| 独自研究 = 2020年8月
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'''燃料電池自動車'''(ねんりょうでんちじどうしゃ)は、搭載した[[燃料電池]]で[[発電]]し、[[電動機]]の[[動力]]で走る[[電気自動車]]を指す。燃料電池に[[水素]]や[[メタノール]]などを使用する。燃料電池の[[乗り物]]を総称して'''FCV'''({{lang|en|'''F'''uel '''C'''ell '''V'''ehicle}})といい{{efn|燃料電池式の飛行機や船舶も開発されている。これらもFCVである。}}、燃料電池自動車がFCVとして言及される場合が多い。走行時にCO2を排出しない[[ゼロエミッション車]]の1つ。
== 分類と規格 ==
=== 車載用燃料電池の詳細 ===
すべての燃料電池は一般的な電池と同様に[[電解質]]、[[正極]]、[[陰極]]の3つの部品で作られている<ref>[http://www1.eere.energy.gov/hydrogenandfuelcells/fuelcells/basics.html "Basics"], U.S. Department of Energy, Retrieved on: 2008-11-03.</ref>。燃料電池の[[機能]]は既存の[[蓄電池]]と似ているが充電の代わりに燃料を補給し、酸素は大気中から調達される<ref>[http://www.fuelcells.org/basics/how.html "What Is a Fuel Cell?"], オンライン燃料電池情報, Retrieved on: 2008-11-03.</ref>。水素を燃料とするものとして、[[固体高分子形燃料電池|固体高分子形(PEFC)]]、[[直接メタノール燃料電池|ダイレクトメタノール形]]、リン酸形、[[溶融塩#溶融炭酸塩型燃料電池|炭酸溶融塩形]]、[[固体酸化物形燃料電池|固体酸化物形(SOFC)]]、再生型など、異なる種類の燃料電池がある<ref>[http://www1.eere.energy.gov/hydrogenandfuelcells/fuelcells/fc_types.html "Types of Fuel Cells"], U.S. Department of Energy, Retrieved on: 2008-11-03.</ref>。車載用燃料電池には一般的に水素を80 - 90{{nbsp}}℃で反応させる[[固体高分子形燃料電池|PEFC]]が用いられるが、低温でも高い活性を持つ触媒の利用が求められることから、[[白金]]などの希少触媒を使用する必要があり車載用燃料電池が高価なものとなってしまっている。白金の代わりにカーボンアロイを用いる技術や、白金そのものの凝集を抑えて使用量を減らす技術、トラックやバスでの利用を想定して700 - 800{{nbsp}}℃で反応させる[[固体酸化物形燃料電池|SOFC]]の車載化などが現在検討されている。
== 水素燃料電池自動車 ==
[[File:Osaka Motor Show 2019 (60) - Toyota MIRAI CONCEPT.jpg|thumb|right|[[トヨタ・MIRAI]] 2代目[[コンセプトカー]]<br />[[大阪モーターショー|大阪モーターショー2019]]出展車]][[水素燃料]]を用いる燃料電池自動車は、充填した水素と[[酸素]]を[[化学反応]]させて発電し、その電力で電動機を動かし走行する自動車。
2000年代から[[公道]]上での使用が始まった。乗用車で2022年現在日本国内でリース含め市販されている車種は、[[トヨタ・MIRAI]]、[[メルセデス・ベンツ・Gクラス|メルセデス・ベンツ・GLC F-CELL]]、[[ヒュンダイ・ネクソ]]の3車種である。[[商用車]]においては[[トヨタ・FCHV#路線バスタイプ|トヨタ・FCバス]]などバス車両として納入されている。[[ホンダ・クラリティ フューエル セル]]もあったが、2021年8月に製造を中止している<ref>{{Cite web |和書|title=ホンダ、FCV生産中止 販売低調で |url=https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC15A2F0V10C21A6000000/ |website=日本経済新聞 |date=2021-06-15 |access-date=2022-04-29 |language=ja}}</ref>。
日本では、購入者に対して1台あたり200 - 300万円の補助金が支給される見通しである<ref>「[httphttps://www.huffingtonpost.jp/2014/08/07/fcv_n_5656914.html 燃料電池車、1台あたり300万円の補助金]」。2014年8月7日、[[ハフィントン・ポスト]]。2014年8月10日閲覧。</ref>。自治体では愛知県が[[補助金]]を支給することを発表している<ref>「[http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N977KT6KLVRH01.html 日本は燃料電池車に手厚い補助金-米中の支援を大きく上回る]」。2014年7月25日、[[ブルームバーグ (企業)|ブルームバーグ]]。2014年8月10日閲覧。</ref>。
=== 歴史 ===
[[道路]]を走行できる最初の燃料電池自動車は、[[1966年]]([[昭和]]41年)に[[ゼネラルモーターズ]]によって製造された[[Electrovan]]だった
<ref>{{Cite web |和書|date=2016-10-11 |url=https://media.chevroletarabia.com/media/jp/ja/gm/news.detail.html/content/Pages/news/jp/ja/2016/Oct/1011GMJ.html |title=GMの水素燃料電池開発50周年を迎えて ケネディ大統領の有人月探査計画で培われた燃料電池技術を初めて転用した「Electrovan」 |publisher=ゼネラルモーターズ |accessdate=2020-11-14}}</ref><ref>{{Cite web| title= The First Fuel Cell on Wheels | The Car Tech blog - CNET Reviews|date = 2008-10-21| url = http://reviews.cnet.com/8301-13746_7-10071307-48.html?tag=mncol;txt | accessdate = October 23, 2009}}</ref><ref>{{citation |url=https://www.gmjapan.co.jp/info/fuelcell/03.html |title=GMの燃料電池自動車について }}</ref>。Electrovanは極低温のタンクに充填された[[液体水素]]と[[液体酸素]]を使用して一充填での走行距離が240 kmで最高速度は110 km/hだった。[[固体高分子形燃料電池]]は[[ユニオンカーバイト]]製で定格出力は32 kWで短時間では160 kWの出力で90 kWの三相交流電動機を駆動した。しかし当時は普及にはいたらず、開発は中断した。
