スライム (英 えい : slime )は本来 ほんらい 、ある種 しゅ の性状 せいじょう を持 も った物質 ぶっしつ (どろどろ、ぬるぬるしたもの)を大 おお ざっぱに指 さ す言葉 ことば であった。従 したが って粘土 ねんど や泥 どろ などの無機物 むきぶつ から、生物 せいぶつ の分泌 ぶんぴつ する粘液 ねんえき などの有機物 ゆうきぶつ 、またそれらの複 ふく 合体 がったい など実 じつ に様々 さまざま なものがスライムと呼 よ ばれる。
スライム。
ここでは人工 じんこう 的 てき に作 つく られ、玩具 おもちゃ や教材 きょうざい として使 つか われているスライムを紹介 しょうかい する。
アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく では玩具 おもちゃ メーカーのマテル により、1976年 ねん から1979年 ねん まで出荷 しゅっか され、発売 はつばい 翌年 よくねん の1977年 ねん だけで約 やく 1000万 まん 個 こ が売 う れた[1] 。日本 にっぽん では1978年 ねん 、ツクダオリジナル (現 げん メガハウス 第 だい 4事業 じぎょう 部 ぶ )がマテル社 しゃ 製 せい 玩具 おもちゃ のスライム状 じょう の物質 ぶっしつ を日本 にっぽん で発売 はつばい し、同年 どうねん の報告 ほうこく によれば小学生 しょうがくせい を中心 ちゅうしん に250万 まん 個 こ が売 う れた[1] 。当時 とうじ ツクダオリジナルの責任 せきにん 者 しゃ だった和久井 わくい 威 たけし によると、ニューヨーク のトイショーで見 み て「インスピレーション」で販売 はんばい を決 き めたという[2] 。国内 こくない 業者 ぎょうしゃ 向 む けの内 うち 見 み 会 かい での反応 はんのう はよくなかったが、発表 はっぴょう 会 かい の報道 ほうどう やテレビ番組 ばんぐみ 「金曜 きんよう 10時 じ !うわさのチャンネル!! 」で使 つか われたことで人気 にんき に火 ひ がついた[2] 。原料 げんりょう の大 だい 部分 ぶぶん が水 みず であるため、日本 にっぽん での大 だい ブーム時 じ にはツクダが製造 せいぞう に大量 たいりょう の水 みず を必要 ひつよう としたことで、水道局 すいどうきょく からクレームが来 き たという逸話 いつわ もある[1] 。和久井 わくい 威 たけし は、製造 せいぞう には化粧 けしょう 品 ひん 製造 せいぞう 用 よう の機器 きき が必要 ひつよう なために大阪 おおさか のコルマという化粧 けしょう 品 ひん メーカーに委託 いたく したが、ブームによりコルマで使用 しよう する水 みず が不足 ふそく し、スライム専用 せんよう の水道 すいどう 管 かん を増設 ぞうせつ したと述 の べている[2] 。
この「スライム」は小 ちい さなポリバケツを模 も した容器 ようき に収 おさ められた、緑色 みどりいろ の半 はん 固形 こけい の物体 ぶったい で、手 て にべとつかない程度 ていど の適度 てきど な粘性 ねんせい と冷 つめ たく湿 しめ った感触 かんしょく がある。触 さわ って遊 あそ ぶためだけの玩具 おもちゃ であったが、それまでにない新鮮 しんせん な感覚 かんかく をもたらしたため大 だい ヒットし、後 のち に様々 さまざま な類似 るいじ 商品 しょうひん も生 う まれた。
そもそもは第 だい 二 に 次 じ 世界 せかい 大戦 たいせん の時 とき にゴムの産地 さんち を日本 にっぽん 軍 ぐん に占拠 せんきょ され、ゴム不足 ふそく となったアメリカで、人工 じんこう 的 てき にゴムを作 つく ろうとして生 う まれた物 もの であった。 [要 よう 出典 しゅってん ] また、アメリカで樹脂 じゅし から化粧 けしょう 品 ひん を製造 せいぞう しようとした過程 かてい で作 つく られたとの説 せつ もある[1] 。
スライムの自作 じさく 教材 きょうざい としての普及 ふきゅう
編集 へんしゅう
ポリビニルアルコールとホウ砂 すな で作 つく るスライムの発明 はつめい と普及 ふきゅう
編集 へんしゅう
