帰かえり雲くも城じょう

帰かえり雲くも城じょう（かえりくもじょう、かえりぐもじょう、きうんじょう）は、岐阜ぎふ県けん大野おおの郡ぐん白川しらかわ村むら三方崩山さんぼうくずれやまの下した、保木脇ほきわき（ほきわき）にあった日本にっぽんの城しろ。内うちヶ島とう氏しの居城きょじょうであったが、1586年ねん（天正てんしょう13年ねん）の天正てんしょう地震じしんによる山崩やまくずれで城しろと城下町じょうかまちが全すべて埋没まいぼつした。

logo 帰かえり雲くも城じょう （岐阜ぎふ県けん）
推定すいてい地ちに建たつ帰かえり雲くも城じょう趾の碑いしぶみ。背後はいごに帰かえり雲山くもやまの山やま体たい崩壊ほうかい跡あとが見みえる。2010年ねん（平成へいせい22年ねん）撮影さつえい。
城郭じょうかく構造こうぞう	山城やましろ
天守てんしゅ構造こうぞう	不明ふめい
築城ちくじょう主ぬし	内うちヶ島しま為氏ためうじ
築城ちくじょう年ねん	1462年ねん頃ころ
主おもな城主じょうしゅ	内うちヶ島とう氏し理り
廃はい城じょう年ねん	天正てんしょう13年ねん（1586年ねん）11月11日にち
遺構いこう	埋没まいぼつ
指定してい文化財ぶんかざい	未み指定してい
再建さいけん造物ぞうぶつ	碑いしぶみ
位置いち	北緯ほくい36度ど12分ふん36.2秒びょう 東経とうけい136度ど53分ふん34.2秒びょう（推定すいてい地ち）
地図ちず	帰かえり雲くも城じょう

略りゃく史し

帰かえり雲くも城じょうは当地とうちの武将ぶしょうである内うちヶ島とう氏しの居城きょじょうであった。寛ひろし正ただし年間ねんかん（1461年ねん - 1466年ねん）の1462年ねん頃ころ、内うちヶ島しま為氏ためうじにより築城ちくじょうされた。

天正てんしょう13年ねん11月29日にち（1585年ねん1月がつ18日にち）に天正てんしょう地震じしんが起おき、帰かえり雲山くもやまの崩壊ほうかいで埋没まいぼつ。被害ひがいは埋没まいぼつした家いえ300戸こ以上いじょう､圧死あっし者しゃ500人にん以上いじょうとされる。当日とうじつ城内じょうないで祝宴しゅくえんが行おこなわれており、難なんを逃のがれたのは所用しょようのため不在ふざいだったわずか4人にんと言いわれる。城主じょうしゅの内うちヶ島とう氏し理りら一族いちぞくは全すべて死しに絶たえてしまい、この瞬間しゅんかんをもって内うちヶ島とう氏しは滅亡めつぼうした。

立地りっち

城しろのあった正確せいかくな位置いちは現在げんざいも特定とくていされていない。保木脇ほきわきに帰き雲くも城じょう趾の碑いしぶみが建たっている。この一帯いったいでは過去かこに土砂崩どしゃくずれがあったことは地質ちしつ調査ちょうさで判明はんめいしているが、碑いしぶみの下したに帰き雲くも城じょうが埋うまっていると確認かくにんされているわけではない。

現在げんざいにかけて、幾度いくどとなく埋没まいぼつした城しろを位置いちを特定とくていしようとする試こころみが行おこなわれている。1972年ねん（昭和しょうわ47年ねん）には、郷土きょうど史し家かなどの手てにより「白川しらかわ帰き雲くも城じょう・発掘はっくつ保存ほぞん準備じゅんび委員いいん会かい」が発足ほっそく。近隣きんりんの神岡かみおか鉱山こうざん（三井金属鉱業みついきんぞくこうぎょう）の技術ぎじゅつ支援しえんを得えることも検討けんとうされたが、特定とくていには至いたらなかった。

