座すわり込こみ

座すわり込こみ（すわりこみ、英語えいご: sit-in, sit-down）とは、抗議こうぎ相手あいてに要求ようきゅうを飲のませるため、抗議こうぎの意いを抗議こうぎ相手あいてまたは第三者だいさんしゃに示しめすため、もしくは抗議こうぎ相手あいてに損害そんがいを与あたえるために、座すわってその場ばに留とまること。労働ろうどう争議そうぎや公民こうみん権けん運動うんどうなどで用もちいられはじめ、現在げんざいでは、政治せいじ的てきな場ばからスポーツの場ばにおけるまで多様たような場ばで用もちいられている手法しゅほうである。非ひ暴力ぼうりょくの直接ちょくせつ行動こうどうの一ひとつ。

歴史れきし

ストライキとしての座すわり込こみ

シット・ダウン・ストライキ（sit-down strike）と呼よばれる、労務ろうむの提供ていきょうを拒否きょひするストライキの一いち形態けいたいとしての座すわり込こみがある。生産せいさん拠点きょてんに労働ろうどう者しゃ組合くみあい員いんらが座すわり込こんで、直接的ちょくせつてきな攻撃こうげきをかける闘争とうそう。組合くみあい員いんの団結だんけつ力りょくを固かためたり、団体だんたい交渉こうしょうのテーブルに会社かいしゃ側がわを着つかせたりするために効果こうかがあるとされる。アメリカでは、1936年ねん1月がつオハイオ州しゅうアクロンの全米ぜんべいゴム労働ろうどう組合くみあい（英語えいご: United Rubber Workers）が組合くみあいの公認こうにんを求もとめてグッドイヤー社しゃに対たいし行いった労働ろうどう争議そうぎが初はじめとされる。その後ご、産業さんぎょう別べつ組織そしき会議かいぎ（英語えいご: Congress of Industrial Organizations）の議長ぎちょうジョン・Ｌ．ルイス（英語えいご: John L. Lewis）の下したで拡大かくだいした座すわり込こみ運動うんどうはアメリカの産業さんぎょう界かいに甚大じんだいな影響えいきょうを与あたえた。その他た、ドイツ・フランス・イギリスでも同様どうようにシット・ダウン・ストライキが行おこなわれたが、当時とうじは違法いほうであるとして激はげしい批難ひなんをうけ、その後ごも合法ごうほう性せいについて論争ろんそうは続つづいた。また、シット・ダウン・ストライキ自体じたいが合法ごうほうであっても、企業きぎょうの生産せいさん手段しゅだんである会社かいしゃや工場こうじょうを離はなれた私宅したくや公道こうどうでの坐すわり込こみは労働ろうどう争議そうぎの文脈ぶんみゃくでは合法ごうほう性せいを欠かくことになる。

日本にっぽんでの職場しょくば占拠せんきょ型がたの労働ろうどう争議そうぎの事例じれいのうち古ふるいものとしては、1925年ねん末まつの愛媛えひめ県けんの別べつ子こ鉱山こうざんでの争議そうぎが挙あげられる。組合くみあいの決議けつぎした不当ふとう解雇かいこ反対はんたい、臨時りんじ雇やとい制度せいどの反対はんたいなどの要求ようきゅうを会社かいしゃに申もうし入いれるため支配人しはいにんとの面会めんかいを求もとめ、それが拒否きょひされ続つづける中なかで、12月8日にちに惣開そうびらき鉱業こうぎょう所しょ前まえで座すわり込こみが行おこなわれた。翌日よくじつ会社かいしゃ側がわは退去たいきょを求もとめ、座すわり込こみを排除はいじょしようとして、組合くみあい代表だいひょうとの間あいだにトラブルが起おき、警察けいさつによって解散かいさん命令めいれいが下くだされた。

ちなみに、日本にっぽんでストライキが法的ほうてきに団体だんたい行動こうどう権けんとして認みとめられたのは1945年ねんの労働ろうどう組合くみあい法ほうの成立せいりつによってである。

