亡なき親友しんゆうが乗のりたかった アルトバン。コンセプトは、フィアット126アバルト

小学校しょうがっこうからの付つき合あいになる親友しんゆうが、体調たいちょうが良よくなったら絶対ぜったいに運転うんてんしたいと購入こうにゅうしたアルトバンに乗のっている「進藤しんどうさん」。

オリジナルとかなり見みた目めが変かわっているというそのクルマは、進藤しんどうさんにとって特別とくべつな存在そんざいなのだと楽たのしそうに教おしえてくれました。それは一体いったいどういうことなのでしょうか？また、このクルマに乗のる理由りゆうとは？

今回こんかいは、進藤しんどうさん×アルトバン のお話はなしをお届とどけします。

――もともとは、ご友人ゆうじんのクルマだったのですか？

そうです。このアルトバンは、令れい和わ2年ねんの１月がつに白血病はっけつびょうで亡なくなった、僕ぼくの親友しんゆうのクルマでした。

亡なくなる3ヶ月かげつ前まえに購入こうにゅうしたんですけど、闘病とうびょう中ちゅうに容態ようだいが悪わるくなってしまって、思おもう存分ぞんぶん乗のることが出来できずに天国てんごくへと旅立たびだってしまったんです。だから、形見かたみというか……、僕ぼくが乗のりたいと思おもったんです。

――ご友人ゆうじんは、どんな人ひとだったのですか？

そうですね〜、クルマに関かんしてはすごく几帳面きちょうめんな人ひとでしたね。あっ！そういえば、最近さいきんそれを垣間見かいまみた出来事できごとがありましたよ。

車内しゃないにメモ帳ちょうが置おいてあって、何なにだろう？とページをめくってみると、そこには○○km走はしって燃料ねんりょうがどれくらい減へっただとか、タイヤの溝みぞが○○mm減へったなどの詳細しょうさいが事細ことこまかに書かいてあったんです。
それを見みた時ときに、彼かれらしいなぁって、思おもわず笑わらっちゃいましたよ。

普通ふつうの人ひとって、こういうのは気きにしないじゃないですか。だって、ガソリンメーターが0に近ちかづいたら入いれれば良よい話はなしだし、タイヤの溝みぞが無なくなってきたら換かえればいいだけなのに、それじゃ嫌いやなんでしょうね。
愛車あいしゃがどういう状況じょうきょうか常つねに知しっておきたいのでしょう。

――それは確たしかに几帳面きちょうめんです。そんなご友人ゆうじんは、なぜアルトバンを選えらんだのでしょうか？

お手頃てごろな値段ねだんで、且かつ余計よけいな華燭かしょくが無なくてシンプルなデザインだったからです。カスタムし甲斐がいがあるね！カッコよくやっていこうよ！という話はなしになって、アルトバンに決きめました。

――カスタムしやすい、ですか。

そうです。実じつはね、僕達ぼくたちはアルトバンをフィアットの126アバルトっぽくしようと企くわだてていたんです。

なぜ126アバルトっぽくしようと思おもったかというと、形かたちが何なんとなく似にているし、彼かれが蠍さそり座ざだったし、僕ぼくも蠍さそり座ざだからという単純たんじゅんな理由りゆうです。スズキのクルマに、フィアットの蠍さそりのマークってどうなのよ！？みたいな話はなしにもなったんだけど、友人ゆうじんがこんなことをい出いだしました。

「アバルト124スパイダーっていうクルマがあるだろ？あれは、マツダ ロードスターをベースにフィアットが細部さいぶを変かえて、アバルト124スパイダーとして売うっていたんだ。

だから、スズキのクルマをフィアットっぽくして、蠍さそりのマークをつけても誰だれも怒おこらないさ（笑）。」

それ聞きいた時ときに目めから鱗うろこで、確たしかにそうだねと、アルトバンを126アバルト風ふうにするカスタム計画けいかくが始動しどうしたんです。

――なるほど！そういうことでしたか！

実際じっさいに現物げんぶつを見みて、フロントだけバイザーが付ついてるのってカッコ悪わるいよね〜とか、リアのウインドウがはめ殺ごろしなのはキツいなぁ……とか、色々いろいろな話はなしをしました。

ここはこういう風ふうにしたら良よいんじゃないの？などの意見いけんの出だし合あいは2人ふたりでよくしていましたね。

でも、よし！取とり掛かかろうか！という時ときに、彼かれがそういうことを出来できる状態じょうたいではなくなってしまいました。だから僕ぼくはそれが悔くやしくて、アルトバンを引ひき取とって、彼かれと話はなしていた理想りそうのアルトバンにすると決きめたんです。

――出来栄できばえはどうでしたか？

彼かれと話はなしたことを思おもい出だして、それを反映はんえいさせたつもりです。ただ、どの箇所かしょも僕ぼくのイメージでフィアットを再現さいげんしたから、これが彼かれのやりたかったカスタムかは分わからないんですけどね。

毎月まいつき彼かれの家いえに行いって、こんな風ふうにしてみたよ〜と仏壇ぶつだんにお参まいりをするんです。その時ときに、彼かれについてやアルトバンについてご家族かぞくの方ほうと話はなすんですけど、それが供養くようになってると良よいなと思おもっています。自己じこ満足まんぞくかもしれませんけどね。

――そんなことないです！きっと、すごく嬉うれしいはずです。

そう言いってもらえると嬉うれしいです。

――具体ぐたい的てきに、どんなカスタムをしたのですか？

フロントバンパーとヘッドライトの外周がいしゅう部ぶ、リアバンパーの一部いちぶは、全体ぜんたいが締しまって見みえるように半はん艶つやの黒くろで塗ぬりました。つや消けしだとアルトワークスっぽいので、ちょっと渋しぶく見みえる半はん艶つやにしたのがポイントです。

あとは、Ａピラーにロッドアンテナがついていたのですが、商用しょうよう車しゃ感かんが出でてしまうので取とり外はずしました。

1番ばん気きに入いっているカスタムは、リアバンパーに穴あなを開あけて金網かなあみを貼はっている箇所かしょです。フィアット126は空冷くうれいRRのクルマなので、そうすることでそれっぽく見みえるように施ほどこしました。

内装ないそうは、ワークス純正じゅんせいのレカロシートを取とり付つけたのが、大おおきく変かわった点てんですかね。

あっ！そうそう。リアの窓まどがはめ殺ごろしなのがキツいって言いっていたから、全席ぜんせきパワーウインドウにしています。どうだ！楽らくになっただろう！って、仏壇ぶつだんの前まえで自慢じまんしましたよ（笑）。

そう、自信満々じしんまんまんの声こえで答こたえてくれた進藤しんどうさん。全すべてやりたいカスタムは施ほどこしたので、あとは大切たいせつに乗のっていくのみということです。

リアドアハンドルの下したにある、蠍さそりのマークが輝かがやいていました。

（文ぶん：矢田部やたべ明子あきこ）