1993年ねん（平成へいせい5年ねん）に発足ほっそくした「白川郷しらかわごう埋没まいぼつ帰き雲くも城じょう調査ちょうさ会かい」は、江戸えど時代じだいの地誌ちしや古こ地図ちずから帰かえり雲くも川かわ左岸さがんのいずれかにあったと推定すいていしており、2027年ねんに試験しけん的てきな発掘はっくつ調査ちょうさを予定よていしている。

保木脇ほきわき集落しゅうらくは帰かえり雲くも城じょう城下町じょうかまちの名残なごりではなく、庄川しょうがわ水系すいけいでのダム建設けんせつに伴ともなう移転いてん先さきとして昭和しょうわ30年代ねんだい（1955-65年ねん）に形成けいせいされた。庄川しょうがわ近ちかくで採石さいせき場じょうを営いとなむ建設けんせつ会社かいしゃの社長しゃちょうの夢ゆめに帰き雲くも城じょうの武将ぶしょうが現あらわれたとして、帰かえり雲山くもやまの崩壊ほうかい跡あとを望のぞむ地ちに武将ぶしょうを祀まつる観音かんのん像ぞうや神社じんじゃなどを建たて、地元じもと住民じゅうみんも協力きょうりょくして公園こうえん化かした。

貝塚かいづか御座所ござしょ日記にっきの記述きじゅつ

本願寺ほんがんじ門主もんしゅ顕如けんにょの側近そっきんで、当時とうじ大坂おおさかにいた宇野うの主しゅ水みずが記しるした「貝塚かいづか御座所ござしょ日記にっき」（宇野うの主しゅ水みず日記にっき）には、天正てんしょう地震じしんでの各地かくちの被害ひがい情報じょうほうが記しるされているが、帰かえり雲くも城じょうについて以下いかの記述きじゅつがある。

十一月じゅういちがつ廿にじゅう九きゅう日にち夜よる四よん半時はんとき大だい地震じしん、夫おっとヨリ十じゅう余日よじつ不ふ止とめ、折々おりおり地震じしん。〔……中略ちゅうりゃく……〕飛とび州しゅうノ帰き雲くもトモ（ママ）在所ざいしょハ内島うちじまト云うんフ奉公ほうこう衆しゅアル所しょ也。地震じしんニテ山崩やまくずれ、山河さんが多たセカレテ、内島うちじまノ在所ざいしょヘ大だい洪水こうずいハセ入にゅうテ、内島うちじま一類いちるい地下ちかノ人々ひとびとニイタルマテ不ふ残ざん死しタルナリ。他国たこくヘ行くだりタル者しゃ四よん人にんノコリテ泣々在所ざいしょヘ帰きリタル由よし申さる訖。彼かれ在所ざいしょハ悉淵ニナリタルナリ。〔……後略こうりゃく……〕

他た、『越えつ中国ちゅうごく名跡みょうせき志こころざし』という史料しりょうにも同様どうようの記述きじゅつがある。

埋蔵まいぞう金きん伝説でんせつ

内うちヶ島とう氏しの領内りょうないに金山かなやまがあったことから、地震じしんで帰き雲くも城じょうの崩壊ほうかいとともに金かねが地中ちちゅうに埋うまったとされる埋蔵まいぞう金きん伝説でんせつがある。しかし、この埋蔵まいぞう金きん伝説でんせつは古ふるくから白川しらかわ地域ちいきに伝つたわっていたわけではなく、実際じっさいは1970年ねん（昭和しょうわ45年ねん）頃ごろに内うちヶ島とう氏しの末裔まつえいを称しょうした白川しらかわ村むら出身しゅっしんの人物じんぶつが喧伝けんでんした話はなしを、『大阪おおさか日にち日にち新聞しんぶん』などが紙面しめんに掲載けいさいしたところから拡散かくさんしたものであるということが指摘してきされている。

