(Translated by https://www.hiragana.jp/)
Twitterはいよいよ限界?もう引っ越ししかない?2023年のSNSとの付き合い方を考える|FINDERS|あなたのシゴトに、新たな視点を。

CULTURE | 2023/01/03

Twitterはいよいよ限界げんかい?もうししかない?2023ねんのSNSとのかたかんがえる

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連載れんさい幻想げんそう創造そうぞう大国たいこく、アメリカ(32)

渡辺わたなべ由佳ゆかさと Yukari...

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連載れんさい幻想げんそう創造そうぞう大国たいこく、アメリカ(32)

渡辺わたなべ由佳ゆかさと Yukari Watanabe Scott

エッセイスト、洋書ようしょレビュアー、翻訳ほんやく、マーケティング・ストラテジー会社かいしゃ共同きょうどう経営けいえいしゃ

兵庫ひょうごけんまれ。おおくのしょく体験たいけんし、東京とうきょう外資がいしけい医療いりょうよう装具そうぐ会社かいしゃ勤務きんむ香港ほんこんて1995ねんよりアメリカに移住いじゅう。2001ねん小説しょうせつ『ノーティアーズ』で小説しょうせつ新潮しんちょう長篇ちょうへん新人しんじんしょう受賞じゅしょう翌年よくねんかみたちの誤算ごさん』(とも新潮社しんちょうしゃかん)を発表はっぴょう。『ジャンルべつ 洋書ようしょベスト500』(コスモピア)、『トランプがはじめた21世紀せいき南北戦争なんぼくせんそう』(晶文社しょうぶんしゃ)など著書ちょしょ多数たすう翻訳ほんやくしょには糸井いといしげるさと監修かんしゅうの『グレイトフル・デッドにマーケティングをまなぶ』(日経にっけいビジネス人文じんぶん)、レベッカ・ソルニットちょ『それを、しんぶならば』(岩波書店いわなみしょてん)など。最新さいしんかんは『ベストセラーで現代げんだいアメリカ』(亜紀あき書房しょぼう)。
連載れんさいCakes(ケイクス)ニューズウィーク日本にっぽんばん
洋書ようしょ紹介しょうかいするブログ『洋書ようしょファンクラブ主催しゅさいしゃ

イーロン・マスクによる買収ばいしゅうでますます混乱こんらんするTwitter

2022ねんのソーシャルメディアにかんする最大さいだいのニュースは、イーロン・マスクによるTwitter買収ばいしゅうえるだろう。

マスクによるTwitter買収ばいしゅう最初さいしょから問題もんだいつづきだった。かれは4がつにTwitterかぶの9%を購入こうにゅうしたことを公開こうかいしたのだが、当初とうしょオファーされた取締役とりしまりやくのポジションでは満足まんぞくしなかった。Twitterはマスクによる敵対てきたいてき買収ばいしゅうふせぐために「ポイズンピル(敵対てきたいてき買収ばいしゅうしゃ以外いがい株主かぶぬしにあらかじめ時価じかよりやす価格かかく新株しんかぶ予約よやくけん付与ふよし、買収ばいしゅうのコストをげる行為こうい)」をこころみたが、結果けっかてきに1かぶにつき54.20ドル、総計そうけいやく440おくドル(やく6.4ちょうえん)でるというマスクのオファーをれた。当時とうじ株価かぶかよりたか値段ねだんをつけてまでろうとした理由りゆうは、「(Twitterの)プラットフォームで言論げんろん自由じゆう(free speech)を適用てきようする」というものだった。

Twitterは4がつ25にち買収ばいしゅうオファーをれる決議けつぎをしたが、そのマスクは「Twitterのアカウントの5%がにせアカウントやスパムだ」という理由りゆう買収ばいしゅう一時いちじてき保留ほりゅうにし、おおやけでTwitterについての苦情くじょうい、すでに合意ごういしている買収ばいしゅう手続てつづきをすすめようとしなかった。そこでTwitterがデラウェアしゅううったえ、マスクはTwitterをぎゃく提訴ていそするという泥沼どろぬま訴訟そしょうげきになりかけた。

けれども、10月の裁判さいばんちかづいたときに自分じぶんがないことを予測よそくしたマスクは、もとのオファーどおりに買収ばいしゅう完了かんりょうさせることにした。10月28にちにTwitterのオーナーとなり、CEOのパラグ・アグラワルなどの主要しゅよう経営けいえいじん社員しゃいん半数はんすう即座そくざ解雇かいこした。そういったマスクの言動げんどう反論はんろんした社員しゃいん解雇かいこをいいわたされている。