スライムを教材 きょうざい として初 はじ めて自作 じさく して紹介 しょうかい したのは、1985年 ねん に東京 とうきょう で開催 かいさい された、第 だい 8回 かい 科学 かがく 教育 きょういく 国際 こくさい 会議 かいぎ で国際 こくさい 化学 かがく 教育 きょういく 学会 がっかい があったとき、マイアミ大学 だいがく の A.M.Sarquis が発表 はっぴょう したものとされる[3] 。A.M.Sarquisは、「高分子 こうぶんし やスライムが水 みず と仲 なか の良 よ いこと」を子 こ どもたちに教 おし えるために利用 りよう していた[3] 。
その作 つく り方 かた をすぐに追試 ついし した大槻 おおつき 勇 いさむ [4] [5] は、材料 ざいりょう として使 つか われていたポバール の溶解 ようかい がうまくいかなかったが、鈴木 すずき 清 きよし 龍 りゅう [6] [5] が洗濯 せんたく 糊 のり を使 つか うことを助言 じょげん して、容易 ようい に作 つく れるようになった[5] 。また、食紅 しょくべに で色 いろ を付 つ けることは宮城 みやぎ 県 けん 第 だい 二 に 女子 じょし 高等 こうとう 学校 がっこう の化学 かがく クラブの生徒 せいと が見 み つけたもので、1986年 ねん 8月 がつ の日本 にっぽん 化 か 学会 がっかい 東北 とうほく 支部 しぶ 主催 しゅさい の「化学 かがく への招待 しょうたい 」で紹介 しょうかい された[5] 。これらの作 つく り方 かた は同 どう 時期 じき に極地 きょくち 方式 ほうしき 研究 けんきゅう 会 かい にも紹介 しょうかい された[5] 。
大槻 おおつき 勇 いさむ は科学 かがく 教育 きょういく 研究 けんきゅう 協議 きょうぎ 会 かい (科 か 教 きょう 協 きょう )の「やさしくて本質 ほんしつ 的 てき な理科 りか 実験 じっけん '86」で「宮城 みやぎ 県 けん 第 だい 二女 じじょ 高 だか 大槻 おおつき 勇 いさむ 」の名 な でスライムの作 つく り方 かた を発表 はっぴょう し、その内容 ないよう はさらに1987年 ねん 11月の神奈川 かながわ 県 けん 教育 きょういく 研究 けんきゅう 集会 しゅうかい の理科 りか 分科 ぶんか 会 かい で、細谷 ほそや 善郎 よしろう [7] [5] の「スライムを作 つく って遊 あそ ぼう」という資料 しりょう で発表 はっぴょう され、理科 りか 教育 きょういく の現場 げんば で広 ひろ く知 し られるようになった[5] 。
さらに仮説 かせつ 実験 じっけん 授業 じゅぎょう 研究 けんきゅう 会 かい で由良 ゆら 文隆 ふみたか [8] [3] が細谷 ほそや 善郎 よしろう の発表 はっぴょう を紹介 しょうかい する形 かたち で1988年 ねん 3月 がつ の『たのしい授業 じゅぎょう 』(仮説 かせつ 社 しゃ )誌上 しじょう に「たのしくできるスライム作 づく り」を掲載 けいさい し、その後 ご 、仮説 かせつ 実験 じっけん 授業 じゅぎょう 研究 けんきゅう 会 かい の中 なか でも学校 がっこう ・年齢 ねんれい を問 と わず「たのしいものづくり」として今日 きょう まで定着 ていちゃく することとなった[5] 。
ポリビニルアルコール (PVA) は合成 ごうせい 糊 のり や洗濯 せんたく 糊 のり の主成分 しゅせいぶん であり、直 ちょく 鎖 くさり 状 じょう の高分子 こうぶんし である。これがホウ砂 すな を介 かい して架橋 かきょう 結合 けつごう するため、ゲル化 か する。代表 だいひょう 的 てき な作 つく り方 かた は以下 いか の通 とお り。
ホウ砂 すな の4%水溶液 すいようえき を作 つく る。ホウ砂 すな は薬局 やっきょく などで眼 め の消毒 しょうどく 薬 やく として粉末 ふんまつ で入手 にゅうしゅ できる。20℃の水 みず に対 たい する溶解 ようかい 度 ど は4.7g/100g。
主成分 しゅせいぶん がPVAの洗濯 せんたく 糊 のり (通常 つうじょう 、PVAの10%水溶液 すいようえき )と水 みず を2:3の割合 わりあい で混 ま ぜ、PVAの4%水溶液 すいようえき を作 つく る。このとき、冷水 れいすい ではなく熱湯 ねっとう を使 つか うと次 つぎ の反応 はんのう がうまくいきやすい。