なお、テレビ愛知てれびあいちは帰かえり雲くも城じょうの埋蔵まいぞう金きん伝説でんせつを調査ちょうさ追求ついきゅうした番組ばんぐみ『消きえた戦国せんごくの城しろ 白川郷しらかわごうの埋蔵まいぞう金きんを追おえ!』（2019年ねん12月28日にち）と『消きえた戦国せんごくの城しろ 地下ちか14メートルの指紋しもん』（2022年ねん5月がつ28日にち）を放送ほうそうしている。

関連かんれん書籍しょせき

研究けんきゅう書しょ

• 岐阜ぎふ県けん編集へんしゅう発行はっこう『岐阜ぎふ県けん史し 通史つうし編へん 中世ちゅうせい』(1969年ねん発行はっこう)
• 岐阜ぎふ県けん編集へんしゅう発行はっこう『岐阜ぎふ県けん史し 通史つうし編へん 近世きんせい 上じょう』(1968年ねん発行はっこう)
• 岐阜ぎふ県けん編集へんしゅう発行はっこう『岐阜ぎふ県けん史し 史料しりょう編へん 古代こだい・中世ちゅうせい一いち』(1969年ねん発行はっこう)
• 岐阜ぎふ県けん編集へんしゅう発行はっこう『岐阜ぎふ県けん史し 史料しりょう編へん 古代こだい・中世ちゅうせい四よん』(1973年ねん発行はっこう)
• 荘川しょうかわ村むら『荘川しょうかわ村むら史し 上巻じょうかん』(1975年ねん発行はっこう)
• 森本もりもと一雄かずお『定本ていほん 飛騨ひだの城しろ』郷土きょうど出版しゅっぱん社しゃ、1987年ねん9月がつ15日にち。 
• 白川しらかわ村むら『新編しんぺん 白川しらかわ村むら史し 上巻じょうかん』(1998年ねん発行はっこう)
• 『歴史れきしの足跡あしあとをたどる日本にっぽん遺構いこうの旅たび』- 「なるほど知ち図ずbookまっぷる選書せんしょ」 (昭文社しょうぶんしゃ2007年刊ねんかん。ISBN 9784398143051)
• 加来かく耕三こうぞう『消きえた戦国せんごく武将ぶしょう 帰き雲くも城じょうと内うちヶ嶋しま氏し理り』メディアファクトリー、2011年ねん。ISBN 978-4-8401-4344-8。 

