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特攻に「志願したか」と聞かれて、「まだです」と答えた戦闘機乗りに対して飛行隊長が「独り言のように言い残したひとこと」(神立 尚紀) | マネー現代 | 講談社


特攻とっこうに「志願しがんしたか」とかれて、「まだです」とこたえた戦闘せんとうりにたいして飛行ひこう隊長たいちょうが「ひとごとのようにいいのこしたひとこと」

神立かんだつ 尚紀なおき プロフィール

P-51は、なおも攻撃こうげき機会きかいをうかがっているようだったが、やがてあきらめたのかB-29の編隊へんたいってった。

「エンジンとみぎ燃料ねんりょうタンクに被弾ひだん、そのうち、自動じどう消火しょうか装置そうち液化えきか炭酸たんさんガスが燃料ねんりょう混入こんにゅうしたため、エンジンがまってしまいました。電気でんき系統けいとうもやられて、ロケットだん処分しょぶんしようにも発射はっしゃできず、しゅあしない。落下傘らっかさん降下こうかか?いやだめだ、高度こうどがりすぎている。

紫電しでんあらためていつばさですが、主翼しゅよく上反かみたんかくがあるから、機体きたい左右さゆうかたむけずに胴体どうたい着陸ちゃくりくすれば両翼りょうよくのロケットだん爆発ばくはつしない、と判断はんだんして、そのままグライドしながら間近まぢかえた陸軍りくぐん相模さがみ飛行場ひこうじょう草原そうげんにいちかばちかの不時着ふじちゃくこころみました。

ノースアメリカンP-51D

接地せっちすると、空転くうてんしていた4翅のプロペラがドドドッと地面じめんたたいて『く』のがり、半分はんぶんていたしゅあしんだ。エンジン下部かぶ地面じめんをえぐり、ゴトゴトつちぼこりをばしながらぱしる。ロケットだん爆発ばくはつしないうちにまれ、まれ、と口走くちばしるうち、ガクッとショックをかんじてまりました。

いそいでかたバンドをはずし、落下傘らっかさん背負せおったまま飛行機ひこうきからり、一目散いちもくさん後方こうほうした。すると機体きたいすこさきのところで、なにかにられて仰向あおむけに地面じめんたたきつけられ、その瞬間しゅんかん轟音ごうおんとともにかおがボッとあつくなるのをかんじた。

轟音ごうおんとおざかる様子ようすだったのでおそるおそるあたまかおからだれ、異常いじょうのないことをたしかめて『たすかった!』とおもったら、上空じょうくうだい爆発ばくはつ。ロケットだん花火はなびのようにんで炸裂さくれつしたんです。紫電しでんあらためると、左翼さよくのロケットはのこっていて、みぎのロケットが不時着ふじちゃくのはずみで発射はっしゃされたのがわかりました。

 

ホッとしてきゅうちからけるのをかんじ、そのまま草原そうげんたおむと、自分じぶんからだから落下傘らっかさんの曳索がピーンと飛行機ひこうき操縦そうじゅうせきまでびているのにづいて、おもわず苦笑くしょうしました。これは、脱出だっしゅつ自動的じどうてき落下傘らっかさんひらくよう、座席ざせきないにフックでめてあるものでしたが、あわてていてはずさずにりてしまって、転倒てんとうしたんですね」

その午後ごごむかえにきゅうさんしき中間ちゅうかん練習れんしゅうってよこそらかえった大原おおはらは、さらに高熱こうねつはっし、軍医ぐんい診断しんだんけた。診断しんだん結果けっかはまさかの「ちょうチフス」だった。そのまま長浜ながはま海軍かいぐん病院びょういん入院にゅういんすることになる。大原おおはらいく生死せいしさかいをさまよいながら、6月30にち退院たいいんするまでのやく80日間にちかん入院にゅういん生活せいかつ余儀よぎなくされた。

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