ひもとく約やく3時じ間あいだの大だい映像えいぞう詩しだ。細田ほそだは実家じっかが寺てらを営いとなむチンピラ、団だん茂しげる(だん・しげる)役やくで、映画えいが館かんのさよなら興行こうぎょうを観みているうちに、目めの前まえの戦争せんそう映画えいがの世界せかいの中なかに入はいり込こみ、不思議ふしぎな体験たいけんをしていく。細田ほそだが体験たいけんした驚おどろきの大林おおばやし監督かんとくの演出えんしゅつ術じゅつとは……。

〈今回こんかいのインタビューは今年ことし3月がつ下旬げじゅんに行おこなわれた〉

――初はつの大林おおばやし監督かんとく作品さくひん。出演しゅつえんはオーディションですか?

「はい。撮影さつえいは2018年ねんの夏なつだったのですが、本当ほんとうはもっと前まえに撮とる予定よていの作品さくひんだったそうです。いろんな経緯けいいで撮影さつえいが延のびてしまって、最初さいしょに決きまっていた3人にんの男性だんせいキャストがスケジュール的てきに成立せいりつしなくなってしまったそうで、新あらたにオーディションが行おこなわれ、そこに僕ぼくも参加さんかさせていただきました。そしたら、お会あいして5分ふんぐらいで、『この夏なつ、僕ぼくと一緒いっしょに映画えいがを撮とろう』って握手あくしゅしていただきました(笑)かっこわらい」

――5分間ふんかんで出演しゅつえん決定けっていって、すごいですね。どんな会話かいわをしたんですか?

「なんだか不思議ふしぎな高揚こうよう感かんであまり覚おぼえていないのですが、成城学園せいじょうがくえんの監督かんとくの事務所じむしょに入はいると、監督かんとくはサングラスをかけていらして、カッコイイおじいちゃんだなー、こんな大人おとなになりたいなーなんて、思おもいましたね。何なにをしゃべったかなぁ。脚本きゃくほんの話はなしも一切いっさいなかったです。覚おぼえているのは監督かんとくから聞きかれた質問しつもんで、『坊主ぼうず頭あたまになれるか?夏なつは暇ひまなのか?』。それに対たいして、『なれます、暇ひまです』と答こたえてたら、本当ほんとうに5分ふんぐらいで、『この夏なつ、僕ぼくと一緒いっしょに映画えいがを撮とろう』と笑顔えがおで握手あくしゅしてくださって、出演しゅつえんが決きまったんです(笑)かっこわらい。こんな風ふうに映画えいがの出演しゅつえんが決きまった経験けいけんがなく、その後ごも監督かんとくと話はなしていたのですが、ずっと不思議ふしぎな高揚こうよう感かんに包つつまれていました」

――起用きよう理由りゆうは聞きくことができましたか?

「その後ご、聞きいたら、僕ぼくの目めを気きに入いってくださったみたいでした。『俳優はいゆうっていうのはこっち(製作せいさく)側がわがコスチュームだったり、メイクだったりいろんなものを色いろづけしていくのだけど、目めだけはいじれないんだ。君くんの目めがすごくいいと僕ぼくは思おもった』と。『そこだけは変かえられないから、僕ぼくは大事だいじにしたほうがいいと思おもうよ』と、おっしゃってくださいました」

――最初さいしょは坊主ぼうず頭あたまの役やくだったってことですかね。

「衣装いしょう合あわせまではどこかの段階だんかいで坊主ぼうず頭あたまになるはずだったんです。というのも、映画えいが館かんの観客かんきゃくとして戦争せんそう映画えいがを観みていた3人にんの男おとこが、気付きづいたら観みていた映画えいがの中なかに何なん回かいも入はいって行いく話はなしなので、その時代じだい、時代じだいに合あわせた格好かっこうに男おとこ3人にんが変化へんかしていくのですが、監督かんとくが『茂しげるは映画えいがに馴染なじめていないから、髪型かみがたは変かえなくていいんじゃないのか』とおっしゃって、僕ぼくは坊主ぼうず頭あたまじゃなくなったんです。いや、坊主ぼうず頭あたまになるかもしれません。それは、映画えいがを観みてのお楽たのしみということで」

――大林おおばやし監督かんとくの映画えいがはご覧らんになっていましたか?

「(『転校生てんこうせい』のセルフリメイク)『転校生てんこうせい　さよならあなた』(2007年ねん）が最初さいしょに観みた作品さくひんです。そこから、過去かこの『転校生てんこうせい』(1982年ねん)ってどうなんだろうと遡さかのぼって、『HOUSE ハウス』を観みて、尾道おのみち三さん部ぶ作さく(「転校生てんこうせい」「時じをかける少女しょうじょ」「さびしんぼう」)を観みながら、尾道おのみちに行いってみたいなと思おもったり。いわゆるリアル世代せだいではなく、DVDで観みたという感かんじですね。どう撮とっているんだろう、どういう台本だいほんなんだろうと思おもいましたね」

――大林おおばやし監督かんとくの現場げんばはいかがでしたか?ほかの映画えいがでは、ありえないようなことがあったのではないですか?

「“だらけ”すぎて何なにから言いえばいいか、分わかりませんが、撮影さつえいの初期しょきの頃ころに驚おどろいたこととしては、桜さくら隊たいを説得せっとくするシーンを撮影さつえいした時ときです。僕ぼくとしては台本だいほんを読よんだ時とき、このシーンは重要じゅうようなシーンだと思おもっていたんです」

――映画えいが館かんの閉館へいかんに立たち会あう3人にんは、戦争せんそう映画えいがの中なかに入はいり込こみ、幕末ばくまつから続つづく戦争せんそうの場面ばめんに遭遇そうぐうする。桜さくら隊たいは地方ちほうへの慰問いもん巡業じゅんぎょうをしていた実際じっさいの劇団げきだんで、広島ひろしまで被爆ひばくするわけですからね。

「そうです、僕ぼくたち3人にんがその桜さくら隊たいと出会であって、『広島ひろしまは危険きけんなんだ。みなさん明日あした、広島ひろしまから離はなれてください』と説得せっとくするシーンでした。夕食ゆうしょく休憩きゅうけいを挟はさんだのち、そのシーンの撮影さつえいになったのですが、撮影さつえい現場げんばに入はいると既すでにカメラと照明しょうめいがセットされていて、桜さくら隊たいのみんなの座すわり位置いち、僕ぼくら3人にんの座すわり位置いちが指示しじされて、いきなり、『よーい、ハイ!』で撮影さつえいが始はじまったんです。リハーサルもしてないし、立たち位置いちの確認かくにんだけして、『じゃあ、行いくよ』と」