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タメ口 - Wikipedia

タメこう(タメぐち)とは、相手あいて対等たいとうとしてあつかったはなかたである[1]したしいひと同士どうしでのはなかた[2]。これを名称めいしょう学者がくしゃあいだでもさだまっておらず、ためこう類語るいごがそのすきめてきた[3]とく年長ねんちょうしゃたいして対等たいとうはなかたをすることだと、ある辞書じしょには掲載けいさいされているが[4]実際じっさいのある調査ちょうさでは仲間なかま同士どうし言葉ことばだという認識にんしき過半数かはんすうめている[3]たいしてたとえば日本語にほんご敬語けいごは、相手あいて距離きょりたもつための言葉ことばでもあるため、敬語けいご以外いがいによってしたしさを表現ひょうげんする必要ひつようがある[5]。「ため」は1960年代ねんだい不良ふりょう少年しょうねん使つかいはじめひろまっていった[4]。 2008ねん調査ちょうさでは、400めい以上いじょうの10代から60だいまでの人々ひとびとで、それぞれの世代せだい過半数かはんすうは「ためこう」の意味いみ仲間なかまないでの言葉ことばづかいをしていると認識にんしきしており、つぎ多数たすうは、50だいまでの人々ひとびとは、年上としうえ年下とししたはなさい普通ふつう言葉ことばだと認識にんしきしていた[3]。2010年代ねんだいには企業きぎょう採用さいよう担当たんとうしゃは、目上めうえものたいするタメこうたりまえになってしまったとべた[6]

背景はいけい起源きげん

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「ため」のかたりは、サイコロ賭博とばくで「どう(ゾロ)」を意味いみした[7][3]

待遇たいぐう表現ひょうげんにおいて、けいたいの「ですます」調ちょう丁寧ていねいとすることができるが、2008ねんにおいても「だ・である」という常体じょうたいについては、普通ふつう/通常つうじょう、「くだけたいいかた」など学者がくしゃでも様々さまざまんでおり呼称こしょうさだまっていない[3]たとえば、戦後せんごにはじめて敬語けいごについて再考さいこうした国語こくご審議しんぎかいの1952ねん答申とうしん「これからの敬語けいご」においては、『親愛しんあいたいとしての「だ」調ちょう』と表現ひょうげんされた[8]。その現状げんじょうにおいて、「ためこう」はこのかくたる名称めいしょうきをめる一定いってい役割やくわりたしたともいえ、社会しゃかいでの使用しよう定着ていちゃくしてきた[3]。その背景はいけいには、戦後せんご未知みちひとと「ですます」調ちょうはなすようになったことがげられ、これを区別くべつする必要ひつようてきた[2]江戸えど時代じだい庶民しょみん同士どうしでは「だ」ではなした[9]だい世界せかい大戦たいせんまもなくまで、江戸えど時代じだい封建ほうけん社会しゃかいてき身分みぶん制度せいど名残なごり身分みぶんによって言葉ことばおおきく、魚屋さかなや八百屋やおやは「やすいよ!」とうことがおおかったものだが、言葉ことば丁寧ていねいすすみ、高級こうきゅうてんみの言葉ことばづかいではな場面ばめんもみられるようになり、従来じゅうらい「だ」ではなすこともおおかった労務ろうむけい道路どうろ工事こうじ、タクシーの運転うんてんしゅ宅配たくはい業者ぎょうしゃなどでも丁寧ていねいはなすことがえた[10]

タメこうれい

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ですます調しらべもちいず、〜だ、〜だね、〜だよ、などの常体じょうたいもちいる。相手あいて名前なまえときにも、〜さん、〜さま、〜殿どの先輩せんぱい先生せんせい部長ぶちょう役職やくしょくめい)などの敬称けいしょうもちいず、名前なまえをそのままにするか、〜くん、〜ちゃんけにしたり、あだや「おまえ」あるいは「あんた」「くん(きみ)」などとぶ。