[[日本]]においては[[1972年]](昭和47年)、[[産業技術総合研究所|工業技術院]]大阪工業試験所、[[ダイハツ工業]]、[[パナソニック]]の共同により燃料電池自動車の試験が行われた。<ref>[http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/honbun.php3?kid=145&serial=11624&bflg=1]</ref>これは水素を水加[[ヒドラジン]]から得る方式で、電気自動車([[軽トラック]])の荷台に燃料タンクと燃料電池を載せたものだった<ref>{{Cite web |和書|date=2016-02-29 |url=https://www.nanonet.go.jp/magazine/archive/?page=1359.html |title=液体燃料を蓄電媒体とする白金フリー燃料電池自動車 ~“Love Local” 誰からも身近に愛される燃料電池自動車の実現を目指して~ |publisher=NanotechJapan Bulletin |accessdate=2020-11-14}}</ref>。
1980年代末頃からカナダのベンチャー企業である Ballard Power Systems 社 (Ballard 社)による自動車用 PEFC の研究が注目を浴びるようになり、Benz 社が Ballard 社に資本参加した頃から,FCV が注目を集めるようになった。FCV を市販したのはこれが世界で初めてとなる。
2002年10月に[[本田技研工業|本田技研工業(ホンダ)]]が[[ホンダ・FCX]]を[[リース]]販売を、同年12月に[[トヨタ自動車]]が[[トヨタ・FCHV]]を日本とアメリカでそれぞれ限定リースを開始。
2003年9月に、[[三菱自動車]]が当時の親会社の[[ダイムラー・クライスラー]]製の燃料電池システムを搭載したバンの[[グランディス]]で公道試験を行った。12月には[[メルセデス・ベンツ・Aクラス]]をベースとしたF-CELLがリースにより発売した。また同時期には当時GM([[ゼネラル・モーターズ]])が当時の傘下であった[[オペル]]がFCVバンを開発。2005年にはドイツの[[IKEA|イケア家具]]がこれを運用していた<ref>[https://response.jp/article/2005/06/08/71399.html イケア家具がオペルの燃料電池車を使用]</ref>。
2004年3月には[[日産自動車]]が[[日産・エクストレイル|エクストレイルFCV]]のリース販売を開始<ref>[http://www.jari.or.jp/Portals/0/resource/pdf/fc_ev/200502-3.pdf 平成16年度 燃料電池自動車に関する調査報告書 3.燃料電池車をめぐる現象 3-1燃料電池車の開発経緯]</ref>。
[[2013年]]2月に[[現代自動車]]は、[[ヒュンダイ・ツーソン#2代目(2008 - 2015年、LM型)|ヒュンダイ・ツーソン]]でライン生産を開始し、年間1000台の生産を目指すと宣言したが、2015年5月までに生産されたのは韓国国内向けや米国向けなどすべてを含めてもわずか273台、10分の1にも達しなかった<ref>「[http://toyokeizai.net/articles/-/13093 ヒュンダイ、“究極のエコカー”で先手]」。2013年2月28日、[[東洋経済新報社]]。2014年8月10日閲覧。</ref>。1回の充填での航続距離は約415[[キロメートル]]とされている<ref>[http://www.hyundaimotorgroup.com/MediaCenter/News/Press-Releases/25015.hub#.U_a5ifmpSTI/ Tucson FCEV ready for launch] [[現代自動車]]。2014年8月22日閲覧。</ref>。なお、2014年6月に航続距離を約426キロメートル(約265[[マイル]])に伸ばすことを発表した<ref>[https://www.hyundaiusa.com/tucsonfuelcell/ "WE’VE REIMAGINED THE IDEA OF AN ELECTRIC VEHICLE."] [[現代自動車]]。2014年8月10日閲覧。</ref><ref>[http://www.gizmag.com/2015-hyundai-tucson-fuel-cell-free-hydrogen/32488// Hyundai Tuscon Fuel Cell hits Californian roads with free hydrogen] gizmag。2014年8月22日閲覧。</ref>。
2014年12月15日、トヨタは日本国内でセダンタイプの[[トヨタ・MIRAI]]を発売することを発表した<ref>「[httphttps://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20141118_676295676295.html トヨタ、新型燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を12月15日に正式発売、723万6000円。2014年11月18日] [[インプレス]]。2014年11月20日閲覧。</ref>。1回約3分の充填での航続距離は約650キロメートル走行するという。事前受注は日本だけで400台を超えた。
2016年3月10日、ホンダが量産型セダン「[[ホンダ・クラリティ フューエル セル]]」を発売した<ref name="honda20160310">[http://www.honda.co.jp/news/2016/4160310.html ホンダ公式サイト - ニュースリリース - 「新型燃料電池自動車「CLARITY FUEL CELL」を発売 〜ゼロエミッションビークルで世界トップクラスの一充填走行距離約750kmを実現〜」]</ref>、1充填(3分)あたり航続距離750kmを実現している<ref name="response20160311">{{cite news|title = 【ホンダ クラリティ フューエル セル】航続距離750km、当初目標から50kmも伸長 |url = http://response.jp/article/2016/03/11/271391.html|publisher = [[Response.]]|date = 2016年3月11日 | accessdate = 2016年4月10日}}</ref>。ホンダがリースしてきたFCXクラリティより高圧の70MPaの圧縮水素タンクを採用し、[[トヨタ・MIRAI]]と共通化を果しており、水素ステーションの設備の共通化の貢献する取り組みとなっている<ref name="ITmedia20160327">{{cite news|title = ホンダのスマート水素ステーションは燃料電池車の普及を後押しする |url = https://web.archive.org/web/20160401151211/http://www.sankeibiz.jp/business/news/160327/bsa1603271702004-n1.htm|publisher = [[フジサンケイ ビジネスアイ|SankeiBiz]]|date = 2016年3月27日 | accessdate = 2016年4月10日}}</ref>。
2011年9月に[[ルノー]]・[[日産自動車]][[アライアンス]](現在の[[ルノー・日産・三菱アライアンス]])と[[ダイムラー (自動車メーカー)|ダイムラー]]が燃料電池自動車開発分野での共同開発に合意した<ref>「[http://www.gits.waseda.ac.jp/smartsociety2012/pdf/Keynote1-ProfYasuhiroDaisho.pdf 次世代自動車とスマートモビリティが拓く低炭素社会]」。2012年2月10日、早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科 大聖泰弘氏 。2014年8月10日閲覧。</ref>。なお、[[ルノー]]・[[日産自動車]][[アライアンス]]と[[ダイムラー (自動車メーカー)|ダイムラー]]との提携自体は2010年4月に開始されており、提携する技術分野として2011年に燃料電池自動車分野が付け加えられたものである。
