吉元よしもと由美ゆみの『ひと・もの・こと』

限かぎられた時間じかんをどう生いきようか

もしも今いま、余命よめいを宣告せんこくされたら私わたしはどうするだろうか。命いのちの期限きげんを突つきつけられたのだから衝撃しょうげきを受うけるし、嘆なげくだろうし、大だい泣なきするでしょう。

後悔こうかいすること、やり残のこしたことばかりを思おもい出だし、もう時間じかんがないことを悲かなしく、悔くやしく思おもうかもしれない。

問題もんだいはその後ご。腹はらを括くくって、その期限きげんまでにやりたいことをやる。会あいたい人ひとに会あう。残のこされた人ひとたちが困こまらないように捨すてるものは捨すて、整理せいりする。銀行ぎんこう、Web関係かんけいのパスワードを記しるしておく。遺言ゆいごん書しょを書かく。

やらなくてはならないことが多おおすぎて時間じかんが足たりなくなりそうです。後ごを濁にごさずに旅立たびだつのは大変たいへんなことです。そしてひとりでは生いきられないことを痛感つうかんします。

余命よめいという現実げんじつに腹はらを括くくり、そこへ向むかっていくという選択せんたく。一方いっぽうでその現実げんじつを受うけ入いれない。自分じぶんは死しなないという選択せんたくに腹はらを括くくり、生いきるためのあらゆる治療ちりょうを試こころみる、という道みちもあります。

ある友人ゆうじんは生いき続つづける覚悟かくごをし、宣告せんこくされてから６年ねん、完治かんじしたわけではないですが元気げんきにしています。

友人ゆうじん曰いわく、余命よめいを受うけ入いれたらそのようになってしまう、と。

５０歳さいになったとき、私わたしは初はじめて自分じぶんに与あたえられている時間じかんについて考かんがえました。これからの２０年ねんは、これまでの２０年ねんとは違ちがう。

２０代だいで作詞さくし家かになり、結婚けっこんをし、子こどもを育そだてた時代じだいは、嵐あらしのように過すぎていきました。そのせいか覚おぼえていないことも多おおいのです。

５０歳さいからの２０年ねんはこれまでやったことのないことにチャレンジし、一ひとつ一ひとつのことを楽たのしみ、味あじわい尽つくして生いきていこうと決きめました。

そして５０歳さいからの２０年ねん、もう半分はんぶんを過すぎました。怖こわいものなしの若わかい頃ころ、自分じぶんがこの年齢ねんれいになるなんて想像そうぞうもできなかった。

そして年としを重かさねるということは身体しんたい的てきなことも含ふくめ、自由じゆうでなくなっていくのではないかと思おもっていました。

ところがそうではなかった！あちこちに身体しんたいの不調ふちょうは出でてくるのですが、心しんはどんどん自由じゆうになっていくのです。

妙みょうなこだわりはなくなり、他人たにんのことを気きにしなくなり、承認しょうにん欲求よっきゅうもない。本当ほんとうに欲ほしいものしか欲ほしくなくなる。囚とらわれがなくなる。心しんにくっついていた不純ふじゅんなものが、一ひとつ二ふたつと剥はがれ落おちていくのです。

もちろん持もち続つづける人ひともいるかもしれません。ストレスの原因げんいんになるような心しんの持もち方かたはいらない！と決きめると、どんどん自由じゆうになっていく。

いま、この瞬間しゅんかんを味あじわい尽つくすことができるようになったように思おもいます。

さて、余命よめいを宣告せんこくされたら、私わたしならどうするか。後のちに残のこる人ひとに迷惑めいわくにならないように諸々もろもろを整理せいりしつつ、「生いきる」と決きめて最善さいぜんの選択せんたくをしていく。

机上きじょうの空論くうろんですが、そうなれる自分じぶんでありたい。そのためにも、山やまあり谷たにありを楽たのしみ、いま、ここ、この瞬間しゅんかんを味あじわい尽づくそうと思おもうのです。

※記事きじ中ちゅうの写真しゃしんはすべてイメージ

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[文ぶん・構成こうせい／吉元よしもと由美ゆみ]