論文ろんぶん

• 安達あだち正雄まさお「白山はくさん大だい地震じしんにより埋没まいぼつした「帰かえり雲くも城じょう」と「木舟きふね城じょう」」『日本にっぽん海域かいいき研究所けんきゅうじょ報告ほうこく』8号ごう、1976年ねん。 
• 安達あだち正雄まさお「白山はくさん大だい地震じしんにより埋没まいぼつした「帰かえり雲くも城じょう」と「木舟きふね城じょう」―第だい2報ほう 両りょう城主じょうしゅの家系かけい図ずの検討けんとう―」『日本海にほんかい学会がっかい誌し』1号ごう、1977年ねん。 
• 安達あだち正雄まさお「白山はくさん大だい地震じしんにより埋没まいぼつした「帰かえり雲くも城じょう」と「木舟きふね城じょう」―第だい3報ほう 内ないヶ島とう系図けいずと石黒いしぐろ氏し系図けいずの研究けんきゅう―」『日本にっぽん海域かいいき研究所けんきゅうじょ報告ほうこく』9号ごう、1977年ねん。 
• 安達あだち正雄まさお「白山はくさん大だい地震じしんにより埋没まいぼつした「帰かえり雲くも城じょう」と「木舟きふね城じょう」―第だい4報ほう 内ないヶ島とう氏しおよび石黒いしぐろ氏しの家臣かしん達たち―」『日本海にほんかい学会がっかい誌し』2号ごう、1978年ねん。 
• 安達あだち正雄まさお「白山はくさん大だい地震じしんにより埋没まいぼつした「帰かえり雲くも城じょう」と「木舟きふね城じょう」―第だい5報ほう 両りょう城主じょうしゅと一向いっこう一揆いっき―」『日本にっぽん海域かいいき研究所けんきゅうじょ報告ほうこく』10号ごう、1978年ねん。 
• 安達あだち正雄まさお「白山はくさん大だい地震じしんにより埋没まいぼつした「帰かえり雲くも城じょう」と「木舟きふね城じょう」―第だい6報ほう 両りょう城主じょうしゅをめぐる地震じしんの被害ひがい、震度しんど分布ぶんぷ、余震よしん等とうについて―」『日本海にほんかい学会がっかい誌し』3号ごう、1979年ねん。 
• 安達あだち正雄まさお「帰かえり雲くも城主じょうしゅ・内うちヶ嶋しま氏しの歴史れきしと家系かけい」『北陸ほくりく都市とし史し学会がっかい会報かいほう』8号ごう、1986年ねん。 
• 安達あだち正雄まさお「飛騨ひだ帰き雲くも城じょうと城主じょうしゅ・内うちヶ嶋しま氏しの史実しじつを探さぐる― 天正てんしょう大だい地震じしんの土石流どせきりゅうで城しろと城下町じょうかまちが埋没まいぼつし、放置ほうちされて四よん百ひゃく二に十じゅう年ねんに当あたり―」『石川いしかわ郷土きょうど史し学会がっかい々誌し』39号ごう、2006年ねん。 
• 安達あだち正雄まさお「五箇山ごかさん文献ぶんけんに秘ひめられた飛騨ひだ・内うちヶ嶋しま氏しの史実しじつについて―五箇山ごかさんと川上かわかみ三さん箇庄の一部いちぶは室町むろまち末期まっき､実じつは内うちヶ嶋しま氏しの領地りょうちだった?―」『石川いしかわ郷土きょうど史し学会がっかい々誌し』40号ごう、2007年ねん。 
• 安達あだち正雄まさお「木舟きふね城じょうを陥没かんぼつさせ帰き雲くも城じょうを埋没まいぼつさせた天てん正大せいだい地震じしんの真相しんそう―天正てんしょう大だい地震じしんは連続れんぞく多発たはつ地震じしんだった―」『石川いしかわ郷土きょうど史し学会がっかい々誌し』42号ごう、2009年ねん。 
• 福井ふくい重治しげはる 著ちょ「飛騨ひだの金かね銀山ぎんざんと山城やましろ」、小菅こすが徹也てつや 編へん『金きむ銀山ぎんざん史しの研究けんきゅう』高志こうし書院しょいん、2000年ねん。 

創作そうさく作品さくひん

• 『変幻へんげん退すさ魔ま夜行やこうカルラ舞まう! 』- 永えい久保くぼ貴一きいち
• 『呪のろいの紙かみ草履ぞうり』 - 和久わぐ峻たかし三さんによる赤あかかぶ検事けんじシリーズの1作さく。
• 『帰かえり天城あまぎの謎なぞ ～TRICK青春せいしゅん版ばん～』 - はやみねかおるによるドラマ『TRICK』の外伝がいでん小説しょうせつ。帰かえり雲くも城じょうをモデルにした「帰かえり天城あまぎ」が登場とうじょう。

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんの城しろ一覧いちらん
• 帰かえり雲山くもやま
• 内うちヶ島とう氏し

外部がいぶリンク

• 埋没まいぼつ城じょう伝説でんせつの館かん - ウェイバックマシン（2019年ねん1月がつ1日にちアーカイブ分ぶん）資料しりょうとしては乱雑らんざつだが、報告ほうこく書しょやき取きとり調査ちょうさ等とうがある。
• 飛騨ひだ・帰かえり雲くも城じょう　大だい地震じしんで陥落かんらく、今いまも埋没まいぼつ　朝日新聞あさひしんぶん
• 新しん・帰かえり雲くも城じょうと内うちヶ嶋しま氏しの謎なぞ
• 幻まぼろしの帰かえり雲くも城じょう（白川しらかわ村むら役場やくば）