【『インビジブル』感想かんそう7話わ】まなざしが支ささえるもの By - かな 公開こうかい:2022-05-31 更新こうしん:2022-05-31 かなインビジブルドラマコラム柴しば咲さきコウ高橋たかはし一生かずお Share Post LINE はてな コメント Twitterを中心ちゅうしんに注目ちゅうもくドラマの感想かんそうを独自どくじの視点してんでつづり人気にんきを博はくしている、かな(@kanadorama)さん。 2022年ねん4月がつスタートのテレビドラマ『インビジブル』(TBS系けい)の見みどころを連載れんさいしていきます。 かなさんがこれまでに書かいたコラムは、こちらから読よめます。 ある程度ていど年齢ねんれいを重かさねて社会しゃかいの中なかで経験けいけん値ちを積つむと、少すこしずつ世よの中なかの善悪ぜんあくというのは入いり混まじっていて、ハサミで切きり落おとすように白黒しろくろはつかないのだと分わかってくる。 犯罪はんざいと合法ごうほうの境界きょうかい線せんのようなきわどい判断はんだんではなくても、誰だれかにとっての善ぜんと、他たの誰だれかにとっての悪あくは絡からみ合あっていて、見みる角度かくどの違ちがいでしかないことも多おおい。 ただ、それを悟さとったとしても、大半たいはんの人々ひとびとは常識じょうしきや一般いっぱん的てきな善人ぜんにんとしての領域りょういきに踏ふみとどまって生いきていく。堕落だらくせず、人ひとを害がいさず、自分じぶんの判断はんだんに折おり合あいをつけて生いきていく。 それを分わかつものは何なにか。そんなことを考かんがえてしまった。 3年ねん前まえ、家族かぞく同然どうぜんだった後輩こうはいを捜査そうさ中ちゅうに殺害さつがいされて以来いらい、荒あれた捜査そうさでその犯人はんにんを捜さがし続つづける刑事けいじ・志村しむら貴文たかふみ(高橋たかはし一生かずお)の前まえに現あらわれたのは、「インビジブル」と呼よばれ恐おそれられている裏うら社会しゃかいの犯罪はんざいコーディネーター・キリコ(柴しば咲さきコウ)だった。 だが、犯罪はんざい者しゃの情報じょうほう提供ていきょうと引ひき換かえに捜査そうさの実じつ動どうを求もとめてきた彼女かのじょは、実際じっさいにはインビジブルではなく、本当ほんとうのインビジブルである弟おとうとのキリヒト(永山ながやま絢あや斗と)の、犯罪はんざいコーディネーターとして過激かげき化かしていく暴走ぼうそうを止とめることが真しんの目的もくてきだった。 キリコのその望のぞみに呼応こおうし、志村しむらはキリヒトを止とめるべく協力きょうりょくを申もうし出でる。 そんな異色いしょくのバディを描えがいてきた『インビジブル』(TBS系けい金曜きんよう22時じ)。 ドラマは姉あねと弟おとうとの争あらそい、そして警察けいさつ内部ないぶの裏切うらぎりを巻まき込こみながらいよいよ終盤しゅうばんに向むかっている。 この回かいでは、急きゅう成長せいちょうするITベンチャー企業きぎょうの社長しゃちょうの殺害さつがい依頼いらいをめぐる、志村しむらとキリコのクールな連携れんけいが存分ぞんぶんに楽たのしめた。 キリヒトが裏うらで糸いとを引ひいている殺人さつじんを社長しゃちょうの警護けいごを通とおして止とめようとする志しむら村むらと、警察けいさつ内部ないぶの内通ないつう者しゃを密室みっしつに居いながらデータから洗あらい出だそうとするキリコのやりとりは、時ときに携帯けいたい電話でんわを通とおして、時ときに盗聴とうちょうから逃のがれる為ために小声こごえで、抑おさえた声こえで淡々たんたんと交かわされるけれども、その分ぶんだけ互たがいの信頼しんらい感かんがにじむ。 ふと、志村しむらは相変あいかわらず無愛想ぶあいそうではあるけれども、あまり荒すさんだ表情ひょうじょうを見みせなくなったなと思おもう。 志村しむらとキリコの二人ふたりは、互たがいの能力のうりょくと真摯しんしさを信しんじあうバディではあるけれども、少すくなくとも今いまのところは恋愛れんあい関係かんけいではない。大おおきな期待きたいや依存いぞんを寄よせ合あうような湿しめった関係かんけいでもない。 簡単かんたんには名前なまえのつけられない信頼しんらい感かん、それで十分じゅうぶんだと思おもう。 高橋たかはし一生かずおという俳優はいゆうには、そんな乾かわいた信頼しんらい感かんのある役やくが不思議ふしぎとよく似合にあう。 特殊とくしゅ能力のうりょくを持もつ偏屈へんくつな漫画まんが家かを演えんじた時ときも(2020年ねん・2021年ねん『岸辺きしべ露伴ろはんは動うごかない』NHK)、猟奇りょうき殺人さつじん犯はんを装よそおいながら決けっして本心ほんしんを明あかさない男おとこを演えんじた時ときも(2021年ねん『天国てんごくと地獄じごく』TBS系けい)、理屈りくつっぽいセクシュアルマイノリティを演えんじた時ときも(2022年ねん『恋こいせぬふたり』NHK)、高橋たかはし一生かずおが演えんじる男おとこと、相対そうたいする女性じょせいとの関係かんけいは恋愛れんあいにはならないけれども、高橋たかはし一生かずおは恋愛れんあいしない関係かんけいこそをロマンチックに、きちんと体温たいおんの通とおったものとして魅みせる。 