吉元よしもと由美ゆみの『ひと・もの・こと』

言葉ことばをワクワク生いきるエネルギーに

言葉ことばは、オセロのチップのようだとつくづく思おもいます。同おなじことを伝つたえるにも、い方いかたひとつ、表現ひょうげんの仕方しかたひとつで、まったく違ちがう『力ちから』が発揮はっきされます。

今年ことしの箱根はこね駅伝えきでんで、一いち強きょうと言いわれていた駒澤大学こまざわだいがくを抑おさえて、青山学院大学あおやまがくいんだいがくが総合そうごう優勝ゆうしょうを果はたしました。

原はら監督かんとくというと、毎回まいかいのキャッチフレーズが有名ゆうめいです。青山学院大学あおやまがくいんだいがくが箱根はこね駅伝えきでんで総合そうごう優勝ゆうしょうした２０１５年ねんのキャッチフレーズ『ワクワク大だい作戦さくせん』には驚おどろきました。

根性こんじょう物語ものがたりが美談びだんとして語かたられることが多おおいスポーツにおいて、『ワクワク大だい作戦さくせん』というのはかなり異色いしょくだったでしょう。ポジティブでおおらかな、まさに青あお学がくの校風こうふうを表あらわしているようなキャッチフレーズです。

試合しあい前まえにアスリートが「大会たいかいを楽たのしみたい」と口くちにするのをよく耳みみにします。「楽たのしむ」と聞きくと、真剣しんけんではないような印象いんしょうを受うける人ひともいるかもしれません。

しかし、並々なみなみならぬ努力どりょくを重かさね、多おおくの人ひとの中なかから選抜せんばつされた選手せんしゅなのですから、『根性こんじょう論ろん』を持もち出だして「楽たのしむなんてけしからん」というのは違ちがうでしょう。

『ワクワク』はモチベーションを上あげるエネルギーです。一人ひとり一いち人にんの内側うちがわから自然しぜんと湧わき上あがるもの。一方いっぽう根性こんじょうとなると、振ふり絞しぼって出だす、というイメージがあります。

何なにかを極きわめるには、根性こんじょうなくしてワクワクなしです。大切たいせつなことは、最終さいしゅう的てきにどちらのエネルギーを選えらぶかということなのです。

これは私わたしたちの日常にちじょうの中なかでも言いえることだと思おもいます。困難こんなんや問題もんだいがあっても（どうやって乗のり越こえようか）と、前向まえむきなイメージを持もちながら根性こんじょう物語ものがたりを楽たのしむように乗のり越こえる。

イバラの道みちは花道かどうだと思おもって、山やまあり谷たにありを生いきていく。何なにもない人生じんせいなどないのですから、イバラの花道かどうを進すすみ、苦労くろうを武勇ぶゆう伝でんにしていきたいものです。

青あお学がくの原げん監督かんとくは、自分じぶんの言葉ことばを持もっている監督かんとくだと思おもいます。ですから、学生がくせいたちからも言葉ことばの力ちからを引ひき出だすことができる。そうすることで自主じしゅ性せいが培つちかわれるのです。

ある大学だいがくの監督かんとくが、走はしり終おえ、倒たおれ込こんでいる学生がくせいに次つぎのように声せいかけをしていました。

思おもうように走はしれなかった学生がくせいはどう受うけ取とるのでしょうか。自分じぶんを責せめることになるのではないかと、聞きいていて少すこし胸むねが痛いたみました。

『呪のろい』という言葉ことばには、二に通とおりの読よみ方かた、意味いみがあります。「のろい」とも読よむし、「まじない」とも読よむのです。

のろいは、『恨うらみにある人ひとに悪わるいことが起おこるように神仏しんぶつに祈いのること』。まじないは『災わざわいを逃のがれるように神仏しんぶつに祈いのること』。

これが一ひとつの『呪のろい』という言葉ことばにあるのですから、日本語にほんごはおもしろいです。

という声こえかけであれば、『のろい』でなく『まじない』になるのではないでしょうか。

オセロのチップがひっくり返かえるように、表現ひょうげんの仕方しかた一ひとつで『仇かたき討うち』が『ワクワク』に変かわる。それも『言葉ことばの力ちから』なのです。

※記事きじ中ちゅうの写真しゃしんはすべてイメージ

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[文ぶん・構成こうせい／吉元よしもと由美ゆみ]