【『大奥おおおく』感想かんそう4話わ】堀田ほった真由まゆ・斉藤さいとう由貴ゆき、二人ふたりの『母はは』の覚悟かくごで描えがく男女だんじょ逆転ぎゃくてん社会しゃかいのリアリティ By - かな 公開こうかい:2023-02-03 更新こうしん:2023-02-03 かなドラマコラム堀田ほった真由まゆ大奥おおおく斉藤さいとう由貴ゆき Share Post LINE はてな コメント Twitterを中心ちゅうしんに注目ちゅうもくドラマの感想かんそうを独自どくじの視点してんでつづり人気にんきを博はくしている、かな(@kanadorama)さん。 2023年ねん1月がつスタートのテレビドラマ『大奥おおおく』(NHK)の見みどころを連載れんさいしていきます。 かなさんがこれまでに書かいたコラムは、こちらから読よめます。 NHKドラマ10『大奥おおおく』(火曜かよう22時じ)の原作げんさく、よしながふみの同名どうめい漫画まんがは2021年ねんの日本にっぽんSF大賞たいしょうを受賞じゅしょうしている。 時代じだい劇げきがSFというカテゴリであることに一瞬いっしゅん不思議ふしぎな気持きもちになるが、SFの『科学かがく的てきな空想くうそうに基もとづいたフィクションである』という説明せつめいに基もとづくなら、男子だんしのみが罹かかる架空かくうの伝染でんせん病びょうが起点きてんとなるこの作品さくひんは、まぎれもなくSFだ。 大おおきな虚構きょこうで読者どくしゃや視聴しちょう者しゃをしっかり包つつみ込こむためには、細部さいぶのリアリティこそが必須ひっすだ。 今回こんかい4話わ目め、つまり一人ひとりの名なを奪うばわれた女おんなが、男おとこの偽物にせものではなく女おんなとして将軍しょうぐんの名なを継つごうと立たち上あがる場面ばめんは、この大奥おおおくという物語ものがたりの世界せかい観かんが成立せいりつするための物語ものがたりの最さい重要じゅうよう場面ばめんである。 どんな描えがき方かたになるか、楽たのしみであり少すこし不安ふあんでもあったが、杞憂きゆうだった。 ※写真しゃしんはイメージ もしもおとぎ話ばなしなら、不幸ふこうな姫ひめと優やさしい王子おうじが出会であい、愛あいし合あうことで物語ものがたりはめでたしめでたしで終おわる。 この物語ものがたりでも、将軍しょうぐんの落おとし胤だね(おとしだね)として子供こどもを産うむことを強しいられた女おんな・家光いえみつ(堀田ほった真由まゆ)と、聖職せいしょく者しゃとして望のぞんでいた未来みらいをくじかれた失意しついの青年せいねん・万里小路まりこうじ有功ゆうこう(福士ふくし蒼あお汰)は出会であい、恋こいに落おちる。 しかし物語ものがたりはその先さきも残酷ざんこくに続つづいていく。 深ふかく愛あいし合あいながらも二に人にんは子こに恵めぐまれず、徳川とくがわ政権せいけんを維持いじするため、この国くにを戦乱せんらんの世よに戻もどしてはならないという過酷かこくな判断はんだんのもとに、家光いえみつは有功ゆうこう以外いがいの男おとこを相手あいてにせねばならなくなる。 ※写真しゃしんはイメージ いずれ共ともに死しのうと誓ちかうほどに互たがいを想おもい合あう激はげしい愛情あいじょうから、他たの側室そくしつとの間あいだに子こをなして母ははになる家光いえみつと、ただそれを見守みまもって生いきるしかない有功ゆうこうの対比たいひが鮮あざやかで残酷ざんこくだ。 別離べつりを告つげる場面ばめんでの「死しね、お前まえなど死しね」と激げきする堀田ほった真由まゆの表情ひょうじょうも素晴すばらしいし、「では…殺ころして下くだされ」と応こたえる福士ふくし蒼あお汰の、たっぷりと間合まあいをとった表情ひょうじょうのグラデーションは見応みごたえ抜群ばつぐんである。 