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【『大奥』感想5話】福士蒼汰と堀田真由が演じきった満身創痍の愛の帰結 – grape [グレイプ]

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【『大奥おおおく感想かんそう福士ふくしあお汰と堀田ほった真由まゆえんじきった満身まんしん創痍そういあい帰結きけつ

By - かな  公開こうかい  更新こうしん

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Twitterを中心ちゅうしん注目ちゅうもくドラマの感想かんそう独自どくじ視点してんでつづり人気にんきはくしている、かな(@kanadorama)さん。

2023ねんがつスタートのテレビドラマ『大奥おおおく』(NHK)のどころを連載れんさいしていきます。

かなさんがこれまでにいたコラムは、こちらからめます。

うばわれたおんな家光いえみつ)と、のぞ未来みらいててそのおんなったおとこ有功ゆうこう)。

たがいにちいさな焚火たきびのような尊厳そんげんまもりあい、あいった男女だんじょ死別しべつのときがおとずれた。

ともに太平たいへいまもるために苦悶くもん人生じんせいえてきたけれども、世代せだいがぐるりとまわったとき、そうしてまもりたかったものの記憶きおく自身じしん子孫しそんでも、社会しゃかいでもうすれていく。

史実しじつからかんがえると、およそ30ねんきょう

価値かちかんわっていくのにその時間じかんながいかみじかいか。でもおもえば、わたしたちもおや祖父母そふぼかた苦労くろうでさえ、どこかふわふわと実感じっかんともなわないものだ。

江戸えど太平たいへいはなやかな時代じだいに、ただようように退廃たいはいをまとわせてあらわれた将軍しょうぐん綱吉つなよしなか里依りえしゃ)の姿すがたにそんなことをおもう。

ドラマ『大奥おおおく』のオリジナルのシーンも

男子だんしだけがかか伝染でんせんびょうで、人口じんこう男女だんじょ均衡きんこうになった架空かくう江戸えど時代じだいさんだい将軍家しょうぐんけこう伝染でんせんびょううしなった春日局かすがのつぼね斉藤さいとう由貴ゆき)は、その唯一ゆいいつ落胤らくいん(らくいん)である少女しょうじょ堀田ほった真由まゆ)を拉致らちしてきて家光いえみつ身代みがわりとし、正統せいとう血筋ちすじ世継よつぎをませようと画策かくさくする。

かたくなに子供こどもむことをこば少女しょうじょ春日局かすがのつぼねわせたのは、公家くげ出身しゅっしん僧侶そうりょ万里小路まりこうじ有功ゆうこう福士ふくしあお汰)だった。

のぞまぬ還俗げんぞくいられ、未来みらいうばわれてもなお慈悲じひふかさをうしなわない有功ゆうこうとの日々ひび家光いえみつ愛情あいじょうやすらぎをるが、二人ふたりあいだ出来できず、やむなく家光いえみつおとことのあいだむ。

だが、出産しゅっさんためのどのおとこ関係かんけいとうがしん有功ゆうこうにある家光いえみつと、あいするおんなおとこいだかれるくるしみからのがれられない有功ゆうこうとのあいだには、ほそくてもまることのないかなしいみぞ出来できてしまっていた。

写真しゃしんはイメージ

間際まぎわ家光いえみつ有功ゆうこうたのんで身体しんたい場面ばめん、そして本当ほんとう名前なまえんでほしいと家光いえみつがせがむセリフは原作げんさくにない、ドラマのオリジナルである。

ひときていく尊厳そんげん最後さいごとりでであり、かなしい運命うんめい女将おかみぐんはそれを有功ゆうこう存在そんざいまもとおしたのだとかる、素晴すばらしいシーンだった。

千恵ちえさま」と万感ばんかんおもいをめた福士ふくしあお汰の表情ひょうじょうこえにこみげるものがあり、さらにそれに「…うん」とちいさくうなず堀田ほった真由まゆが、出会であったころのように性別せいべつえた無垢むく笑顔えがおうなずくのをていて、おもわずこえなみだをこらえきれなくなった。

