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チェスキー・クルムロフ - Wikipedia
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チェスキー・クルムロフ

チェスキー・クルムロフ （チェコ語ご: Český Krumlov [ˈtʃɛskiː ˈkrumlof] ( 音声おんせいファイル)、ドイツ語ご: Krumau, Krummau [ˈkʁʊma͜u] ( 音声おんせいファイル), またドイツ語ご: Krumau (Krummau) an der Moldau, Böhmisch Krumau (Krummau)、ラテン語らてんご: Crumlaw）は、チェコ・南みなみボヘミア州しゅうの小ちいさな都市とし。クルムロフ城じょうを含ふくむ優すぐれた建築けんちく物ぶつと歴史れきし的てき文化財ぶんかざいで知しられる。クルムロフは「川かわの湾曲わんきょく部ぶの湿地しっち帯たい」を意味いみし、ドイツ語ごのKrumme Aueをその語源ごげんとする。チェスキーは、チェコ語ごで「ボヘミアの」という意味いみであり、これによりモラヴィアにあるモラヴスキー・クルムロフ（Moravský Krumlov）と区別くべつされる。1920年ねん以前いぜんはクルマウ・アン・デア・モルダウという名称めいしょうで知しられ、古ふるい地図ちずには単たんにクルマウ（Krumau）と記載きさいされていることが多おおい[1]。

チェスキー・クルムロフ
チェスキー・クルムロフの市旗 チェスキー・クルムロフの市章
旗はた 章あきら
位置いち
チェスキー・クルムロフの位置の位置図
チェスキー・クルムロフの位置いち
位置いち
チェスキー・クルムロフの位置（南ボヘミア州内）
チェスキー・クルムロフ
チェスキー・クルムロフ (南みなみボヘミア州しゅう)
チェスキー・クルムロフの位置（チェコ共和国内）
チェスキー・クルムロフ
チェスキー・クルムロフ (チェコ共和きょうわ国こく)
チェスキー・クルムロフの位置（ヨーロッパ内）
チェスキー・クルムロフ
チェスキー・クルムロフ (ヨーロッパ)
地図
座標ざひょう : 北緯ほくい48度ど48分ふん39.27秒びょう 東経とうけい14度ど18分ふん54.75秒びょう / 北緯ほくい48.8109083度ど 東経とうけい14.3152083度ど / 48.8109083; 14.3152083
町長ちょうちょう Luboš Jedlička
地理ちり
面積めんせき  
  域いき 22.16 km2
人口じんこう
人口じんこう （2007年ねん現在げんざい）
  域いき 14,056人にん
    人口じんこう密度みつど   634人にん/km2
公式こうしきウェブサイト : www.ckrumlov.info

歴史れきし

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チェスキー・クルムロフ城じょう内うち劇場げきじょうの舞台ぶたい

神かみ聖きよしロろーマ帝国まていこく領りょう邦くにボヘミア王国おうこくの時代じだい

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町まちと城しろの建設けんせつは、ボヘミアの重要じゅうような通商つうしょう路ろであるモルダウ川がわ（ヴルタヴァ川がわ）沿ぞいに13世紀せいき後半こうはんに始はじまった。

1302年ねん、クルマウ（チェスキー・クルムロフ）の町まちと城しろは、ボヘミアの有力ゆうりょく貴族きぞくであったローゼンベルク（ロジェンベルク）家かのものとなる[2]。14世紀せいき以降いこう、町まちでは手工業しゅこうぎょうと交易こうえきが盛さかんになった。16世紀せいき、特とくに領主りょうしゅウィルヘルム・フォン・ローゼンベルクの時代じだいには、ルネサンス様式ようしきの建物たてものが数多かずおおく建築けんちくされ、町まちは色彩しきさい鮮あざやかな華麗かれいなるルネサンス都市としへと変貌へんぼうを遂とげた。

