物語ものがたりの最後さいごに、恒例こうれいの不適切ふてきせつなお詫わびテロップが２０２４年ねんと表記ひょうきされて出でてきたとき、「やられた！」と思おもわず唸うなってしまった。

柔やわらかく、ねっちりと細こまかく、時ときに目め詰づまりを起おこす令れい和わの対人たいじん関係かんけい。

ドラマの序盤じょばんから「話はなし合あいましょう」と歌うたいあげ、SNSとの向むき合あい方かたを何なん度ども考かんがえ、そして「寛容かんようになりましょう」と歌うたい、息苦いきぐるしさを横よこに広ひろげて風通かぜとおしをよくする方法ほうほうを今いま作さくは提示ていじしてきた。

そして最後さいごに、今いまこの２０２４年ねんさえも変化へんかしていく時代じだいのごく一部いちぶにすぎないと、縦たての広ひろがりを見みせる。

鮮あざやかで、目めからうろこが落おちるようだった。

いかにも昭和しょうわ的てきな価値かち観かんの男おとこが令れい和わにタイムスリップする。そこで経験けいけんする騒動そうどうを通とおして、令れい和わと昭和しょうわの対比たいひをコメディとして描えがき、大だい好評こうひょうを博はくした『不適切ふてきせつにもほどがある！』（TBS系けい　金曜日きんようび２２時じ）。

最終さいしゅう回かいでは小川おがわ市郎いちろう（阿部あべサダヲ）は昭和しょうわに、向坂さきさかサカエ（吉田よしだ羊ひつじ）とキヨシ（坂元さかもと愛あい登とう）は令れい和わにとそれぞれの時代じだいに帰かえった。

純子じゅんこ（河合かわい優ゆう実み）は大学だいがくに合格ごうかくし、パワハラの冤罪えんざいで休職きゅうしょくしていた渚なぎさ（仲なか里依りえ紗しゃ）は昭和しょうわで元気げんきを取とり戻もどして復職ふくしょくし、失恋しつれんで落おち込こんでいた秋津あきつ真彦まさひこ（磯村いそむら勇いさむ斗と）と新あたらしい恋こいをする。

元もとの場所ばしょに戻もどりながら、皆みなそれぞれにアップデートして少すこしだけ幸しあわせになった。

同時どうじに、小川おがわ市郎いちろうが知しってしまった自分じぶんと娘むすめの寿命じゅみょうについては、解決かいけつも変化へんかもしない。

回収かいしゅうしなかった部分ぶぶんは、脚本きゃくほん家か・宮藤くどう官かん九郎くろうと作つくり手しゅが、人ひとの生死せいしとりわけ災害さいがい死しを描えがくにあたって尽つくした誠意せいいなのだろうと思おもう。

一方いっぽうで、最終さいしゅう回かいの回収かいしゅうは、キヨシが昭和しょうわで仲良なかよくしていた不ふ登校とうこうの友人ゆうじん・佐さ高だか（昭和しょうわパート榎本えのもと司つかさ・令れい和わパート成田なりた昭次しょうじ）のその後ごである。

令れい和わの少年しょうねんらしい柔やわらかさでキヨシは佐さ高だかに寄より添そって、いつも部屋へやでゆるゆるとゲームをしていた。

別わかれ際ぎわ、キヨシは「学校がっこうなんてさ。自分じぶんと気きの合あわないやつがこの世界せかいには存在そんざいするってことを勉強べんきょうする場所ばしょだけどさ…」と、佐さ高だかに淡々たんたんと話はなし始はじめる。

キヨシが令れい和わに帰かえった後のち、佐さ高だかはキヨシのいない学校がっこうに登校とうこうするようになり、中学ちゅうがくを卒業そつぎょうする。

ただ１人にんでも、真心まごころで思おもってくれる誰だれかがいて言葉ことばが届とどけば、小ちいさくても一いち歩ほを踏ふみ出だせる。

若わかい日ひの母親ははおやと出会であい、人間にんげん関係かんけいの悩なやみを聞きいてもらって、子供こどものように唇くちびるについたナポリタンを拭ふいてもらった渚なぎさが、それで元気げんきを取とり戻もどして仕事しごとに戻もどっていったように。

佐さ高だかや井上いのうえ（昭和しょうわパート中田なかだ理智りち・令れい和わパート三宅みやけ弘ひろし城じょう）の卒業そつぎょう式しき、小川おがわは「お前まえらの未来みらいは面白おもしろいから！」と言いって、ヒップホップとともに生徒せいとを送おくり出だす。

本ほんドラマの主題歌しゅだいか『二に度ど寝ね』を担当たんとうする、『Creepy Nuts』の二人ふたりが昭和しょうわに来きて居残いのこりしているという粋いきな展開てんかいであった。

爆笑ばくしょうして『二に度ど寝ね』を聞ききながら、胸むねが熱あつくなった。

旅立たびだちにあたって、未来みらいは楽たのしいぞ、良よいものだぞと灯火ともしびのように明言めいげんしてくれる誰だれかがいるというのは本当ほんとうに幸しあわせなことだ。

一見いっけん万事ばんじに細ささやかで配慮はいりょの行いき届とどいた令れい和わの世よの中なかだけれども、いま、若わかい世代せだいに未来みらいはいいものになると確信かくしんと共ともに語かたれる大人おとなは少すくないように思おもう。

改あらためて自分じぶんもまた、昔話むかしばなしよりも未来みらいを語かたれる大人おとなでありたいと思おもう最終さいしゅう回かいだった。

笑わらいと悲かなしみ、華はなやかな騒々そうぞうしさと沁しみるような感動かんどう。

様々さまざまな混沌こんとんを包つつみ込こんだこの作品さくひんにおいて、阿部あべサダヲはまさにクドカン作品さくひんそのものを体現たいげんするような見事みごとな演技えんぎを見みせてくれた。

そして、娘むすめの純子じゅんこを演えんじた河合かわい優ゆう実じつは、しなやかな自我じがと思春期ししゅんきの淡あわい揺ゆらぎを鮮あざやかに演えんじきって、私わたしたちを魅了みりょうした。これからのキャリアが非常ひじょうに楽たのしみな俳優はいゆうである。

最後さいごに、いつか１０年ねん・２０年ねんが過すぎた後のちに、２０２０年代ねんだいはどんな時代じだいとして語かたられるんだろうかと思おもう。

あんな面倒めんどうくさい社会しゃかいなのか、あんな効率こうりつの悪わるい社会しゃかいなのか、あの頃ころは良よかったなのか。

そうして遠とおく俯瞰ふかんできるようになった頃ころに、このドラマをふと思おもい出だすだろうし、その未来みらいでも宮藤くどう官かん九きゅう郎ろうが辺境へんきょうに立たち続つづけて書かく作品さくひんを見みて、笑わらったり泣ないたり出来できていたらいいなと思おもう。

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[文ぶん・構成こうせい／grape編集へんしゅう部ぶ]