マスクがTwitterを買収ばいしゅうするまえからユーザーのあいだには不安ふあんただよっていたのだが、予想よそうどおりにマスクはTwitterでの投票とうひょう結果けっかでトランプもと大統領だいとうりょうをTwitterに復帰ふっきさせ、ナンシー・ペロシのおっと襲撃しゅうげきされたけん右派うはによるにせ情報じょうほうもとづいたアンチLGBTQ+ の陰謀いんぼうろんをツイートした現在げんざいされている)。

440おくドルの出費しゅっぴもどすためのばや方法ほうほうとしてマスクが導入どうにゅうしたツイッターブルー(Twitter Blue)もユーザーの不満ふまんをつのらせた。月額げつがく7.99ドルをはらえば青色あおいろ認証にんしょうバッジをることができるというもので、それによってバッジをたユーザーが公式こうしきユーザーのフリをするという出来事できごと数多かずおおこった。

たとえば、米国べいこく任天堂にんてんどう(Nintendo of America)の公式こうしきアカウントのふりをしたアカウントがマリオに中指なかゆびてさせる、といったものだ。こういった混乱こんらんぶりに、これまでTwitterを広告こうこく使つかっていた上位じょうい企業きぎょう100のうち50が広告こうこく中止ちゅうしした。また、にせ情報じょうほうながしていたために凍結とうけつされていた右傾うけいアカウントの数々かずかずを「言論げんろん自由じゆう」を理由りゆう復活ふっかつさせたマスクは、一方いっぽう自分じぶんたいして批判ひはんてきなジャーナリストのアカウントを次々つぎつぎ凍結とうけつさせた。

このようなことが相次あいついだため、2022ねんの11月ごろからわたし周囲しゅういでもおおくのひとたちがTwitterからの引越ひっこさきはなうようになった。日本人にっぽんじん友人ゆうじん知人ちじんあいだではマストドン、アメリカじん友人ゆうじん知人ちじんあいだでは11月に招待しょうたいせいベータばん登録とうろくはじめたばかりのPost人気にんきなのだが、Twitterはマストドンをふく特定とくていソーシャルメディアへのリンクやハンドルめい投稿とうこうすることをきんじてしまった(その数日すうじつ禁止きんしかれたようだが今後こんごさらなるてんさんてんがあるかもしれない)。そしてTeslaの株価かぶかまでがり11がつなかばにはTwitter購入こうにゅう提案ていあんしたときからほぼ半額はんがくくらいになってしまったことなども影響えいきょうしてか、マスクはみずかおこなったTwitterでの投票とうひょう結果けっかけてCEOを退任たいにんすることをめた。けれども、かれがオーナーであるかぎりは、だれがCEOになってもそうわらないであろう。

Twitterを最悪さいあく場所ばしょにする「いか中毒ちゅうどく」と「はい論破ろんぱ

2009ねん1がつにTwitterをはじめ、このソーシャルメディアをつうじておおくのひとい、みのりある人間にんげん関係かんけいつちかってきたわたしとしては、Twitterがこうなってしまったのをさびしくおもっている。けれども、マスクが買収ばいしゅうするまえから次第しだいにTwitterと距離きょりくようになっていたのも事実じじつだ。そこまでのながれをすこしご説明せつめいしよう。

Twitterをはじめた初期しょきころわたしは「ソーシャルメディアはあくまでツールでしかない。使つかひとによってくもわるくもなるものだ」としんじていた。12ねんまえの2010ねん10がつ刊行かんこうした『ゆるく、自由じゆうに、そして有意義ゆういぎに – ストレスフリー・ツイッターじゅつ』(朝日出版社あさひしゅっぱんしゃ)も、その信念しんねんしたがっていた。けれども、完璧かんぺきな「お花畑はなばたけ」をしんじていたわけではなく、すでに「ハラスメント」「個人こじん攻撃こうげきてきなリプライ」「自己じこ顕示けんじよく」「ツイッター中毒ちゅうどく依存いぞんしょう)」といった問題もんだいづいており、それらについても忠告ちゅうこくとしていていた。