しかし母ははとなり政務せいむもこなすようになる家光いえみつが、内面ないめんに強つよい芯しんが出来できて愛情あいじょうも覚悟かくごも揺ゆるぎないものになるのに比くらべて、有功ゆうこうは悲痛ひつうなまでに不安定ふあんていだ。 原作げんさくでも有功ゆうこうは柔和にゅうわな人物じんぶつだが、今回こんかいのドラマ版ばんの有功ゆうこうは、優やさしい上うえに体温たいおんのある人間にんげんくささがあって、それがとても良よいと思おもう。 嫉妬しっとに苦くるしみながらも廊下ろうか側がわには切きりつけられない苦悩くのうは原作げんさくでも描えがかれるが、有功ゆうこうをけなげに抱だきしめる玉たま栄さかえ(奥おく智さとし哉哉)とその胸むねですすり泣なく有功ゆうこうは、ドラマのオリジナルである。 ※写真しゃしんはイメージ その上うえで、有功ゆうこうが聖職せいしょく者しゃになろうとしていた青年せいねんであること、その素養そようが大奥おおおくでの暮くらしでも損そこなわれずに内面ないめんに残のこっていることがドラマでは繰くり返かえし描えがかれている。 ただひとり、愛あいする女おんなへの純粋じゅんすいな愛情あいじょうと嫉妬しっとの間あいだで不安定ふあんていに揺ゆれ続つづける有功ゆうこうの人生じんせいは、他人たにんのケアをすることで、利他りたという杖つえを得えてようやく安定あんていする。 そして病やまいに倒たおれた春日局かすがのつぼね(斉藤さいとう由貴ゆき)の最後さいごの懺悔ざんげを聞きき、彼女かのじょの秘ひめた悔くいも詫わびも引ひき取とって看取みとるのである。 懺悔ざんげの中なかで春日局かすがのつぼねが呟つぶやく「あの日ひわしは、仏ほとけをさらってきたのじゃ」は原作げんさくにないセリフだが、このドラマの春日しゅんじつ局きょくの複雑ふくざつで魅力みりょくある人物じんぶつ像ぞうを端的たんてきに表現ひょうげんしたものだと思おもう。 誰だれよりも苛烈かれつで誰だれよりも甘あまい。その春日局かすがのつぼねのありようを脚本きゃくほんは『母はは』だと表現ひょうげんする。 より多数たすうの幸福こうふくのために集団しゅうだんを維持いじし、時ときに個こをすり潰つぶすことすら良いしとする苛烈かれつさは女将おかみ軍ぐんの家いえ光こうに。 弱よわき者しゃに手てを差さし伸のべ、人ひとが生いきる苦くるしみに寄より添そう慈愛じあいは有功ゆうこうに。 その二に面めん性せいは、人ひとが集団しゅうだんで生いきていく社会しゃかいの機能きのうそのもののようだ。 ※写真しゃしんはイメージ 原作げんさくでは江戸城えどじょうの大奥おおおくの物語ものがたりだけでなく、伝染でんせん病びょうにより変質へんしつしていく市井しせいの人々ひとびとの生活せいかつが差さし挟はさまれるように描えがかれ、それが男女だんじょの権力けんりょく構造こうぞうが逆転ぎゃくてんしていく描写びょうしゃに独特どくとくのリアリティを与あたえている。 ドラマでは描えがかないその部分ぶぶんをどう補おぎなうか。 作つくり手しゅは、残虐ざんぎゃくな時代じだいを生いき抜ぬいた春日局かすがのつぼねの愛情あいじょうと執念しゅうねん、そして母ははとなった女将おかみ軍ぐんの、いずれ滅ほろぶとしても足掻あがいて子この世代せだいに少すこしでもベターな社会しゃかいを残のこしたいと願ねがう覚悟かくごを描えがきこむことで、男女だんじょが逆転ぎゃくてんする大奥おおおくという『大おおいなる虚構きょこう』に説得せっとく力りょくを持もたせた。 