2013年1月には、ルノー・日産アライアンスとダイムラーの提携に[[フォード・モーター|フォード]]が加入して拡大した<ref>「[http://business.nikkeibp.co.jp/article/emf/20130130/243052/ 日産自動車、ドイツダイムラー、米フォードと燃料電池システムの共同開発で合意]」。2013年1月30日、[[日経BP]]。2014年8月10日閲覧。</ref>。しかしこれは2018年にルノー・日産が燃料電池車の開発凍結により離脱し、フォードもダイムラーとの提携を解消したことで瓦解した<ref>[https://rev-m.com/%E9%80%B1%E9%96%93%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%95%E3%80%8C%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%89%E3%81%A8vw%E3%81%8C%E5%95%86%E7%94%A8%E8%BB%8A%E9%96%8B%E7%99%BA%E3%81%A7%E6%8F%90%E6%90%BA/ <2018.6.21配信> 週間ブリーフ「フォードとVWが商用車開発で提携、日産が燃料電池車の商用化を凍結 ほか」]</ref><ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31769240U8A610C1TJ2000/ フォード、ダイムラーとの燃料電池合弁を解消へ]</ref>。
また同時期の2013年1月には、トヨタと[[BMW]]が提携<ref>「[http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD240JN_U3A120C1TJ2000/ トヨタ、BMWと燃料電池車を共同開発 次世代電池も]」。2013年1月25日、[[日本経済新聞社]]。2014年8月10日閲覧。</ref>。同年7月にはホンダと[[ゼネラルモーターズ|ゼネラルモーターズ(GM)]]が提携<ref>「[httphttps://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE96101020130702/ ホンダ・米GM、燃料電池車を2020年めどに共同開発へ]」。2013年7月3日、[[ロイター]]。2014年8月10日閲覧。</ref>。
2018年に[[アウディ]]が燃料電池開発での[[現代自動車]]との提携を発表<ref>[https://jp.reuters.com/article/hyundai-audi-idJPKBN1JG0TX 現代自とアウディ、燃料電池車の技術開発で提携]</ref>。
2021年に[[ボルボ・グループ]]は「ダイムラートラックフューエルセル」の株式を50%取得した上で、ダイムラーと燃料電池システムの開発・生産を行う合弁企業を設立<ref>[https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/10268/ ダイムラーとボルボ、水素燃料電池システムの合弁会社を設立]</ref>。さらに[[ボルボ・グループ|ABボルボ]]は2022年に燃料電池の大型トラックの試運転を開始<ref>[https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/13141/ ABボルボ、燃料電池大型トラックの走行試験を開始]</ref>。
2022年自動車部品メーカー大手の[[ロバート・ボッシュ (企業)|ボッシュ]]は米国にて大型トラック向け燃料電池スタックの生産を開始<ref>[https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/09/1006f570fd36cee6.html ボッシュ、米国で大型トラック向け燃料電池スタック生産(米国、ドイツ)]</ref>。
2023年上半期には世界のFCVがマイナス成長となり、トヨタにより試験導入されたデンマークでは水素ステーションが閉鎖という深刻な状況になった<ref>{{Cite web|和書|title=燃料電池車は本当に日本で浸透するのか? デンマークでは「水素ステーション」がすでに閉鎖という、辛らつ現実{{!}}au Webポータル |url=https://article.auone.jp/detail/1/3/6/211_6_r_20231003_1696279292471466?page=2 |website=au Webポータル{{!}}最新のニュースをお届け! |date=2023-10-03 |access-date=2023-10-02 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=燃料電池車は本当に日本で浸透するのか? デンマークでは「水素ステーション」がすでに閉鎖という、辛らつ現実(Merkmal) |url=https://news.yahoo.co.jp/articles/128b410291c37b597be2fa21783ae8aeae3c41da |website=Yahoo!ニュース |access-date=2023-10-02 |language=ja}}</ref>。
2024年2月、[[シェル (企業)|シェル]]が運営する[[カリフォルニア州]]の水素ステーションの閉鎖が決定された<ref>[https://www.webull.co.jp/news-detail/10225537622746113 シェルのカリフォルニアでの水素出口は、州のグリーンモビリティへの取り組みに大きな打撃を与えます] ウィブル証券株式会社</ref><ref>[https://www.forbes.com/sites/gauravsharma/2024/02/11/californias-hydrogen-drive-dealt-a-hammer-blow-by-shells-exit/?sh=2e8f46427fbc California’s Hydrogen Economy Dealt A Hammer Blow By Shell’s Exit]</ref>。
=== モータースポーツ ===
WEC([[世界耐久選手権]]、[[ル・マン24時間レース|ル・マン24時間]]を含む)の最高クラスであるLMP1で[[アウディ]]が燃料電池車を導入する計画があったが<ref>[http://www.as-web.jp/sports-car/35719]</ref>、2016年に同社が撤退したことで一度は立ち消えとなった。
アウディ撤退の年にFCVベンチャーのグリーンGTが開発した車両「H2」が、ル・マンの舞台となるサルト・サーキットで一周を走りきった。これを見たWEC運営の[[ACO]](フランス西部自動車クラブ)]]は、2018年にグリーンGTと共同プロジェクト「ミッションH24」を立ち上げ、2024年のル・マンへの燃料電池車クラス導入を目指し、[[プロトタイプレーシングカー]]の「LMPH2G」が製作された。このマシンはしばしデモランや、公式セッションでのテスト走行を行った<ref>[https://www.as-web.jp/sports-car/412672?all ACO、ル・マンの水素燃料クラス創設を見据えた“ミッションH24”発表。燃料電池車の初走行も]</ref>。