公民こうみん権けん運動うんどうの中なかでの座すわり込こみ

法的ほうてきにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの人種じんしゅ差別さべつの終焉しゅうえんとなった1964年ねんの公民こうみん権けん法ほう制定せいていおよび白人はくじん以外いがいの選挙せんきょ権けんを認みとめていなかった投票とうひょう権けん法ほうの改訂かいていなど、多おおくの人種じんしゅの壁かべが取とり除のぞかれる過程かていで、アメリカでは一連いちれんの座すわり込こみ運動うんどうが行おこなわれた。

Fellowship of Reconciliation (FOR)および人種じんしゅ平等びょうどう会議かいぎ(CORE)は早はやくも1940年代ねんだいには座すわり込こみを行おこなっていた。アーネスト・フィッシャーはバーニス・フィッシャーを「レストラン座すわり込こみの母はは」と評ひょうした。1939年ねん8月がつ、アフリカ系けいアメリカ人じん弁護士べんごしサミュエル・ウィルバート・タッカーは当時とうじ差別さべつ的てきであったバージニア州しゅうアレクサンドリアの図書館としょかんでの座すわり込こみを企画きかくした。産業さんぎょう別べつ労働ろうどう組合くみあい会議かいぎ(CIO)の労働ろうどう者しゃ代表だいひょう数すう名めいは1947年ねん、オハイオ州しゅうコロンバスで行おこなわれた会議かいぎで短期間たんきかんではあったが自然しぜん発生はっせい的てきにランチ・カウンターでの座すわり込こみを行おこなった。

初期しょきの頃ころに行おこなわれた人種じんしゅ関連かんれんの座すわり込こみの1つとして、1939年ねん9月がつ、ニューヨークのシャック・サンドイッチ・ショップの人種じんしゅ的てきに不平等ふびょうどうな雇用こように対たいしFather Divine とInternational Peace Mission movement の信者しんじゃ達たちは食堂しょくどう労働ろうどう組合くみあい302区くと共ともにプロテストに参加さんかした。1939年ねん9月がつ23日にち木曜日もくようびのニューヨーク・タイムズによると、最もっともストライキが集中しゅうちゅうする41番ばん街がいとレキシントン通どおりの角かくのレストランに75から100名めいが現あらわれ店内てんないに入はいり、5セントのコーヒーを買かって客きゃくとして座すわり込こんだ。そのためその他たの客きゃくは席せきにつくことができなかった。

メルヴィン・B・トルソンとジェイムス・L・ファーマー・ジュニアの支援しえんにより、ウィリー大学だいがくとビショップ大学だいがくの学生がくせいはテキサス州しゅうマーシャルのハリソン郡ぐん庁舎ちょうしゃのロタンダでテキサス州しゅう初はつの座すわり込こみを企画きかく。この座すわり込こみはテキサス州しゅうで最もっとも古ふるい白人はくじん市民しみん会かいに直接ちょくせつ挑戦ちょうせんするもので、結果けっか的てきに州しゅう内ないのジム・クロウ法ほうを覆くつがえし、1950年ねんのSweatt v. Painter の評決ひょうけつにより大学院生だいがくいんせい間あいだの人種じんしゅ差別さべつ撤廃てっぱいとなった。

1957年ねん、ノースカロライナ州しゅうダーラム座すわり込こみ

公民こうみん権けん運動うんどう初期しょきの1957年ねん6月がつ23日にち、ノースカロライナ州しゅうダーラムのロイヤル・アイス・クリーム・パーラーで女性じょせい3名めいと男性だんせい4名めいの『ロイヤル・セブン』による人種じんしゅ差別さべつへの抗議こうぎ行動こうどうの座すわり込こみが行おこなわれた。