大奥おおおくという場所ばしょが今後こんごどのように変転へんてんしていくのか、そして家光いえみつと有功ゆうこうの愛あいはどのような決着けっちゃくになるのか。それは次回じかいを待まつことになる。 そして次つぎの将軍しょうぐん・綱吉つなよしの話はなしが始はじまる。 綱吉つなよし編へんは『大奥おおおく』というパブリックイメージに最もっとも近ちかい華はなやかなエピソードだと思おもう。 くせ者もの揃ぞろいの配役はいやくといい、今いまから楽たのしみである。 ドラマコラムの一覧いちらんはこちら [文ぶん・構成こうせい/grape編集へんしゅう部ぶ] かな Twitterを中心ちゅうしんに注目ちゅうもくドラマの感想かんそうを独自どくじの視点してんでつづり人気にんきを博はくしている。 ⇒ かなさんのコラムはこちら Share Post LINE はてな コメント
Twitterを中心 に注目 ドラマの感想 を独自 の視点 でつづり人気 を博 している、かな(@kanadorama)さん。
2023年 1月 スタートのテレビドラマ『大奥 』(NHK)の見 どころを連載 していきます。
かなさんがこれまでに書 いたコラムは、こちらから読 めます。
NHKドラマ10『大奥 』(火曜 22時 )の原作 、よしながふみの同名 漫画 は2021年 の日本 SF大賞 を受賞 している。
どんな描 き方 になるか、楽 しみであり少 し不安 でもあったが、杞憂 だった。
※写真 はイメージ
もしもおとぎ話 なら、不幸 な姫 と優 しい王子 が出会 い、愛 し合 うことで物語 はめでたしめでたしで終 わる。
この物語 でも、将軍 の落 し胤 (おとしだね)として子供 を産 むことを強 いられた女 ・家光 (堀田 真由 )と、聖職 者 として望 んでいた未来 をくじかれた失意 の青年 ・万里小路 有功 (福士 蒼 汰)は出会 い、恋 に落 ちる。
しかし物語 はその先 も残酷 に続 いていく。
※写真 はイメージ
いずれ共 に死 のうと誓 うほどに互 いを想 い合 う激 しい愛情 から、他 の側室 との間 に子 をなして母 になる家光 と、ただそれを見守 って生 きるしかない有功 の対比 が鮮 やかで残酷 だ。
しかし母 となり政務 もこなすようになる家光 が、内面 に強 い芯 が出来 て愛情 も覚悟 も揺 るぎないものになるのに比 べて、有功 は悲痛 なまでに不安定 だ。
※写真 はイメージ
その上 で、有功 が聖職 者 になろうとしていた青年 であること、その素養 が大奥 での暮 らしでも損 なわれずに内面 に残 っていることがドラマでは繰 り返 し描 かれている。
ただひとり、愛 する女 への純粋 な愛情 と嫉妬 の間 で不安定 に揺 れ続 ける有功 の人生 は、他人 のケアをすることで、利他 という杖 を得 てようやく安定 する。
そして病 に倒 れた春日局 (斉藤 由貴 )の最後 の懺悔 を聞 き、彼女 の秘 めた悔 いも詫 びも引 き取 って看取 るのである。
より多数 の幸福 のために集団 を維持 し、時 に個 をすり潰 すことすら良 しとする苛烈 さは女将 軍 の家 光 に。
その二 面 性 は、人 が集団 で生 きていく社会 の機能 そのもののようだ。
※写真 はイメージ
ドラマでは描 かないその部分 をどう補 うか。
そして次 の将軍 ・綱吉 の話 が始 まる。
くせ者 揃 いの配役 といい、今 から楽 しみである。
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かな
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