写真しゃしんはイメージ

かなしい人生じんせいだがたしかなしあわせもあったのだとつたわってくる。

春日局かすがのつぼね有功ゆうこう還俗げんぞくつよい『ほとけをさらった』、そのときのぞんだ『上様うえさまこそこのもっとすくわれねばならないひと』というねがいを、有功ゆうこうたしたのである。

ドラマの有功ゆうこうはより人間にんげんらしさがあふれていたし、春日局かすがのつぼねふかみのある烈女れつじょぶりも見事みごとだった。そして、たまさかええんじたおくさとし哉の愛嬌あいきょうとバイタリティもまた印象深いんしょうぶかい。

このたまさかえ可愛かわいらしさがわたしたちの記憶きおくのこればのこるほどに、綱吉つなよしへんごうふかい、やるせないものになるだろう。

かくして、家光いえみつから物語ものがたり一気いっきだい将軍しょうぐん綱吉つなよし時代じだいにとぶ。戦乱せんらんとおのき、大奥おおおく絢爛けんらん豪華ごうかになり、そして江戸えどまちでは庶民しょみん芸能げいのう食事しょくじたのしんでおり、これぞ我々われわれがイメージする『大奥おおおく』の世界せかいという高揚こうようかんちている。

すず廊下ろうか、しずしずと女将おかみぐんしたが極彩色ごくさいしょく衣装いしょうつつんだ台所だいどころ御中おんちゅう﨟たち。

そのなかで、権力けんりょく美貌びぼう跡継あとつぎのむすめ腹心ふくしん部下ぶかひとのぞすべてをっているかのようにえる女将おかみぐん綱吉つなよし倦怠けんたいにうんざりしている。

大奥おおおくでの房事ぼうじきしている綱吉つなよしは、かつての愛人あいじんで、いま重臣じゅうしん牧野まきのおっとになっているおとこまえうばいとり、さら息子むすこまで大奥おおおくしてうばってしまう。

奔放ほんぽう女将おかみぐん欲望よくぼう牧野ぼくや一家いっか崩壊ほうかいし、綱吉つなよしもとからってしまうが、綱吉つなよしには罪悪ざいあくかん欠片かけらもない。

興味深きょうみぶかいのは、原作げんさくではここで「なりさだやさしうてお母上ははうえのようでわたし大好だいすきであったに」と綱吉つなよし心底しんそこかなしそうにつぶやくのである。

不可解ふかかい価値かちかんにもえるが、もしも貞淑ていしゅくであることが美徳びとくであるとおしまれるのとおなじくらいに、せい奔放ほんぽう貪欲どんよくであることが彼女かのじょにとってあるしゅつとめであり、美徳びとくであるとおしえられてきれば、そういうことになるのかもしれないともおもうのだった。

エピソードをとおして、エロスはふんだんにあるがロマンスはえにくい、怜悧れいり(れいり)だがおなじくらい強引ごういん女将おかみぐん綱吉つなよしは、えんじるにあたってもリスクのたか難役なんやくだろうとおもう。

そのたかやまいどむのに、かい女優じょゆうなか里依りえしゃほど適任てきにん俳優はいゆうはいないだろう。

はやくも京都きょうとからやってきた御中おんちゅう﨟(おちゅうろう)のみぎ衛門えもん値踏ねぶみするねっとりした視線しせんにはゾクゾクさせられる。

その視線しせんけるのは『信用しんようならないおとこ』をえんじたら当代とうだい随一ずいいち山本やまもと耕史こうじで、NHK大河たいが時代じだいげき常連じょうれんでもあり、所作しょさ自然しぜんうつくしさはさすがである。

綱吉つなよしへんは、大奥おおおくらしさ全開ぜんかい政争せいそう情念じょうねんきもたのしく、同時どうじ史実しじつや、赤穂あこう浪士ろうしといった歴史れきしじょう有名ゆうめいなエピソードと物語ものがたりわせ具合ぐあい絶妙ぜつみょうで、それもまたたのしみな見所みどころといえるだろう。


[ぶん構成こうせい/grape編集へんしゅう]

かな

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