1990年代ねんだいには職場しょくばで、ありがとうございます、の意味いみつ、あざっすのような短縮たんしゅくもちいられるようになった。これは丁寧ていねいの「です」「ます」が、「す」へと一本いっぽんされて単純たんじゅんしたとみなせる。べます、きますは、べるっす、くっすとなる。身内みうち友人ゆうじんから、としちか先輩せんぱいしたしい目上めうえひとにまで使つかわれる。敬語けいごではしたしみがなくなるがために、すこあらたまった雰囲気ふんいき表現ひょうげんしているという。一方いっぽう、これらを使用しようするどう世代せだいでもこのような「す」には印象いんしょうたず使つかわないという意見いけんもある。[11]

専門せんもんてきれば、敬語けいごとタメあいだ段階だんかいであり、ポライトネス理論りろんにおけるポジティブ・ポライトネス(したしみをめた礼儀れいぎ)として機能きのうしている[11]

一般いっぱん後輩こうはい口調くちょうともばれているが、井上いのうえ史雄ふみおによればこれは中間ちゅうかん段階だんかいの「ですます」丁寧ていねいわる俗語ぞくごてきな「ッス」であり、常体じょうたいぞくするなかあいだ敬語けいごで、あらたまった場面ばめんにはてきさないという[12]

出典しゅってん

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  1. ^ ためこう・タメこう大辞林だいじりんだいさんはん三省堂さんせいどう
  2. ^ a b 井上いのうえ史雄ふみお 2017, pp. 217–218.
  3. ^ a b c d e f 長嶺ながみね聖子せいこ、NagamineSeiko「韓国かんこくの「パンマル」と日本語にほんごの「ためこう」のちがいにかんするいち考察こうさつ-待遇たいぐう表現ひょうげん指導しどう方法ほうほう関連かんれんして」『留学生りゅうがくせい教育きょういくだい5ごう、2008ねん3がつ、19-33ぺーじNAID 120001374590 
  4. ^ a b ためこう 『デジタル大辞泉だいじせん小学館しょうがくかん
  5. ^ 文化ぶんか審議しんぎかい国語こくご分科ぶんかかい (2018ねん3がつ2にち). “かりうための言語げんごコミュニケーション(報告ほうこく” (pdf). 文化庁ぶんかちょう. 2018ねん7がつ15にち閲覧えつらん
  6. ^ 竹田たけだ博信ひろのぶ企業きぎょう期待きたいする「キャリア教育きょういく」について」『大阪樟蔭女子大学おおさかしょういんじょしだいがく人間にんげん科学かがく研究けんきゅう紀要きようだい9かん、2010ねん1がつ31にち、261-269ぺーじNAID 110007592809 
  7. ^ ため大辞林だいじりんだいさんはん三省堂さんせいどうおよび、『デジタル大辞泉だいじせん小学館しょうがくかん
  8. ^ これからの敬語けいご建議けんぎだい1国語こくご審議しんぎかい文化庁ぶんかちょう昭和しょうわ27ねん(1952ねん)4がつ14にち
  9. ^ 井上いのうえ史雄ふみお 2017, p. 202.
  10. ^ 井上いのうえ史雄ふみお 2017, pp. 183–184.
  11. ^ a b 井上いのうえ史雄ふみお当該とうがいコラムの筆者ひっしゃ竹田たけだ晃子あきこ敬語けいごわる』大修館書店たいしゅうかんしょてんだい規模きぼ調査ちょうさからわかるひゃくねんうごき〉、2017ねん、86-88ぺーじ裏表紙うらびょうしぺーじISBN 978-4-469-22260-9 
  12. ^ 井上いのうえ史雄ふみお 2017, pp. 68–70.

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 井上いのうえ史雄ふみおしん敬語けいごろん なぜ「みだれる」のか』NHK出版しゅっぱん〈NHK出版しゅっぱん新書しんしょ〉、2017ねんISBN 978-4-14-088508-6