ルクレティア

ルクレティア（ラテン語らてんご: Lucretia, 紀元前きげんぜん509年ねん没ぼつ）は、紀元前きげんぜん6世紀せいきに古代こだいローマを王政おうせいローマから共和きょうわ政せいローマへと移行いこうさせる契機けいきになったとされる女性じょせい。イタリア語ごではルクレツィアとなる。他たの共和きょうわ政せい初期しょきの人物じんぶつ同様どうよう、実在じつざいには疑問ぎもんがある。

ロレンツォ・ロットの1533年ねんの絵画かいが『ルクレティアに扮ふんした女性じょせいの肖像しょうぞう』。ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵しょぞう。

レンブラント・ファン・レインの絵画かいが『ルクレティア』。ナショナル・ギャラリー・オブ・アート所蔵しょぞう。

概要がいよう

伝承でんしょうによればルクレティアはスプリウス・ルクレティウス・トリキピティヌスの娘むすめで、ルキウス・タルクィニウス・コッラティヌスの貞淑ていしゅくな妻つまであった。

紀元前きげんぜん509年ねん、ローマはルトゥリ人じんのアルデアを攻撃こうげき中ちゅうで、ルクレティアの夫おっとコッラティヌスもこの陣中じんちゅうに滞在たいざいしていた。この陣中じんちゅうでルキウス・タルクィニウス・スペルブス王おうの王子おうじセクストゥス・タルクィニウスらとコッラティヌスは妻つまを比くらべあった結果けっか、陣営じんえいを抜ぬけ出だし実際じっさいに妻つまたちのもとへ行いきその貞淑ていしゅくを確たしかめることになった。王家おうけの妻つまたちが宴会えんかいに興きょうじているのに対たいしてルクレティアだけは夫おっとの留守るすを守まもり、貞節ていせつを守まもっていた。この結果けっかを確認かくにんしたのち一いち行ぎょうは陣中じんちゅうに戻もどっていった。

このときルクレティアの姿すがたを見みたセクストゥスは彼女かのじょに横恋慕よこれんぼし、数日すうじつ後ご今度こんどは一人ひとりでルクレティアのもとを訪おとずれた。夜よるになり、セクストゥスはルクレティアを強姦ごうかんしようとし部屋へやに侵入しんにゅうした。剣けんで脅おどしたがルクレティアは死しをおそれず屈くっしなかった。しかし殺害さつがい後ごに裸はだかの奴隷どれいの死体したいとともに置おき姦通かんつうの最中さいちゅうに殺ころされたかのようにするとの脅おどしには、その恥辱ちじょくに耐たえることはできなかった。

セクストゥスの去さった後のち、ルクレティアはローマの父ちちと陣営じんえいの夫おっとを呼よび出だした。父ちちはプブリウス・ウァレリウスを、夫おっとはルキウス・ユニウス・ブルトゥスを伴ともなって駆かけつけた。ルクレティアはそろった4人にんの男おとこの前まえですべてを告白こくはくし、男おとこたちに復讐ふくしゅうを誓ちかわせると短剣たんけんで自みずからの命いのちを絶たった。

この事件じけんが契機けいきとなり復讐ふくしゅうを誓ちかった男おとこたちは民衆みんしゅうに呼よび掛かけ、王家おうけはローマから追放ついほうされた。その後ご成立せいりつした共和きょうわ政せいローマの最初さいしょの執政しっせい官かんにはブルトゥスとコッラティヌスが、その後ごの補充ほじゅう執政しっせい官かんとしてウァレリウスとルクレティウスが就任しゅうにんしている。

ルクレティアの物語ものがたりは多おおくの文学ぶんがく・美術びじゅつ作品さくひんの主題しゅだいとなっている。

参考さんこう文献ぶんけん

• ティトゥス・リウィウス『ローマ建国けんこく史し』岩波いわなみ文庫ぶんこ

関連かんれん項目こうもく

• ルクレティアの物語ものがたり
• ルークリース凌辱りょうじょく - ウィリアム・シェイクスピアの物語ものがたり詩し。
• 「おお、永遠えいえんの神かみ々よ」 - ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル作曲さっきょくのカンタータ。
• ルクレティアの自害じがい (デューラー) - アルブレヒト・デューラーによる絵画かいが
• タルクィニウスとルクレティア - ティツィアーノ・ヴェチェッリオによる絵画かいが