2020年にはアデス製LMP3車両をベースとする「H24」が登場。<ref>[https://www.as-web.jp/sports-car/627900?all ミッションH24、ル・マンで新型燃料電池プロトタイプカー『H24』発表。新パートナーも]</ref>。2021年に、[[コロナ禍]]の影響で導入計画は2025年へと一年繰り下げられた<ref>[https://www.as-web.jp/sports-car/729932?all ル・マンの水素クラスは1年延期し2025年に登場予定。今年もミッションH24がデモラン実施]</ref>。2022年ル・マンのデモランでは、最高時速290.8km/hをマークした<ref>[https://www.as-web.jp/sports-car/825910?all ミッションH24、水素燃料電池車で時速290.8キロのレコード記録/ル・マン24時間]</ref>。グリーンGT以外にも、[[レッドブル|レッドブル・アドバンスド・テクノロジーズ]]が[[オレカ]]との共同開発でH24車両を投入することを目指している<ref>[https://www.as-web.jp/sports-car/665087 レッドブルがオレカと提携。2024年のル・マンで水素プロトタイプシャシー供給へ]</ref>。
ル・マン以外では2020年に米国商用車大手のパッカー社が、子会社ケンワース製トラックのT680をFCV化したモデルを[[パイクスピーク・ヒルクライム]]のクラス8(ゼロ・エミッション車)にエントリーさせ、標高4,302mまでを駆け上がって完走した<ref>[https://insideevs.com/news/452981/peterbilt-kenworth-ev-fcv-pikes-peak/ Peterbilt EV And Kenworth Fuel Cell Truck Summit Pikes Peak]</ref>。このほかエコカーレースや[[ラリー]]・[[ヒルクライム]]などのタイムアタック系競技のフリークラスに[[トヨタ・MIRAI]]でのプライベーターの参戦が数例ある<ref>[https://web.archive.org/web/20180228162244/http://japanese.engadget.com/2016/06/22/mirai-100km/ 燃料電池車『MIRAI』がヒルクライムに初参戦。平均時速約100kmを記録、車体表面は鏡面仕上げ]</ref><ref>[http://ascii.jp/elem/000/001/109/1109017/ 水素自動車でラリー! 全日本ラリーに参戦したトヨタ・MIRAIに乗った!]</ref>。
WECに参戦している[[スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス]](SCG)は、2022年に長距離デザートレースの[[バハ1000]]へ燃料電池車を投入すると計画を発表していたが、実現せずに終わっている。
なお20222023年時点では規模の大小問わずまだ燃料電池車だけのためのレースは存在していないが、[[電気自動車|EV]]オフロードレースの[[エクストリームE]]は、燃料電池車版の「エクストリームH」の創設計画があることを明らかにしている<ref>[https://www.as-web.jp/rally/785798?all 新体制の王者RXR、赤旗ファイナルを制して2年目も快勝発進。水素シリーズも始動へ/エクストリームE]</ref>。
=== 商用車における展開 ===
=== 主な車種 ===
* [[トヨタ自動車]](トヨタ)
** [[トヨタ・FCHV|FCHV]] - [[乗用車]]・バス
*** [[トヨタ・FCHV#SORA|トヨタ・SORA]] - バス
** [[トヨタ・MIRAI|MIRAI]] - 乗用車
** [[トヨタ・クラウンセダン|クラウンセダン(FCVモデル)]] - 乗用車 ※2023年内発売予定
* [[本田技研工業]](ホンダ)
** [[ホンダ・クラリティ フューエル セル|クラリティ フューエル セル]] - 乗用車(生産中止)
* [[現代自動車]](ヒョンデ)
** [[ヒュンダイ・ネクソ|ヒュンダイ・ネッソ]] - 乗用車
** [[ヒュンダイ・エネクシエントソ|ネッソ]] - 乗用車 ** [[ヒュンダイ・エクシエント|エクシエントフューエルセル]] - トラック
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ファイル:TOYOTA FCHV 01.jpg|[[トヨタ・FCHV]]
ファイル:Toyota mirai.JPG|[[トヨタ・MIRAI]](初代、2014年)
ファイル:Honda CLARITY FUEL CELL (Garnet) at Tokyo Motor Show 2015.jpg|[[ホンダ・クラリティ フューエル セル]]
File:Hyundai Nexo – f 16032019.jpg|[[ヒュョンダイ・ネクソ|ヒュンダイデ・ネッソ]]
</gallery>
| 独自研究 = 2020年8月
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従来の[[ガソリン車|エンジン車]]と比較してのメリットは、走行時に[[地球温暖化]]の原因となる[[二酸化炭素]](CO<sub>2</sub>)や、[[大気汚染]]の原因となる[[一酸化炭素]](CO)、[[窒素酸化物]](NO<sub>x</sub>)、[[硫黄酸化物]](SO<sub>x</sub>)などの[[有害物質]]を排出しない[[ゼロエミッション車]]である点である。
以前より東欧を中心に、ロシア産の天然ガスや石油への依存を減らすため[[原子力発電]]を用いようという動きがあったが、[[2022年ロシアのウクライナ侵攻]]により、欧州へのロシア産の[[天然ガス]]供給に齟齬が生じ始めると、従来もあった[[原子力発電]]を推進する動きがより活発化した<ref>[https://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_topics/1260879_4115.html 【世界】ロシアによるウクライナ侵攻と原子力~欧州の選択]</ref>。原子力発電は原子炉熱による電気分解で、発電と共に水素を量産することが可能であり<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC273VF0X21C21A2000000/ 原発が水素も量産 10年ぶり再稼働の実証炉が秘める力]</ref>、こうした世相の動向と技術進歩次第では燃料電池車が一定の普及を見込める可能性もある。
[[電気自動車]](BEV)と比較してのメリットは、エネルギー保存性に優れ、バッテリーの自然放電による影響が少ない点が挙げられる。また[[エコ・ステーション|水素ステーション]]に事前連絡や予約をして水素の圧縮作業を済ませた状態からなら充填が3分程度で済む。ただし一連の作業では約30分の所要時間を要する<ref>{{Cite web |title=水素ステーション用プレクールチラー(水冷) |url=https://www.orionkikai.co.jp/product/chiller/pec/ |website=www.orionkikai.co.jp |access-date=2022-11-15 |language=ja}}</ref>。