2を撹拌 かくはん しながら、1の水溶液 すいようえき を少 すこ しずつ混 ま ぜる(容積 ようせき 比 ひ 10:1程度 ていど )。
手 て につかなくなるまでよくこねる。
澱粉 でんぷん (片栗粉 かたくりこ やコーンスターチなど)に水 みず を適量 てきりょう (澱粉 でんぷん :水 みず =3:2程度 ていど )加 くわ えると、液体 えきたい のように見 み えて力 ちから が加 くわ わると固化 こか する性質 せいしつ (ダイラタンシー )をもった、スライム状 じょう の物質 ぶっしつ ができる。これはウーブレック (oobleck) と呼 よ ばれ、液体 えきたい と固体 こたい の性質 せいしつ の違 ちが いや非 ひ ニュートン流体 りゅうたい について説明 せつめい する理科 りか 教材 きょうざい として使 つか われている。
この名前 なまえ は、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく の作家 さっか ドクター・スース の童話 どうわ 『ふしぎなウーベタベタ (英語 えいご 版 ばん ) 』(1949年 ねん )に登場 とうじょう する、天 てん から降 ふ ってきたどろどろの物体 ぶったい にちなんで付 つ けられた。
このスライムや、木工 もっこう 用 よう ボンド(酢酸 さくさん ビニル樹脂 じゅし エマルジョン系 けい 接着 せっちゃく 剤 ざい )などに澱粉 でんぷん と少量 しょうりょう の塩 しお を加 くわ えて作 つく られたものはグラーチ (glurch; glue+starch) とも呼 よ ばれ、やはり教材 きょうざい や玩具 おもちゃ として作 つく られる。
^ a b c d 串間 くしま 努 つとむ 『少年 しょうねん ブーム 昭和 しょうわ レトロの流行 りゅうこう もの』晶文社 しょうぶんしゃ 、2003年 ねん 、339-340頁 ぺーじ 。ISBN 978-4-7949-6561-5 。
^ a b c 「和久井 わくい 威 たけし 氏 し ロングインタビュー 第 だい 2回 かい 」『月刊 げっかん トイジャーナル』2007年 ねん 6月 がつ 号 ごう 、東京 とうきょう 玩具 おもちゃ 人形 にんぎょう 協同 きょうどう 組合 くみあい 、p.72
^ a b c 由良 ゆら 文隆 ふみたか 「スライムの出典 しゅってん 」『たのしい授業 じゅぎょう 』第 だい 66号 ごう 、仮説 かせつ 社 しゃ 、1988年 ねん 、121頁 ぺーじ 。
^ 当時 とうじ は宮城 みやぎ 県立 けんりつ 高校 こうこう の教師 きょうし 。
^ a b c d e f g h 由良 ゆら 文隆 ふみたか 「スライムの出典 しゅってん 」『たのしい授業 じゅぎょう 』第 だい 66号 ごう 、仮説 かせつ 社 しゃ 、1988年 ねん 、122頁 ぺーじ 。
^ 当時 とうじ は宮城教育大学 みやぎきょういくだいがく 。
^ 当時 とうじ は湘南台 しょうなんだい 中学校 ちゅうがっこう 教諭 きょうゆ 。
^ 当時 とうじ は神奈川 かながわ 県 けん 川崎 かわさき 市 し 田島 たじま 中学校 ちゅうがっこう 教諭 きょうゆ 。
盛口 もりぐち 襄 じょう 『いきいき化学 かがく 明日 あした を拓 ひら く夢 ゆめ 実験 じっけん 』 新生 しんせい 出版 しゅっぱん 、1994年 ねん
由良 ゆら 文隆 ふみたか 「スライムの出典 しゅってん 」『たのしい授業 じゅぎょう 』第 だい 66号 ごう 、仮説 かせつ 社 しゃ 、1988年 ねん 、121-122頁 ぺーじ 。
E.Z. Casassa; A.M. Sarquis; C.H. Van Dyke (1986-01-01). “The gelation of polyvinyl alcohol with borax: A novel class participation experiment involving the preparation and properties of a "slime"”. Journal of Chemical Education (American Chemical Society) 63 (1): 57.
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