シュローブタイドボールゲームはヘンリー2世 せい の時代 じだい 、少 すく なくとも12世紀 せいき からイングランドで行 おこな われてきた。「ハグボール "hugball"」としても知 し られているアッシュボーンのゲームの正確 せいかく な起源 きげん は、ロイヤルシュローブタイド委員 いいん 会 かい の事務所 じむしょ に保管 ほかん されていた最初 さいしょ 期 き の記録 きろく が1890年代 ねんだい の火事 かじ によって失 うしな われたため不明 ふめい であるが、少 すく なくとも1667年 ねん 頃 ごろ から行 おこな われたきた[2] [3] [4] [5] 。起源 きげん に関 かん する最 もっと も人気 にんき のある説 せつ の一 ひと つは、「ボール」は元々 もともと は処刑 しょけい の後 のち に群集 ぐんしゅう に向 む かって放 ほう り込 こ まれた切断 せつだん された頭部 とうぶ であった、というものである[6] 。このようなことは起 お こったかもしれないが、フランスとの百 ひゃく 年 ねん 戦争 せんそう の期間 きかん に行 おこな われたとされているWinchelsea Streete Gameといった球技 きゅうぎ は、敵 てき への侮辱 ぶじょく を示 しめ すことを意図 いと した元々 もともと の球技 きゅうぎ [7] が変化 へんか したものである、という方 ほう が可能 かのう 性 せい がある。
ダービーシャー州 しゅう におけるフットボールに関 かん する最初 さいしょ 期 き の文献 ぶんけん の一 ひと つは、イングランド内戦 ないせん の後 のち 、1683年 ねん にチャールズ・コットン (アッシュボーン准 じゅん 男爵 だんしゃく アストン・コカイン 〔1608-84〕の従兄弟 いとこ )によって書 か かれた「Burlesque upon the Great Frost」と呼 よ ばれる詩 し である[8] 。
Two towns, that long that war had raged
Being at football now engaged
For honour, as both sides pretend,
Left the brave trial to be ended
Till the next thaw for they were frozen
On either part at least a dozen,
With a good handsome space between 'em
Like
Rollerich stones , if you've seen 'em
And could no more run, kick, or trip ye
Than I can quaff off
Aganippe .
ダービー にある2つの街 まち の間 あいだ で行 おこな われていたシュローブタイド・フットボールは、「ローカルダービー 」の語源 ごげん としてしばしば認 みと められている(より広 ひろ く受 う け入 い れられている語源 ごげん はエプソムダービー 競馬 けいば である)。起源 きげん が何 なに にせよ、「ローカルダービー」はローカルライバル間 あいだ でのフットボールの試合 しあい を意味 いみ する用語 ようご として現在 げんざい は認識 にんしき されており、ダービーは競馬 けいば である[11] [12] 。
2012年 ねん にナント大学 だいがく のローラン・フルニエによって、ロイヤル・シュローブタイド・フットボールとフランス ・ピカルディ地域 ちいき 圏 けん トリコ (Tricot)で行 おこな われていたラ・スール (La soule)との間 あいだ のそれまで知 し られていなかった繋 つな がりが明 あき らかにされた。フルニエは、「民俗 みんぞく フットボール」に関 かん する研究 けんきゅう を行 おこな っている際 さい にAshbourne Telegraph のオフィスの窓 まど に展示 てんじ されている1909年 ねん のシュローブタイドボールに描 えが かれたコカイン家 か (12世紀 せいき からアッシュボーンにある)の紋章 もんしょう が紋章 もんしょう 学 がく 的 てき 意匠 いしょう に3匹 ひき の若 わか い雄鶏 おんどり を含 ふく むこと、これが受難 じゅなん 節 ぶし の最初 さいしょ の水曜日 すいようび と復活 ふっかつ の月曜日 げつようび にラ・スールが行 おこな われていたトリコの紋章 もんしょう (同様 どうよう に3匹 ひき の若 わか い雄鶏 おんどり を含 ふく む)と一致 いっち することに気 き が付 つ いた[13] 。
アッシュボーン出身 しゅっしん の人々 ひとびと 7000人 にん ほどが参加 さんか し、2日間 にちかん に渡 わた って開催 かいさい される[1] 。
「Shrovetide シュローヴタイド」は「懺悔 ざんげ の三 さん が日 にち 」のことで、復活 ふっかつ 祭 さい (イースター)の40日 にち 前 まえ の日 ひ にあたり、毎年 まいとし 移動 いどう する日 ひ である。大会 たいかい は、「Shrove Tuesday(懺悔 ざんげ の火曜日 かようび )」と、復活 ふっかつ 祭 さい に備 そな えて準備 じゅんび を始 はじ める四 よん 旬 しゅん 節 ぶし (レント)の初日 しょにち の「Ash Wednesday(灰 はい の水曜日 すいようび )」の2日間 にちかん 行 おこな われる[14] 。
アッパーズが目指 めざ すゴール
ダウナーズが目指 めざ すゴール
街 まち を東 ひがし から西 にし に流 なが れるヘンモア川 がわ を境 さかい にして北側 きたがわ の地域 ちいき の出身 しゅっしん 者 しゃ のチーム「Up'Ards アッパーズ」と川 かわ の南側 みなみがわ 出身 しゅっしん 者 しゃ のチーム「Down'Ards ダウナーズ」に分 わ かれて、それぞれのゴールを目指 めざ してボールを運 はこ ぶ大会 たいかい [1] 。アッパーズが目指 めざ すゴールは川上 かわかみ 側 がわ にあり、街 まち の東 ひがし 寄 よ りの場所 ばしょ にあり、ダウナーズが目指 めざ すゴールは川下 かわしも 側 がわ 、街 まち の西 にし 寄 よ りの場所 ばしょ にある。ゴールは川 かわ の中 なか にある碑 いしぶみ (石碑 せきひ )で、碑 いしぶみ の真 ま ん中 なか の丸 まる い色 いろ の変 か わった部分 ぶぶん にボールを3回 かい タッチさせればゴールと認 みと められる。ボールを移動 いどう させることに関 かん するルールはほとんど無 な く、ほとんど何 なに をしても良 よ く、ボールは手 て に持 も って走 はし っても、投 な げても、足 あし で蹴 け ってもいい。ボールを服 ふく の中 なか や袋 ふくろ に隠 かく して運 はこ んでもよい[1] 。アッシュボーンの街 まち 全体 ぜんたい をフィールドにして行 おこな い、入 はい っていけない場所 ばしょ はせいぜい教会堂 きょうかいどう と墓地 ぼち くらいのもので、あとはどこに入 はい っても良 よ く、たとえば個人 こじん の住宅 じゅうたく の敷地 しきち 内 ない や商店 しょうてん やスーパーの中 なか に入 はい っても良 よ い[1] 。
どちらのチームもゴールを決 き められずに夜 よる 10時 じ を迎 むか えた場合 ばあい は試合 しあい 終了 しゅうりょう となり[14] 、引 ひ き分 わ けとなる[1] 。
ゲームの開始 かいし は2日 にち とも午後 ごご 2時 じ 、街 まち の中央 ちゅうおう あたりのショークロフト駐車 ちゅうしゃ 場 じょう で行 おこな われる[1] 。初日 しょにち は開会 かいかい の宣言 せんげん 、英国 えいこく 国歌 こっか 「女王 じょおう 陛下 へいか 万 まん 歳 さい 」を斉唱 せいしょう した後 のち 、街 まち の人々 ひとびと を代表 だいひょう するために選 えら ばれた人 ひと が台 だい の上 うえ からボールを群衆 ぐんしゅう の中 なか に投 な げ込 こ みそれと同時 どうじ にゲームは始 はじ まる。2日 にち 目 め にボールを投 な げ入 い れる役 やく は特別 とくべつ な招待客 しょうたいきゃく が行 おこな うのが慣例 かんれい になっている[1] 。