実際じっさい自分じぶんがそういった攻撃こうげき対象たいしょう不気味ぶきみさを体験たいけんしたのは、それから5ねんくらいだった。わたしのブログ「洋書ようしょファンクラブ」で人種じんしゅ差別さべつ女性じょせい蔑視べっしせい暴力ぼうりょく、LGBTQ+などをテーマにした洋書ようしょ紹介しょうかいし、Cakesの連載れんさいコラムで米国べいこく社会しゃかい問題もんだいについてくようになり、自然しぜんながれとしてTwitterでもそういった発言はつげんをするようになった。すると、初期しょきころとはことなるフォロワーがえ、同時どうじ見知みしらぬ他人たにんから想像そうぞうもしなかったような攻撃こうげきけるようになった。

わたしだけでなく、おおくのひとがそういった体験たいけんをしていることにづいたので人格じんかく攻撃こうげきたいする対応たいおう方法ほうほうをコラムとしてき(自著じちょアメリカはいつも夢見ゆめみている』に収録しゅうろく)、そのときにつくったフローチャートに「ツイッターはみのりある対話たいわてきしたメディアではありません。攻撃こうげきてき理解りかい基盤きばんことなりぎて説明せつめい不可能ふかのう執拗しつよう、といった場合ばあいはTL整理せいりのためにお返事へんじせずにブロックしますのでご了承りょうしょうを」というコメントをつけて固定こていツイートにした。

「ソーシャルメディアをつうじてわるいことがこるのは、使つかひとわるいからだ」という初期しょきかんがかた疑問ぎもんいだくようになったのは、FacebookとTwitterで拡散かくさんしたにせ情報じょうほうおおきな影響えいきょうあたえた2016ねんのアメリカ大統領だいとうりょう選挙せんきょがきっかけだった。

その、レベッカ・ソルニットの『それを、しんぶならば原題げんだい:Call Them by Their True Names)』(岩波書店いわなみしょてん)に収録しゅうろくされたエッセイ〈無邪気むじゃき冷笑れいしょうたち〉と〈憤怒ふんぬう〉をやくしているときに、「ソーシャルメディアでこっていることはまさにこれだ!」とおもった。

たとえば、Twitterで口論こうろんこり相手あいてがリプライしなくなった場合ばあい、それは「このひと対話たいわをしても意味いみはない。時間じかん無駄むだだからやめよう」といった理由りゆうであることがおおいとおもうのだが、「はい論破ろんぱ」とえつひとがいる。この「論破ろんぱ」というかんがかた背景はいけいにあるのがソルニットのう「冷笑れいしょう」である。彼女かのじょう「ニュアンスや複雑ふくざつさを明確めいかく次元じげんろんもうとする衝動しょうどう」はソーシャルメディアに蔓延まんえんしており、社会しゃかいくするために長年ながねん地道じみちはたらいているひとげたものを一瞬いっしゅんにして破壊はかいするちからがある。

また、〈憤怒ふんぬう〉があつかっているのは「いかり」のあつかいのむずかしさである。ソルニットはこういている。

Twitterでフォロワーを爆発ばくはつてきやしているひとたちをソルニットの視点してん観察かんさつすると、「冷笑れいしょう」「いかり」がおおきな誘引ゆういん要素ようそになっていることがわかる。問題もんだい発言はつげんをしているひとのツイートをつけして批判ひはんつきの引用いんようリツイート(コメントつきRT)で論争ろんそうこすのを趣味しゅみにしているようなひとも、連日れんじつにつくようになってしまった。

わたし自身じしんも、社会しゃかいきている不平等ふびょうどうについてこえげたときに、賛同さんどうのリツイートがおおいと自分じぶんみとめられたような気持きもちになってうれしくなる。だがそれを再現さいげんしたい欲求よっきゅうにかられる依存いぞんせいもある「あぶない感覚かんかく」なのだということを、ソルニットのおかげで自覚じかくするようになった。

虐殺ぎゃくさつきてもにしないが、ユーザーがるとさわすFacebook

ソーシャルメディアについてさらにかんがえるようになったのは、ソーシャルメディアを使つかったマーケティングについて早期そうきからビジネスしょいてきたわがおっとDavid Meerman Scott)との毎日まいにちのディスカッションも影響えいきょうしている。そのひとつが、Facebookのアルゴリズムの危険きけんせいについてだ。

2022ねん9がつ発売はつばいされた『The Chaos Machine:The Inside Story of How Social Media Rewired Our Minds And Our World(ケイオス・マシン:ソーシャルメディアがいかにしてわたしたちの意識いしき社会しゃかい回路かいろをつなぎえたのかという内部ないぶ事情じじょう)』というノンフィクションは、アルゴリズムの危険きけんせいっているつもりだったわたしにも衝撃しょうげきてきだった。

ピューリッツァーしょう候補こうほにもなったニューヨーク・タイムズのジャーナリストMax Fisherが徹底的てっていてき取材しゅざいしていたこのほんんだことで、「ソーシャルメディアをつうじてわるいことがこるのは、使つかひとわるいからだ」という初期しょきわたし信念しんねん完全かんぜんんだ。

ソーシャルメディアでは心温こころあたたまる投稿とうこうたのしい投稿とうこうにも共感きょうかんあつまるが、利用りようしゃがそれよりも長時間ちょうじかんとどまり、拡散かくさんする動機どうきとなるのは「いかり」というネガティブな感情かんじょうてる投稿とうこうである。そのなかでもひとは「moral outrage(道徳どうとくてき憤慨ふんがい)」につよきつけられる。

Facebookはそれを熟知じゅくちしているので、そういったコンテンツがよりおおてくるようなアルゴリズムをつくっているのだ。憤慨ふんがいこすようなニュースや情報じょうほうをクリックしてむと、アルゴリズムはおなじようなコンテンツをどんどんせるようになる。そのなかにはにせ情報じょうほう陰謀いんぼうろんおおいのだが、Facebookはそれらを排除はいじょすることはない。利用りようしゃはクリックすることで、もっと極端きょくたんなコンテンツをむようになり、どんどん泥沼どろぬまにはまりこんでいく。極端きょくたんなコメントでいかりをあおひと人気にんきしゃになれるので、それをねらひとてくる。そして、おな信念しんねんひととだけつながって、憤慨ふんがいつのらせ、団結だんけつしていく。そういう仕組しくみなのだ。

そのメカニズム自体じたいっていたが、ミャンマーとスリランカでこった暴動ぼうどうとジェノサイドでおおきな役割やくわりたしたのがFacebookだということはらなかった。

ミャンマーでFacebookとYouTubeを活用かつようしたのは、少数しょうすう民族みんぞくのイスラム教徒きょうとロヒンギャぞくたいするヘイトを拡散かくさんしているカリスマてきふつそうウィラス(Wirathu)である。ウィラスはミャンマー各地かくちたびしながらヘイトを拡散かくさんする一方いっぽうで、ソーシャルメディアのフォロワーをやしている。

2014ねんには「イスラム教徒きょうと喫茶店きっさてんオーナー2にん仏教徒ぶっきょうと女性じょせいをレイプした」といういつわりの投稿とうこうをした。ウィラスは、店主てんしゅみせ名前なまえ公表こうひょうし、イスラム教徒きょうと仏教徒ぶっきょうとたいして反乱はんらんこそうとしているという陰謀いんぼうろんひろめるとともに、それをふせ先制せんせい攻撃こうげきとして政府せいふにイスラム教徒きょうととモスクを攻撃こうげきするようびかけた。

ウィラスの投稿とうこう拡散かくさんされ、それをしんじた仏教徒ぶっきょうとらが隣人りんじんであるイスラム教徒きょうと攻撃こうげきする暴動ぼうどうこした。暴動ぼうどうひろまるなかで、ミャンマー政府せいふ高官こうかんがコンサルティング会社かいしゃのデロイトをつうじてFacebookにコンタクトしようとしたのだが、Facebookは政府せいふにもデロイトにも返事へんじすらしなかった。そこで政府せいふ暴動ぼうどうこっているマンダレーでFacebookをブロックし、それによって暴動ぼうどうしずまった。あきれてしまうのは、その翌日よくじつにFacebookがはじめて政府せいふにコンタクトしたことだ。しかも、暴動ぼうどうについてではない。「なぜFacebookをブロックしたのか?」というわせだった。

スリランカでのれいもミャンマーのケースにている。海外かいがいでの肉体にくたい労働ろうどうでおかねめたイスラム教徒きょうと兄弟きょうだいがスリランカのアンパラ(Ampara)というちいさなむら念願ねんがんのレストランをひらいた。

Facebookでは「アンパラにむイスラム教徒きょうと薬剤師やくざいし所持しょじしていた、男性だんせいにんにさせるくすり2まん3000じょう警察けいさつ没収ぼっしゅうした」といううわさながれており、そのよる多数たすう民族みんぞくのシンハラじんきゃくが「カレーのなかなにかがはいっている」とさわはじめた。少数しょうすう民族みんぞくのタミールをはな兄弟きょうだいはシンハラでの質問しつもん理解りかいできず「わかりません」「はい。わたしたちがれました?」とこたえた。それを告白こくはくだとめたシンハラじんかれなぐってみせ破壊はかいし、ちかくのモスクにけた。

