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カンナダ語 - Wikipedia

カンナダ

ドラヴィダ語族ごぞくぞくし、みなみインドで使つかわれる言語げんご

カンナダ(カンナダご、ಕನ್ನಡえい: Kannada)は、ドラヴィダ語族ごぞくなかでもっともふる言語げんごひとつで、2001ねん時点じてんやく3770まんにん話者わしゃ人口じんこう[1]多様たよう方言ほうげんかれている。みなみインド4しゅうひとつ、カルナータカしゅう公用こうようである。独自どくじ文字もじカンナダ文字もじ使つかわれる。まれにカナラしょうされることもある。

カンナダ
ಕನ್ನಡ
発音はつおん IPA: [kʌnnʌɖʌ]
はなされるくに インドの旗 インド
地域ちいき カルナータカしゅうケーララしゅうラクシャドウィープポンディシェリ
話者わしゃすう やく3,770まんにん(2001ねん[1]
言語げんご系統けいとう
表記ひょうき体系たいけい カンナダ文字もじ
公的こうてき地位ちい
公用こうよう インドの旗 インド カルナータカしゅう
少数しょうすう言語げんごとして
承認しょうにん
インドの旗 インド連邦れんぽう政府せいふ
統制とうせい機関きかん インドの旗 カンナダ文学ぶんがく研究所けんきゅうじょ英語えいごばんカンナダばん
言語げんごコード
ISO 639-1 kn
ISO 639-2 kan
ISO 639-3 kan
インド国内こくないのカンナダ分布ぶんぷ
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カンナダは2500ねんにわたってはなされており、カンナダ文字もじ筆記ひっきほうも1900ねんまえから使つかわれている。カンナダ初期しょき発展はってんは、のドラヴィダ語族ごぞく言語げんご同様どうようである。過去かこすう世紀せいきあいだ、カンナダは、テルグマラヤラムとともに、サンスクリットから語彙ごい文学ぶんがくてきスタイルについて、きわめてつよ影響えいきょうけてきている。

カンナダ屈折くっせつで、3つのせいち(男性だんせい女性じょせい中性ちゅうせい)、2つのかず単数たんすう複数ふくすう)がある。せいかず時制じせい、そのによって屈折くっせつする。

口語こうご文語ぶんごおおきくことなっている。カンナダ口語こうご地域ちいきによって変異へんいがある。一方いっぽう文章ぶんしょうはカルナータカしゅう全般ぜんぱんであまりわりがない。ethnologueはおよそ20の方言ほうげん区別くべつしている。 コダヴァ(Kodava、コールグ (Coorg) 地方ちほう)、 クンダ(もっぱらクンダプラ (Kundapura) 地方ちほう)、 ハヴィヤカ(Havyaka、ダクシナ・カンナダ (Dakshina Kannada) ウッタラ・カンナダ (Uttara Kannada) 、シモガ (Shimoga) 、サガラ (Sagara) やウディピ (Udipi) 地方ちほうのハヴィヤカ・バラモンたち)、 アレ・バシェ(Are Bhashe、ダクシナ・カンナダのスリア (Sullia) 地方ちほう)などである。

地理ちりてき分布ぶんぷ

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カンナダおもにカルナータカ地方ちほうベンガルール、そして隣接りんせつするアーンドラ・プラデーシュしゅうマハラシュトラしゅうタミル・ナードゥしゅうケーララしゅうはなされている。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくイギリスにもまとまったかずで、カナダオーストラリアにも少数しょうすうだがカンナダ話者わしゃがいる。

公的こうてき地位ちい

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カンナダインド憲法けんぽうだい8付則ふそく掲載けいさいされている22のインドの公用こうようのひとつであり、カルナータカしゅう公用こうようである。

音声おんせい音韻おんいん

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a, i, u, e, oの5つのたん母音ぼいんと、ā, ī, ō, ū, ēの5つのちょう母音ぼいんがある。たん母音ぼいんのaが/a/と/ə/の2つの音素おんそかれる方言ほうげんもある[2]

カンナダには以下いか子音しいん音素おんそがある。

/p/, /pʰ/, /b/, /bʰ/, /t/, /tʰ/, /d/, /dʰ/, /ṭ/, /ṭʰ/, /ḍ/, /ḍʰ/, /k/, /kʰ/, /ɡ/, /ɡʰ/  

/m/, /n/, /ṇ/, /ñ/, /ṅ/

/f/, /v/, /ś/, /ṣ/, /s/, /h/

/r/

/l/, /ḷ/

/c/, /cʰ/,/ j/, /jʰ/

/f/は英語えいごなどの借用しゃくようのみにあらわれる。また、/pʰ/、/bʰ/、/tʰ/、/dʰ/、/ṭʰ/、/ḍʰ/、/kʰ/、/ɡʰ/、/cʰ/、/jʰ/のおびおんと/ś/、/ṣ/は、サンスクリットその借用しゃくようあらわれる。みなみカルナータカのはな言葉ことばでは、おびおんわりにおん使用しようされる[2]