1958年ねん、オクラホマシティ座すわり込こみ

人種じんしゅ差別さべつ撤廃てっぱいを目的もくてきとしたランチ・カウンターでの座すわり込こみの2例れい目めとして、1958年ねん7月がつ、カンザス州しゅうウィチタのレクサルのチェーンストアのダッカム・ドラッグでの座すわり込こみが始はじまり、8月がつ上旬じょうじゅん、このドラッグ・ストアは人種じんしゅ差別さべつを撤廃てっぱいした。数すう週間しゅうかん後ごの1958年ねん8月がつ19日にち、オクラホマ州しゅうオクラホマシティのカッツ・ドラッグ・ストアのランチ・カウンターでの座すわり込こみが全国ぜんこく的てきに知しられるようになった。オクラホマシティの座すわり込こみは全米ぜんべい黒人こくじん地位ちい向上こうじょう協会きょうかい青年せいねん組織そしきのリーダーで地元じもと高等こうとう学校がっこうの教師きょうしであるクララ・ルパーの先導せんどうで、彼女かのじょの8歳さいの娘むすめを含ふくむ地元じもとの学生がくせい達たちによって行おこなわれた。これによりカッツ・ドラッグ・ストアでは即座そくざに人種じんしゅ差別さべつが撤廃てっぱいされた。オクラホマシティ全体ぜんたいの食堂しょくどう関連かんれんの人種じんしゅ差別さべつを撤廃てっぱいするには、その後ご数すう年ねんかかった。

1960年ねん、グリーンズボロおよびナッシュビル座すわり込こみ

オクラホマシティでの座すわり込こみの後のち、学生がくせいによる非ひ暴力ぼうりょくの座すわり込こみ抗議こうぎ運動うんどうは拡大かくだいしていった。1960年ねん2月がつ1日にち、ノースカロライナ州しゅうグリーンズボロのF・W・ウールワース・カンパニーで数すう人にんの黒人こくじん大学生だいがくせいによるグリーンズボロの白人はくじん用ようランチ･カウンター座すわり込こみにより南部なんぶ全体ぜんたいに人種じんしゅ差別さべつ撤廃てっぱいに向むけた座すわり込こみが広ひろがり、アメリカ国内こくないの人種じんしゅ差別さべつの根深ねぶかさを国民こくみんに気付きづかせることとなった。この運動うんどう以降いこうに、白人はくじん用よう食堂しょくどう、売店ばいてん、劇場げきじょう、公共こうきょう設備せつびなどで座込すわりこみが行おこなわれるようになった。

数すう週間しゅうかんのうちに座すわり込こみは近隣きんりんの市町村しちょうそんに広ひろがり始はじめ、最初さいしょの標的ひょうてきとなったのがウールワース、S・H・クレスなど全米ぜんべいに支店してんのあるチェーン店てんであった。

この人種じんしゅ差別さべつ撤廃てっぱいに対たいする抗議こうぎの座すわり込こみで最大さいだいにして最高さいこうとなったのは、企画きかくや基礎きその段階だんかいからナッシュビル座すわり込こみであった。参加さんか者しゃは何なん百ひゃく人にんにも及および、ナッシュビルのランチ・カウンターでの人種じんしゅ差別さべつ撤廃てっぱいに導みちびいた。ナッシュビルの座すわり込こみの参加さんか者しゃの多おおくは大学生だいがくせいで、ダイアン・ナッシュ、ジェイムス・ベヴェル、バーナード・ラファイエット、C・T・ヴィヴィアンなど多おおくの人々ひとびとが1960年代ねんだいの全米ぜんべいの公民こうみん権けん運動うんどうのほとんどを先導せんどうし、戦略せんりゃくを練ねり、指示しじした。市内しないの歴史れきし的てき黒人こくじん大学だいがくの生徒せいとがナッシュビル座すわり込こみを実行じっこうし、重要じゅうような役割やくわりを担になった。

近年きんねんのさまざまな座すわり込こみ

現在げんざいでも、座すわり込こみはさまざまな場面ばめんで用もちいられている。そのうちのいくつかを示しめす。

労働ろうどう者しゃによる雇用こよう者しゃに対たいする抗議こうぎ

• 多数たすうの自動車じどうしゃ工場こうじょうがあるインドのチェンナイにて、2021年ねん5月がつのロックダウンが州しゅう全体ぜんたいで行おこなわれたのちに、工場こうじょうの操業そうぎょう再開さいかいに伴ともなって、コロナ感染かんせん対策たいさくの徹底てっていを求もとめた抗議こうぎ行動こうどうが各地かくちで行おこなわれた。その中なかで、フォードに対たいしては感染かんせんした従業じゅうぎょう員いんの医療いりょう費ひ負担ふたんを、ヒュンダイに対たいしては操業そうぎょう停止ていしを求もとめて、座すわり込こみが行おこなわれた。

