5位: 西原理恵子が描く、ちょっとワケありな女性たち『パーマネント野ばら』
「そばに好きがあったら人生毎日正月やで 好きはきれえな花みたいやし(『パーマネント野ばら』から引用)」
大人の女性の恋心を西原流に描いた作品『パーマネント野ばら』。2006年に単行本が出版され、2010年には菅野美穂主演で映画化もされました。
- 著者
- 西原 理恵子
- 出版日
- 2009-03-02
主人公は結婚生活に終止符を打ち、一人娘のももちゃんを連れて実家であるパーマネント野ばらを手伝う「なおこ」。パーマネント野ばらは田舎の漁村にある唯一の美容院です。そこでは夫を薬物中毒で亡くした「ともちゃん」、フィリピンパブのママである「みっちゃん」など、ちょっとワケありな女性たちが集まって、恋愛談義に花を咲かせていたのでした。パーマネント野ばらで過ごしていく中で、「なおこ」も恋人である「カシマさん」との時を慈しんでいます。しかし二人の間には、ある重大な事実が隠されていて……。
本作に登場する女性たちは、決して人がうらやむような人生を送ってはいないでしょう。笑顔あふれる幸せな家庭などからは程遠く、奈落の底で這いつくばる女性たち。しかし彼女たちは、他人の幸せに対して嫉妬を燃やしたりはしません。なぜなら彼女たちには、奈落の底でも笑い合える「戦友」がいるからです。
上手くいかない恋愛でも、「好き」の気持ちがあれば正月みたいにめでたい!と上手に幸せを見つけていく彼女たち。恋をするとネガティブになりがちだという方には、ぜひ読んでもらいたい一冊です。パーマネント野ばらに集まる女性たちのひたむきさに生きる姿に、心がじんわりと温かくなることでしょう。
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4位: 女の子は、友達が大好きで大嫌い?『女の子ものがたり』
「私はみさちゃんときいちゃんが好きだ。友達だ。もうこんな友達は一生できないと思う(『女の子ものがたり』から引用)」
『上京ものがたり』の続編として出された本作。主人公「なつみ」と、「みさちゃん」、「きいちゃん」の3人が、海と山と工場のある小さな田舎町で成長していく姿を描きます。
- 著者
- 西原 理恵子
- 出版日
幼少期、小学校、中学校、高校、大人になってから、それぞれに降りかかる不幸。ダメ男に引っかかったり、父親が殺人で捕まったり、旦那に暴力を振るわれて頭蓋骨にひびが入ったり、父親が借金を残して死んだり……。「なつみ」は、ときにはふたりを頼りにしたり心配したり、またあるときは見下しながら彼女たちと共に過ごしていきます。
本作の面白い点は、「なつみ」の周りの人物に対する感情が、打ち上げ花火のように鮮やかに、そしてストレートに表現されているところでしょう。たとえば、ブランドバッグを買ってくれる彼氏を自慢する「みさちゃん」に対して、表面では「すごーい!」「あははは」と言っても、心の奥底では「わたしはみさちゃんがもう絶対にしあわせになれないんじゃないかなって思ってる」と静かに確信する場面。旦那に暴力を振るわれ入院し、心の安らぎを求め宗教に入った「きいちゃん」に対して、「私は きいちゃんが好き。だからきいちゃんには しあわせになってほしい。今 きいちゃんの心には神様がいる だから よかったね」と泣く場面。これらの場面から、主人公のまっすぐな感情が読み取れます。
友達に対して笑ったり、怒ったり、喜んだり、呆れたり「なつみ」の感情は気まぐれに上がったり下がったり……独特の自由奔放さが本作の素敵なエッセンスになっています。少し毒々しいけれど、どこか可愛らしい。そんな「女の子」たちの物語を、ぜひお楽しみください。
3位: 西原理恵子の代表作!『毎日かあさん』
「動かなくなった彼の前で、いつまでたっても泣きやまない私に、子供達が最初にしてくれたことは、私を笑わすことだった。神さま、私に子供をありがとう(『毎日かあさん』から引用)」
『毎日かあさん』は、実際のエピソードをもとにして西原家の日常を描いた作品です。2004年に文化庁メディア芸術祭賞、2005年には手塚治虫文化賞を受賞し、2008年にはBOOK OF THE YEAR 2007「泣けた本」第1位にも輝きました。また2009年にはアニメ放送も開始されているので、ご存知の方も多いかもしれません。
- 著者
- 西原 理恵子
- 出版日
- 2015-04-10
パワフルな肝っ玉「かあさん」と、戦場カメラマンである夫「かもちゃん」、勉強は苦手だけど友達が多くて遊びの天才である「息子」、しっかり者で優しいのに腹黒い「娘」。本作では、そんな彼らの日常が面白おかしく描かれます。しかしただ笑えるだけの漫画ではありません。クスクス笑いながら読んでいると突然、考えさせられるエピソードや描写に出会うのです。それらはまるで、毎日冗談ばかりで元気いっぱいの「かあさん」に秘められている、子どもたちへの真剣なメッセージのよう。西原自身も「子供たちに伝えたいことはすべて毎日かあさんに描いた」と語っています。クスクスしながら、ときどきホロリ。絶妙な配合が魅力です。
最初に紹介した名言は、西原の夫「かもちゃん」が癌でこの世を去った場面から引用しています。「亡くなって動かないかもちゃん」と「いつまでも泣き止まないかあさん」―「静」と「動」の悲しいコントラストに投げ込まれるものは、まさかの「こどもたちの笑い」。一緒に泣くでもなく、泣き続けるお母さんを責めるでもなく、お母さんを笑わせる。いじらしい子どもたちの姿が、心の琴線に触れるタッチで描かれます。
本作では、夫婦の別居、離婚、喧嘩、そして子どもたちの嘘までも、なにもかもが包み隠されず描き出されます。「かあさん」の愛が貫かれた作品、大人から子どもまで楽しめる1冊です。