連声れんじょう

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カンナダ発音はつおん表記ひょうきにおいては、連声れんじょうばれる現象げんしょうきる。連声れんじょうとは、かたりかたり、またはかたり接辞せつじなどが連続れんぞくする場合ばあいの、発音はつおんとその表記ひょうき変化へんかのことである。連声れんじょうはインドしょ言語げんごられる現象げんしょうである[3]

形態けいたいろんてき特徴とくちょう

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カンナダふくめたドラヴィダでは、連声れんじょう規則きそくもとづき、形態素けいたいそ順次じゅんじ付加ふかされてかたり形成けいせいされるため、かたり形成けいせいてんると膠着こうちゃくてき性格せいかくつよ[4]

カンナダ接尾せつびつ。  

  • 動詞どうしかたちは、述語じゅつごとして主語しゅご人称にんしょうせいすう一致いっちして活用かつようする定型ていけい動詞どうしと、分詞ぶんしなどの定型ていけい動詞どうしけられる。

定型ていけい動詞どうし場合ばあい語幹ごかんうしろに使役しえきのマーカー、時制じせいのマーカー、人称にんしょうのマーカー、かずのマーカーがつく[6]。また、カンナダでは、否定ひていがた独自どくじ活用かつようつ。この場合ばあい通常つうじょう語幹ごかんにつく時制じせいマーカーがつかず、語幹ごかん直接ちょくせつ人称にんしょうのマーカーがつく[7]。たとえば、bārenuは「る」という動詞どうし一人称いちにんしょう単数たんすうのマーカーが直接ちょくせつついたかたちであり、「わたしない、なかった、ないであろう」という意味いみあらわ[8]

述語じゅつごにならない定型ていけい動詞どうしには、動詞どうしてき分詞ぶんし(連用れんよう分詞ぶんし)と連体れんたい分詞ぶんしがあり、そのうち動詞どうしてき分詞ぶんしには「~しながら」「~してから」といった意味いみくわえる接尾せつびがつく[9]

  • そのほか、名詞めいし動詞どうし形容詞けいようしにつき、様々さまざま意味いみ付加ふかした名詞めいしをつくる派生はせい接尾せつびがある。 れい:-i 「をひと」   kōpa「いかり」+ -i →kōpi「いかりをひと[10]

重複じゅうふく

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カンナダには反響はんきょう(エコーワード、反響はんきょう複合語ふくごうごともいう)という現象げんしょうがあり、これを重複じゅうふく範疇はんちゅうふくめるかんがえもある。

反響はんきょうかたり形成けいせいほうのひとつである。みなみアジアのしょ言語げんご中心ちゅうしんひろられる現象げんしょうであり、訳語やくご定義ていぎ一般いっぱん言語げんごがくにおいて確定かくていしていない。インドのしょ言語げんご場合ばあい、もとのかたり語頭ごとう音節おんせつの(C)V全体ぜんたい、もしくは(C)を特定とくてい形態素けいたいそえるか、母音ぼいん置換ちかんおこなうのが一般いっぱんてきである。南部なんぶドラヴィダ諸語しょごでは、この反響はんきょう現象げんしょうはかなり生産せいさんてきで、代替だいたい形態素けいたいそ一定いっていである。

意味いみとしては、総称そうしょうてき意味いみ上位じょうい概念がいねん確定かくていせい揶揄やゆ意味いみてき堕落だらく(俸給ほうきゅう賄賂わいろ、のような)をあらわ[11]

カンナダれい

hola「野原のはら」→ hola-gila「野原のはらかどこか」 -gilaをくわえ、確定かくていせいあらわしている[11]

統語とうごろんてき特徴とくちょう

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基本きほん語順ごじゅんSOVである[12]助動詞じょどうしにあたるものは動詞どうしうしろに[13]おけ[14]所有しょゆうしゃ所有しょゆうされる名詞めいしまえ[15]形容詞けいようし形容けいようする名詞めいしまえ[16]

文法ぶんぽう現象げんしょう

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受動態じゅどうたい

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行為こういしゃ主格しゅかく行為こういしゃかくあらわ[17]動詞どうしてき分詞ぶんし補助ほじょ動詞どうしくわえたふくあい動詞どうし使つかって表現ひょうげんする[18]。または、行為こういしゃ表現ひょうげんせず、行為こういしゃ対格たいかくあらわし、ふくあい動詞どうし使つかって表現ひょうげんする[17]

テンス、アスペクト

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テンス(時制じせい)やアスペクト(そう)は接尾せつび表現ひょうげんされる[19]