しかし、町まちの華はなやかな装よそおいとは裏腹うらはらに、ローゼンベルク家かの財政ざいせいは次第しだいに破綻はたんを来きたすようになり、ついに借金しゃっきんの抵当ていとうに入いれられたクルマウ（チェスキー・クルムロフ）は、1601年ねん、神聖しんせいローマ皇帝こうていルドルフ2世せいの手てに渡わたる[3]。その後ご、1622年ねん、神聖しんせいローマ皇帝こうていフェルディナント2世せいは、当時とうじ、神かみ聖きよしロろーマ帝国まていこく全土ぜんどを巻まき込こんでいた三さん十じゅう年ねん戦争せんそうにおいて、財政ざいせい面めんを含ふくむ貢献こうけんのあったエッゲンベルク家かにこの町まちを与あたえた。この時代じだいに、町まちにはバロック様式ようしきの建築けんちく物ぶつが加くわわった。

1719年ねん、エッゲンベルク家かは断絶だんぜつし、有力ゆうりょく貴族きぞくのシュヴァルツェンベルク家かが町まちと城しろを相続そうぞくする。領主りょうしゅヨーゼフ・アダム・シュヴァルツェンベルクの時代じだいに、城しろはバロック様式ようしきに改築かいちくされ、後のちに有名ゆうめいとなる城内きうち劇場げきじょう（バロック劇場げきじょう）が完成かんせいした。

地理ちり的てきな理由りゆうもあって、この街まちには昔むかしからドイツ語ごが存在そんざいした。ハプスブルク家かがボヘミア王国おうこくを支配しはいした後のち、町まちの中なかではチェコ語ごよりもドイツ語ごの方ほうが重要じゅうよう視しされるようになった。しかし、民族みんぞく的てきな関係かんけいが問題もんだいになるのは、19世紀せいきのナショナリズムの時代じだいになってからである。

オーストリア＝ハンガリーからチェコスロバキアへ

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19世紀せいきに入はいり、シュヴァルツェンベルク家かは、新あらたに英国えいこく風ふうのネオ・ゴシック様式ようしきに改築かいちくされたフルボカー城じょうに居城きょじょうを移うつした。また、産業さんぎょう革命かくめい期きにあって、この町まちは、主要しゅような鉄道てつどう網もうから外はずれ、大だい規模きぼな工業こうぎょう化かもみられなかった。町まちは緩ゆるやかな衰退すいたいへと向むかう。

1867年ねん、クルマウ（チェスキー・クルムロフ）は、オーストリア＝ハンガリー帝国ていこくの一部いちぶとなった。次第しだいに、民族みんぞく主義しゅぎが、帝国ていこく全土ぜんどを揺ゆるがすようになり、クルマウ（チェスキー・クルムロフ）もその例外れいがいではなかった。神聖しんせいロろーマ帝国まていこくの時代じだいから続つづくドイツ系けい住民じゅうみんとチェコ系けい住民じゅうみんの共存きょうぞんの時代じだいはこうして幕まくを閉とじた。 学校がっこう教育きょういくや図書館としょかんなどが、次第しだいにドイツ系けいとチェコ系けいに分離ぶんりするようになった。1910年ねん時点じてんにおける町まちの人口じんこうは8,662人にんであったが、そのうち、ドイツ系けいが7,367人にん、チェコ系けいが1,295人にんであった。

第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんの敗戦はいせんに伴ともない、オーストリア＝ハンガリー帝国ていこくが崩壊ほうかいすると、町まちはチェコスロバキア領りょうとなり[4]、1920年ねん4月がつ、チェコスロバキア内務省ないむしょう令れいにより、町まちの公式こうしき名称めいしょうもクルマウからチェスキー・クルムロフとなった[5]。

ドイツ系けい住民じゅうみんの追放ついほう

編集へんしゅう

戦せん間あいだ期きのチェコスロバキアでは、民族みんぞく自決じけつが認みとめられず、少数しょうすう民族みんぞくの立場たちばにおかれたドイツ系けい住民じゅうみん（約やく300万まん人にん）の政治せいじ的てき不満ふまんが高たかまっていたが、1938年ねん、ナチス・ドイツは、これに乗じょうじ、チェコスロバキア領内りょうないのドイツ系けい住民じゅうみんの権利けんりが侵害しんがいされているとして、いわゆるズデーテン地方ちほうの併合へいごうを強行きょうこうした。これにより、チェスキー・クルムロフを含ふくむボヘミアのドイツ語どいつご圏けん地域ちいきはドイツ領りょうとなった[6]。チェスキークルムロフにはナチスドイツの軍ぐんの基地きちがおかれドイツ人じん兵士へいしたちによって多おおくの建造けんぞう物ぶつが破壊はかいされた。