航続距離も従来はBEVより有利とされていたが、[[トヨタ・MIRAI|新型MIRAI]]の航続距離は国際基準[[WLTP]]で約650km、車体価格がより安価なBEVの[[テスラ・モデル3|テスラモデル3ロングレンジ]]の[[WLTP]]は614kmと差はなくなりつつある。
==== 水素燃料電池自動車の課題 ====
現状の 水素は 主に[[ 化石燃料]]から 製造している。 燃料電池車は 走行時こそCO<sub>2</sub>やNO<sub>x</sub>を 出さないが、 水素は 自然界には 存在しないため、[[ 再生可能エネルギー]]によって 生産された 場合以外は 水素の 製造工程において 汚染物質を 発生する<ref>[http://www.fueleconomy.gov/feg/fuelcell.shtml "Fuel Cell Vehicles",] ''Fuel Economy'', Retrieved on: 2008-11-03.</ref>。また 発電をして 供給する 場合と 比べてどれほどエネルギーやインフラとしての 効率が 良いかは 議論の 余地がある。 ▼
特殊技術や[[レアメタル]]が必要で車両価格が高額であり([[トヨタ・MIRAI]]の場合、710万~860万円<ref>{{Cite web |title=トヨタ MIRAI {{!}} 価格・グレード {{!}} トヨタ自動車WEBサイト |url=https://toyota.jp/mirai/grade/?padid=from_mirai_forexecutive_navi-menu_grade |website=toyota.jp |access-date=2022-05-05}}</ref>)、まだ走行車両が少ないため[[水素ステーション]]の数も少なく営業時間も短い<ref>{{Cite web |title=岩谷瓦斯株式会社 - 水素ステーション |url=http://www.iwatanigas.co.jp/gas/station.html |website=www.iwatanigas.co.jp |access-date=2022-04-29}}</ref>。また、水素の製造・輸送に多額のコストがかかるなど、課題は多い。
[[水素脆化]]への対策も高額な維持費の原因となっている。充填にも大量の電力を消費しており、[[トヨタ・MIRAI|MIRAI]]への1回の充填作業だけで約30kwhの消費電力を必要とする。これは[[テスラ・モデル3|テスラモデル 3]] が200km走行する時に消費する電力に相当する。プレクールという水素を80Mpaまで圧縮と同時に-40℃まで冷却する必要があるためである。[(財)エネルギー総合工学研究所2015年調べ)]。 プレクールには約30分の所要時間を必要とするため、事前連絡や予約なしでは水素充填に30分以上の時間を要してしまう。 水素ステーションは安全性を確保する上で立地やタンクの設置方法、安全装置など多数の制約があり、建設費用は現状でガソリンスタンドの約4倍のコストがかかる(ガソリンスタンドの建設費用は約1億円、水素ステーションは約4億円である)<ref>{{Cite web |title=水素ステーション建設費4億円 普及阻むコストの巨壁 |url=https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC027KX0S1A600C2000000/ |website=日本経済新聞 |date=2021-06-10 |access-date=2022-04-29 |language=ja}}</ref>。高額な水素ステーションだがその供給能力も低く1時間に2 - 3台を充填するのが限界<ref>{{Cite web |title=エア・ウォーター移動式水素ステーション|札幌・室蘭の水素充填予約サイト |url=https://awi-h2station.resv.jp/support/support_faq.php |website=awi-h2station.resv.jp |access-date=2022-07-12}}</ref>。[[2020年]]からは1時間あたり5 - 6台の充填能力を有する水素ステーションも建設されたが、建設費が5億円を超えている。トレーラーでの'''移動式水素ステーション'''も存在するが、その輸送能力は水素20kg未満のものがほぼすべてで、抜本的な打開策にはなっていない。 またFCV自体の[[熱効率]]も30%前後であり<ref>{{Cite web |title=燃料電池の効率 |url=https://www.mech.nias.ac.jp/biomass/ch7.1.htm |website=www.mech.nias.ac.jp |access-date=2022-05-11}}</ref>、近年の[[ガソリンエンジン]]の[[熱効率]]40%代が出てきている現状では、その優位性を見いだすことが難しくなっている。
==== 長所 ====
;充填時間の短さ
* ユーザーフレンドリーの観点から
** :充填時間は約3分で、[[二次電池]]式電気自動車の急速充電(約40分)よりかなり速く、[[内燃機関]]自動車(ICEV、エンジン車)と同等とされる。
;航続距離の長さ
** 自然放電による影響がBEVより少ない。
*** 上記:水素はエネルギー密度が高く、航続距離を延ばしやすい。その ような性質からため、 従来の 内燃機関車に 近い 運用の 仕方が 可能である。 特に 大型トラックの 分野では 燃料電池はBEVよりも 適しているとされる<ref>[https://toyokeizai.net/articles/-/573202 カギ 握る 大型トラック、FCV 化の 最前線 トヨタが 描く「 燃料電池車」 戦略の 成否③]</ref>。 ▼
** 水素はエネルギー密度が高く、航続距離を延ばしやすい。
;走行時の環境負荷の低さ
▲*** 上記のような 性質から、 従来の 内燃機関車に 近い 運用の 仕方が 可能である。 特に 大型トラックの 分野では 燃料電池はBEVよりも 適しているとされる<ref>[https://toyokeizai.net/articles/-/573202 カギ 握る 大型トラック、FCV 化の 最前線 トヨタが 描く「 燃料電池車」 戦略の 成否③]</ref>。
** :走行時に[[ 二酸化炭素]] (CO<sub>2</sub>) や[[ 窒素酸化物]] (NO<sub>x</sub>) などの[[ 大気汚染]]の 原因となる[[ 有害物質]]を 排出しない。 ▼
** BEV同様、停止状態から最大トルクを発生させることができる。
* エコフレンドリーの観点から
▲** 走行時に[[ 二酸化炭素]] (CO<sub>2</sub>) や[[ 窒素酸化物]] (NO<sub>x</sub>) などの[[ 大気汚染]]の 原因となる[[ 有害物質]]を 排出しない。
==== 短所 ====
;充填の煩わしさ
* ユーザーフレンドリーの観点から
** :[[二次電池式電気自動車]]は(設備こそ必要であるものの)自宅のガレージに専用の充電設備を設ければで充電できるが、燃料電池自動車は[[エコ・ステーション|水素ステーション]]まで充填しに行かなければならない。また[[水素ステーション]]は全てが[[黒字と赤字|赤字]]運用であり、民間だけの力では到底増えない試算である。
;充填設備のコストの高さ
