文ぶん

文ぶん（ぶん）とは、一ひとつの完結かんけつした言明げんめいを表あらわす言語げんご表現ひょうげんの単位たんいである。基本きほん的てきには主語しゅごと述語じゅつご（一方いっぽうが省略しょうりゃくされることもある）からなる。ただし、これに加くわえて話題わだい（主題しゅだい、題目だいもく）が重視じゅうしされる場合ばあいもある。

主しゅ述じゅつ関係かんけい

まず主語しゅごと述語じゅつごを基本きほん的てき関係かんけい（主しゅ述じゅつ関係かんけい）とする文ぶんについて説明せつめいする。主語しゅごはふつう名詞めいし句くからなる。言語げんごによって主語しゅごは省略しょうりゃくできたり、あるいは述語じゅつごに抱合ほうごうされた形かたち（分離ぶんりできない）で表現ひょうげんされたりする。述語じゅつごは動詞どうし句く（または それに相当そうとうするもの）で、動詞どうし類るい、あるいはそれに加くわえて目的もくてき語ご、補語ほご、副詞ふくし句くなどからなり、主語しゅごが関係かんけいすること（意味いみ的てきには主語しゅごの状態じょうたい、主語しゅごが起おこす動作どうさ、主語しゅごが受うける行為こういなど）を陳述ちんじゅつする。

述語じゅつごによる分類ぶんるい

文ぶんは述語じゅつごの形かたちによって分類ぶんるいされる。「A（主語しゅご）はB（補語ほご）である」つまりA＝Bの形かたちの文ぶんを名詞めいし文ぶん（コピュラ文ぶん）といい、述語じゅつごが動詞どうしなどからなる文ぶんを動詞どうし文ぶんと いう。多おおくの言語げんごにこの区別くべつがあり、名詞めいし文ぶんの動詞どうしに相当そうとうするコピュラ（「である」）を使つかわない言語げんご（「AB」という）も多おおい。

名詞めいし文ぶんは意味いみ的てきには、AとBを逆ぎゃくにしても同おなじ意味いみである（A＝Bの意味いみである）指定してい文ぶんと、AとBを逆ぎゃくにできない（BはAの属性ぞくせいである）措定そてい文ぶんに分わけることができる。

英語えいごなど多おおくの言語げんごでは、形容詞けいようしを述語じゅつごとする場合ばあいにも名詞めいし文ぶん（措定そてい文ぶん）と同おなじ形式けいしきをとる。一方いっぽう、形容詞けいようしが動詞どうしと同おなじまたは似にた形式けいしきをとる言語げんごもあり、この場合ばあいは形容詞けいようしが述語じゅつごとなる。例たとえば日本語にほんごでは形容詞けいようし文ぶん・形容動詞けいようどうし文ぶんも区別くべつされる。

構成こうせいによる分類ぶんるい

上記じょうきの最小さいしょう単位たんいの文ぶんは単文たんぶん（simple sentence）という。それに対たいして単文たんぶん相当そうとうの成分せいぶんを含ふくむ複数ふくすうの節ふし（それぞれ形式けいしき的てきに切きり離はなすことができる）を文ぶんの中なかに含ふくむような文ぶんもあり、大おおきく重文じゅうぶんと複文ふくぶんに分わけることができる。

重文じゅうぶん（compound sentence）

複数ふくすうの独立どくりつ節ぶしからなり、単文たんぶんを独立どくりつ節ぶしにして、必要ひつように応おうじ等位とうい接続詞せつぞくし（日本語にほんごでは接続せつぞく助詞じょし）を加くわえて結むすびつけたものである。
独立どくりつ節ぶしを独立どくりつの文ぶんとしても基本きほん的てきな意味いみは通とおる。

複文ふくぶん（complex sentence）

主しゅ節ふしと1つ以上いじょうの従属じゅうぞく節ぶしからなり、主しゅ節ふしのある成分せいぶんが従属じゅうぞく節ぶしに相当そうとうしている。従したがって各かく節ふしを独立どくりつさせると、その関係かんけいを示しめす情報じょうほうがなくなってしまう。

さらにこれらを組くみ合あわせた重複じゅうふく文ぶんもある。

用法ようほうによる分類ぶんるい

英語えいごでは次つぎのように分類ぶんるいされるが、言語げんごによってはより適切てきせつな分類ぶんるいがありうる。

平叙へいじょ文ぶん

最もっとも普通ふつうに用もちいられる、命題めいだいを表現ひょうげんする文ぶんをという。

疑問ぎもん文ぶん

未知みちの情報じょうほうがある場合ばあいにその提供ていきょうを希望きぼうするための文ぶんである。

感嘆かんたん文ぶん

話者わしゃの感情かんじょうを表現ひょうげんするために強調きょうちょうする文ぶんである。英語えいごのWhat a wonderful day this is!など。