1945年ねん、ドイツは第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんに敗北はいぼくし、チェスキー・クルムロフは、独立どくりつを回復かいふくしたチェコスロバキアに復帰ふっきした。しかし、ドイツ系けい住民じゅうみんについては、エドヴァルド・ベネシュ大統領だいとうりょうの指令しれい（ベネシュ布告ふこく）により、チェコスロバキアの市民しみん権けんと私有しゆう財産ざいさんを剥奪はくだつ、没収ぼっしゅうすることが決定けっていされた（無慈悲むじひ政策せいさく）[7]。

チェスキー・クルムロフの住民じゅうみんの多おおくはドイツ系けいであったため、ベネシュ布告ふこくにより、多おおくの住民じゅうみんは市民しみん権けんと私有しゆう財産ざいさんを剥奪はくだつ、没収ぼっしゅうされ、故郷こきょうから追放ついほうする処分しょぶんが下くだされた[8]。

荒廃こうはいの時代じだい

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1945年ねん以降いこう、チェスキー・クルムロフは荒廃こうはい状態じょうたいにあった。町まちの伝統でんとう的てきな住民じゅうみんの多おおくを追放ついほうしたことは、チェスキー・クルムロフのコミュニティーにとって大おおきな打撃だげきとなっていた。町まちの住居じゅうきょの多おおくは、その主あるじを失うしない、一時いちじ、無人むじんとなった。1948年ねんの共産きょうさん主義しゅぎ化かにより、城郭じょうかくなどの歴史れきし的てき建造けんぞう物ぶつが「封建ほうけん時代じだいの遺構いこう」とみなされ、価値かちを否定ひていされたことも、その荒廃こうはいに拍車はくしゃをかけた。ようやく歴史れきし的てき建造けんぞう物ぶつが徐々じょじょに補修ほしゅうされるようになったのは、プラハの春はるが訪おとずれた1960年代ねんだい後半こうはん以降いこうのことであった。

なお、1945年ねん以降いこう、観光かんこう地ち化かが急速きゅうそくに進すすんだ1990年代ねんだい前半ぜんはんまでのあいだ、チェスキー・クルムロフの中心ちゅうしん部ぶは、ロマの人々ひとびとが多おおく居住きょじゅうする地区ちくとなっていた。近年きんねんはチェコ人じんとの同化どうかも進すすんでいるが、現在げんざいも激はげしい差別さべつが根強ねづよく残のこり、民族みんぞく浄化じょうかのためのロマへの強制きょうせい断種だんしゅ政策せいさくが続つづいている[9][10]。チェスキー・クルムロフにおいて、ロマはチェコ人じんに次つぐ第だい二にのエスニック・グループとなっている[11]。

歴史れきし的てき景観けいかんの再さい評価ひょうか

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1989年ねんのビロード革命かくめい以降いこう、町まちの景観けいかんの歴史れきし的てき価値かちが再さい認識にんしきされるに至いたり、建造けんぞう物ぶつの修復しゅうふくが急速きゅうそくに進すすめられ、町まちはかつての美うつくしさを取とり戻もどした。1992年ねんにはユネスコの世界せかい遺産いさん（文化ぶんか遺産いさん）に登録とうろくされた。現在げんざいはドイツ・オーストリアを主おもとする観光かんこう客きゃくに人気にんきのある観光かんこう地ちとなっている。

現在げんざいも、クルムロフ城じょうの内部ないぶの修復しゅうふくなどが進すすめられている。1990年ねん以降いこう、毎年まいとし6月がつには、中世ちゅうせいの領主りょうしゅであるロジェンベルク（ローゼンベルク）家かの紋章もんしょうにちなんだ「五ご弁べんのバラの祭典さいてん」が開催かいさいされるようになった。