** システムが複雑なため車上有効スペースの減少と重量の増加、さらには[[水素脆化]]の対策として[[メンテナンス]]が多く[[消耗品]]も多い。充填ノズルは数百万円のコストに対して耐久性は低く、充填時の費用に大きく加算される。
**:水素ステーションは安全性を確保する上で立地やタンクの設置方法、安全装置など多数の制約があり、建設費用は現状でガソリンスタンドの約4倍のコストがかかる<ref>{{Cite web|和書|title=水素ステーション建設費4億円 普及阻むコストの巨壁 |url=https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC027KX0S1A600C2000000/ |website=日本経済新聞 |date=2021-06-10 |access-date=2022-04-29 |language=ja}}</ref>。水素充填設備には MIRAIより大型のタンクにあらかじめ 予圧予冷が 必要なため、1 基で1 時間あたりに 充填できる 車両は2 台から6 台までである<ref>[https://diamond.jp/articles/amp/164205?page=3 燃料電池車はEVに「もう 勝ち 目がない」は 本当か] Diamond online 2018 年3 月22 日</ref>。 ▼
** 実際の水素充填作業には30分以上の所要時間が必要であり、宣伝などで使われている充填3分には予約が必要である。(そもそも予約しないと充填すらできないステーションが多い)
;水素生産時の環境負荷の高さ
▲** 水素充填設備にはMIRAIより 大型のタンクにあらかじめ 予圧予冷が 必要なため、1 基で1 時間あたりに 充填できる 車両は2 台から6 台までである<ref>[https://diamond.jp/articles/amp/164205?page=3 燃料電池車はEVに「もう 勝ち 目がない」は 本当か] Diamond online 2018 年3 月22 日</ref>。
▲:現状の 水素は 主に[[ 化石燃料]]から 製造している。 燃料電池車は 走行時こそCO<sub>2</sub>やNO<sub>x</sub>を 出さないが、 水素は 自然界には 存在しないため、[[ 再生可能エネルギー]]によって 生産された 場合以外は 水素の 製造工程において 汚染物質を 発生する<ref>[http://www.fueleconomy.gov/feg/fuelcell.shtml "Fuel Cell Vehicles",] ''Fuel Economy'', Retrieved on: 2008-11-03.</ref>。また 発電をして供給する場合、現状純度99.97%以上の水素が必要と 比べてどされ ており、副生水素はほ どエネルギーやイぼ利用できない<ref name="weekly-economist.mainichi.jp">{{Cite web|和書|title=ガソリン フラとして車ゼロ時代:EVの 効率が良いかは議論の余地がある“先” 「水素社会」目指すトヨタ 燃料電池車を突破口に=永井隆 |url=https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210202/se1/00m/020/060000c |website=週刊エコノミスト Online |access-date=2022-07-15 |language=ja}}</ref>。
** 水素ステーションには[[化石燃料]]・[[電力]]・複雑な制御機構・[[専任技術者]]がすべて必要となり、災害時に真っ先に休業を余儀なくされる。インフラとして脆弱である。
;メンテナンスコストの高さ
** [[化石燃料]]から水素を製造、大[[電力]]で充填、さらには[[水素脆化]]による消耗品の多さから、水素は非常に高額であり、元々安価にできるポテンシャルは存在しない。実際ここ10年で水素価格は上昇している。[[ガソリン車]]よりも数倍悪い燃費を補助金と無税で誤魔化している現状が存在する。
** :システムが複雑なため車上有効スペースの減少と重量の増加、さらには[[水素脆化]]の対策として[[メンテナンス]]が多く[[消耗品]]も多い。また、[[ 白金]][[ 触媒]]の 劣化や[[ 電解質]]を 通すための[[イオン 交換樹脂]]の 劣化による 性能低下があり、 信頼性・ 耐久性に 問題があ るとされる。 その寿命も 比較的少な短く、 商用車に 搭載する 場合は 特殊な 対策が 必要となる。 (例:えば、バスでは 大型の[[ 電池|バッテリー]]を 搭載し 燃料電池の 出力一定化を 図り 寿命を 延ばしてい る。)しかしこの対策が行えるのは低速巡行のバスに限る。寿命や燃費の観点から燃料電池はトラックに不向きである。 ▼
*エコフレンドリーの観点から
** 自然界に水素供給源は存在しない。水素生産には[[天然ガス]]改質したものがほとんどで、[[化石燃料]]から水素を生産するとガソリン自動車と大差ない環境負荷となる。
** 水素充填に大量の[[電力]]を消費してしまう。1回の水素充填作業で約30kWhの[[電力]]を消費してしまう。これは[[テスラ・モデル3|テスラモデル 3]] が200km走行する時に消費する[[電力]]に相当する。
** 純度99.97%以上の水素しか利用できないため、副生水素はほぼ利用できない<ref name="weekly-economist.mainichi.jp">{{Cite web |title=ガソリン車ゼロ時代:EVの“先” 「水素社会」目指すトヨタ 燃料電池車を突破口に=永井隆 |url=https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210202/se1/00m/020/060000c |website=週刊エコノミスト Online |access-date=2022-07-15 |language=ja}}</ref>。([[白金]][[触媒]]の反応性維持のため)。そのため、水素以外の化合物の車載も不可能になる。アンモニアや炭化水素の分解では必ず不純物が残る。
* 自動車技術上の観点から
** [[水素脆化]]により車両全体に及ぶ金属劣化に対する対策が必要。
** [[エコ・ステーション|水素ステーション]]は全てが[[赤字と黒字|赤字]]であり、補助金目当てで建設されている。実際の数値として、2019年製造販売された[[水素ステーション]]の水素製造量5312kg/年(約600万円相当)<ref>{{Cite web |title=地域再エネ水素ステーション導入事業における技術的検証結果等の公表 |url=https://www.env.go.jp/air/car/lev/post_86.html |website=環境省 |access-date=2022-08-01 |language=ja}}</ref>に使われた運営補助金の額は20億円である。また補助金の大義名分であるはずの再生可能エネルギーの利用はなく、依然[[化石燃料]]依存である。そもそも輸送困難な水素には技術的利点はない。
▲** [[ 白金]][[ 触媒]]の 劣化や[[ 電解質]]を 通すための[[イオン 交換樹脂]]の 劣化による 性能低下があり、 信頼性・ 耐久性に 問題がある。 寿命も 比較的少なく、 商用車に 搭載する 場合は 特殊な 対策が 必要となる。( 例:バスでは 大型の[[ 電池|バッテリー]]を 搭載し 燃料電池の 出力一定化を 図り 寿命を 延ばしている。)しかしこの 対策が 行えるのは 低速巡行のバスに 限る。 寿命や 燃費の 観点から 燃料電池はトラックに 不向きである。
