3位:本当に大切なものを見つめなおす『紫電改のタカ』
ちばてつやの戦争に対する思いが反映された作品です。
主人公は日本帝国軍の青年パイロット・滝城太郎。新しい戦法を編み出し、彼にしかできない操縦で敵を撃ち落とし、後に撃墜王となってゆきます。主人公を含めた若きパイロットたちが、自らの大切なものを守るため、戦争に身を投じてゆくストーリーです。
戦闘機が華々しく活躍しかっこよさを印象付けながらも、搭乗する人物たちの苦悩や葛藤も描くことで戦争の恐ろしさを感じさせる作品となっています。
- 著者
- ちば てつや
- 出版日
この作品が連載されて人気を博していた1960年頃、戦争を扱った作品のブームがありました。多くの作品は、戦う軍人は勇ましく、戦闘機も非常にかっこよいものとして描かれており、『紫電改のタカ』も連載が始まった当初はそういった作品と同じように描かれていたました。
しかし徐々に疑問が積もっていくように感じたちばてつやは、中盤以降に自身の戦争への思いを込めた作品として描き上げています。
主人公を含めた登場人物たちの美しく純粋な心は、どれだけの苦悩や葛藤を抱えていたのでしょうか。それぞれに国を思い、故郷を思い、家族を思い、散っていった彼らの姿からは、ちばてつや作品らしい強い人間ドラマを感じさせます。
戦争を背景に、自分にとって本当に大切なものを考えなおすきっかけとなってくれる作品。1度手に取ってみてはいかがでしょうか。
2位:ちばてつやが描く人間の欲、そして本性。『餓鬼』
作者自身の満州からの引き上げ体験からインスピレーションを得て、描かれた作品です。
ダム建設によって両親も家も無くし、国から莫大な補償金を受け取った主人公の立太。村の大人たちは、立太に付け込もうと寄ってきます。嫌気がさした立太は村から逃げ出しますが、途中で崖から転落。なんとか助かったものの記憶を無くし、犯罪にも手を染める危険人物となってゆきます。
人間の欲や醜さを描き、世間に大きな衝撃を与えた作品です。
- 著者
- ちば てつや
- 出版日
題材に人間の欲や醜さを取り上げ、衝撃的な展開、結末を辿る『餓鬼』。
ちばてつやは、自身が満州から引き揚げる際に、人間の本性を見たと語っています。醜く、汚く、よごれた欲の塊を見た彼は、それを生々しいまでにこの作品で表現し、描きました。
欲にまみれた醜い大人たち、それに触れ過ぎてしまった立太。危険人物へと成長してしまった立太だけでなく、彼が戻って来たときの村の様子と村人たちの姿も、見るも無残に変わり果ててしまっています。お金にとり憑かれた大人たちのなれの果てを表現した描写は、衝撃的なものです。
立太は記憶を無くしながらも助かりますが、成長した彼の姿はちばてつやの代表作ともいわれる『あしたのジョー』のボクシングを始める前のジョーにそっくりなのです。立太は、ボクシングに出会えなかったジョーなのではないか、という解釈もできるかもしれません。
尽きることのない人間の欲望。この作品の衝撃は1度受けたら忘れられない、それほど印象深いものとなっています。
1位:ちばてつやの代表作!『あしたのジョー』
第1位は、もちろん彼の代表作。言わずと知れた名作はアニメ化だけに止まらず、実写映画化、舞台化までされています。
主人公は東京のドヤ街に現れた青年・矢吹丈。最初はただの無法者だったジョーが、丹下段平という人間に出会い、一流のボクサーへと成長していくストーリーです。
少年院で出会った、後の因縁のライバル・力石徹を始め、数々の強敵を相手に一流のプロボクサーとして成長していくジョーのボクシング人生を描いた名作は、ちばてつやの名を全国に知らしめることとなる代表作となりました。
- 著者
- ちば てつや
- 出版日
- 2000-06-01
ジョーの挫折や絶望、反対に希望や幸せ、まさに人生が詰まっている『あしたのジョー』は年月を経ても変わらず愛され続けています。
社会からは逸脱したアウトロー的な人物像のジョーが、人生をかけたいと思えたボクシングというスポーツ。そして、それを教えてくれた丹下段平という人間に出会うことによって、ジョーは新しい人生を歩み始めます。彼の生きざまは、読者を本気で熱くさせたことでしょう。己の拳一つでどん底から這い上がっていく姿は眩しく、鮮烈に、目に焼き付きます。
漫画史に残るラスト1ページは、原作者の高森朝雄(梶原一騎の別名)をして「これが正解だ」と言わしめたと語られています。
心を揺さぶられるストーリーは時代の象徴ともされ、多くのファンの人生に影響を与えました。
『あしたのジョー』が気になる方には、名言を集めた<『あしたのジョー』登場人物10人の名言を徹底紹介!名作漫画を最後まで解説>の記事もおすすめです。こちらもあわせてご覧ください。