2002年ねん8月がつ、町まちはヴルタヴァ川がわの大だい氾濫はんらんに見舞みまわれた。

見みどころ

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  チェスキー・クルムロフ
歴史れきし地区ちく
（チェコ）
 
英名えいめい Historic Centre of Český Krumlov
仏ふつ名めい Centre historique de Český Krumlov
登録とうろく区分くぶん 文化ぶんか遺産いさん
登録とうろく基準きじゅん (4)
登録とうろく年ねん 1992年ねん
公式こうしきサイト 世界せかい遺産いさんセンター（英語えいご）
使用しよう方法ほうほう・表示ひょうじ
  • チェスキー・クルムロフ城じょう　-　小ちいさな町まちであるクルムロフの大おおきさに不ふ釣つり合あいな大おおきさの城しろである。城内きうちには1766年ねん完成かんせいのバロック様式ようしきの劇場げきじょうが保存ほぞんされている。機械きかい仕掛しかけの舞台ぶたい装置そうちを備そなえる。こういった宮廷きゅうてい劇場げきじょうが今いまも存在そんざいする[12]。建設けんせつ当時とうじ、劇場げきじょうは年としに三さん回かいだけ利用りようされた（年としに二に度どのみ、バロック音楽おんがくが一般いっぱん公開こうかいされロウソク灯あかりの中なかでオペラが演えんじられた）。
  • かつて町まちに住すんでいたことのある、20世紀せいき初頭しょとうの表現ひょうげん主義しゅぎの画家がかエゴン・シーレにちなんだ美術館びじゅつかんがある。[13]

ボヘミアでも有数ゆうすうの古ふるい修道院しゅうどういん、ズラター・コルナ修道院しゅうどういんがクルムロフから10キロの地点ちてんにある。クルムロフから30キロ離はなれた場所ばしょには12世紀せいきに建たてられたフルボカー城じょう（後世こうせいにウィンザー城じょうを真似まねて再建さいけんされた）がある。

クルムロフはチェコ最大さいだいの国立こくりつ公園こうえんシュマヴァ国立こくりつ公園こうえんに近ちかい。シュマヴァ山地さんちはオーストリア・ドイツ国境こっきょう沿ぞいにある。

 
チェスキー・クルムロフのパノラマ

文化ぶんか

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チェスキー・クルムロフは、重要じゅうような文化ぶんかの中心ちゅうしん地ちである。いくつものフェスティヴァルやイベントが毎年まいとし開催かいさいされる。最もっともよく知しられているのは、6月の夏至げしの週末しゅうまつに開催かいさいされる五ご弁べんのバラの祭典さいてん（the Five-Petalled Rose Festival)[14]である。この際さいには、下町したまちは歩行ほこう者しゃ天国てんごくになり、職人しょくにん、芸術げいじゅつ家か、音楽家おんがくか、地元じもとの人々ひとびとが中世ちゅうせいの扮装ふんそうをして、中世ちゅうせいの町まちに模様替もようがえした街頭がいとうへ繰くり出だす。ジョスト、フェンシング、伝統でんとうある民俗みんぞく舞踊ぶようなどの多種たしゅな催もよおしがされ、城しろ、地元じもとの公園こうえん、河岸かわぎしなどで民俗みんぞく劇げきが上演じょうえんされる。フェスティヴァルの最後さいごを締しめくくるのは、城しろで打うち上あげられる花火はなび大会たいかいである。

1989年ねんのビロード革命かくめい以後いご、一帯いったいに80軒けんを超こえる飲食いんしょく店てんができた。多おおくのレストランは川かわ沿ぞいと城しろ周辺しゅうへんに集中しゅうちゅうしている。

登録とうろく基準きじゅん

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この世界せかい遺産いさんは世界せかい遺産いさん登録とうろく基準きじゅんのうち、以下いかの条件じょうけんを満みたし、登録とうろくされた（以下いかの基準きじゅんは世界せかい遺産いさんセンター公表こうひょうの登録とうろく基準きじゅんからの翻訳ほんやく、引用いんようである）。

  • (4) 人類じんるいの歴史れきし上じょう重要じゅうような時代じだいを例証れいしょうする建築けんちく様式ようしき、建築けんちく物ぶつ群ぐん、技術ぎじゅつの集積しゅうせきまたは景観けいかんの優すぐれた例れい。