これまでであれば暴動ぼうどうはそこでストップしていただろうが、言葉ことばがわからないイスラム教徒きょうとの「はい。わたしたちがれました?」というビデオはFacebookグループをつうじてまたたくひろまり、「すべてのイスラム教徒きょうところせ。幼児ようじ例外れいがいにするな」というジェノサイドをびかけるコメントがなんひゃく投稿とうこうされた。

地元じもと人権じんけんグループはそれらをすべて調査ちょうさしてFacebookに対応たいおうもとめたのだが、そのうったえかけは完璧かんぺき無視むしされた。暴動ぼうどうおそれたスリランカ政府せいふ対応たいおうもとめたがFacebookはなにもしなかった。緊張きんちょうたかまるなかで、イスラム教徒きょうととの交通こうつうトラブルのごと重症じゅうしょうっていたシンハラじんのトラック運転うんてんしゅ死亡しぼうし、それがイスラム教徒きょうとによるシンハラじん抹殺まっさつ計画けいかくであるといううわさがFacebookからWhatsApp、Twitter、YouTubeで拡散かくさんされていった。そこでつのったいかりとにくしみによる暴動ぼうどうすうおおくのイスラム教徒きょうと暴力ぼうりょくをふるわれ、いえかれ、ころされる暴動ぼうどうが3にちつづいた。

スリランカ政府せいふもついにFacebookをブロックしたのだが、Facebookはスリランカでの利用りようがゼロになってはじめてポリシー・ディレクターをおくんだ。ミャンマーの事例じれい同様どうように、Facebookはすうおおくのひところされても平然へいぜんとしていられるのに、利用りようしゃるとあわてるのである。

Facebook(Meta)を代表だいひょうとするシリコンバレーの価値かちかんでは、おかねをもたらすようなアルゴリズムこそが正義せいぎなのだ。たとえその結果けっか無実むじつ人々ひとびとがレイプされ、惨殺ざんさつされたとしても。そして、それに憤慨ふんがいするわたしたちも、虐殺ぎゃくさつしたソーシャルメディアでとみきずいた起業きぎょうたちを「成功せいこうしゃ」としてヒーローあつかいする心理しんりがある。

そういった数々かずかず現象げんしょうにうんざりしてしまったのが2022ねんだった。

自分じぶんにわだけでも「はなのなるはたけ」にするために

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ソーシャルメディアにどっぷりかりきって、そこでのたたかいが依存いぞんしょうのようになっている知人ちじん何人なんにんかけてしまったことも影響えいきょうしている。それがきっかけでとくにTwitterでついやす時間じかん大幅おおはばらしてしまった。日本にっぽんではFacebookをつうじてニュース記事きじれるひとすくなく、アメリカ在住ざいじゅうわたし英語えいごのニュースは大手おおて新聞しんぶん(ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ボストン・グローブなど)のサイトでしかまない。だから、わたしのタイムラインで表示ひょうじされるのは知人ちじんが(とく日本にっぽんで)べている美味おいしそうな食事しょくじ写真しゃしんと、ふくくつ・バッグの広告こうこくばかりである。アルゴリズムがすすめてくれるビデオはダンスとあかちゃんと動物どうぶつだけ。Twitterでは反論はんろんではなく、応援おうえんしたいものだけえらんでリツイートするようこころがけているので、かなり平和へいわになった。

世界せかいえられない非力ひりきちひしがれていても仕方しかたないので、アルゴリズムをわたしなりに教育きょういくして自分じぶんにわだけは花畑はなばたけであるようこころみている。でも、Twitterがすっかりこわれたときのために去年きょねん11がつにマストドンのアカウントをつくった

アメリカじん友人ゆうじんからは「Postにうつったから、あなたもPostにてみない?」とさそわれていたのだが、「わたしはマストドンはじめちゃったし、いまでもいそがしすぎてソーシャルメディアに時間じかんをかけられないから、これ以上いじょうやしたくないんです」とくわわらなかった。

マストドンをえらんだのは、これまでTwitterで仲良なかよくしていた日本人にっぽんじんユーザーのおおくがこのSNSにうつったこともあるが、SF作家さっかである知人ちじん藤井ふじいふとしひろしさんの影響えいきょうもある。

