ムッチ先輩せんぱい（磯村いそむら勇いさむ斗と）と並ならぶ『不適切ふてきせつにもほどがある！』（TBS系けい　金曜きんよう２２時じ）の癒いやし枠わく・秋津あきつくん（磯村いそむら勇いさむ斗と）が何なに気きにアプリ婚こん活かつを始はじめて、その入力にゅうりょく条件じょうけんのあまりの細こまかさに笑わらってしまったけれども、そこまで分類ぶんるいしたいのは失敗しっぱいしたくない、いや、できないからなんだろうなと思おもう。

令れい和わのこのご時世じせい、現役げんえき世代せだいはトライアンドエラーする余裕よゆうがない。

そして昭和しょうわと令れい和わを繋つなぐ、平成へいせいの３０年間ねんかんという時間じかんは、ITやSNSの普及ふきゅうで他人たにんの成功せいこうも失敗しっぱいも沢山たくさん『見みえる』のが当あたり前まえになる過程かていでもあった。

恐おそろしい失敗しっぱい例れいを沢山たくさん見みてしまう我々われわれは、どこかしら大だい成功せいこうとはいえずとも失敗しっぱいはしない選択肢せんたくしに傾かたむいてしまう。

そのために分類ぶんるいして要素ようそを細こまかく分析ぶんせきする。６５点てんあれば上等じょうとう、当あたって砕くだけられない時代じだいなのである。

昭和しょうわ６１年ねんを生いきている小川おがわ市郎いちろう（阿部あべサダヲ）は中学校ちゅうがっこうの体育たいいく教師きょうし。情じょうに厚あついし面倒めんどう見みも良よいが、多様たよう性せいにも弱者じゃくしゃへの配慮はいりょにも意識いしきは低ひくく、ガサツだ。

その小川おがわ市郎いちろうが昭和しょうわから令れい和わにタイムスリップして、騒動そうどうを起おこしながらも様々さまざまな人ひとたちと関かかわっていく。そんな中なかで小川おがわは令れい和わに生いきる自分じぶんの孫まご・渚なぎさ（仲なか里依りえ紗しゃ）と出会であい、自分じぶんと娘むすめの純子じゅんこ（河合かわい優ゆう実み）が阪神はんしん淡路あわじ大震災だいしんさいで死しぬことを知しる。

知しってしまった娘むすめの寿命じゅみょうに心しんを痛いためながらも、どうすべきかの結論けつろんは出でない。

一方いっぽう、小川おがわとは逆ぎゃくに令れい和わから昭和しょうわにやってきた向坂さきさかサカエ（吉田よしだ羊ひつじ）と息子むすこのキヨシ（坂元さかもと愛あい登とう）は、それぞれ恋こいに友情ゆうじょうにと昭和しょうわの暮くらしを満喫まんきつしていたが、それにも異変いへんが起おきようとしていた。

前回ぜんかいの『失敗しっぱいしたらダメですか』も相当そうとうに突つき刺ささる内容ないようだったが、今回こんかいの『分類ぶんるいしなきゃダメですか』もまた、社会しゃかいに投なげかけられた鋭するどい問といかけの槍やりだと思おもう。

そしてラベルを貼はって、分わかりやすく見みえる部分ぶぶんだけをやたらと持もち上あげたり、やたらと叩たたくという現代げんだいの世論せろんの極端きょくたんさにおいて、分わかちがたい要素ようそでもある。

９話わで、個人こじん的てきに心しんに残のこる好すきなシーンがある。

純子じゅんこの墓はかを囲かこんで、小川おがわ・渚なぎさ・ゆずる（古田ふるた新太あらた）・サカエ・井上いのうえ（三宅みやけ弘ひろし城じょう）がそれぞれに純子じゅんこを想おもう場面ばめんである。父ちち、娘むすめ、夫おっと、後輩こうはい、それぞれの立場たちばで彼かれらは純子じゅんこの人生じんせいを想おもう。

それぞれの目線めせんだけれど、そこに体温たいおんのある一人ひとりの魅力みりょく的てきな女性じょせいが浮うかび上あがる。

何なにもかも上手うまくいった恵めぐまれた人ひと、パワハラした人ひと、Z世代せだい、老害ろうがい。

それは『そんなんだから』という無責任むせきにんな言葉ことばと、一いち面めん的てきなレッテルで分類ぶんるいされ評価ひょうかされる薄うすっぺらさとは対たいになるものだ。

それにしても、娘むすめを傷きずつけられた怒いかりにまかせて父ちち・ゆずるが歌うたい出だすのはミュージカル『コーラスライン』の名曲めいきょく『ONE』風ふうの何なにかだし、歌詞かしにあろうことか『ワンチャン』などとぶっ込こむし、途中とちゅうで心臓しんぞう病びょうのゆずるは倒たおれ込こむ。

倒たおれ込こむ背中せなかに渚なぎさがかけたガウンを跳はね飛とばして更さらにキレキレに踊おどるゆずる、痛々いたいたしくも救急きゅうきゅう車しゃに収容しゅうようされてもなお歌うたうゆずるに、小川おがわがかけた言葉ことばは…。

これこそ宮藤くどう官かん九きゅう郎ろうの『わかるやつだけわかればいい』名めい場面ばめんの一ひとつだと思おもう。

いつにもまして、怒おこるところか笑わらうところか泣なくところか爆笑ばくしょうするところか、よく分わからない混沌こんとんとしたこの最高さいこうの一幕ひとまくに、クドカンのドラマもまた安易あんいな分類ぶんるいなんか受うけ付つけない無む二にのものだと痛感つうかんするのだった。

頑張がんばっているから頑張がんばれと言いってはならないのか、一人ひとりで頑張がんばったら逆ぎゃくに迷惑めいわくになるのか、異性いせいへの褒ほめ言葉ことばは全すべて地雷じらいなのか、SNSの人間にんげん関係かんけいにどう対たいするか、老害ろうがいの『害がい』って何なになのか、視聴しちょう者しゃとしてエンタテインメントの楽たのしみ方かたはどこにあるのか、一度いちど失敗しっぱいしたら二度にどと許ゆるされないのか、そして今回こんかい、安易あんいに人ひとを分類ぶんるいしていいのか。

今いま作さくの作つくり手しゅは、決けっして単たんに『昭和しょうわは良よかった』ではなく、令れい和わで多おおくの個人こじんが持もつ配慮はいりょや優やさしさはそのままに、集団しゅうだん心理しんりとして過敏かびんになりすぎる息苦いきぐるしさに何なんらかの落おとし所しょはないのかと問といかけているように思おもう。

次回じかいはいよいよ最終さいしゅう回かいである。きっと膝ひざを打うつような見事みごとな着地ちゃくちが見みられるだろう。

切せつなくて毒どくが効きいていて笑わらえて愛あいおしい。このドラマの面白おもしろさを分わかりやすく説明せつめいするのはやっぱり難むずかしい。

けれども、見みた者ものにとって忘わすれがたいドラマになるのは間違まちがいない。

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[文ぶん・構成こうせい／grape編集へんしゅう部ぶ]