命令めいれい文ぶん

他者たしゃに対たいする命令めいれいあるいは希望きぼうを表現ひょうげんする文ぶんである。ふつう主語しゅごは2人ふたり称しょうであり、主語しゅごを省略しょうりゃくすることが多おおい。
また、1人ひとり称しょう複数ふくすうに対たいする命令めいれい文ぶんで勧誘かんゆうを表現ひょうげんすることもある（英語えいごではLet us ~で、形式けいしき的てきには2人ふたり称しょうに対たいする命令めいれい文ぶん、1人ひとり称しょう複数ふくすうを使役しえきする形かたち）。

このほか、挨拶あいさつなどに用もちいる慣用かんよう句く化かされた文ぶんもある。また形式けいしき的てきにはここに示しめした分類ぶんるいのいずれかに従したがいながら、別べつの機能きのうを持もつ文ぶん（例たとえば平叙へいじょ文ぶんの代かわりに疑問ぎもん文ぶんを用もちいる反語はんご、平叙へいじょ文ぶんの命令めいれい的てき用法ようほうなど）もある。

話題わだい文ぶん

英語えいごをはじめ、世界せかいの多おおくの言語げんご（主格しゅかく優勢ゆうせい言語げんご）では、上うえの主しゅ述じゅつ関係かんけいが文ぶんの基本きほん的てきな要素ようそである。この主しゅ述じゅつ関係かんけいとは別べつに、文ぶんの中心ちゅうしん的てきな話題わだい（主題しゅだい、題目だいもく）という要素ようそを加くわえた話題わだい文ぶん（題だい述じゅつ文ぶん）がある。日本語にほんごでは、次つぎの例れいでわかるように主語しゅごは文ぶんの重要じゅうような要素ようそでなく、むしろ話題わだいが重要じゅうようである。このような言語げんごを話題わだい優勢ゆうせい言語げんごという。

1. 「英語えいごでは主語しゅごが重視じゅうしされる。」
2. 「英語えいごでは主語しゅごを重視じゅうしする。」

上うえの2つの文ぶんは、意味いみ的てきには同おなじである。このうち2では、主語しゅご「英語えいごを使つかう人々ひとびとが」を入いれることができる（英語えいごに直訳ちょくやくするには主語しゅごTheyを入いれなければならない）が、日本語にほんごではそんなものを入いれない。つまり「主語しゅごなし文ぶん」の方ほうが自然しぜんであり、話題わだい「英語えいごでは」が必須ひっすである。話題わだいは語順ごじゅん（文頭ぶんとうにもってくるなど）や、日本語にほんごの助詞じょし「は」などで標識ひょうしきされる。

日本語にほんごでは「は」を用もちいた文ぶんが普通ふつうの談話だんわに必須ひっすである。話題わだいを含ふくむ文ぶんは主語しゅご優勢ゆうせい言語げんごにもあるが、基本きほん的てきに重要じゅうようではなく、話題わだいであると明示めいじする必要ひつようもない（ただし話題わだいを主題しゅだいと一致いっちさせる傾向けいこうがあり、行為こうい対象たいしょうを主語しゅごにする受動態じゅどうたいなどがその例れいである）。

話題わだいは主しゅ述じゅつ文ぶんから切きり離はなして表現ひょうげんすることができる（「何なに々については、･･･」といった表現ひょうげん：この場合ばあい、主しゅ述じゅつ文ぶんが話題わだいに対たいする陳述ちんじゅつ部ぶとなる）。特とくに話題わだい優勢ゆうせい言語げんごでは、話題わだいであることが何なんらかの方法ほうほうで明示めいじされ、「象ぞうは鼻はなが長ながい」といった"二に重じゅう主語しゅご文ぶん"（実際じっさいには「象ぞうは」が話題わだい、「鼻はなが」が主語しゅごである）も用もちいられる。

話題わだいは文ぶん全体ぜんたいで共通きょうつうであることが多おおい（少すくなくとも独立どくりつ節ぶし内ないでは共通きょうつうである）。普通ふつうの談話だんわでは、話題わだいは文脈ぶんみゃくから理解りかいできるものであって、その意味いみで「既知きちの情報じょうほう」である。例たとえば小説しょうせつの冒頭ぼうとうでいきなり「山椒魚さんしょううおは悲かなしんだ」と話題わだいの形かたちで出だすことによって読者どくしゃの驚おどろきを文学ぶんがく的てきに狙ねらうこともある。

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