1928年 ねん にイギリスの王 おう 太子 たいし エドワード (後 ご の英国 えいこく 王 おう エドワード8世 せい )がボールを投 な げ入 い れた時 とき から、この祭 まつ りに「Royal」という語 かたり を冠 かん して「Royal Shrovetide Football」とも呼 よ ばれるようになった[1] 。
ゴールを決 き めた人 ひと には、様々 さまざま な意味 いみ を込 こ めた図柄 ずがら と当人 とうにん の名前 なまえ を記 しる したボールが授与 じゅよ される。ちょうど様々 さまざま な大会 たいかい で勝利 しょうり 者 しゃ にトロフィーが贈 おく られているようなものである。この大会 たいかい でゴールを決 き めることは街 まち の男 おとこ にとって特 とく に大 おお きな誇 ほこ りとなる[1] 。数 かず 百 ひゃく 年 ねん も前 まえ の記念 きねん ボールも記念 きねん 館 かん に保管 ほかん されていて、その名 な は街 まち で語 かた り継 つ がれている。
男 おとこ たちはそれぞれ毎年 まいとし 同 おな じ服 ふく を着 き て参加 さんか するのが慣例 かんれい となっている[1] 。服 ふく の色 いろ や図柄 ずがら によって離 はな れていても互 たが いに誰 だれ か一目 いちもく で判 わか るからである[1] 。中 なか には30年 ねん も同 おな じ服 ふく で参加 さんか しているのでそれが穴 あな だらけでボロボロになってしまっている人 ひと もいる[1] 。
主力 しゅりょく 選手 せんしゅ となっている屈強 くっきょう な男 おとこ たちはアッパーズ、ダウナーズとも数 すう 十 じゅう 名 めい ほど。普段 ふだん はたとえば配管 はいかん 工 こう や建設 けんせつ 作業 さぎょう 員 いん などとしてこの街 まち や周辺 しゅうへん の地域 ちいき で働 はたら いている人々 ひとびと である[1] 。アッパーズ、ダウナーズ側 がわ それぞれに、主力 しゅりょく 選手 せんしゅ たちが普段 ふだん 集 つど う店 みせ がある(ちなみにダウナーズが集 つど う店 みせ は「Wheel Inn(車輪 しゃりん の宿 やど )」である[1] )。店 みせ には過去 かこ の勝利 しょうり で得 え た記念 きねん のボールが誇 ほこ らしげにいくつも飾 かざ られている。特 とく にこの祭 まつ りに熱中 ねっちゅう している男 おとこ たちは、一 いち 年 ねん のほとんどをこの祭 まつ りのために過 す ごしているといっても過言 かごん ではない[1] 。この大会 たいかい で勝 か つために日 ひ ごろから走 はし り込 こ みやウェイトリフティングなどのトレーニングを積 つ み、店 みせ で仲間 なかま たちと交流 こうりゅう し作戦 さくせん を練 ね っている[1] 。
アッパーズが得意 とくい とする手法 しゅほう は、多人数 たにんずう でボールを取 と り囲 かこ むようにスクラム(「hug ハグ」と地元 じもと の人々 ひとびと は呼 よ ぶ)を組 く み、スクラムを組 く んだままゴールへ進 すす んでゆく手法 しゅほう である[1] 。ダウナーズの得意 とくい とする手法 しゅほう は、スクラムからボールが飛 と びだした時 とき (これを「brake ブレイク」と地元 じもと の人々 ひとびと は呼 よ ぶ)に川 かわ へとボールを運 はこ びこみ、東 ひがし から西 にし へと流 なが れる水 みず の流 なが れも利用 りよう しつつゴールへとボールを運 はこ ぶ手法 しゅほう である[1] 。
ルールは「殺 ころ さない、ボールを隠 かく してはならない、教会 きょうかい の敷地 しきち に入 はい ってはならない」だけだとも言 い われているが[14] 、実際 じっさい には(ボールを隠 かく すような)奇策 きさく が用 もち いられたことがあり、たとえば群衆 ぐんしゅう がボールを見失 みうしな った時 とき に、年頃 としごろ の女性 じょせい が服 ふく のお腹 なか の部分 ぶぶん にボールを入 い れ妊 にん 婦 ふ のフリをし、同 おな じく若 わか い男性 だんせい と二人 ふたり で夫婦 ふうふ を装 よそお って敵 てき ゴールへと近 ちか づくという作戦 さくせん が行 おこな われたことがあるがこれはゴール直前 ちょくぜん でボールを取 と り出 だ したところで見 み つかってしまったという[1] 。