** 実用的な水素吸蔵物質がなく[[水素吸蔵合金]]は重量あたりの充填量が少なく非常に高価。
** [[固体高分子形燃料電池]] (PEFC) は低温反応のために[[白金]]を用いた[[触媒]]を不可欠とする。
*** 全世界の自動車を水素燃料電池車にすると、現存するすべての白金を使ってもまったく足りない。[[2010年]]現在の水素燃料電池車の[[白金]]使用量を10分の1以下に下げる必要がある。
*** 白金は排ガス浄化触媒としても使われているので量産すれば自動車産業自体に大きな影響が出る可能性がある。
*** 白金は高価な貴金属であるため燃料電池車が高価となる。
** PEFCは[[白金]][[触媒]]の反応性のために、高純度水素(純度99.97%以上)を必要とし、改質における未改質ガスやCOを除去しなければならない<ref>{{Cite web |title=ガソリン車ゼロ時代:EVの“先” 「水素社会」目指すトヨタ 燃料電池車を突破口に=永井隆 |url=https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210202/se1/00m/020/060000c |website=週刊エコノミスト Online |access-date=2022-07-15 |language=ja}}</ref>。改質器は高価で複雑なものになり車載は困難となる。
;発電効率の悪さ
:水素燃料電池自動車で一般的に利用が考えられている[[固体高分子形燃料電池]]の発電効率は30%台である。この数字は[[コンバインドサイクル]]を用いない[[火力発電所]]の効率より低く、燃料電池自動車をとりまく[[エコシステム (バズワード)|エコシステム]]全体としてみれば必ずしも[[エネルギー効率]]は高くない。(最新の新型MIRAIでの試算では、最大給電量が75kWh、搭載水素重量5.6kg、水素1kgのエネルギー量39.44kWhから導き出される発電効率は33%である)
;水素の調達の難しさ
:水素は自然界に採集可能なものは存在せず、石炭燃焼の副産物である副生水素、[[褐炭]]、[[天然ガス]]の[[水蒸気改質|改質]]、[[バイオマス]]、水の[[電気分解]]などによって調達されるが、CO<sub>2</sub>の発生や効率などの課題があり、とくに大きなエネルギーを費やす水の電気分解にはその実現に際し必要な条件が多い。輸入天然ガス改質が最も効率が良いが、化石燃料から水素を生産するとガソリン自動車と大差ない環境負荷となる。詳しくは「[[水素]]」の記事を参照。
;水素の格納の難しさ
:水素は体積エネルギー密度が低いため、[[トヨタ自動車|トヨタ]]や[[本田技研工業|ホンダ]]の車両では水素を350ないし700[[気圧]]という高圧で格納するが、この圧縮には大きなエネルギーが必要となる。水素を[[標準状態]]の[[理想気体]]とみなし、かつ圧縮に伴う熱エネルギーはすべて回収でき温度変化はないものと考えても、1気圧から700気圧への圧縮には1[[モル]]あたり約15[[ジュール#キロジュール|kJ]]が必要であるから、たと例えば[[トヨタ・MIRAI]]の燃料タンク122.4リットル(合計容量)分の水素を圧縮するのに要するエネルギーは16[[キロワット時|kWh]]にもなる。また実際の[[水素ステーション]]ではプレクールによる冷却と800気圧にするMIRAIよりも大型の与圧タンクが必要となるため、[[消費電力]]はさらに多くなる(千住水素ステーションでの実証試験では70Mpa対応型で消費電力30kWhとなっている)。常圧から低圧で液体状となる[[有機ハイドライド]]や[[アンモニア]]を始めとした水素キャリアの利用も検討されているが、精製に必要となるエネルギーや純度、触媒や分離膜の耐久性といった問題もあり実用化には至っていない。
;エネルギー効率の悪さ
:水の電気分解による水素製造へと投入するエネルギーに対する、製造された水素が貯蔵や輸送を経て[[動力]]となり最終的に車のタイヤへと伝わる駆動エネルギーの比は、[[2003年]]の資料によれば、圧縮水素を使用する場合は22%、液体水素の場合は17%にとどまる<ref>{{Cite web| title= Efficiency of Hydrogen PEFC, Diesel-SOFC-Hybrid and Battery Electric Vehicles |date= 2003-07-15 |url= http://www.evworld.com/library/fcev_vs_hev.pdf |format=PDF| accessdate = January 7, 2009}}</ref>。ただし前述のように電気分解は最も[[エネルギー収支比]](EPR)の悪い調達方法であるが、この値は取り得る最悪値であり、調達方法次第では2~3倍に改善する。
:これに対し、[[2013年]]の[[国立環境研究所]]の評価によれば、従来のガソリン車の効率は13%、ガソリンハイブリッド車の効率は22%程度<ref>{{Cite web|和書| title = 電気自動車の開発と自動車の環境効率評価| url = https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/11/10-11.html |publisher = [[国立環境研究所]] |accessdate=2013-12-04}}</ref>だが、現代のガソリンのEPRは平均して300%程度であるから、ガソリン製造に投入するエネルギーに対する駆動エネルギーのおおよその比はガソリン車で40%、ガソリンハイブリッド車で66%となる。新型MIRAIは最大給電量75kWhを5.6kgの水素から発電するため、効率33%である。
:また、膨大なエネルギーを使用して冷却・圧縮と運搬を行うため、「[[Well-to-Wheel]](油田から車輪)」効率([[一次エネルギー]]の採掘から車両走行までの効率)では、燃料電池自動車は[[電気自動車]]に比べて大幅に劣る。[[2009年]]の資料によれば、[[再生可能エネルギー]]による電力であれば、これを用いた電気分解により水素を生成し圧縮して燃料電池自動車に充填するよりも、そのまま電気自動車へと[[充電]]するほうがWell-to-Wheell効率において3倍ほど勝る<ref>{{Cite web| title = Ulf Bossel On Hydrogen|date = 2006-12-11 | url = http://www.physorg.com/news85074285.html| accessdate = June 2, 2009}}</ref>。[[テスラ (会社)|テスラ]]の[[イーロン・マスク]][[最高経営責任者|CEO]]は、2015年に「[[エコ・ステーション#水素ステーション|水素ステーション]]に水素を移し変える際に使う電気で、我が社の電気自動車が100km以上走る」と語った<ref>[http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42579 JBPRESS 2015.01.07]</ref>。 また2016年に[[テスラ (会社)|テスラ]][[最高経営責任者|CEO]]の[[イーロン・マスク]]氏は「水素は馬鹿電池("Fool Cell"、燃料電池の英訳の"Fuel Cell"に掛けている)だ」と揶揄している<ref group="注釈">ただしマスクは放言で知られる人物であり、かつ彼がBEVメーカーのCEOであることは留意すべき点である</ref><ref>{{Cite web |title=【土井正己のMove the World】テスラ イーロン・マスク氏、燃料電池批判はなぜ |url=https://response.jp/article/2016/03/02/270824.html |website=レスポンス(Response.jp) |access-date=2022-07-16 |language=ja}}</ref>。