藤井ふじいさんは、おそらく世界せかい最初さいしょの「マストドン小説しょうせつ」をいた人物じんぶつだ。『ハローワールド』に収録しゅうろくされた短編たんぺん小説しょうせつきょぞうかたって」は、最初さいしょ文芸ぶんげい小説しょうせつ現代げんだい」の2017ねん8がつごう掲載けいさいされたもので、その短編たんぺんの「ぼく」である泰洋やすひろさんのように、藤井ふじいさんも自分じぶんでマストドンの「インスタンス」をげて運営うんえいするようになった。

藤井ふじいさんの小説しょうせつから引用いんようさせていただくと、

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「〈マストドン〉がのツイッタークローンとまったことなるのは、ユーザーとして利用りようするサービスではなく、保有ほゆうし、実行じっこうできるプログラムとして公開こうかいされたことだ。/ホームページをつところからいちあしして、いえ相当そうとうするWebサーバーをまるごとっているひとならだれでも、「自分じぶんの〈マストドン〉」をげて、友人ゆうじんまねくことができる。そうやってうごいている〈マストドン〉のプログラムは、インスタンス(実体じったい)とばれる。」

である。この小説しょうせつむと、マストドンがどういうものであり、なぜ藤井ふじいさんが自分じぶんでインスタンスをげるようになったのかわかるようになるので、ぜひんでいただきたいとおもう。

わたしがマストドンをはじめたのは非常ひじょういそがしいときだったので、アカウントを3つほどつくってみたものの、どう使つかえばいいのかをまな時間じかんがなかった。いまもまだ時間じかんをかけていないので、ひとつのアカウントだけを使つかって「試験しけん運転うんてんちゅう」である。ただし、わたし場合ばあいにはさいわいなことに、藤井ふじいさんや、おなじようにTwitterやソーシャルメディア全体ぜんたいたいしてしっかりとかんがえてきた知人ちじん何人なんにんかいたので、孤独こどくさはかんじずにすんだ。

わたしのように最近さいきんマストドンにくわわったひとたちは、Twitterとはことなる使つかかた模索もさくしている最中さいちゅうのようだ。Twitterもわたしくわわった2009ねん初期しょきには「Twitterとはなんぞや?」というツイートと、それにたいする反応はんのうおおかった。それをすこおもすが、最大さいだいちがいは、2009ねん当時とうじの「Twitterとはなんぞや?」には子供こどもあそかたかんがえる無邪気むじゃきさがあったが、2022ねんまつの「マストドンをどう使つかうべきなのか?」には人生じんせいつかれた中高年ちゅうこうねん禅問答ぜんもんどうてきなところがある。

Twitterでも、一時期いちじき社会しゃかい問題もんだいについて真摯しんしかたい、啓蒙けいもうしていこう、という雰囲気ふんいきがあった。しかし、一瞬いっしゅんにしてそれが個人こじん攻撃こうげきてきなバッシングと極端きょくたんなキャンセルカルチャーに変貌へんぼうしてしまった。マストドンは、Twitterで炎上えんじょう要因よういんになっている「引用いんようリツイート」はできず、RTに相当そうとうする「ブースト」しかできない。だからツイートが拡散かくさんしにくいかわりに、炎上えんじょうもしにくい。また、分散ぶんさんがたソーシャルネットワークだから、きちんと管理かんりしているインスタンスをえらぶ(できるひと自分じぶんつくる)ことでかなりの攻撃こうげきをコントロールできる。

さきほど「花畑はなはた」といたが、世界せかいこっているおおきな問題もんだいをなかったことにして、さわりのないことばかりをかた関係かんけいつくろうとおもっているわけではない。相手あいてはなしを「く」という姿勢しせいっているひと有意義ゆういぎつながりができるような「はなだけではなくもなるはたけ」である。そのために、Twitterとはべつ場所ばしょでリセットしてみる、というかんじなのだが、まだ手探てさぐ状態じょうたいだ。

ただし、過剰かじょう希望きぼういているわけではない。どこにっても「憤慨ふんがい」は威力いりょくるうだろう。危険きけんせいっている自分じぶんでさえ無視むしできない魅力みりょくてき感情かんじょうだから。でも、たとえ憤慨ふんがいしていても、ソーシャルメディアにまえ自分じぶんかんがかた発言はつげんを「編集へんしゅう」できるひと前向まえむきにつながりたいとおもひとすくなからずいるとおもうので、そういった仲間なかまつくるのが2023ねん抱負ほうふである。


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