加薬かやく

加薬かやく（かやく）とは、うどんや炊たき込こみご飯はんなどに入いれる具ぐ（肉にくや野菜やさいなど）。主おもに関西かんさいで「主しゅ材料ざいりょうに加くわえる」という意味合いみあいで加か役やくと表記ひょうきすることもある。

「かやく」とひらがな表記ひょうきされるのが一般いっぱん的てきである。「かやくご飯はん」、「カップ麺めんのかやく」など。

一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん 全国ぜんこく公正こうせい取引とりひき協議きょうぎ会かい連合れんごう会かいが定さだめる「即席そくせきめんの表示ひょうじに関かんする公正こうせい競争きょうそう規約きやく及および施行しこう規則きそく」では「かやく」とひらがな表記ひょうきされている。

日本にっぽんではシーズニング(英えい:Seasoning)と呼よばれる商品しょうひんの一部いちぶに同様どうようのタイプがあり、それらとは明確めいかくな区別くべつはできない。

由来ゆらい

加薬かやくとは加薬かやく味あじ、つまり薬味やくみを加くわえるという言葉ことばから来きている。そのため、薬味やくみの由来ゆらいについても説明せつめいする。

薬味やくみとはもともと漢方かんぽう医学いがく（漢方かんぽう）の用語ようごである。中国ちゅうごく最古さいこの薬くすり書しょと言いわれている『神かみ農みのり本草ほんぞう経けい』には「薬くすりに酸さん鹹甘苦く辛からしの五味ごみあり」（鹹とは塩味しおあじのこと）と記しるされており、『芸文げいぶん志こころざし』にも「処方しょほうは……薬味やくみの滋養じようを借かり……」と記しるされているなど、既すでに1世紀せいきには薬味やくみという言葉ことばが使つかわれていたとされている。その後ご、宋そう代だいになって、医療いりょうが庶民しょみんの日常にちじょう生活せいかつに密着みっちゃくして登場とうじょうするようになると、一般いっぱん家庭かていで調達ちょうたつ可能かのうな材料ざいりょうはわざわざ薬屋くすりやから購入こうにゅうする必要ひつようはないため、そのような材料ざいりょうは家庭かていで調達ちょうたつや配合はいごうを行おこなうことが一般いっぱん化かされるようになった。

宋そう医学いがくが日本にっぽんに伝つたわると、日本にっぽんの一般いっぱん家庭かていにある、漢方かんぽうの材料ざいりょうとなるもの（煎せんじるときに薬味やくみとして加くわえることが可能かのうなもの）として生姜しょうがが加薬かやく味あじの代表だいひょうとなった。そのため、生姜しょうがのことを指さして、加か薬味やくみ、加薬かやく（加薬かやく味あじの略語りゃくご）、薬味やくみ、辛味からみ（前述ぜんじゅつの通とおり五味ごみの一ひとつ）などと呼よばれるようになったとされている。実際じっさい、室町むろまち時代ときよ後期こうきの『運うん歩ふ色しょく葉は集しゅう』（1548年ねん）には加薬かやくという言葉ことばが登場とうじょうしている。

江戸えど時代じだいには、他たの香辛料こうしんりょうである葱ねぎや山椒さんしょうも加薬かやくと呼よばれることとなる。江戸えど時代じだいの料理りょうり書しょ『素人しろうと包丁ぼうちょう』には、「鯛たい飯めし」の項こうに「加か益えき（カヤク）はおろし大根だいこん、ネギ、のり、とうがらし」と記しるされており、この頃ころには香辛料こうしんりょう一般いっぱんで加薬かやくと呼よばれていたことがわかる。

同おなじく江戸えど時代じだい、加薬かやく飯めしが登場とうじょうする頃ころには、加薬かやくが具ぐ全般ぜんぱんを指さす言葉ことばとして使つかわれるようになった。