スポーツの判定はんていに対たいする抗議こうぎ

• 2019年ねん6月がつ、アルゼンチンで行おこなわれたサッカーの試合しあいで、サン・ホルヘ の選手せんしゅが前半ぜんはんに2人ふたり退場たいじょうさせられた。この判定はんていに怒おこった選手せんしゅたちが座すわり込こみで抗議こうぎの意思いしを示しめし、結果けっか的てきに相手あいてチームのＣＡアルバラドが勝利しょうりした。

• 2021年ねん8月がつ1日にち、東京とうきょう五輪ごりんのボクシング男子だんしスーパーヘビー級きゅう準々じゅんじゅん決勝けっしょうにおいて、フランスのアリエブ選手せんしゅが、故意こいに頭あたまを使つかって攻撃こうげきしたとして失格しっかくにされたことに対たいする抗議こうぎとして、リングに約やく一いち時じ間あいだ座すわり込こみを行おこない抗議こうぎした。

政府せいふに対たいするものなど政治せいじ的てきな抗議こうぎ

2007年ねんG8に対たいするロストックでの座すわり込こみ抗議こうぎ

2008年ねん11月6日にち 台湾たいわんの野のイチゴ運動うんどうにおける座すわり込こみ

• 2007年ねん6月がつ6日にちから8日にちにドイツのハイリゲンダムで開催かいさいされた第だい33回かい主要しゅよう国こく首脳しゅのう会議かいぎに伴ともなって、近郊きんこう都市としのロストックにおいて会議かいぎの開催かいさいについて座すわり込こみの抗議こうぎ行動こうどうが行おこなわれた。
  「en:33rd_G8_summit#Protests and demonstrations」も参照さんしょう
• 「集会しゅうかい遊行ゆぎょう法ほう」など人々ひとびとの集会しゅうかいやデモに関かんする権利けんりを制限せいげんする政府せいふへの抗議こうぎとして、2008年ねん11月6日にちに大学生だいがくせいが台湾たいわんの行政ぎょうせい院いん前まえで座すわり込こみを行おこなった。
  「zh:1106爭そう人權じんけん反はん集しゅう遊ゆう法ほう靜坐せいざ」も参照さんしょう
• 2022年ねん7月がつ、気候きこう変動へんどう活動かつどう団体だんたい「ジャスト・ストップ・オイル」のメンバーが自動車じどうしゃレースのF1第だい10戦せんイギリスGP決勝けっしょうにおいてバリアを飛とび越こえ、コース上じょうに座すわり込こむことで、政府せいふが新あたらしい石油せきゆとガスのプロジェクトを認可にんかしたことに対たいして抗議こうぎを行おこない、コース外がいに引ひきずり出だされた。
• 普天間ふてんま基地きち移設いせつ問題もんだいに関かかわって、基地きち建設けんせつに反対はんたいする人々ひとびとによって2014年ねん7月がつから米べい軍ぐんキャンプ・シュワブのゲート前まえで座すわり込こみが行おこなわれてきた。2022年ねん8月がつ22日にちに3000日にち目めを迎むかえていたが、同年どうねん10月がつ3日にちにひろゆきが現地げんちを訪おとずれ「座すわり込こみ抗議こうぎが誰だれも居いなかったので、0日にちにした方ほうがよくない?」と運動うんどうの連続れんぞく性せいについてツイートしたことから論争ろんそうに発展はってんした。

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• ベッド・イン - 1969年ねんのジョン・レノンとオノ・ヨーコによる平和へいわキャンペーン。
• ダイ・イン
• ヒューマン・ビーイン

外部がいぶリンク

• エリック・バーノウ賞しょう受賞じゅしょうドキュメンタリー『February One 』 (英語えいご) 1960年ねんのグリーンズボロ座すわり込こみにまつわる秘話ひわ
• 『Sit-In: A Tactical Analysis 』アーロン・クレイダー著ちょ (英語えいご) 学生がくせいの座すわり込こみに関かんする調査ちょうさをベースにしたエッセイ
• National Young Lords (英語えいご) 若わかきリーダーたちについての覚書おぼえがき
• Civil Rights Movement Veterans (英語えいご) 公民こうみん権けん運動うんどう経験けいけん者しゃによる歴史れきし、個人こじんの思おもい出で、写真しゃしんなど