また、横丁 よこちょう でこっそり女性 じょせい に渡 わた し、ショッピングバッグに入 い れさも買 か い物 もの 客 きゃく のようなフリをしてボールを運 はこ ぶという作戦 さくせん もとられたことがあるが[1] 、すぐに人々 ひとびと に気付 きづ かれてしまったという[1] 。奇策 きさく がうまくいった例 れい としては、ダウナーズの策士 さくし が、川 かわ で揉 も み合 あ っている時 とき にとっさに黒 くろ いビニール袋 ぶくろ にボールを入 い れ水中 すいちゅう の木 き の枝 えだ にひっかけて隠 かく し、人々 ひとびと が探 さが しに去 さ った後 のち に運 はこ びゴールすることに成功 せいこう したこともあったという[1] 。
この大会 たいかい では乱暴 らんぼう なプレーは一般 いっぱん 的 てき であるため、手 て や足 あし を骨折 こっせつ してしまう人 ひと もいる[14] 。興奮 こうふん した参加 さんか 者 しゃ 同士 どうし が殴 なぐ り合 あ いを始 はじ めてしまうことがあるが、経験 けいけん 豊富 ほうふ なプレーヤがすかさず仲裁 ちゅうさい に入 はい り治 おさ まるのが一般 いっぱん 的 てき である[1] 。これは、祭 まつ りが済 す めば同 おな じ街 がい の仲 なか の良 よ い仲間 なかま 同士 どうし に戻 もど るのだから過度 かど な喧嘩 けんか は好 この ましくないと考 かんが えられているからである[1] 。参加 さんか 者 しゃ たちがプレーのはずみで個人 こじん 宅 たく や商店 しょうてん などの一部 いちぶ を壊 こわ してしまうことがあるが、この祭 まつ りのために専用 せんよう の保険 ほけん がかけてあり、被害 ひがい 者 しゃ には修繕 しゅうぜん 費用 ひよう などが出 で るため、参加 さんか 者 しゃ たちはこの点 てん をあまり気 き にすることなく、思 おも う存分 ぞんぶん 闘 たたか うことができる[1] 。壊 こわ されがちな地区 ちく に住 す んでいる住人 じゅうにん たちも、街 まち を盛 も り上 あ げるこの祭 まつ りに理解 りかい を示 しめ しており、それにもし何 なに かあれば保険 ほけん で修理 しゅうり されるのであまり心配 しんぱい していない[1] 。
アッシュボーンの男子 だんし にとってはこの競技 きょうぎ に参加 さんか が認 みと められることが「大人 おとな 」に仲間入 なかまい りすることを意味 いみ し[1] 、参加 さんか させはじめる年齢 ねんれい については親 おや たちは子供 こども の成長 せいちょう の程度 ていど を見 み てそれぞれの判断 はんだん で決 き めていて一様 いちよう ではないが、例 たと えば14歳 さい ころに「自分 じぶん の行動 こうどう に責任 せきにん が持 も てるようになった」として参加 さんか させはじめる。母親 ははおや たちは子供 こども に怪我 けが が無 な いようにと祈 いの るような気持 きも ちで送 おく り出 だ している[1] 。こうした年齢 ねんれい の 小柄 こづか でまだ十分 じゅうぶん 鍛 きた えていない身体 しんたい では、身体 しんたい の大 おお きな主力 しゅりょく 選手 せんしゅ たちのスクラムに巻 ま き込 こ まれると押 お し倒 たお されて踏 ふ みつけられてしまったりするので、例 たと えば脚 あし の速 はや い子供 こども ならば、スクラムと離 はな れた場所 ばしょ に立 た ち、ボールがスクラムから飛 と び出 だ した時 とき にすかさず受 う け取 と り速 はや く走 はし る役 やく をまかされるなど、相応 そうおう の役割 やくわり 分担 ぶんたん がなされている[1] 。
大会 たいかい はアッシュボーンの街 まち を挙 あ げて行 おこな われており、アッシュボーン出身 しゅっしん 者 しゃ はこの祭 まつ りの期間 きかん になると遠方 えんぽう から里帰 さとがえ りしてこの競技 きょうぎ に参加 さんか する人 ひと も多 おお い。この祭 まつ りの期間 きかん 中 ちゅう は観光 かんこう 客 きゃく や取材 しゅざい 陣 じん も多数 たすう 訪 おとず れ大 おお いに賑 にぎ わう[1] 。