宮中きゅうちゅう

宮中きゅうちゅう（きゅうちゅう）とは、宮殿きゅうでんの中なかを指さす語かたりである。とりわけ皇居こうきょのことを指さすことが多おおい。昔むかし、中国ちゅうごくの王城おうじょうの門もんが九ここのつ重かさなっていたところから、宮中きゅうちゅうは「九重ここのえ」と表現ひょうげんされることがある。また神社じんじゃの中なかや境内けいだいを指さすこともある。宮殿きゅうでんの中なかの意味いみでつかわれる場合ばあいは禁中きんちゅうや禁裏きんりと同義どうぎである。

概要がいよう

主おもに府中ふちゅう（国政こくせい）の対義語たいぎごとして問題もんだいになった。本来ほんらい立憲りっけん君主くんしゅ制せいの下したでは宮中きゅうちゅうと府中ふちゅうは分離ぶんりされ、国政こくせいについての責任せきにん機関きかんが確立かくりつしている必要ひつようがあるが、明治めいじ前期ぜんきの太政官だじょうかん制せいのもとでは天皇てんのう親政しんせい下した太政大臣だじょうだいじん・左大臣さだいじん・右大臣うだいじん・参議さんぎ・卿きょうなどの国政こくせいの職位しょくいが天皇てんのうの家臣かしん(朝臣あそん)としての色彩しきさいが強つよく、しかも従来じゅうらいからの天皇てんのうの家臣かしんである公家くげ出身しゅっしん者しゃがその職しょくにつくことが多おおかったため宮廷きゅうてい事務じむと国政こくせい事務じむの区別くべつが明確めいかくになっていなかった。

明治めいじ憲法けんぽう制定せいていで立憲りっけん体制たいせいが整ととのえられた後のちも同どう憲法けんぽうに定さだめられた天皇てんのうの権限けんげんが大おおきかったため、宮中きゅうちゅう内ないの天皇てんのう側近そっきん者しゃは政治せいじに影響えいきょうを及およぼしやすかった。これを宮廷きゅうていグループ、あるいは宮中きゅうちゅうグループと呼よんだ。元老げんろう、内大臣ないだいじん、宮内みやうち大臣だいじん、侍従じじゅう長ちょうやその周辺しゅうへんを指さし、昭和しょうわ期きには西園寺さいおんじ公望きんもちを旧きゅう宮廷きゅうていグループ、近衛このえ文麿ふみまろや木戸きど幸一こういちらを新しん宮廷きゅうていグループと呼よんでいた。

参考さんこう文献ぶんけん

• 増田ますだ知子ともこ「宮中きゅうちゅう」（『日本にっぽん史し大だい事典じてん 2』（平凡社へいぼんしゃ、1993年ねん（平成へいせい5年ねん）） ISBN 978-4-582-13102-4）
• 藤原ふじわら彰あきら「宮中きゅうちゅうグループ」（『日本にっぽん歴史れきし大だい事典じてん 1』（小学館しょうがくかん、2000年ねん（平成へいせい12年ねん）） ISBN 978-4-095-23001-6）
• 茶谷ちゃたに誠一せいいち『昭和しょうわ戦せん前期ぜんきの宮中きゅうちゅう勢力せいりょくと政治せいじ』（吉川弘文館よしかわこうぶんかん、2009年ねん（平成へいせい21年ねん）） ISBN 978-4-642-03792-1）