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年功序列 - Wikipedia

年功序列ねんこうじょれつ(ねんこうじょれつ)とは、官公庁かんこうちょう企業きぎょうなどにおいて勤続きんぞく年数ねんすう年齢ねんれいなどにおうじて役職やくしょく賃金ちんぎん上昇じょうしょうさせる人事じんじ制度せいど慣習かんしゅうのシステム。新卒しんそつ一括いっかつ採用さいよう終身しゅうしん雇用こよう年功序列ねんこうじょれつ賃金ちんぎん昇進しょうしん制度せいど定年ていねん企業きぎょうない教育きょういく」として、日本にっぽんがた雇用こようシステムのひとつを形成けいせいする[1]

日本にっぽんにおける年齢ねんれいべつ男性だんせい賃金ちんぎんカーブ
だい/なか/しょう企業きぎょうべつ, 20-24さいを100とした賃金ちんぎん指数しすう[1]

アメリカ経営けいえい学者がくしゃであるジェイムズ・アベグレン1958ねん著書ちょしょ日本にっぽん経営けいえい I』において終身しゅうしん雇用こよう企業きぎょうない労働ろうどう組合くみあいとともに「日本にっぽんてき経営けいえい」の特徴とくちょうとして欧米おうべい紹介しょうかいした[2]英語えいごでもNenko Systemなどと表現ひょうげんされ、個人こじん能力のうりょく実績じっせき関係かんけいなく年数ねんすうのみで評価ひょうかする仕組しく一般いっぱん年功序列ねんこうじょれつしょうする。

年功序列ねんこうじょれつ制度せいどは、よわいとともに労働ろうどうしゃ技術ぎじゅつ能力のうりょく蓄積ちくせきされ、最終さいしゅうてきには企業きぎょう成績せいせき反映はんえいされるとする意見いけんもとづいている。

概説がいせつ

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ジェイムズ・アベグレンは欧米おうべい諸国しょこくとしていちはや工業こうぎょう達成たっせいした日本にっぽんにおいて企業きぎょう運営うんえいがどのようになされているか分析ぶんせきすることで、欧米おうべい諸国しょこくでの工業こうぎょうについての課題かだい研究けんきゅう[2]。ジェイムズ・アベグレンは、年功序列ねんこうじょれつ制度せいどを、企業きぎょう従業じゅうぎょういん雇用こよう一生いっしょう保障ほしょうするわりに、労働ろうどう組合くみあい経営けいえいがわたいして調和ちょうわてきスタンスで協力きょうりょくし、会社かいしゃひとつの家族かぞくのように長期ちょうきてき視点してん発展はってんさせていくというむら共同きょうどうたいてき組織そしき文化ぶんかであると分析ぶんせきした[3]

経営けいえいがくにおけるエージェンシー理論りろん説明せつめいでは、わかいときには賃金ちんぎん限界げんかい生産せいさんりょく下回したまわり、高齢こうれいになると限界げんかい生産せいさんりょく上回うわまわる。これは賃金ちんぎん観点かんてんにおいて強制きょうせいてき社内しゃない預金よきんをすることになる。そのため、労働ろうどうしゃはその社内しゃない預金よきん回収かいしゅうするまでは、結果けっかてき長期ちょうき在職ざいしょくいられる。このことを遅延ちえん報酬ほうしゅうdeferred compensation[4]ともう。また、定年ていねんせいとの関係かんけいでは、企業きぎょう高齢こうれい従業じゅうぎょういん定年ていねんせいもうけて強制きょうせいてき退職たいしょくさせるという説明せつめいがされている[5]

年功序列ねんこうじょれつ賃金ちんぎん体系たいけいのもとでは、実働じつどう部隊ぶたいたる若年じゃくねんしゃそうは、管理かんりしゃである年長ねんちょうしゃそうくら賃金ちんぎんおさえられる傾向けいこうにある。若年じゃくねんそうのモチベーション維持いじには、若年じゃくねんしゃもいずれ年功ねんこうによって管理かんりしょく昇進しょうしん賃金ちんぎん上昇じょうしょうする(わかころにはげた成果せいか見合みあ賃金ちんぎんけられなくても、年功ねんこうめばそんもどせる)という確証かくしょうをもてる環境かんきょう必要ひつようであり、終身しゅうしん雇用こよう制度せいど年功序列ねんこうじょれつ制度せいど補強ほきょうする制度せいどとなっている[ちゅう 1]

ジェイムズ・アベグレンの年功序列ねんこうじょれつ制度せいど問題もんだい提起ていき大変たいへん画期的かっきてきなものであった[2]。ただし、日本にっぽん労働ろうどう市場いちばでこのような労働ろうどう待遇たいぐうがみられるのはおもだい企業きぎょう常用じょうよう労働ろうどうしゃかぎられるという指摘してきもある[2]。また、欧米おうべいでもだい企業きぎょうのコアレーバーには類似るいじのシステムがみられる[2]。ただし、労働ろうどう市場いちば内部ないぶ程度ていどはアメリカと日本にっぽんくらべると日本にっぽんのほうがつよいと指摘してきされている[2]欧米おうべいでも、賃金ちんぎんプロファイル(よこじく年齢ねんれいたてじく賃金ちんぎん水準すいじゅんをとったグラフ)がみぎがりである傾向けいこうとくホワイトカラー労働ろうどうしゃについてられるが、ブルーカラー労働ろうどうしゃについては30さいだい以降いこう賃金ちんぎん上昇じょうしょうする割合わりあい日本にっぽんよりよわ[4]

日本にっぽん年功序列ねんこうじょれつ制度せいど戦後せんごになって出来上できあがったシステムである[3]

