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スライム - Wikipedia

スライムえい: slime)は本来ほんらい、あるしゅ性状せいじょうった物質ぶっしつ(どろどろ、ぬるぬるしたもの)をおおざっぱに言葉ことばであった。したがって粘土ねんどどろなどの無機物むきぶつから、生物せいぶつ分泌ぶんぴつする粘液ねんえきなどの有機物ゆうきぶつ、またそれらのふく合体がったいなどじつ様々さまざまなものがスライムとばれる。

スライム。

ここでは人工じんこうてきつくられ、玩具おもちゃ教材きょうざいとして使つかわれているスライムを紹介しょうかいする。

玩具おもちゃとしてのスライム

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アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは玩具おもちゃメーカーのマテルにより、1976ねんから1979ねんまで出荷しゅっかされ、発売はつばい翌年よくねん1977ねんだけでやく1000まんれた[1]日本にっぽんでは1978ねんツクダオリジナルげん メガハウスだい4事業じぎょう)がマテルしゃせい玩具おもちゃのスライムじょう物質ぶっしつ日本にっぽん発売はつばいし、同年どうねん報告ほうこくによれば小学生しょうがくせい中心ちゅうしんに250まんれた[1]当時とうじツクダオリジナルの責任せきにんしゃだった和久井わくいたけしによると、ニューヨークのトイショーでて「インスピレーション」で販売はんばいめたという[2]国内こくない業者ぎょうしゃけのうちかいでの反応はんのうはよくなかったが、発表はっぴょうかい報道ほうどうやテレビ番組ばんぐみ金曜きんよう10!うわさのチャンネル!!」で使つかわれたことで人気にんきがついた[2]原料げんりょうだい部分ぶぶんみずであるため、日本にっぽんでのだいブームにはツクダが製造せいぞう大量たいりょうみず必要ひつようとしたことで、水道局すいどうきょくからクレームがたという逸話いつわもある[1]和久井わくいたけしは、製造せいぞうには化粧けしょうひん製造せいぞうよう機器きき必要ひつようなために大阪おおさかのコルマという化粧けしょうひんメーカーに委託いたくしたが、ブームによりコルマで使用しようするみず不足ふそくし、スライム専用せんよう水道すいどうかん増設ぞうせつしたとべている[2]

この「スライム」はちいさなポリバケツをした容器ようきおさめられた、緑色みどりいろはん固形こけい物体ぶったいで、にべとつかない程度ていど適度てきど粘性ねんせいつめたく湿しめった感触かんしょくがある。さわってあそぶためだけの玩具おもちゃであったが、それまでにない新鮮しんせん感覚かんかくをもたらしたためだいヒットし、のち様々さまざま類似るいじ商品しょうひんまれた。

そもそもはだい世界せかい大戦たいせんときにゴムの産地さんち日本にっぽんぐん占拠せんきょされ、ゴム不足ふそくとなったアメリカで、人工じんこうてきにゴムをつくろうとしてまれたものであった。[よう出典しゅってん]また、アメリカで樹脂じゅしから化粧けしょうひん製造せいぞうしようとした過程かていつくられたとのせつもある[1]

スライムの自作じさく教材きょうざいとしての普及ふきゅう

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ポリビニルアルコールとホウすなつくるスライムの発明はつめい普及ふきゅう

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スライムを教材きょうざいとしてはじめて自作じさくして紹介しょうかいしたのは、1985ねん東京とうきょう開催かいさいされた、だい8かい科学かがく教育きょういく国際こくさい会議かいぎ国際こくさい化学かがく教育きょういく学会がっかいがあったとき、マイアミ大学だいがくの A.M.Sarquis が発表はっぴょうしたものとされる[3]。A.M.Sarquisは、「高分子こうぶんしやスライムがみずなかいこと」をどもたちにおしえるために利用りようしていた[3]

そのつくかたをすぐに追試ついしした大槻おおつきいさむ[4][5]は、材料ざいりょうとして使つかわれていたポバール溶解ようかいがうまくいかなかったが、鈴木すずききよしりゅう[6][5]洗濯せんたくのり使つかうことを助言じょげんして、容易よういつくれるようになった[5]。また、食紅しょくべにいろけることは宮城みやぎけんだい女子じょし高等こうとう学校がっこう化学かがくクラブの生徒せいとつけたもので、1986ねん8がつ日本にっぽん学会がっかい東北とうほく支部しぶ主催しゅさいの「化学かがくへの招待しょうたい」で紹介しょうかいされた[5]。これらのつくかたどう時期じき極地きょくち方式ほうしき研究けんきゅうかいにも紹介しょうかいされた[5]

大槻おおつきいさむ科学かがく教育きょういく研究けんきゅう協議きょうぎかいきょうきょう)の「やさしくて本質ほんしつてき理科りか実験じっけん'86」で「宮城みやぎけんだい二女じじょだか大槻おおつきいさむ」のでスライムのつくかた発表はっぴょうし、その内容ないようはさらに1987ねん11月の神奈川かながわけん教育きょういく研究けんきゅう集会しゅうかい理科りか分科ぶんかかいで、細谷ほそや善郎よしろう[7][5]の「スライムをつくってあそぼう」という資料しりょう発表はっぴょうされ、理科りか教育きょういく現場げんばひろられるようになった[5]

さらに仮説かせつ実験じっけん授業じゅぎょう研究けんきゅうかい由良ゆら文隆ふみたか[8][3]細谷ほそや善郎よしろう発表はっぴょう紹介しょうかいするかたちで1988ねん3がつの『たのしい授業じゅぎょう』(仮説かせつしゃ誌上しじょうに「たのしくできるスライムづくり」を掲載けいさいし、その仮説かせつ実験じっけん授業じゅぎょう研究けんきゅうかいなかでも学校がっこう年齢ねんれいわず「たのしいものづくり」として今日きょうまで定着ていちゃくすることとなった[5]

PVAを使つかったスライムのつくかた

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ポリビニルアルコール (PVA) は合成ごうせいのり洗濯せんたくのり主成分しゅせいぶんであり、ちょくくさりじょう高分子こうぶんしである。これがホウすなかいして架橋かきょう結合けつごうするため、ゲルする。代表だいひょうてきつくかた以下いかとおり。

  1. ホウすなの4%水溶液すいようえきつくる。ホウすな薬局やっきょくなどで消毒しょうどくやくとして粉末ふんまつ入手にゅうしゅできる。20℃のみずたいする溶解ようかいは4.7g/100g。
  2. 主成分しゅせいぶんがPVAの洗濯せんたくのり通常つうじょう、PVAの10%水溶液すいようえき)とみずを2:3の割合わりあいぜ、PVAの4%水溶液すいようえきつくる。このとき、冷水れいすいではなく熱湯ねっとう使つかうとつぎ反応はんのうがうまくいきやすい。
  3. 2を撹拌かくはんしながら、1の水溶液すいようえきすこしずつぜる(容積ようせき10:1程度ていど)。
  4. につかなくなるまでよくこねる。

澱粉でんぷんつくるスライムのつくかた

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澱粉でんぷん片栗粉かたくりこやコーンスターチなど)にみず適量てきりょう澱粉でんぷん:みず=3:2程度ていどくわえると、液体えきたいのようにえてちからくわわると固化こかする性質せいしつダイラタンシー)をもった、スライムじょう物質ぶっしつができる。これはウーブレック (oobleck) とばれ、液体えきたい固体こたい性質せいしつちがいやニュートン流体りゅうたいについて説明せつめいする理科りか教材きょうざいとして使つかわれている。

この名前なまえは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく作家さっかドクター・スース童話どうわふしぎなウーベタベタ英語えいごばん』(1949ねん)に登場とうじょうする、てんからってきたどろどろの物体ぶったいにちなんでけられた。

このスライムや、木工もっこうようボンド(酢酸さくさんビニル樹脂じゅしエマルジョンけい接着せっちゃくざい)などに澱粉でんぷん少量しょうりょうしおくわえてつくられたものはグラーチ (glurch; glue+starch) ともばれ、やはり教材きょうざい玩具おもちゃとしてつくられる。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d 串間くしまつとむ少年しょうねんブーム 昭和しょうわレトロの流行りゅうこうもの』晶文社しょうぶんしゃ、2003ねん、339-340ぺーじISBN 978-4-7949-6561-5 
  2. ^ a b c 和久井わくいたけしロングインタビュー だい2かい」『月刊げっかんトイジャーナル』2007ねん6がつごう東京とうきょう玩具おもちゃ人形にんぎょう協同きょうどう組合くみあい、p.72
  3. ^ a b c 由良ゆら文隆ふみたか「スライムの出典しゅってん」『たのしい授業じゅぎょうだい66ごう仮説かせつしゃ、1988ねん、121ぺーじ 
  4. ^ 当時とうじ宮城みやぎ県立けんりつ高校こうこう教師きょうし
  5. ^ a b c d e f g h 由良ゆら文隆ふみたか「スライムの出典しゅってん」『たのしい授業じゅぎょうだい66ごう仮説かせつしゃ、1988ねん、122ぺーじ 
  6. ^ 当時とうじ宮城教育大学みやぎきょういくだいがく
  7. ^ 当時とうじ湘南台しょうなんだい中学校ちゅうがっこう教諭きょうゆ
  8. ^ 当時とうじ神奈川かながわけん川崎かわさき田島たじま中学校ちゅうがっこう教諭きょうゆ

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 盛口もりぐち じょう 『いきいき化学かがく 明日あしたひらゆめ実験じっけん新生しんせい出版しゅっぱん、1994ねん
  • 由良ゆら文隆ふみたか「スライムの出典しゅってん」『たのしい授業じゅぎょうだい66ごう仮説かせつしゃ、1988ねん、121-122ぺーじ 
  • E.Z. Casassa; A.M. Sarquis; C.H. Van Dyke (1986-01-01). “The gelation of polyvinyl alcohol with borax: A novel class participation experiment involving the preparation and properties of a "slime"”. Journal of Chemical Education (American Chemical Society) 63 (1): 57. 

関連かんれん項目こうもく

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