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【『大奥』感想4話】堀田真由・斉藤由貴、二人の『母』の覚悟で描く男女逆転社会のリアリティ – grape [グレイプ]

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【『大奥おおおく感想かんそう堀田ほった真由まゆ斉藤さいとう由貴ゆき二人ふたりの『はは』の覚悟かくごえが男女だんじょ逆転ぎゃくてん社会しゃかいのリアリティ

By - かな  公開こうかい  更新こうしん

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Twitterを中心ちゅうしん注目ちゅうもくドラマの感想かんそう独自どくじ視点してんでつづり人気にんきはくしている、かな(@kanadorama)さん。

2023ねんがつスタートのテレビドラマ『大奥おおおく』(NHK)のどころを連載れんさいしていきます。

かなさんがこれまでにいたコラムは、こちらからめます。

NHKドラマ10『大奥おおおく』(火曜かよう22)の原作げんさく、よしながふみの同名どうめい漫画まんがは2021ねん日本にっぽんSF大賞たいしょう受賞じゅしょうしている。

時代じだいげきがSFというカテゴリであることに一瞬いっしゅん不思議ふしぎ気持きもちになるが、SFの『科学かがくてき空想くうそうもとづいたフィクションである』という説明せつめいもとづくなら、男子だんしのみがかか架空かくう伝染でんせんびょう起点きてんとなるこの作品さくひんは、まぎれもなくSFだ。

おおきな虚構きょこう読者どくしゃ視聴しちょうしゃをしっかりつつむためには、細部さいぶのリアリティこそが必須ひっすだ。

今回こんかい、つまり一人ひとりうばわれたおんなが、おとこ偽物にせものではなくおんなとして将軍しょうぐんごうとがる場面ばめんは、この大奥おおおくという物語ものがたり世界せかいかん成立せいりつするための物語ものがたりさい重要じゅうよう場面ばめんである。

どんなえがかたになるか、たのしみでありすこ不安ふあんでもあったが、杞憂きゆうだった。

写真しゃしんはイメージ

もしもおとぎばなしなら、不幸ふこうひめやさしい王子おうじ出会であい、あいうことで物語ものがたりはめでたしめでたしでわる。

この物語ものがたりでも、将軍しょうぐんおとだね(おとしだね)として子供こどもむことをいられたおんな家光いえみつ堀田ほった真由まゆ)と、聖職せいしょくしゃとしてのぞんでいた未来みらいをくじかれた失意しつい青年せいねん万里小路まりこうじ有功ゆうこう福士ふくしあお汰)は出会であい、こいちる。

しかし物語ものがたりはそのさき残酷ざんこくつづいていく。

ふかあいいながらもにんめぐまれず、徳川とくがわ政権せいけん維持いじするため、このくに戦乱せんらんもどしてはならないという過酷かこく判断はんだんのもとに、家光いえみつ有功ゆうこう以外いがいおとこ相手あいてにせねばならなくなる。

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いずれとものうとちかうほどにたがいをおもはげしい愛情あいじょうから、側室そくしつとのあいだをなしてははになる家光いえみつと、ただそれを見守みまもってきるしかない有功ゆうこう対比たいひあざやかで残酷ざんこくだ。

別離べつりげる場面ばめんでの「ね、おまえなどね」とげきする堀田ほった真由まゆ表情ひょうじょう素晴すばらしいし、「では…ころしてくだされ」とこたえる福士ふくしあお汰の、たっぷりと間合まあいをとった表情ひょうじょうのグラデーションは見応みごた抜群ばつぐんである。

しかしははとなり政務せいむもこなすようになる家光いえみつが、内面ないめんつよしん出来でき愛情あいじょう覚悟かくごるぎないものになるのにくらべて、有功ゆうこう悲痛ひつうなまでに不安定ふあんていだ。

原作げんさくでも有功ゆうこう柔和にゅうわ人物じんぶつだが、今回こんかいのドラマばん有功ゆうこうは、やさしいうえ体温たいおんのある人間にんげんくささがあって、それがとてもいとおもう。

嫉妬しっとくるしみながらも廊下ろうかがわにはりつけられない苦悩くのう原作げんさくでもえがかれるが、有功ゆうこうをけなげにきしめるたまさかえおくさとし哉哉)とそのむねですすり有功ゆうこうは、ドラマのオリジナルである。

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そのうえで、有功ゆうこう聖職せいしょくしゃになろうとしていた青年せいねんであること、その素養そよう大奥おおおくでのらしでもそこなわれずに内面ないめんのこっていることがドラマではかええがかれている。

ただひとり、あいするおんなへの純粋じゅんすい愛情あいじょう嫉妬しっとあいだ不安定ふあんていつづける有功ゆうこう人生じんせいは、他人たにんのケアをすることで、利他りたというつえてようやく安定あんていする。

そしてやまいたおれた春日局かすがのつぼね斉藤さいとう由貴ゆき)の最後さいご懺悔ざんげき、彼女かのじょめたいもびもって看取みとるのである。

懺悔ざんげなか春日局かすがのつぼねつぶやく「あのわしは、ほとけをさらってきたのじゃ」は原作げんさくにないセリフだが、このドラマの春日しゅんじつきょく複雑ふくざつ魅力みりょくある人物じんぶつぞう端的たんてき表現ひょうげんしたものだとおもう。

だれよりも苛烈かれつだれよりもあまい。その春日局かすがのつぼねのありようを脚本きゃくほんは『はは』だと表現ひょうげんする。

より多数たすう幸福こうふくのために集団しゅうだん維持いじし、ときをすりつぶすことすらしとする苛烈かれつさは女将おかみぐんいえこうに。

よわしゃべ、ひときるくるしみに慈愛じあい有功ゆうこうに。

そのめんせいは、ひと集団しゅうだんきていく社会しゃかい機能きのうそのもののようだ。

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原作げんさくでは江戸城えどじょう大奥おおおく物語ものがたりだけでなく、伝染でんせんびょうにより変質へんしつしていく市井しせい人々ひとびと生活せいかつはさまれるようにえがかれ、それが男女だんじょ権力けんりょく構造こうぞう逆転ぎゃくてんしていく描写びょうしゃ独特どくとくのリアリティをあたえている。

ドラマではえがかないその部分ぶぶんをどうおぎなうか。

つくしゅは、残虐ざんぎゃく時代じだいいた春日局かすがのつぼね愛情あいじょう執念しゅうねん、そしてははとなった女将おかみぐんの、いずれほろぶとしても足掻あがいて世代せだいすこしでもベターな社会しゃかいのこしたいとねが覚悟かくごえがきこむことで、男女だんじょ逆転ぎゃくてんする大奥おおおくという『おおいなる虚構きょこう』に説得せっとくりょくたせた。

大奥おおおくという場所ばしょ今後こんごどのように変転へんてんしていくのか、そして家光いえみつ有功ゆうこうあいはどのような決着けっちゃくになるのか。それは次回じかいつことになる。

そしてつぎ将軍しょうぐん綱吉つなよしはなしはじまる。

綱吉つなよしへんは『大奥おおおく』というパブリックイメージにもっとちかはなやかなエピソードだとおもう。

くせものぞろいの配役はいやくといい、いまからたのしみである。


[ぶん構成こうせい/grape編集へんしゅう]

かな

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