ちょく説法せっぽう命令めいれいほう希求ききゅうほう可能かのうほうがある[20]

表現ひょうげん

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Namaskāra. 「おはよう/こんにちは/こんばんは/さようなら」(おもにヒンドゥー教徒きょうとに/一般いっぱんてき)

Namaskāragaḷu. 「おはようございます/こんにちは/こんばんは/さようなら」(おもにヒンドゥー教徒きょうとに/一般いっぱんてき)

Salām. 「おはよう/おはようございます/こんにちは/こんばんは/さようなら」(イスラム教徒きょうとに)

Sat srī akāl. 「おはよう/おはようございます/こんにちは/こんばんは/さようなら」(シク教徒きょうとに)

Hēgiddīri? 「ご機嫌きげんいかがですか」

Ārāma iddēne./Chennāgiddēne. 「元気げんきです」

Dhannyawādagaḷu. 「ありがとうございます」

以上いじょう基本きほんてきなあいさつ表現ひょうげんである[21]

 
カンナダ文字もじ

おもに、古代こだいインドのブラーフミー文字もじから字体じたい変遷へんせんしてできたカンナダ文字もじ使用しようされる。曲線きょくせんおお字形じけい特徴とくちょうである。歴史れきしてきひがしテルグ文字もじおな変化へんかをたどってきた文字もじであるために、テルグ文字もじ字母じぼかたちている。


日本にっぽんにおけるカンナダ研究けんきゅう

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長年ながねん、カンナダかんする研究けんきゅうしょ教材きょうざいは、日本にっぽん出版しゅっぱんされていなかったが、インド宗教しゅうきょう研究けんきゅうしゃ高島たかしまあつし言語げんご学者がくしゃ内田うちだ紀彦のりひこ、インドじん研究けんきゅうしゃのバンドー・ビマジ・ラージャプローヒトらによる『カンナダ日本語にほんご辞典じてん』が2016ねん三省堂さんせいどうより発刊はっかんされた[22]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b Lewis et al. (2015).
  2. ^ a b 亀井かめいへん(1988:1339)。
  3. ^ 高島たかしま へん(2016:921)。
  4. ^ 亀井かめいへん(1989:1343)。
  5. ^ 高島たかしま へん(2016:922)。
  6. ^ 高島たかしま へん(2016:927)。
  7. ^ 高島たかしま へん(2016:928)。
  8. ^ 亀井かめいら(1989:1345)。
  9. ^ 高島たかしま へん(2016:933-934)。
  10. ^ 高島たかしま へん(2016:938)。
  11. ^ a b 亀井かめいら(1996:1084-1085)。
  12. ^ Dryer (2013b).
  13. ^ Sridhar (1990:230–237).
  14. ^ Dryer (2013d).
  15. ^ Sridhar (1990:132).
  16. ^ Dryer (2013c).
  17. ^ a b いえほん へん(1998:119)。
  18. ^ 高島たかしま へん(2016:935-937)。
  19. ^ Dryer (2013a).
  20. ^ 亀井かめいへん(1989:1344)。
  21. ^ 石川いしかわ石川いしかわ(1998:1)。
  22. ^ カンナダ日本語にほんご辞典じてんhttps://dictionary.sanseido-publ.co.jp/dict/ssd12323 

参考さんこう文献ぶんけん

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日本語にほんご:

  • いえ本太もとぶとろう へん『カンナダ研修けんしゅうテキスト1』東京外国語大学とうきょうがいこくごだいがく、1998ねん
  • 石川いしかわ淳子じゅんこ石川いしかわひろし『カンナダ研修けんしゅうテキスト3』東京外国語大学とうきょうがいこくごだいがく、1998ねん
  • 「カンナダ亀井かめいたかし河野こうの六郎ろくろう千野ちの栄一えいいち へん言語げんごがくだい辞典じてん だい1かん 世界せかい言語げんごへん(うえ)』三省堂さんせいどう、1988ねんISBN 4-385-15213-6
  • 「ドラヴィダ語族ごぞく亀井かめいたかし河野こうの六郎ろくろう千野ちの栄一えいいち へん言語げんごがくだい辞典じてん だい2かん 世界せかい言語げんごへん(なか)』三省堂さんせいどう、1989ねんISBN 4-385-15216-0
  • 亀井かめいたかし河野こうの六郎ろくろう千野ちの栄一えいいち へん言語げんごがくだい辞典じてん だい6かん 術語じゅつごへん三省堂さんせいどう、1996ねんISBN 4-385-15218-7
  • 高島たかしまあつし へん内田うちだ紀彦のりひこ、バンドー・ビマジ・ラージャプローヒト ちょ『カンナダ日本語にほんご辞典じてん三省堂さんせいどう、2016ねん

英語えいご:

英語えいご:

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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