今いま作さくでもその魅力みりょくは存分ぞんぶんに発揮はっきされていると思おもう。 結局けっきょく、志村しむらとキリコはITベンチャー社長しゃちょうを殺害さつがい依頼いらいから守まもり抜ぬくことに成功せいこうするものの、命いのちを救すくった社長しゃちょうも、殺人さつじんを依頼いらいしてきた同どう会社かいしゃの役員やくいんも、どちらも到底とうてい潔白けっぱくとは言いえない履歴りれきの持もち主ぬしであることを知しり、志村しむらは徒労とろう感かんをにじませる。 善悪ぜんあくの境界きょうかい線せんが揺ゆらぐ煩雑はんざつさにうんざりする志村しむらに、キリコは「見極みきわめるんでしょ?何なにが悪あくなのか。…あなたが見極みきわめて」と、かつて志村しむらが自分じぶんを励はげます為ためにかけてくれた言葉ことばを電話でんわ越ごしに返かえし、背中せなかを押おす。 その言葉ことばで、志村しむらの瞳ひとみに力ちからが戻もどるようで印象いんしょう的てきだった。 善悪ぜんあくが渾然こんぜんとするこの社会しゃかいで、投なげやりにならず、流ながされず、諦あきらめず、信しんじるものを追おい求もとめるための分わかれ道みちは何なにか。 志村しむらとキリコが交かわす言葉ことばに、それは自分じぶんを信しんじてくれる誰だれかのまなざしではないかと思おもった。約束やくそくや誓ちかいほど堅固けんごでなくてもいい、温あたたかなまなざし。 それを正面しょうめんから見みつめ返かえせる自分じぶんでありたいと思おもえることが、何なにかを諦あきらめかける瞬間しゅんかんに自分じぶんを支ささえる杖つえたり得えるのではないか。 善悪ぜんあくの境界きょうかい線せんで時ときに転ころび、支ささえ合あいながら、この二人ふたりはどんな未来みらいにたどり着つくのか。最後さいごまで見届みとどけたいと思おもう。 ドラマコラムの一覧いちらんはこちら [文ぶん・構成こうせい/grape編集へんしゅう部ぶ] かな Twitterを中心ちゅうしんに注目ちゅうもくドラマの感想かんそうを独自どくじの視点してんでつづり人気にんきを博はくしている。 ⇒ かなさんのコラムはこちら Share Post LINE はてな コメント
Twitterを中心 に注目 ドラマの感想 を独自 の視点 でつづり人気 を博 している、かな(@kanadorama)さん。
2022年 4月 スタートのテレビドラマ『インビジブル』(TBS系 )の見 どころを連載 していきます。
かなさんがこれまでに書 いたコラムは、こちらから読 めます。
ある程度 年齢 を重 ねて社会 の中 で経験 値 を積 むと、少 しずつ世 の中 の善悪 というのは入 り混 じっていて、ハサミで切 り落 とすように白黒 はつかないのだと分 かってくる。
ただ、それを悟 ったとしても、大半 の人々 は常識 や一般 的 な善人 としての領域 に踏 みとどまって生 きていく。堕落 せず、人 を害 さず、自分 の判断 に折 り合 いをつけて生 きていく。
それを分 かつものは何 か。そんなことを考 えてしまった。
3年 前 、家族 同然 だった後輩 を捜査 中 に殺害 されて以来 、荒 れた捜査 でその犯人 を捜 し続 ける刑事 ・志村 貴文 (高橋 一生 )の前 に現 れたのは、「インビジブル」と呼 ばれ恐 れられている裏 社会 の犯罪 コーディネーター・キリコ(柴 咲 コウ)だった。
だが、犯罪 者 の情報 提供 と引 き換 えに捜査 の実 動 を求 めてきた彼女 は、実際 にはインビジブルではなく、本当 のインビジブルである弟 のキリヒト(永山 絢 斗 )の、犯罪 コーディネーターとして過激 化 していく暴走 を止 めることが真 の目的 だった。
キリコのその望 みに呼応 し、志村 はキリヒトを止 めるべく協力 を申 し出 る。
そんな異色 のバディを描 いてきた『インビジブル』(TBS系 金曜 22時 )。
ドラマは姉 と弟 の争 い、そして警察 内部 の裏切 りを巻 き込 みながらいよいよ終盤 に向 かっている。
この回 では、急 成長 するITベンチャー企業 の社長 の殺害 依頼 をめぐる、志村 とキリコのクールな連携 が存分 に楽 しめた。
キリヒトが裏 で糸 を引 いている殺人 を社長 の警護 を通 して止 めようとする志 村 と、警察 内部 の内通 者 を密室 に居 ながらデータから洗 い出 そうとするキリコのやりとりは、時 に携帯 電話 を通 して、時 に盗聴 から逃 れる為 に小声 で、抑 えた声 で淡々 と交 わされるけれども、その分 だけ互 いの信頼 感 がにじむ。
ふと、志村 は相変 わらず無愛想 ではあるけれども、あまり荒 んだ表情 を見 せなくなったなと思 う。
その言葉 で、志村 の瞳 に力 が戻 るようで印象 的 だった。
それを正面 から見 つめ返 せる自分 でありたいと思 えることが、何 かを諦 めかける瞬間 に自分 を支 える杖 たり得 るのではないか。
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かな
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