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 増田ますだ幸弘ゆきひろ『黒くろいチェコ』彩いろどり流りゅう社しゃ、2015年ねん。ISBN 978-4779170409。 
  • ペトル・パヴェレッツ (Petr Pavelec) 著ちょ、朝比奈あさひなインドロヴァー 雅子まさこ 訳やく『チェスキー クルムロフ—中央ちゅうおうヨーロッパの魅力みりょく的てきな町まち』チェスケー ブデェヨヴィツェ、2003年ねん。 

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ チェスキー・クルムロフの歴史れきしが紹介しょうかいされる際さいには、現在げんざい、この町まちが属ぞくするチェコ共和きょうわ国こくの立場たちばが反映はんえいされるのが通常つうじょうである。そのため、この町まちの歴史れきし的てき景観けいかんが形成けいせいされたほとんどの期間きかんにおいて、町まちが「クルマウ」と呼よばれていたことや、当時とうじの多数たすう派はであったドイツ系けい住民じゅうみんが一斉いっせいに故郷こきょうを追おわれたため、町まちの人口じんこう構成こうせいが相当そうとう変化へんかしていることについては、言及げんきゅうしないことが通常つうじょうとなっている。また、この町まちが1945年ねん以降いこう「荒廃こうはいの危機きき」に直面ちょくめんしたことについても、もっぱらナチス・ドイツや共産きょうさん主義しゅぎが責任せきにんを負おうべきこととされ、ドイツ系けい住民じゅうみんの追放ついほうが影響えいきょうが語かたられることはまずない（たとえば、NHKの世界せかい遺産いさん関連かんれんの番組ばんぐみのサイトは、クルムロフ城じょうが荒廃こうはいした原因げんいんとして「ナチスによる町まちの占領せんりょう」と「共産党きょうさんとう支配しはいのもとでの伝統でんとう文化ぶんかの否定ひてい」を挙あげ[1]、ドイツ系けい住民じゅうみんの存在そんざいと追放ついほうについては特とくに指摘してきすることなく「ドイツの占領せんりょうと第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの終結しゅうけつを経へて、一時期いちじき無人むじんとなった」[2]と解説かいせつしている。）現実げんじつには、ドイツ系けい住民じゅうみんを追放ついほうし、旧来きゅうらいのコミュニティーの大半たいはんを失うしなったことは、町まちの荒廃こうはいに決定的けっていてきな影響えいきょうを及およぼした。さらに、オーストリアの画家がかエゴン・シーレが、すでに20世紀せいき初頭しょとうの段階だんかいにおいて、この町まちを「死しの街まち」と形容けいようしていたことも無視むしできない。すなわち、産業さんぎょう革命かくめいの波なみに取とり残のこされ、城主じょうしゅからも見放みはなされていたこの町まちは、民族みんぞく主義しゅぎ、ナチズム、共産きょうさん主義しゅぎの到来とうらいのはるか以前いぜんから、打うち捨すてられる運命うんめいにあったのである（それゆえ歴史れきし的てき景観けいかんがそのまま残のこるのであるが）。いずれにせよ、町まちの歴史れきしにおけるドイツ的てき要素ようそに言及げんきゅうせず、受難じゅなんの歴史れきしをナチズムと共産きょうさん主義しゅぎに帰き責せめする説明せつめいは、史実しじつのすべてを語かたっていない点てんで正確せいかくでない。
  2. ^ 『地球ちきゅうの歩あるき方かた 2017〜18 チェコ／ポーランド／スロヴァキア』ダイヤモンド・ビッグ社しゃ、2017年ねん、162頁ぺーじ。ISBN 978-4-478-06043-8。 
  3. ^ ルドルフ2世せいは、町まちに自みずからの婚こん外子そとこであるユリウスを住すまわせた。なお、ユリウスには精神せいしん障害しょうがいがあったといわれている。詳細しょうさいにつき[3]を参照さんしょう。