戦前せんぜん日本にっぽんでは大卒だいそつしゃ比率ひりつ圧倒的あっとうてきすくなく、きゅう帝国ていこく大学だいがく出身しゅっしんしゃだい企業きぎょう入社にゅうしゃしてすうねんひゃくにん規模きぼ部下ぶかつこともめずらしくなく[3]鉱山こうざん会社かいしゃなどでは大卒だいそつ若手わかて技術ぎじゅつしゃが1,000にんもの部下ぶかようしていた事例じれいもある[3]

日本にっぽんでは高度こうど成長せいちょう到来とうらいとともに労働ろうどう市場いちば内部ないぶ進展しんてんした[2]。ピラミッドがた人口じんこう構造こうぞう右肩みぎかたがりの経済けいざい成長せいちょうもとで、企業きぎょうがわ関連かんれん業務ぎょうむをすべて企業きぎょうないおこない、専門せんもんてき労働ろうどうりょく確保かくほして育成いくせいするという経営けいえいシステムを構築こうちくした[6]労働ろうどうしゃがわからも安定あんてい雇用こよう収入しゅうにゅうぞうへの期待きたいから終身しゅうしん雇用こよう年功序列ねんこうじょれつがた賃金ちんぎんれる環境かんきょうにあった[6]

1960年代ねんだい高度こうど経済けいざい成長せいちょう経済けいざい拡大かくだいつづけた。また石油せきゆショック以降いこう安定あんてい成長せいちょう時代じだいである1970年代ねんだい後半こうはんから1980年代ねんだい末期まっき団塊だんかいジュニア世代せだい学齢がくれいたり、数多かずおお若年じゃくねんしゃ賃金ちんぎんひくおさえ、一方いっぽう年配ねんぱいしゃ賃金ちんぎんたかくすることに経済けいざい合理ごうりせいがあったということができる。もっともこの時期じき日本にっぽん企業きぎょう抜擢ばってき人事じんじ完全かんぜん否定ひていしていたわけではけっしてなく、しん優秀ゆうしゅう見込みこんだ幹部かんぶ候補こうほはやくから要職ようしょくてること自体じたいかく企業きぎょうおこなわれていた。

しかし、企業きぎょう将来しょうらい成長せいちょう見込みこんで労働ろうどうりょくかこむのをめ、次第しだい分社ぶんしゃアウトソーシングなどによる経営けいえい効率こうりつはかられるようになった[6]

日本にっぽん経済けいざい団体だんたい連合れんごうかいは2011ねん、「経営けいえい労働ろうどう政策せいさく委員いいんかい報告ほうこく」のなかで、定期ていき昇給しょうきゅう制度せいどについて、国際こくさい競争きょうそう激化げきか長引ながびくデフレで「実施じっし当然とうぜんできなくなっている」と明記めいき。「労使ろうしはないにより、合理ごうりてき範囲はんい抜本ばっぽんてき見直みなおすことがかんがえられる」と指摘してきした[7]

利点りてん欠点けってん

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インセンティブ効果こうか
終身しゅうしん雇用こようせいのもとでは、おな会社かいしゃ継続けいぞく勤務きんむするほうが転職てんしょくするよりもたか効用こうようられるようになるので、労働ろうどうしゃなまけないインセンティブをあたえる[4]
企業きぎょう特有とくゆう技能ぎのうへの投資とうし
企業きぎょう労働ろうどうしゃ企業きぎょう特有とくゆう技能ぎのうへの投資とうし教育きょういく費用ひよう負担ふたん)をおこな場合ばあい終身しゅうしん雇用こようせいとともに年功序列ねんこうじょれつによる賃金ちんぎん制度せいど合理ごうりてきである[4]

欠点けってん

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ぎゃくえば、終身しゅうしん雇用こようよりも中途ちゅうとでの転職てんしょくのほうが一般いっぱんてきであれば、賃金ちんぎん年齢ねんれい依存いぞんしなくなる(小田切おだぎり (2010))。

出典しゅってん

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  1. ^ a b OECD Economic Surveys: Japan 2019, OECD, (2019), Chapt.1, doi:10.1787/fd63f374-en 
  2. ^ a b c d e f g 榊原さかきばら英資えいすけつよえん日本にっぽん国益こくえき東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ、2008ねん、112-116ぺーじ
  3. ^ a b c d 波頭なみがしらあきら経営けいえい戦略せんりゃくろん入門にゅうもん」PHP研究所けんきゅうじょ、2013ねん、178ぺーじ
  4. ^ a b c d 小田切おだぎり宏之ひろゆき企業きぎょう経済けいざいがく』(2はん東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ、2010ねん、387-394ぺーじISBN 978-4-492-81301-0 
  5. ^ 三谷みたに直紀なおき年功ねんこう賃金ちんぎん成果せいか主義しゅぎ賃金ちんぎん構造こうぞう
  6. ^ a b c 原田はらだやすし人口じんこう減少げんしょう経済けいざいがく」PHP研究所けんきゅうじょ、2001ねん、178ぺーじ
  7. ^ 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん』2011ねん12月25にちづけ定昇ていしょう見直みなお議論ぎろんを」経団連けいだんれん春季しゅんき交渉こうしょう報告ほうこくあん 役割やくわり等級とうきゅうせいなど提示ていじ

関連かんれん文献ぶんけん記事きじ

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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  • 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこうさい評価ひょうか労働ろうどう市場いちば規制きせい
  • 「7わり課長かちょうにさえなれません」
  • 内閣ないかく経済けいざい社会しゃかい総合そうごう研究所けんきゅうじょ経済けいざい環境かんきょう変化へんか日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう