ライラックの香かおり

当方とうほうがまだ若わかい頃ころ、５月がつの後半こうはん、札幌さっぽろに、講演こうえん会かいで出掛でかけたことがありました。仕事しごとが終おわった帰かえり道みち、札幌さっぽろの町まちを歩あるいている時ときに、何なんともいえない良よい香かおりが漂ただよって来きました。

係かかりの人ひとに尋たずねますと『ライラック・リラ』ですと教おしえて下くださいました。『ライラック』はこんなにいい匂においがするものかと、垣根越かきねごしに咲さいているその花はなをしっかり見みました。

花はなは小しょう花はなで掌てのひら（たなごころ）の大おおきさで赤あか紫むらさきと白しろとが群むれて咲さいていました。ホントにいい香かおりでした。

それで、その花はなよりも、その匂においの方ほうが忘わすれられなくて、東京とうきょうに戻もどってからそのライラックの白しろを１本ほん、拙宅せったくに植うえました。もうそれからウン十じゅう年ねん、今いま、いい香かおりで咲さいています。

ところで、フランスでは、ライラックは『リラ』と呼よばれ、シャンソンのタイトルにもなっています。

宝塚歌劇団たからづかかげきだんでお馴染なじみの『すみれの花はな咲さく頃ころ』、あの元もと歌うたはシャンソンの『白しろいリラの咲さく頃ころ』と言いって、この曲きょくが流行はやっていた当時とうじ、パリを訪おとずれた宝塚たからづかの演出えんしゅつ家かが、日本にっぽんに持もち帰かえり、公演こうえんの劇げき中歌なかうたとして用もちいました。

でもその際さい、リラは日本人にっぽんじんには馴染なじみがない、ということで『スミレ』に差さし替かえたそうです。兎うさぎに角かく、このライラックは素敵すてきな香かおりが人気にんきで世界中せかいじゅうで香水こうすいやヘアケア商品しょうひんに重宝ちょうほうされています。

この花はなは、日本にっぽんでも北海道ほっかいどうや東北とうほくでもよく見みられますが、札幌さっぽろでは、毎年まいとしこの５月がつ、『ライラックまつり』が開ひらかれ、約やく４００本ほんのライラックを楽たのしめるそうです。

札幌さっぽろの友人ゆうじんは「その時季じきは、結構けっこう冷ひえる日ひがある、そんな日ひを『リラ冷ひえ』と言いう」と教おしえてくれました。香かおり１番ばん、ライラックの小話こばなしでした。

＜２０２１年ねん５月がつ＞