  4. ^ 帝国ていこくが崩壊ほうかいすると、1918年ねん10月がつ、プラハではチェコスロバキアが独立どくりつを宣言せんげんする一方いっぽう、ウィーンでは、オーストリア共和きょうわ国こく（当初とうしょの名称めいしょうはドイツ・オーストリア共和きょうわ国こく）建国けんこくのための会合かいごうが開ひらかれた。チェコスロバキアはボヘミア全土ぜんどを当然とうぜんに自国じこくの国土こくどと考かんがえる一方いっぽうで、ウィーンの計画けいかくによれば、クルマウはオーバーエスターライヒ州しゅうに含ふくまれるはずであった。クルマウのドイツ系けい住民じゅうみんは、オーストリアへの帰属きぞくを宣言せんげんするが、翌月よくげつにはチェコスロバキア軍ぐんが町まちを占領せんりょうするに至いたった。その後ご、1919年ねん9月がつのサン＝ジェルマン条約じょうやくにより、クルマウを含ふくむボヘミアのドイツ語どいつご圏けん地域ちいきがチェコスロバキア領りょうとなることが確定かくていした。
  5. ^ 同どう時期じきに、町まちの通とおりの名称めいしょうの多おおくがドイツ語ご名めいからチェコ語ご名めいに改称かいしょうされた。通とおりの名称めいしょうの変更へんこうの詳細しょうさいにつき[4]を参照さんしょう。
  6. ^ いわゆる「ズデーテン地方ちほう」は、ズデーテン山地さんちの周辺しゅうへんの地方ちほうにとどまらず、ドイツ系けい住民じゅうみんの多おおいボヘミアの山岳さんがく地帯ちたいを指さす言葉ことばとして用もちいられてきたが、チェスキー・クルムロフは、広義こうぎの意味いみに用もちいられる場合ばあいにおいても、それに含ふくまれないとされてきた。しかし、1938年ねんのズデーテン地方ちほうの併合へいごうの際さいに、アドルフ・ヒトラーは、ブルノ（ブリュン）など、言語げんご島とうを構成こうせいしている地域ちいきを除のぞき、チェコスロバキアのドイツ語どいつご圏けんのほぼすべてをドイツへ併合へいごうした。
  7. ^ チェスキー・クルムロフ以外いがいに、大だい規模きぼなドイツ系けい住民じゅうみんの追放ついほうが行おこなわれた都市としとしては、カルロヴィ・ヴァリ、ブルノなどがある。チェコスロバキア政府せいふが300万まん人にんを超こえる領内りょうないのドイツ系けい住民じゅうみんを追放ついほうすることを決定けっていした理由りゆうとして、彼かれらの多おおくがドイツ併合へいごうを支持しじしたこと、その存在そんざいが再ふたたびチェコスロバキアの安全あんぜん保障ほしょう上じょうの脅威きょういになりかねないこと、ポツダム協定きょうていが東ひがしヨーロッパ地域ちいきのドイツ系けい住民じゅうみんの移送いそう（ドイツ人じん追放ついほう）を容認ようにんしたこと、などが挙あげられる。もっとも、ベネシュは戦時せんじ中ちゅうの在ざいロンドン亡命ぼうめい政権せいけんの時代じだいから、戦後せんごのドイツ系けい住民じゅうみんの追放ついほうを計画けいかくしていた。ドイツ系けい住民じゅうみん追放ついほうの国内こくない法的ほうてき根拠こんきょとなった1945年ねんのベネシュ布告ふこくは、現在げんざいも法的ほうてきに有効ゆうこうであるとされ、チェコ政府せいふはこれを見直みなおすことを拒絶きょぜつしているが、チェコにおいても、ベネシュに対たいする評価ひょうかは必かならずしも肯定こうてい的てきなものではない。2004年ねん3月がつ25日にち、チェコ上院じょういんは、ベネシュ元もと大統領だいとうりょうを顕彰けんしょうする法案ほうあんを圧倒的あっとうてき多数たすうで否決ひけつしている。
  8. ^ ドイツへの移送いそうに先立さきだち、チェスキー・クルムロフを含ふくむチェコスロバキア全土ぜんどで、ドイツ系けい住民じゅうみんに対たいする暴力ぼうりょく、即時そくじ退去たいきょ命令めいれい、強制きょうせい収容しゅうよう等とうの非ひ人道的じんどうてきな措置そちがとられたとの証言しょうげんがある。チェスキー・クルムロフにおける、暴力ぼうりょく、強制きょうせい収容しゅうよう等とうの証言しょうげんにつき、詳くわしくは [5]を参照さんしょう。