:水素はもともと、供給の不安定な[[再生可能エネルギー]]を[[リチウム]]イオンよりも軽い物質で貯蔵するために注目されたが、水素タンクの質量が100kgを超えており<ref>{{Cite web| title = エネルギー貯蔵媒体としての水素活用|date = 2014-05 | url = https://www.aist.go.jp/Portals/0/resource_images/aist_j/aistinfo/aist_today/vol14_05/vol14_05_p10_p11.pdf| accessdate = September 12, 2017}}</ref>、電気分解に80%前後の[[熱効率]]とFCスタックによる発電で30%前後の[[熱効率]]であり、残るエネルギーが20%台になり、ただでさえ水素による走行特性のメリットはなく、むしろ一般的な[[リチウムイオンバッテリー]]と比べ、逐一発電を行う水素燃料電池は出力要求に対する反応性が劣るため、走行特性でも優位とは言えず、定置型と比べて発熱の再利用が限定的であることから、バッテリーの性能(エネルギー密度、充電時間など)が向上した際には水素による燃料電池の存在価値はなくなる。
=== 水素ステーションの整備計画 ===
{{see also|エコ・ステーション#水素ステーション}}
※[[エコ・ステーション|水素ステーション]]の整備は進んでいるものの、その計画は鈍化傾向に幾度も修正されている。
燃料電池自動車の普及促進のため、購入の際の補助金や[[エコ・ステーション#水素ステーション|水素ステーション]]などのインフラ整備などの普及促進策が採られている。2012年には、[[トヨタ]]や[[ダイムラー (自動車メーカー)|ダイムラー]]、[[ゼネラルモーターズ|GM]]など世界の大手自動車企業11社が水素供給システムの規格を統一することで合意した<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXDASDD010LJ_R00C12A2TJ1000/ 日本経済新聞 燃料電池車、水素供給システムの規格統一 世界大手11社、普及へ初期段階から協力]</ref>。
水素ステーションに対しても、[[2013年]]度より水素供給設備整備事業費補助金を[[経済産業省]]から事業者に支給することにより設置数の増加を図っている<ref>「[httphttps://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1404/09/news034.html 水素供給の形が見えてきた、3社の設備の違いとは]」。2014年4月9日、[[ITmedia]]。2014年8月10日閲覧。</ref>。2013年夏時点での日本国内における水素ステーションの数は17ヶ所であったが、[[2015年|2016年]]3月38基、[[2022年]]5月現在、日本国内の水素ステーションは161カ所となっている<ref>{{Cite web |和書|title=水素ステーション普及状況_水素ステーションの補助金交付を行う次世代自動車振興センター |url=http://www.cev-pc.or.jp/suiso_station/index.html |website=www.cev-pc.or.jp |access-date=2022-05-05}}</ref>。日本政府は2025年度には約320基にすることを目標にしている<ref>{{Cite web |和書|title=トヨタ MIRAI {{!}} 法人および個人事業主のお客様 {{!}} トヨタ自動車WEBサイト |url=https://toyota.jp/mirai/forexecutive/?padid=from_mirai_grade_topics_forexecutive |website=toyota.jp |access-date=2022-05-05}}</ref>。
[[2015年]]2月、トヨタ、ホンダ、日産自動車の3社が水素ステーションの整備促進に向け、共同支援に乗り出すことで合意したと発表している<ref name="ITmedia20150203">{{cite news|title = 自動車3社が水素に支援、ステーション普及を助ける|url = httphttps://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1502/13/news048.html|publisher = [[ITmedia]]|date = 2015年2月3日 | accessdate = 2016年4月10日}}</ref>。また同月、トヨタは水素社会の実現に向けて約5700件の燃料電池車に関する特許を無料で公開した<ref>[http://president.jp/articles/-/14608 トヨタが燃料電池車の特許を無償開放した本当の理由]</ref>。
世界最大の電気自動車市場である中国は、世界最大の燃料電池自動車市場も目指しているとされ、[[2017年]]に[[上海市]]政府は50カ所に水素ステーションを整備する計画を発表している<ref>{{cite news|title = 地方政府、FCV普及を推進 水素ステーション設置や公共バス投入計画|url = https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180628/mcb1806280500002-n1.htm|publisher = [[フジサンケイビジネスアイ]]|date = 2018年6月28日 | accessdate = 2019年4月26日}}</ref><ref>{{cite news|title = EVだけでなく「燃料電池車」の覇権も狙う中国|url = https://toyokeizai.net/articles/-/229370|publisher = [[東洋経済新報社]]|date = 2018年7月20日 | accessdate = 2019年4月26日}}</ref>。
== その他の燃料電池自動車 ==
=== アルコール燃料電池自動車 ===
[[アルコール]]を搭載し、[[燃料電池]]で発電して走る電気自動車。アルコールを直接燃料電池に供給するもの([[ダイレクトメタノール燃料電池車]])と、アルコール[[水蒸気改質|改質]]器を車に搭載しアルコールから[[水素]]を得て水素燃料電池に供給するもの(水素燃料電池車)がある。
==== ダイレクトメタノール燃料電池車 ====
{{main|ダイレクトメタノール燃料電池車}}メタノール燃料を用いて[[直接メタノール燃料電池|ダイレクトメタノール燃料電池]]で[[発電]]して[[電動機]]で走行する車<ref name="DMFC">{{Cite web|和書|title=日本自動車研究所(JARI)平成18年度燃料電池自動車に関する調査報告書 p. 235|url=http://www.jari.or.jp/Portals/0/jhfc/data/report/2006/pdf/fcv_report_01.pdf|format=PDF|publisher=JARI|accessdate=2018-9-9}}</ref>。
=== 金属燃料電池(金属空気電池)自動車 ===
* [https://www.denyo.co.jp/pdf/news/release_fc_generator_20200917.pdf デンヨーとトヨタ、水素で発電する燃料電池電源車を共同開発し実証運転を開始]
* [http://www.jari.or.jp/Portals/0/resource/pdf/fc_ev/200502-3.pdf 平成16年度 燃料電池自動車に関する調査報告書 3.燃料電池車をめぐる現象 3-1燃料電池車の開発経緯]
* [https://www.fcdic.jp/ 燃料電池開発情報センター]
{{Alternative propulsion}}
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