なお、ベネシュはドイツ系けい住民じゅうみんの追放ついほうに伴ともなう暴力ぼうりょくにつき、これを罪つみに問とわないとする大統領だいとうりょう令れいを発はっしている。もっとも、チェコ人じんによるドイツ人じん一般いっぱん（チェコスロバキアのドイツ系けい住民じゅうみんを含ふくむ）に対たいする暴力ぼうりょく的てきな対応たいおうの背景はいけいには、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうのナチス・ドイツの支配しはいが過酷かこくを極きわめたことがある（リディツェとレジャーキにおける虐殺ぎゃくさつなど）。また、住民じゅうみんの強制きょうせい追放ついほう、被ひ差別さべつ民族みんぞくの強制きょうせい収容しゅうようなどは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうのナチス・ドイツによる被ひ支配しはい地域ちいきでは日常にちじょう的てきな光景こうけいであったことも影響えいきょうした。この点てんにつき、1990年ねん、ハヴェル大統領だいとうりょうは、演説えんぜつにおいて、6年間ねんかんに及およぶナチスの支配しはいにより、私わたしたちも「病原菌びょうげんきん」に感染かんせんした、と表現ひょうげんしている。
  9. ^ http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/6409699.stm
  10. ^ http://www.ceskenoviny.cz/news/zpravy/czech-romany-woman-allegedly-sterilised-against-her-will-in-2007/388914
  11. ^ チェコスロバキア政府せいふは、ドイツ系けい住民じゅうみんを250万まん人にん以上いじょう追放ついほうしたことにより、ボヘミアの旧きゅうドイツ語どいつご圏けん地域ちいきの人口じんこうが希薄きはく化かしていたことに対たいし、地政学ちせいがく的てき観点かんてんから人口じんこうの回復かいふくを図はかろうとしていた。その一環いっかんとして、この地域ちいきにロマの定住ていじゅうを奨励しょうれいする政策せいさくが採とられ、チェスキー・クロムロフにもロマの人々ひとびとが多数たすう定住ていじゅうした（1947年ねん時点じてんで約やく150人にん、1990年ねん時点じてんで約やく1300人にん）。多おおくの場合ばあい、移住いじゅう者しゃには、無人むじんとなっていた旧きゅうドイツ系けい住民じゅうみんの住居じゅうきょが提供ていきょうされた。なお、もともとボヘミアには多数たすうのロマが生活せいかつしていたが、その大半たいはんがナチス・ドイツの民族みんぞく政策せいさくの犠牲ぎせいとなり、戦後せんご、ボヘミアに定住ていじゅうしたロマは、主おもにスロバキア東部とうぶ方面ほうめんからの移住いじゅう者しゃである。1958年ねんには、チェコスロバキア全土ぜんどのロマの人々ひとびとを対象たいしょうに、馬車ばしゃによる移動いどう生活せいかつを禁止きんしする法律ほうりつが制定せいていされ、以後いご、定住ていじゅうの強制きょうせいが行おこなわれた。1945年ねん以降いこうのチェスキー・クルムロフへのロマの定住ていじゅうと現状げんじょうについては [6]を参照さんしょう。
  12. ^ その他たにスウェーデンのドロットニングホルム宮殿きゅうでんとグリプスホルム城じょうにある。
  13. ^ シーレの絵画かいがには「クルマウの風景ふうけい(Krumauer Landschaft)」などクルムロフの情景じょうけいを描えがいたものが多数たすうあるが、本ほん美術館びじゅつかんは、シーレがクルムロフの景観けいかんを描えがいた絵画かいがは所蔵しょぞうしていない。
  14. ^ 1968年ねんに第だい1回かいの祭典さいてんを開催かいさい、その後ご中断ちゅうだんを経へて、1990年ねんより毎年まいとし開催かいさいされている

外部がいぶリンク

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